日本印刷学会誌48-1

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180 総説特集 インクジェットの最先端 (1) UV インクジェット, ワイドフォーマットプリンタの最新技術動向 New Technological Trends in UV Ink-Jet and Wide-Format Printers Akira TAKEUCHI* 武内 彬 * *Element Technology, Develop Department Mimaki Engineering Corporation, 2182-3, Shigeno-otsu, Tomi-shi, Nagano, 389-0512 JAPAN 1. はじめに 進んでいる. サイン市場では短納期で小ロットの案件が多くオンデマンドインクジェットプリンタのメリットを生か オンデマンドインクジェットプリンタは安価な出力機器すことが出来る市場である. として家庭用, オフィス用として広く普及している. インその他ノベルティ印刷や工業印刷の分野でも使用されるクジェットプリンタの用途は, 当初は紙にプリントする用例が増えてきている. 使用されているプリンタは大きく下途が専らであったが, 普及するにつれ印刷と同様に多種多記の 5 分野に分けることができる. 様のメディアへのプリントの要望が広がりつつある. イン 1 水性インクジェットプリンタクジェットプリンタが印刷に近づくためには残された課題 2 溶剤インクジェットプリンタは多い. しかし, デジタル ( 版レス ), オンデマンド, 非 3 UV インクジェットプリンタ接触といった多くの利点を生かし, 特定の分野では着実に 4 昇華転写インクジェットプリンタインクジェットがその適用分野を拡大しつつある. 5 捺染インクジェットプリンタ特にワイドフォーマットインクジェットプリンタは屋外上記 5 種のプリンタはそれぞれの特徴を生かして様々なサイン用途にソルベントインク対応機種が開発されたこ分野で使用されている. 各方式の特徴を整理し, 現状の課とに伴い, 屋外用プリンタの分野では主流になっている. 題について分析する. 近年, さらに様々なメディアに印刷が可能な UV インクジェットプリンタも数々のメーカーから発表され, 普及が 2.1 水性インクジェットプリンタ始まってきている. 水性インクジェットプリンタは染料と顔料があり, 両イ本稿では, ワイドフォーマットインクジェットプリンタ武2003 年長野工業高等専門学校電子制御工学科と UV インクジェットプリンタの特徴と問題点を分析し, 卒. 内現状と今後の課題について報告する. 2004 年 ( 株 ) ミマキエンジニアリング入社. 大判溶剤インクジェットプリンタの電気設計に従事. 2007 年よりインクジェットヘッド-インク評 2. 各応用分野と各種プリンタ価の業務に従事. サイン市場, ノベルティ印刷市場, 工業印刷市場のそれぞれの分野について大判インクジェットプリンタおよび UV インクジェットプリンタが普及しつつある. サイン市場は特に大判インクジェットプリンタの普及が *( 株 ) ミマキエンジニアリング技術本部要素技術開発部 ( 389-0512 長野県東御市滋野乙 2182-3) 彬Profile [2] 日本印刷学会誌

UV インクジェット, ワイドフォーマットプリンタの最新技術動向 181 ンク共にインクを吸収するための受理層付の専用紙, もしくは普通紙への出力となり, 専用紙出力の場合はにじみがなく発色のよい画像が得られる. 用途としては CAD 出力用途とグラフィック出力用途に分けられる. グラフィック用途としては, ポスターや屋内サイン用途での使用が主である. オフセット印刷のプルーフ用途としても使用されている. 屋外での使用の場合はラミネート処理などが必須となる.Epson,HP,Canon 等が多くの機種を販売している 2.2 溶剤インクジェットプリンタ溶剤インクジェットプリンタはサイン市場で水性インクジェットプリンタに次いで普及が進んでいるプリンタである. 