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年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

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(イ係)

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

最高裁○○第000100号

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

最高裁○○第000100号

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

原判決は, 控訴人ら及び C の請求をいずれも棄却したので, 控訴人らがこれを不服として控訴した 2 本件における前提事実, 関係法令の定め, 争点及びこれに対する当事者の主張は, 後記 3 のとおり, 原判決を補正し, 後記 4 のとおり, 当審における当事者の主張 を付加するほかは, 原判決 事

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

 

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

ない 4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙 商標権目録 記載の商標権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が原判決別紙 被告標章目録 記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する行為が, 控訴人の商標権を

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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

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1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

平成  年(行ツ)第  号

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

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平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

平成23年12月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

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第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

最高裁○○第000100号

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ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

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(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

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(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

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賦課決定 ( 以下 本件賦課決定 といい, 本件更正と併せて 本件更正等 という ) を受けたため, 本件更正は措置法 64 条 1 項が定める圧縮限度額の計算を誤った違法なものであると主張して, 処分行政庁の所属する国に対し, 本件更正等の一部取消し等を求める事案である 原審は, 控訴人の請求をい

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弁理士試験短答 逐条読込 演習講座 ( 読込編 ) 平成 29 年 6 月第 1 回 目次 平成 29 年度短答本試験問題 関連条文 論文対策 出題傾向分析 特実法 編集後記 受講生のみなさん こんにちは 弁理士の桐生です 6 月となりましたね 平成 29 年度の短答試験は先月終了しました 気持ちも

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平成 15 年 5 月 27 日判決言渡 同日原本領収裁判所書記官平成 15 年 ( ネ ) 第 320 号特許権侵害差止等請求控訴事件 ( 原審 大阪地方裁判所平成 13 年 ( ワ ) 第 9922 号 ) 判決 控訴人 (1 審原告 ) アンドウケミカル株式会社同訴訟代理人弁護士北方貞男被控訴人 (1 審被告 ) 有限会社空閑園芸同訴訟代理人弁護士後藤昌弘同川岸弘樹同補佐人弁理士広江武典同宇野健一主文 1 本件控訴を棄却する 2 控訴費用は, 控訴人の負担とする 事実及び理由第 1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨等 (1) 原判決を次のとおり変更する (2) 被控訴人は, 控訴人に対し,180 万円及びこれに対する平成 13 年 9 月 28 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え (3) 控訴人の当審における予備的請求被控訴人は, 控訴人に対し,180 万円及びこれに対する平成 13 年 9 月 28 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え (4) 訴訟費用は, 第 1 審における上記 (2) の請求について生じた部分及び控訴について生じた部分は被控訴人の負担とする (5) 仮執行宣言 2 控訴の趣旨等に対する答弁 (1) 本件控訴を棄却する (2) ア主位的答弁控訴人の当審における予備的請求に係る訴えを却下する イ予備的答弁控訴人の当審における予備的請求を棄却する (3) 控訴費用は, 控訴人の負担とする 第 2 事案の概要本件は, 発明の名称を 育苗ポットの分離治具及び分離方法 とする後記特許権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が控訴人から後記貸与契約に基づいて貸与されたポットカッターを, 同契約の条項に反して, 控訴人以外の他社製造に係る連結育苗ポットの分離等に使用した行為が, 上記特許権の侵害に当たるとして, 特許権侵害に基づき損害賠償を請求した事案である 原判決は, 控訴人の請求を棄却したため, 控訴人が控訴を提起した ( なお, 原審においては, 控訴人は, 被控訴人が上記特許発明の技術的範囲に属するポットカッターを製造した旨主張し, ポットカッターの製造 使用の差止め及び廃棄を求め, 原判決はこの請求についても棄却したが, 控訴人はこの点については不服を申し立てていない ) また, 控訴人は, 当審において, 予備的に, 被控訴人に対し, 被控訴人が控訴人から貸与されたポットカッターを控訴人以外の他社製造に係る連結育苗ポットの分離に使用した行為が, 前記貸与契約上の債務不履行に当たると主張して, 債務不履行に基づく損害賠償を請求した 1 前提となる事実等原判決 3 頁 10 行目の 以下 の次に 併せて を加えるほかは, 原判決 2 頁 9 行目から5 頁 3 行目までに記載のとおりであるから, これを引用する 2 争点 (1) 被控訴人が, 本件禁止条項に違反して, 本件ポットカッターを他社製連結育苗ポットの分離に使用することは, 本件特許権の侵害となるか (2) 被控訴人が, 本件禁止条項に違反して, 本件ポットカッターを他社製連結育苗ポットの分離に使用することは, 本件貸与契約上の債務不履行となるか (3) 本件禁止条項は, 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 ( 以下

