平成 22 年度 林業グループ活動 研究事例集 全林研会長賞 福岡県 うきは市林業研究グループ 所在地 福岡県うきは市浮羽町設立 昭和 37 年 4 月会員 男 35 人 年齢 18 歳 ~ 58 歳平均 40 歳 主なプロジェクト 低コスト林業の推進 林業技術技能の向上 地域社会への貢献と森林環境教育 ウキウキうきは地域とともに走るうきは林研 1. 地域の概要うきは市は福岡県中部 筑後平野の東部に位置し 市の北部に筑後川が流れ 東は大分県日田市と境を接し 南は耳納山地の一部を形成しています 筑後川沿いには県内有数の温泉地として知られる筑後川温泉があり 耳納山麓では果物の生産が盛んで 富有柿やぶどうの産地として有名です うきは市の面積は約 117km² で このうち森林は 50% を占めます 市の南側はほとんど山林で 東側は比較的なだらかな地形ですが 西側では非常に急峻な地形となっています この地域では日田や八女地方の影響を受けながら県内有数の林業地として また製材拠点として栄えてきました 主な樹種はスギで 特にサシスギにより造林が進められ ヤマグチを中心にウラセバル トヤマなど多くの品種が生育しています しかし 平成 3 年 平成 16 年の大型台風の襲来は 2 度とも激甚災害指定という甚大な被害を森林にもたらしました 被災後の森林所有者と林業従事者の懸命な努力により ほとんどの被災地で復旧作業を完了しましたが 随所に台風の痛々しい爪跡が見受けられます 1
一方 明るい話題もあります 平成 20 年 4 月うきは市は 福岡県初の森林セラピー基地として認定されました 筑後川支流の巨瀬川源流に位置し 水源の森百選にも選ばれた 調音の滝公園 日本棚田百選に選ばれた つづら棚田 などが人気コースとして 年間通じ多くの方々に癒しの時間を提供しています 現在 森林セラビー基地 森林セラピーロード は 全国で 38 箇所 福岡県内には 当市 (H20) 八女市黒木町 (H20) 篠栗町 (H21) の3 箇所が認定されています また 平成 21 年 4 月 高評価を得ている うきは産スギ トヤマ材 約 2,300 本を使用した公共施設 うきは市総合体育館 が完成し 市民に広く利用されています 2. グループ結成の経緯について昭和 37 年 4 月 浮羽町林業後継者クラブ として 林業技術の習得や林業経営の効率化を図り 地域経済の発展と会員相互の連帯意識の向上を目的として発足しました 発足当時から 浮羽地区での林業発展の要は 林業の機械化と路網整備にあると考え 今 盛んに言われている 低コスト林業の推進 が活動のテーマに位置づけられていたようです 林業の機械化を支える足がかりとして 県下でも有数の販売修理メンテナンスの拠点 浮羽森林組合機械センター と林研会員は共に頑張ってきました 機械に強い会員が多く 昭和 53 年に林研グループの改良発案と筑水農機 ( 現チクスイキャニコム ) との協力で 林内作業車やまびこ (GC550) を開発 この搬出用林業機械は 林野庁長官賞 を受賞しました 又 小型バックホーに回転式グラップルを考案したのも浮羽林産事業組合の一員からです その後も会社では日々改良が行われています また うきは市の森林で特徴的なのは 全域に張り巡らされた路網です 林道 作業道 作業路は 合わせると総延長は約 625km 1ha 当たり約 115m となっています 先の林内作業車の普及に伴い トラックの通る林道 作業道から 幅員 1.50m ~ 2.50m の作業路が網の目状に開設されています 2