理由としてノンコートメディアへの直接印刷が可能であり, 水性プリンタで印刷し, ラミネート処理を行う場合と比較し低コスト化が可能であること. プリンタやインクも高画質な製品が比較的低コストで販売されていることなどが上げられる. 主な使用メディアは柔軟な塩化ビニルシート, ターポリン ( 機械的強度を増すために布を織り込み, 塩ビ樹脂を含浸させたもの ) 等であり, 水性プリンタと同様に, ロール状に巻かれたメディアを巻きほぐしながら印刷し, 再度ロール上に巻き取るロール to ロール方式のメディア搬送が一般的である. メディアの長手方向の連続印刷が可能であり, ビル側面等への大型長尺サイン出力に適している. 屋外への掲示が多いため, インクに高耐候性が要求される. 受理層の代わりとして, 塩ビ樹脂を溶解させて定着するため, 顔料を有機溶剤中に分散させたインクが使用される. 塩ビシートへの定着, 滲み, 印刷後の乾燥を向上させるためにメディア加熱用のヒータがプリンタに内蔵され, メディアを 35 ~ 50 程度に加熱し, 印刷を行う. 乾燥後はインク中の樹脂と顔料成分のみが残ることから, 平滑度が高く, 高光沢の画質を得る事が出来る.( 図 1) プリンタとしてはミマキエンジニアリング, ローランド DG, 武藤工業,SII 等から大判プリンタが比較的安価で販 売されており, 幅も 75 cm ~ 3. 2 m, とバリエーションがある. 中には印刷画像の輪郭カットが可能なカッターも備えたモデルもあり, 少量のラベル生産や POP の作成に使用されている.( 図 2) また, 白やシルバーといったインクも発売され, 表現の範囲が一段と広がっている.( 図 3) 課題としては, 各社共にインクの改良が進み, 臭気が低く抑えられ, 有機溶剤取扱い規則 ( 有機則 ) 非該当の溶剤インクが現在販売され使用されているが, 有機溶剤であることに変わりはなく VOC, 環境負荷の点では課題となっている. また, 印刷可能なメディアも塩ビ系樹脂のメディアに限られ, メディア適正も広いとは決して言えない. さらに乾燥プロセスが有機溶剤の蒸発プロセスによることから, 高生産性のプリンタを実現しようとした場合は滲み, 印刷後の乾燥性が問題となる. また, 屋外長期用途となるサイン出力においてはラミネート処理が必要となるケースがある. この場合は有機溶剤が完全に蒸発していないとラミネート後にメディアとの間にガスが発生し, 施工後のトラブルとなるといった印刷後, すぐに施工できない課題がある. 図 2 ミマキカッター付溶剤プリンタ CJV30 図 1 溶剤インクの浸透プロセス 図 3 シルバーインク作図サンプル 第 48 巻第 3 号 (2011) [3]

182 総 説 2.3 UV インクジェットプリンタ スクリーン印刷等では以前よりあった,UV 硬化型方式がヘッド, インク, ランプの改良でインクジェットでも可能になってきたことから, 多くの製品が販売されてきている. UV 硬化型インクを使用し,UV ランプにて硬化, 定着させるプリンタであり, ほとんどのメーカーでラジカル重合型のインクを使用している. ソルベントと比較すると下記の特徴がある 1 メディア適正が広い塩ビメディアに限らず, フィルムやプラスチック, 金属にも印刷可能である 2 乾燥時間が不要 UV ランプにて硬化させるため, 高速印刷でも滲みがなく, 印刷後の乾燥時間も不要であるノンコートメディアでも比較的高精細な画質が得られる多くの重ね塗りができ, 高濃度印刷ができる 3 VOC 発生がなく, 環境負荷が小さい有機溶剤を使用していないため,VOC の発生がない上記の特徴を有するために様々な種類のプリンタが販売され, 各用途で使用されている. 2.3.1 高生産性 WF プリンタ乾燥時間が不要で高速印刷が可能なことから高生産性の大型機 (3 ~ 5 m) が HP,EFI,Agfa,Durst など各社から販売され, サイン業界の大手出力センター等で使用されている.