▼ガストの赤痢菌食中毒関連

Similar documents
180612改正法案経過

<945F96F B3816A2E786264>

図 12 HACCP の導入状況 ( 販売金額規模別 ) < 食品販売金額規模別 > 5,000 万円未満 ,000 万円 ~1 億円未満 億円 ~3 億円未満

(自治体宛)【事務連絡】HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A

別添 平成 30 年 8 月 31 日作成 ( 最終改正 : 平成 31 年 2 月 25 日 ) ( 下線部は更新 追加箇所 ) HACCP に沿った衛生管理の制度化に関するQ&A 平成 30 年 6 月 13 日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律では 原則として全ての食品等事業者の皆様

<4D F736F F D208DBB939C97DE8FEE95F18CB48D EA98EE58D7393AE8C7689E6816A2E646F63>

Microsoft Word - №5 ISO22000.doc

PowerPoint プレゼンテーション

youkou

地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第7次地方分権一括法)の概要

スライド 1

汚染の除去が行われた場合には 指定を解除その他 区域の指定等 1 要措置区域 ( 法第 6 条 ) 土壌汚染の摂取経路があり 健康被害が生ずるおそれがあるため 汚染の除去等の措置が必要な区域 汚染の除去等の措置を都道府県知事等が指示 ( 法第 7 条 ) 土地の形質の変更の原則禁止 ( 法第 9 条

遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律の概要 目的国際的に協力して生物の多様性の確保を図るため 遺伝子組換え生物等の使用等の規制に関する措置を講ずることにより 生物多様性条約カルタヘナ議定書 ( 略称 ) 等の的確かつ円滑な実施を確保 主務大臣による基本的事項の公表 遺

(案)

Microsoft Word - 表紙 雛形(保険者入り)高齢者支援課180320

項目ご意見等の概要部会の考え方 ( 案 ) 1 操業中及び猶予中の工場等における土壌汚染状況調査 有害物質使用届出施設等の廃止後の土壌汚染状況調査が実施されておらず かつ 調査の猶予を受けていない土地についても 土地の利用履歴等の報告や土壌汚染状況調査の対象とする規定を設けるべきである 有害物質使用

<4D F736F F D208E9197BF E88E68EE58CA C490BA96BE95B62E444F43>

<4D F736F F D E63188C4816A8D4C93878CA78BC696B18AC7979D91CC90A78A6D94468C9F8DB88EC08E7B97768D6A816989FC90B38CE3816A2E646F63>

<4D F736F F F696E74202D20358FCD B68AC7979D C B8CDD8AB B83685D>

Microsoft Word - 作成手引き(回収、報告)

Microsoft Word - QA通知0928.doc

アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

未来投資会議構造改革徹底推進会合 地域経済 インフラ 会合 ( 農林水産業 ) 資料 1 卸売市場を含めた食品流通の構造改革について 平成 30 年 3 月 7 日 ( 水 ) 食料産業局

資料 4 平成 26 年報告書に提言された取組のうち 回収率目標達成アクションプラン以外の取組状況について 平成 29 年 12 月 4 日 経 済 産 業 省 環 境 省

私立幼稚園の新制度への円滑移行について

【資料3】「児童福祉法等の一部を改正する法律」の概要(7.22現在)

001p_......

<4D F736F F D C482CC A82A882E082BF82E182CC82DD E838B8E5F E646F63>

資料3

Microsoft Word - (発番)医療機器の製造販売承認申請について

PowerPoint プレゼンテーション

HACCP 自主点検リスト ( 一般食品 ) 別添 1-2 手順番号 1 HACCP チームの編成 項目 評価 ( ) HACCP チームは編成できましたか ( 従業員が少数の場合 チームは必ずしも複数名である必要はありません また 外部の人材を活用することもできます ) HACCP チームには製品

- 2 - 第一条農林物資の規格化等に関する法律の規定に基づく公聴会等に関する内閣府令(平成二十一年内閣府令第五十四号)の一部を次のように改正する 第十一条の見出し中 都道府県知事 の下に 又は指定都市の長 を加える (健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令の一部改正)第二条健康増