独占禁止法 という )19 条が禁止する不公正な取引方法に該当し, 公序良俗に違反するものとして無効か (4) 本件特許には無効理由が存在することが明白か (5) 控訴人の被った損害額第 3 争点に関する当事者の主張次のとおり付加, 訂正するほかは, 原判決 6 頁 10 行目から 11 頁 4 行目までに記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 6 頁 10 行目及び同 11 行目を 1 争点 (1)( 被控訴人が, 本件禁止条項に違反して, 本件ポットカッターを他社製連結育苗ポットの分離に使用することは, 本件特許権の侵害となるか ) について と改める 2 原判決 6 頁下から 2 行目の後に, 改行して, 次のとおり加える 控訴人の当審における追加主張 (1) 特許権は, 特許発明を排他, 独占的に実施しうる権利である ( 特許法 68 条 ) したがって, 特許権者以外の者の特許発明の実施は, すべて特許権侵害となる 一方, 通常実施権が設定された場合, 設定契約により許諾された範囲内の特許発明の実施は, 特許権侵害にはならないものとされている ( 同法 78 条 2 項 ) 許諾範囲は契約により自由に定め得るものであり, 強行法規に違反しない限り, 契約に定めたとおりの効力を有する すなわち, 通常実施権の許諾範囲は, 特許権侵害性を阻却する範囲を画するものであるから, 許諾範囲内の実施は特許権侵害にならないが, 許諾範囲を超えた実施は特許権侵害になる 原判決は, 本件禁止条項の有効性を認めつつ, その許諾範囲を超えた実施で, なお特許権侵害にならない場合があるとするものであり, 背理である 原判決が問題にしようとしたことは, 本件禁止条項が特許権の濫用に当たるのかどうかのレベルでとらえるべきことであり, 特許権の 非本来的使用 という概念を使用して, 実施許諾範囲を逸脱した実施を正当化することに法的根拠はない (2) 本件ポットカッターは, 作業効率を少なくとも 2 倍に上げる有用な道具であり, これを売却する場合は, 売買価格は本件貸与契約の賃料よりはるかに高い価格に設定されるはずである また, 控訴人は, 貸与した本件ポットカッターが破損した場合には無償で取り替えている したがって, 本件貸与契約の本質が売買であるということはできない 3 原判決 7 頁 16 行目の後に, 改行して, 次のとおり加える 控訴人の当審における追加主張に対する被控訴人の反論 (1) 物権的権利としての特許権を侵害した場合には, 特許権者に差止請求権及び損害賠償請求権が認められ, さらには刑事罰による制裁が存在するから, 特許権侵害の範囲は明確であることが必要であるところ, 通常実施権は, 当事者が種々の要因に応じて定めるため, 広範な態様になることは自明の理である したがって, 通常実施権の範囲を逸脱した行為が特許権を侵害するか否かを判断するためには, 特許法が特許権をいかなる権利として定めているかという観点から判断することが必要である 特許権とは, 特許発明の技術的範囲に含まれる物の生産, 使用, 譲渡等あるいは方法の使用から, 特許権者が他人を排除できるという権利であり, 通常実施権者は通常実施権を与えられることにより, 特許権者からの差止請求や損害賠償請求を免れることになる このような通常実施権の性質にかんがみれば, 通常実施権はあくまでも特許法上認められる特許権を保護するためのものであり, 特許権が上記のような性質を持つ権利である以上, 特許法が保障する特許発明の無断実施自体の禁止という効力に直接関わり, 当該効力を実現するために必要な範囲の行為に限って, 通常実施権の許諾に付された制限に違反した行為が特許権侵害を構成すると解するべきである (2) 本件においては, 被控訴人が本件ポットカッターを使用すること自体が特許権の本来的行使に当たるものであり, 控訴人がかかる特許権の本来的行使について被控訴人に対して通常実施権を設定している以上, 被控訴人が本件ポットカッターを使用する限りでは通常実施権によって認められた使用の範囲内というべきであり, 被控訴人の行為は控訴人の特許権を侵害しない 2 争点 (2)( 被控訴人が, 本件禁止条項に違反して, 本件ポットカッターを他社製連結育苗ポットの分離に使用することは, 本件貸与契約上の債務不履行となるか ) について