( 図 4) 2.3.2 大判フラットベッド, ベルト搬送プリンタアルミ複合版やフォームボードなどへ直接印刷が可能なために, フラットベッドタイプや, ベルト搬送方式のニーズがある. プリンタとしてはミマキエンジニアリング, Oce,HP,EFI,Agfa 等, 各社から多く販売されている. UV プリンタの中では最も多くのラインナップがある分野である.( 図 5) 2.3.3 小型ローエンドプリンタソルベントと比較すると UV ランプや UV インクが使用可能なヘッドが必要なことから装置本体のコストが高くなりがちであったが,UV-LED を採用した, 小さく, 低コストなプリンタがミマキエンジニアリング, ローランド DG 等から販売されてきている.( 図 6) 2.3.4 使用用途 UV インクジェットは様々なメディアに印刷できることから, 様々な用途で使用されている. 図 4 5m 幅 UV プリンタ EFI-Vutek GS5000 図 5 ミマキ大判フラットベッド UV-LED プリンタ JFX-1631 図 6 ミマキ UV-LED 搭載 A3 サイズフラットベッドプリンタ UJF-3042 サイングラフィックスロールメディア ( 塩ビ, ターポリン,PET など ) リジットメディア ( アルミ複合版, フォームボードなど ) 成型品への印刷 ノベルティ印刷 工業印刷 プルーフ ( フィルム, コート紙等 ) フラットベッドタイプではリジットメディアへの印刷で使用されるケースが多い. これはソルベントプリンタ等で印刷し, カッティングした塩ビフィルム等を貼り付ける手間やコストを省くことができるためである. 主なメディアとしてはフォームボードやアルミ複合版が上げられる. [4] 日本印刷学会誌

UV インクジェット, ワイドフォーマットプリンタの最新技術動向 183 また, フラットベッドタイプではフィルムメディア, 定型紙などロール to ロール機では搬送が難しいメディアへの対応ができることから軟包装用フィルムやコート紙などへ印刷し, オフセット印刷やスクリーン印刷のプルーフ用途や少量生産などでも使用されている. フィルム素材などの透明素材に印刷する場合には白インクが有効である. ここでも UV のメリットである高濃度印刷が生かされている.( 図 7) フラットベッドタイプでは厚物の印刷が可能な装置も多くあり, ある程度の立体物へ印刷することが可能である. 装置パネルなどの工業印刷分野や, ノベルティ印刷の市場などで使用される例が増えてきている. 意匠性を高めるために UV インクの特徴である厚盛り印刷をクリアインクで行い, テクスチャーの表現や, 高い隠蔽性を持った白インクなどを使用し付加価値の高い印刷物を提供できるようになってきている.( 図 8) 工業印刷の分野では柔軟なインクを使用してメンブレンスイッチの印刷や, 成型品へロゴなどの印刷で使用されている.( 図 9) 図 9 柔軟 UV インクを用いたメンブレンスイッチサンプルこの時に課題となるのが UV ランプである. 多く採用されているメタルハライドランプでは UV 光とともに多くの熱を発生するため, メディアを熱により傷めてしまう場合があった. そのため, 近年では UV 光源としてメディアを加熱しない UV-LED を採用したプリンタも販売されてきている.UV-LED を光源とした場合には比較的長波長 (405 ~ 385 nm 程度 ) の単一発光波長のため ( 図 10), インクが硬化しづらく, インクもランプに合わせた対応が必要となる. 表 1 に 2 種の光源の比較表を示す. 図 10 2 種の光源の発光スペクトル比較 図 7 白インクを使用した軟包装フィルム印刷サンプルと携帯電話カバー印刷サンプル図 8 クリア UV インクでのテクスチャー表現 表 1 UV 光源比較 光源 メリット デメリット メタル ハライド 幅広い波長の発光が可能 照射強度が高い UV-LED 消費電力が小さい 小型化が可能 被照射物を加熱しない ON/OFF が自在 光量を自由に変更可能 長寿命 (10000h ~) オゾンレス 被照射物を加熱してしまう クーリングタイム, 発光までに時間がかかる 短寿命(3000 ~ 6000h) 消費電力が大きい オゾン発生の場合有 単一スペクトル発光 ( 385nm, 395nm, 405nm 等 ) 照射強度が弱い 第 48 巻第 3 号 (2011) [5]