Taro-ã†«æ¶‹ã†Šï¼‹éŁ·å®Ÿæ¬¡éŁ·å¾„ver2ï¼›ã•’è¦†ç¶±ï¼‹è«®åŁ‘çfl¨ï¼›ã•‚å¥³æ´»æ³Ł .jtd

Microsoft PowerPoint - 020_改正高齢法リーフレット<240914_雇用指導・

Microsoft Word - ( 通知決裁)HACCP票通知鑑

PowerPoint プレゼンテーション

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

重点番号 1: 保育所等の児童福祉施設に係る 従うべき基準 等の見直し ( 神奈川県 ) 児童発達支援センターにおける食事提供方法について ( 施設内調理以外による提供方法への緩和 ) 1 提案の概要児童福祉施設のうち 保育所における児童への食事の提供については 一定の条件が整えば 満 3 歳以上の

規制 制度改革に関する閣議決定事項に係るフォローアップ調査の結果 ( 抜粋 ) 規制 制度改革に係る追加方針 ( 抜粋 ) 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 番号 規制 制度改革に係る追加方針 ( 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 ) における決定内容 規制 制度改革事項 規制 制度

万八千六百円 ) 3 現に機関登録を受けている者が他の機関登録を受けようとする場合における法第十四条第一項の政令で定める額は 前二項の規定にかかわらず 同条第一項の農林水産省令で定める各区分について 当該各区分が次の各号に掲げる区分のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める額とする 一法第二条第二項

< F2D816994D48D FA957493FC816A >

食品用器具及び容器包装の 規制を取り巻く現状について

道州制基本法案(骨子)

Microsoft Word - Q&A(セット).docx

上ある場合は 現行ルールと同様 3カ国目以降を その他 と表示することができる 一方 冠表示には いちごジャム の いちご のように 商品を特徴付ける原料が商品名に含まれるものの他に ブルーベリーガム の ブルーベリー のように 風味を表しているもの さらには たいやき の 鯛 のように 商品名自体

<4D F736F F D DC58F4994C5817A95BD90AC E8E99837C89FC90B A78BC78A6D94468DCF816A202D B2E646F6378>

Vol

Microsoft PowerPoint - 補足資料(セット版-2).ppt

( 権限の委任等 ) 第十五条内閣総理大臣は, この法律の規定による権限 ( 政令で定めるものを除く ) を消費者庁長官に委任する 2 及び3 略 4 この法律に規定する農林水産大臣の権限に属する事務の一部は, 政令で定めるところにより, 都道府県知事又は地方自治法 ( 昭和二十二年法律第六十七号

食品安全基本法第 21 条第 1 項に規定する基本的事項 平成 24 年 6 月 29 日閣議決定 食品安全基本法 ( 平成 15 年法律第 48 号 以下 法 という ) は 食品の安全性の確保についての基本理念として 国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に 食品供給行程の各段階に

生活衛生営業 HACCP ガイダンス ( 食肉販売業用 ) 導入手引書 本ガイダンスでは まず メニュー調査表 と 調理工程表 によりそれぞれの施設の 危害要因分析 を行い 次にこの手引書の 衛生管理点検表 を HACCP の考え方を取り入れた 衛生管理計画 とし それを用いて モニタリング 記録の

平成 31 年度新宿区食品衛生監視指導計画案に対する意見募集結果について 1 意見募集期間 平成 31 年 1 月 25 日 ( 金 ) から 2 月 8 日 ( 金 ) まで 2 実施方法 (1) 平成 31 年 1 月 25 日号広報しんじゅく及びホームページへ意見募集案内を掲載 (2) 衛生課

食肉製品の高度化基準 一般社団法人日本食肉加工協会 平成 10 年 10 月 7 日作成 平成 26 年 6 月 19 日最終変更 1 製造過程の管理の高度化の目標事業者は 食肉製品の製造過程にコーデックスガイドラインに示された7 原則 12 手順に沿ったHACCPを適用して製造過程の管理の高度化を

<4D F736F F F696E74202D E F EF816A8E9197BF A082E895FB82C982C282A282C4>

品質向上セミナー

働き方改革 魅力ある建設業の構築に向けて 特集 域によっても大きな差があり, 北陸地方や北海道 など一部の地方では平成 28 年 10 月調査の加入率が 80% を超えているのに対し, 大都市部のある関東 地方 (55%) や近畿地方 (60%) は低い加入率に 留まっている ( ) 建設マネジメン