作業路の総延長は 393km 以上と言われています この高密度に張り巡らされた路網により 木材生産性の向上は勿論のこと 森林整備全体に大きな効果をもたらしています また 林研メンバーにより発案開発された道具に 浮羽式枝打ち器 があります この枝打ち器は突き上げ 引き落としの両面刃である為 切り口が裂けたり割れたり節抜け等の心配がなく ハシゴなしでも手軽に地上から枝打ちができることが特徴です この機械により枝打ちの作業能率が格段に良くなりました しかし 近年は無節材生産を行う森林所有者もいないため ほとんど使われる事がなくなりました 今 低コスト林業と盛んに謳われていますが そのことに古くから気づき実践されてきた また現場で工夫されてきた当林研の先輩方に深く敬意を表するものです 3. グループの活動状況現在 林研の活動として ⑴ 林業技術の習得を目的とした 1 会員や私有林での 間伐 下刈作業 2 市有林を会員研修の場として活用する 学習林活動 3 県道沿線等の森林整備を行う 里山保全活動 ⑵ 地域社会との交流と林業の PR を目的とした 林業体験イベント ⑶ 林業機械や苗木生産等の視察研修を行っています ⑴ 1 間伐 下刈作業 は 当グループの年間行事として位置づけています 近年の木材市況や木質バイオマスへの関心の高まりを受けて昨年は 30 年生の山林において 林分調査 作業路開設 間伐 搬出 トラック運搬を実施し コスト分析を行い採算がとれるか検証を行いました まだ一例ではありますが 路網が整備されたうきは市では 低コスト化が実証されそうです 2また 昭和 59 年に林研会員の技術向上のため 町から借り受けた 学習 3
林 (15 年生 1.20ha) は 間伐 枝打ち等の保育作業が終了しました 現在 全体の伐期時期を 5 つのブロックに分けて経費 材価等を調査しようと計画しています 今後は さらにコスト分析の箇所数を増やし データを集積することで 他の森林所有者へ分析結果を周知し 森林整備の推進と間伐収入確保 林業復興への足掛かりにできればと思います その他 地域の公園の草刈りを行っているほか 台風で被災した山林を 源流の森 として復元するため 所有する地元ロータリークラブ会員と広葉樹の植樹を行った場所で 下刈り作業を行っています 3 里山保全事業 は 平成 20 年度から森林整備によって地域に貢献することを目的に取り組んでいる事業です 主に県道沿いの山林を対象に間伐 侵入竹の伐採 下払い等を行っています 環境面に配慮した事業であるのは勿論ですが 将来的には整備が行き届いた展示林として また小学校などの森林環境教育の場としての利用を考えています ⑵ 林業体験イベント は 地域との交流と林業の PR を目的として行っています 平成 18 年には 近隣の高校生を対象に うきはの森と親しむ日 を開催しました 5 つの高校に出向きイベント開催の趣旨説明 当日は 20 名の生徒が間伐 枝打ち体験 高性能林業機械の実演 試乗を行いました 初めて見る機械ばかりで最初は驚いていましたが 慣れてくると いつでも使えるよ と言う生徒もおり 今の高校生は覚えが早いと感心しました 同時に行った親子体験イベントでは 下払いや枝打ち体験を行いました 作業内容を説明し なぜこの作業を行うのか また具体的な道具の使い方の実演や作業上の注意点を説明するなど 林業の PR も行いました 昼食には竹を使ったご飯や猪鍋など 地元林産物を用いたものを提供し その他 火おこし体験やシイタケ駒打ちなど 通常では味わえない体験で充実した一日を過しました その他 県民ボランティアや企業 (NTT ドコモ ) による植樹活動 久留米市のボランティア団体への植樹指導も継続的に行っています 4
4. 今後の林研のありかた結成当初から地域林業をリードしてきたと自負する当グループの活動ですが 社会情勢の変化やメンバーの高齢化 後継者不足により 林研としての地域林業への影響力は明らかに衰えてきています 非常に厳しい状況ですが これまでの当林研の活動を振り返ると 当初から目標にしてきたものは ほとんど変わっておらず この目標は変える必要はないと考えています 当グループとしては 今後も技術習得活動を積極的に行い また より効果的なイベントとなるよう 様々なアイデアを発信するため 日々活動したいと思います また 改めて林研グループとしての役割について話し合い 都市部住民が期待する森林が持つ公益的機能 水源かん養機能や地球温暖化の防止のなど の発揮 その為には間伐や枝打ち 枝払いなど 山の手入れを積極的に行うことが必要であることなど 会員全員が同じ意思を持って 取り組むべき課題にぶつかっていきたいと考えています フォレスターネット 2012 5