184 総 説 課題上述したように UV インクには多くのメリットがあり, 普及してきているが, 更なる適用市場の拡大には下記のような課題を解決していく必要がある. 1 光沢 2 さらなるメディアフリー 3 安全性 1 の光沢であるが,UV インクは厚盛りでき, 重ね塗りが可能で濃度を高くできるのが特徴であるが, 同時にインクが立体的にメディア上につくことから, 光沢感が出にくく, マット調に仕上がりやすい. 図 11 にソルベントインクで印刷した表面と UV インクで印刷した表面の差を示す.UV の方が立体的であることがわかる. 立体的であるために反射光が乱反射し, マット調に視認される. UV 光の露光タイミングやインクの改良等で改善されてきてはいるが水性やソルベント並みの高光沢の画質を得ることはできていない. 11-1 11-2 2 のさらなるメディアフリーであるが, 工業印刷の分野では様々な基材が使用されており, それらすべてに既存の UV インクでは良好な密着性を示すことはできていない. スクリーン印刷で使用されているインキと比較しても密着性は劣ることが多く, インクジェットで使用できる範囲も限られてしまっている. アンダーコートやオーバーコートなどを塗布することによって密着性や印刷物の擦過性などを向上させる工夫が取られているが, まだ十分とは言いがたく今後も技術開発が進んでいくと思われる. また印刷後に曲げたり, 加熱成型をするなどの用途では, 硬化後の皮膜特性に柔軟性や伸びを期待されている. 現在でも伸びるインクは販売されているが, さらなる特性改善が進んでいくと思われる 3 の安全性であるが,UV インクは顔料, モノマー, 光重合開始剤, その他, の構成が多いが, このうちモノマーや光重合開始剤が皮膚刺激性をもつものなど安全性を疑問視されている物質を使用する場合がある. 理由として, スクリーン印刷等と比較するとインクジェットで塗布するために粘度が 20 ~ 100 cp 前後と低く, 安全性に難がある物質を使用せざるを得ないケースがある. 工業製品や玩具等で使用する場合には高い安全性が求められるのは当然であるが, 欧州での REACH 規制が始まっていることから, 今後さらに安全性への要求が強くなっていくと思われ, インクメーカー各社でも安全性の高いインクの開発が今後加速していくと思われる. 11-3 図 11 印刷物表面 11-1 印刷データ 11-2 UV 11-3 ソルベント 2.4 昇華転写インクジェットプリンタ昇華転写プリントは基本的にはポリエステル布地へ印刷する技術であり, のぼり旗やフラッグ, ユニホームなどへの印刷, 特殊用途してはポリエステルコーティングを施した鋼板やマグカップへの転写を行っている場合もある. インクは昇華染料を使用し,150 ~ 200 の熱を掛けると染料が昇華し, ポリエステル樹脂を染色する. 実施形態には大きく 2 種類がある. 一方は転写紙といわれる特殊な紙に昇華染料インクで印刷し, 転写紙を加熱プレスすることでメディアへ転写する方法である. もう一方は滲み防止の前処理を施したポリエステル布へ直接昇華染料インクで印刷し, 加熱することで染色する方法である. 前者は紙に印刷することから高濃度の印刷が可能で布以外のポリエステルコーティングした素材への使用も可能である. ユニホームなどのスポーツウェアやマグカップなどのノベルティに使用されている. 後者は布地へ直接印刷することで, 紙を使用しないため, 低コスト化が可能である. [6] 日本印刷学会誌