資料 3-2

厚生労働省 食品衛生管理の国際標準化に関する検討会最終とりまとめ 平成28 年12 月 HACCPの導入により 食品の安全性の向上を図る必要があるとの観点から 平成28年3月から12月まで 厚生労働省においてHACCPの制度化について検討 10月14日に中間とりまとめが公表され 11月15日まで意見

卵及び卵製品の高度化基準

MDSAP の調査結果の 試行的受入れについて ( 独 ) 医薬品医療機器総合機構 品質管理部 登録認証機関監督課 1


いる 〇また 障害者の権利に関する条約 においては 障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとされている 〇一方 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度 ( いわゆる欠格条項 ) については いわゆるノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン ( 社会的包摂 ) を基本理念とする成年

PSP 省令 と それぞれ略称する 記 1. 改正施行規則について希少疾病用医療機器その他の医療上特にその必要性が高いと認められる医療機器であり かつ 当該医療機器についての臨床試験の実施に特に長期間を要すると認められるものに係る承認申請をする場合においては 改正 GVP 省令第 9 条の3 第 1

< C28A4F95DB88E78E7B90DD8A4A90DD8AF3965D8ED >

農地中間管理機構 ( 仮称 ) の制度の骨格 ( 案 ) 資料 農地中間管理機構の指定都道府県のコントロールの下に適切に構造改革 生産コスト引下げを推進するため 都道府県段階に設置する 1 都道府県知事は 農地中間管理事業を公平かつ適正に行うことができる法人 ( 地方公共団体の第 3セク

PowerPoint プレゼンテーション

( 考慮すべき視点 ) 内管について 都市ガスでは需要家の所有資産であるがガス事業者に技術基準適合維持義務を課しており 所有資産と保安責任区分とは一致していない LPガスでは 一般にガスメータの出口より先の消費設備までが需要家の資産であり 資産区分と保安責任区分が一致している 欧米ではガスメータを境

資料2旅館業法整理(案)

資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

重症心身障害児施設の省令 ( 指定基準 ) を読む 全国重症心身障害児 ( 者 ) を守る会顧問山﨑國治 Ⅰ はじめに 平成 18 年 9 月 29 日 厚生労働省令第 178 号として 重症心身障害児施設の 人員 設備及び運営に関する基準 が厚生労働大臣から公布されました 省令のタイトルは 児童福

事業者名称 ( 事業者番号 ): 地域密着型特別養護老人ホームきいと ( ) 提供サービス名 : 地域密着型介護老人福祉施設 TEL 評価年月日 :H30 年 3 月 7 日 評価結果整理表 共通項目 Ⅰ 福祉サービスの基本方針と組織 1 理念 基本方針

目次 1 権限の移譲について 問 1 放送法改正に伴う権限移譲とは何か 問 2 小規模施設特定有線一般放送とは何か 2 届出について 問 3 なぜ届出が必要なのか 問 4 基幹放送とは何か 問 5 引込端子の数とは何か 問 6 有料放送とは何か 問 7 同時再放送とは何か 問 8 区域外再放送とは何

規制の事前評価の実施に関するガイドライン(素案)

背景 消費者の食品の安全性に対する関心 要求は 平成 7 年の腸管出血性大腸菌 O157による食中毒事件を機に一気に高まり 消費者は 安心して食べられる安全な食品 を強く求めています このような消費者の要望に応えるため 食品業界では食品の安全性の確保のため世界的に有効な衛生管理手法として認められてい

消費税 : 課税の適正化について 1 ( これまでの取組み等 ) 1. 総論 社会保障 税一体改革成案 ( 平成 23 年 6 月 30 日政府 与党社会保障改革検討本部決定 ) においては 消費税制度の信頼性を確保するための一層の課税の適正化を行う こととされている ( 参考 ) 平成 23 年度

15 変更管理

第13回千葉県食品等安全・安心協議会(概要)

Microsoft Word - 分権_課長通知(平成30年10月17日付薬生薬審発1017第2号)_修正

< F2D816988C C816A92E192AA90FC95DB F2E6A7464>

一について第一に 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号 以下 感染症法 という )第十二条の規定に基づき 後天性免疫不全症候群(以下 エイズという )の患者及びその病原体を保有している者であって無症状のもの(以下 HIV感染者 という )(以下 エイズの患者等