控訴人の主張 被控訴人が本件ポットカッターを他社製連結育苗ポットの分離に使用したことは, 本件貸与契約上の債務不履行である 被控訴人の主張 控訴人は, 損害賠償請求の主張につき, 原審の平成 14 年 9 月 27 日の第 7 回弁論準備手続期日において, 本件の訴訟物を特許権侵害に基づく損害賠償請求に限定しているのであり, 控訴人の主張は, 故意又は重大な過失により時機に後れて提出された攻撃防御方法として却下されるべきである 上記申立てが理由がないとすれば, 控訴人の前記主張は争う 4 原判決 7 頁 17 行目の 同 (3) を 争点 (3) と, 同 20 行目から 21 行目にかけての 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 ( 独占禁止法 ) を 独占禁止法 と,10 頁 7 行目の この金額が から同 8 行目末尾までを この金額が, 特許法 102 条 2 項の適用ないしは類推適用により原告が受けた損害の額と推定される と各改める 5 原判決 10 頁 8 行目の後に, 改行して, 次のとおり加える (3) 控訴人は, 本件発明の実施品である本件ポットカッターを販売したり賃貸することにより利益を上げるのではなく, 原告ポットの販売促進品として顧客に貸与することにより原告ポットの売上増進を図って利益を上げようとする実施形態を採っている その目的のために, 控訴人は, 被控訴人に対して, 本件ポットカッターにつき, 原告ポットの分離にのみ使用することの制限を付して使用許諾した 控訴人は, 貸与品を使用許諾の範囲を超えて他社製連結育苗ポットの分離に使用されることによって, 本件発明を他社製連結育苗ポットの分離に使用されない利益を喪失した これによる逸失利益の損害額の直接的な立証は困難であるから, 特許法 102 条 2 項の適用ないしは類推適用により, 侵害者が得た利益から控訴人の受けた損害額を推定すべきである また, 特許法 105 条の 3 により, 損害額を 180 万円と認定することを求める 6 原判決 10 頁 25 行目の 損害賠償義務が を 損害賠償義務を と, 同行目から同末行にかけての 前記 2 争点 (2) 被告の主張 (2) を 前記 1, 争点 (1) 被控訴人の主張 (2) と各改め,11 頁 4 行目の後に, 改行して, 次のとおり加える (4) 債務不履行に基づく損害賠償請求については, 特許法上の損害額の推定規定を適用ないし類推適用することはできない 第 4 当裁判所の判断 1 争点 (1) について当裁判所も, 被控訴人が, 本件禁止条項に違反して, 本件ポットカッターを他社製連結育苗ポットの分離に使用することは, 本件特許権の侵害を構成しないものと判断する その理由は, 次のとおりである (1) 前記引用に係る原判決第 2 の 1(4) によれば, 本件貸与契約は, 本件ポットカッターの賃貸借契約の形式を採用しているが, その内容は, 控訴人が被控訴人に対し, 本件発明の実施品である本件ポットカッターの占有を有償で移転し, これを連結育苗ポットの分離という本件発明の目的を達成するような方法で使用することを認めるというものであり, 実質的には, 本件発明についての特許出願人である控訴人が育苗業者である被控訴人に対し, 本件発明が特許を受けた場合は, 実施態様を使用 ( 特許法 2 条 3 項 ) のみに限定した上で, 本件発明を業として実施することを許諾したもの ( 同法 78 条 1,2 項 ) と解することができる ( 本件貸与契約が本件特許権の実施許諾の性質を有することは, 当事者双方もこれを認めている ) (2) 許諾による通常実施権 ( 以下, 単に 通常実施権 という ) の法的性質は, 許諾者である特許権者又は専用実施権者 ( 以下 特許権者等 という ) と通常実施権者との間における, 通常実施権者が特許権者等から差止請求権や損害賠償請求権の行使を受けないことを本質的な内容とする債権関係と解されるところ, その範囲は当事者間の契約 ( 設定行為 ) によって決定されるもので, これを特許権の全範囲に設定することもできるし, また, その一部に制限して設定することもできる ( 同法 78 条 2 項 ) 上記制限としては, 時間的制限, 場所的制限, 内容的制限があり, そのうち内容的制限には, 特許法 2 条 3 項が定める生産, 使用, 譲渡等の実施態様のうち