UV インクジェット, ワイドフォーマットプリンタの最新技術動向 185 のぼり旗やフラッグなどのサイン業界で使用されることが多い. 布地を使用したサインはソフトサインと呼ばれることもあり, メリットとして, 塩ビメディア等と比較すると軽量であり, 施工時の負担が小さいことや, ポリエステル布はリサイクル可能な素材であり環境負荷が小さいことから以前よりあったのぼり旗のほかにもターポリンの代替などとして使用される例が増えてきている.( 図 12) 昇華染料はソルベント等のプリント方式と比較し, 彩度の高い発色を得る事が出来る. プリンタとしてはミマキエンジニアリング, ローランド DG, 武藤工業,Agfa,Durst など多くのメーカーが販売している. 幅は 1. 6 m や 1. 8 m が主流であり, 大型なものは 3. 2 m などがある. インクは水性ベースが多いが大型機の中には溶剤や油性ベースのインクを使用しているケースもある. 課題としては, 昇華染料の耐候性は顔料系と比較すると悪く, 屋外での使用の場合は退色が大きく長期間の使用にはあまり向いていない. さらに, インクを昇華させて画像を形成するため, フィルム等へ印刷するよりは精細度が欠けてしまう. また, プリンタのほかに転写機 ( 図 12) と呼ばれる加熱装置が必要であり, 初期投資も溶剤プリンタ等と比較すると大きくなる. 図 12 転写機と昇華転写プリントサンプル 2.5 捺染インクジェットプリンタ布地への印刷を行い, 捺染をする目的のプリンタである. 捺染は前述のものとは異なり, 化学反応を用いて染色するプロセスのため, 様々なインクと生地の組み合わせが存在する ( 表 2). 印刷前に布地への前処理剤の塗布, 印刷後に蒸し工程, 洗浄工程等の後処理が必須となり, 生地やインクごとに最適な条件を使用する必要がある. 上記の他に捺染顔料と呼ばれる種類のインクもあり, 染色ではなく, 顔料と樹脂により, 布地へ定着させるインク 表 2 生地とインクの組み合わせ 生地 適用可能インク 綿 ( コットン ) シルク 羊毛等 ナイロン ポリエステル が T シャツなどへのダイレクトプリント用として使用されている. プリンタとしてはミマキエンジニアリング, コニカミノルタ, 東伸工業,ROBUSTELLI などが 1. 8 m, 3. 2 m 幅のプリンタを販売している. 捺染をデジタル化するメリットとして版レスで作成でき, 少量多品種生産, 短納期が可能となる. また, オンデマンドプリントのため, ロスが少なく水洗い等での廃液も少ないため, 環境にも優しい. 課題としては, 現在のインクジェット方式では少量生産やサンプル作成に限られているため, 中量生産以上で採算が取れるような更なる高生産性, コストダウンが求められている. 3. 最後に サイン業界を中心に WF インクジェットプリンタを使用する用途は広がってきている. 上述した 5 種のプリンタの他にも水性インクでありながらノンコートメディアをはじめとする様々なメディアに印刷が可能な技術が開発され, 注目を集めている. スクリーン印刷やオフセット印刷等と比較するとインクジェット方式では劣っている部分も多くあるが, オンデマンド, 非接触という利点を生かして, 今後も様々な分野で使用される機会が増えていくと思われる. そのためにも1 高画質化 2 更なるメディアフリー 3 高速化 4 安全性などの課題をクリアし, インクジェットの利点を最大限に生かすように, インクの開発をメインにヘッド, プリンタ, メディア, 出力ソフトなどの周辺技術の開発がさらに加速していくであろう. 参考文献 1)( 株 ) ジーエス ユアサコーポレーションカタログより抜粋 2)( 株 ) ハシマカタログより抜粋 3) 笠井清資 : 日本印刷学会誌,45[6]602-608(2008). 4) 相原孝夫 : 日本印刷学会誌,47[3]153-157(2010). 5) UV 硬化プロセスの最適化 2, サイエンス & テクノロジー ( 株 )(2010). 反応染料 酸性染料 反応染料 酸性染料 分散染料 6) プリンター開発技術の動向, シーエムシー出版 (2005). 第 48 巻第 3 号 (2011) [7]