一つ又は複数に制限する場合, 特許請求の範囲の複数の請求項のうち一部の実施のみに制限する場合, 複数の分野の製品に利用できる特許について分野ごとに制限する場合等が考えられる そして, 通常実施権者がその制限範囲を超えて特許発明を業として実施するときは, 正当な権原なく特許発明を業として実施する行為として特許権の侵害となり, 特許権者等に, 差止請求権 ( 特許法 100 条 ) や不法行為に基づく損害賠償請求が認められることになる これに対し, 現実の通常実施権設定契約において, 原材料の購入先, 製品規格, 販路, 標識の使用等について種々の約定がなされることがあるとしても, これらは, 特許発明の実施行為とは直接関わりがなく, いわば, それに付随した条件を付しているにすぎず, その違反は, 単なる契約上の債務不履行となるにとどまると解するのが相当である (3) 本件貸与契約は, 前記のように, その実質は, 本件特許権についての通常実施権を許諾することを約したものと解されるが, そのうちの本件禁止条項は, 通常実施権の範囲につき, 実施態様を使用に限定するだけではなく, さらに, 本件ポットカッターを他社製連結育苗ポットの分離等に用いてはならないという制限を付する旨の合意であると解される しかし, 本件特許権に係る特許請求の範囲は, 原判決別紙特許公報該当欄請求項 1 ないし 4 記載のとおりであり, 本件ポットカッターにより切断される育苗ポットについては, カップ状に成形された育苗ポットを縦横方向に整列状態で連設した樹脂成形体 と定めているにすぎないから, 本件ポットカッターをそのような連結育苗ポットに用いるものである限り, さらにその育苗ポットの供給先がどこであるかというような点は, 本件発明の実施行為と直接関係がなく, 本来は, 本件特許権とは無関係に, 被控訴人において決定すべき事柄であることにかんがみると, 本件禁止条項は, 通常実施権の範囲を制限するものではなく, これとは別異の約定であるというべきである (4) そうすると, 本件禁止条項の違反は, 本件貸与契約上の債務不履行となることはともかく, 本件禁止条項の違反等を原因として本件貸与契約が解除されない限りは, 被控訴人が正当な権原なく本件発明を業として実施するものとはいえず, したがって, 本件特許権の侵害となるということはできないから, 控訴人の被控訴人に対する本件特許権の侵害に基づく損害賠償請求は理由がない 2 争点 (2) について (1) 控訴人が, 原審の平成 14 年 9 月 27 日の第 7 回弁論準備手続期日において, 口頭で, 本件の訴訟物は特許権侵害に基づく損害賠償請求のみであると述べたことは当裁判所に顕著であり, これは, とりもなおさず, 控訴人が本件訴訟においては債務不履行に基づく損害賠償請求をしない趣旨を手続的に明確にしたものといえる そして, 現実に, 原審においては, 債務不履行に基づく損害賠償請求の当否について主張立証がなされてこなかったことは, 訴訟の審理の経過及び内容に照らし, 明らかである そうであるにもかかわらず, 控訴人が, 当審において, 特許権侵害に基づく損害賠償請求に加えて, 新たに債務不履行に基づく損害賠償請求を追加的, 予備的に申し立てることは, 上記手続上の釈明に反して, 請求を変更するもの ( 民事訴訟法 143 条 1 項 ) というべきである (2) 本件において, 債務不履行に基づく損害賠償請求の当否を判断するためには, 本件禁止条項の有効性, すなわち, 本件禁止条項が独占禁止法 2 条 9 項に定める不公正な取引方法に該当し, 公序良俗違反により無効であるか否かを審理する必要がある また, その結果, 本件禁止条項が無効ではないと判断され, 被控訴人に債務不履行に基づく損害賠償責任が認められる場合には, 上記債務不履行により控訴人に生じた損害 ( 得べかりし利益 ) の有無及び額について審理しなければならず ( 債務不履行に基づく損害賠償請求の場合には, 特許権の侵害を前提とする特許法 102 条 2 項又は同法 105 条を適用ないし類推適用することはできない ), 当審において, 控訴人は, 改めて控訴人が債務不履行により被った損害の有無及び額について立証する必要がある (3) そうすると, 控訴人の当審における予備的請求の申立て, すなわち請求の変更は, 著しく訴訟手続を遅滞させるものであるというべきであるから, 民事訴訟法 143 条 1 項ただし書により, これを許さないことにする 3 結論以上によれば, その余の争点について判断するまでもなく, 控訴人の特許権

侵害に基づく損害賠償請求は理由がなく, これと同旨の原判決は正当として是認できるから, 本件控訴は理由がない よって, 主文のとおり判決する ( 口頭弁論終結の日平成 15 年 4 月 15 日 ) 大阪高等裁判所第 8 民事部 裁判長裁判官竹原俊一 裁判官小野洋一 裁判官中村心