米国食品安全強化法 (FSMA) の概要 背景米国で多数の食品事故が起き 公衆衛生上の大きな負担となっているが ほとんどの場合は予防可能な危害であると考えられている そのため 食料供給の過程で安全を保障することにより公衆衛生を向上する目的で 食品医薬品局 (FDA) の権限を多岐にわたり強化するため

Microsoft PowerPoint - ☆PTポイント・概要(セット)

2. 今後の主な検討事項 1 高濃度 PCB 廃棄物に係る行政代執行費用に対する支援の必要性 高濃度 PCB 廃棄物の処分は 排出事業者責任の観点から その保管事業者が行 うことが原則 このため 都道府県市による行政代執行に要する費用についても 保管事業者が負担することが原則 しかしながら 高濃度

長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) 骨子 ( 案 ) に関する参考資料 1 骨子 ( 案 ) の項目と種子の生産供給の仕組み 主要農作物種子法 ( 以下 種子法 という ) で規定されていた項目については 長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) の骨子 ( 案 ) において すべて盛り込むこ

輸出許可一般的な輸出申告による輸出通関 搬出許可概 要 輸出通関における保税搬入原則の見直しが施行されました - お知らせ - 輸出通関における保税搬入原則の見直しについては 当該見直しを盛り込んだ関税改正法が平成 23 年 3 月 31 日に成立し 同年 10 月 1 日より施行されました これに

1. 指定運用方法の規定整備 今般の改正により 商品選択の失念等により運用商品を選択しない者への対応として あらかじめ定められた指定運用方法 に係る規定が整備されます 指定運用方法とは 施行日(2018 年 5 月 1 日 ) 以降 新たに確定拠出年金制度に加入された方が 最初の掛金納付日から確定拠

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

Unknown

別紙(例 様式3)案

2 保険者協議会からの意見 ( 医療法第 30 条の 4 第 14 項の規定に基づく意見聴取 ) (1) 照会日平成 28 年 3 月 3 日 ( 同日開催の保険者協議会において説明も実施 ) (2) 期限平成 28 年 3 月 30 日 (3) 意見数 25 件 ( 総論 3 件 各論 22 件

2 経口移行加算の充実 経口移行加算については 経管栄養により食事を摂取している入所者の摂食 嚥 下機能を踏まえた経口移行支援を充実させる 経口移行加算 (1 日につき ) 28 単位 (1 日につき ) 28 単位 算定要件等 ( 変更点のみ ) 経口移行計画に従い 医師の指示を受けた管理栄養士又

資料9

三ケ島工業団地周辺地区 第一回勉強会

資料編 に委託して製造をする場合を含み 他から委託を受けて製 造する場合を含まない ) をし 又は輸入した化粧品を製造 販売のために出荷することをいう 製造販売業者 とは 会社の経営陣 ( 取締役等 ) を指します 薬事法施行規則第 92 条 (4) ロット とは 一の製造期間内に一連の製造工程によ

PSP 省令 と それぞれ略称する 記 1. 改正施行規則について希少疾病用医療機器その他の医療上特にその必要性が高いと認められる医療機器であり かつ 当該医療機器についての臨床試験の実施に特に長期間を要すると認められるものに係る承認申請をする場合においては 改正 GVP 省令第 9 条の3 第 1

●アレルギー疾患対策基本法案

5) 輸送の安全に関する教育及び研修に関する具体的な計画を策定し これを適確に実施する こと ( 輸送の安全に関する目標 ) 第 5 条前条に掲げる方針に基づき 目標を策定する ( 輸送の安全に関する計画 ) 第 6 条前条に掲げる目標を達成し 輸送の安全に関する重点施策に応じて 輸送の安全を確 保

01 施行通知(都道府県宛)

< F2D81798C9F A89E482AA8D9182A982E B837C>

Transcription:

2018 年 1 月 16 日の薬事 食品衛生審議会食品衛生分科会で食品衛生規制の見直しに関する骨子案 ( 食品衛生法等の改正骨子案 ) が示された ( 別紙参照 ) 改正の趣旨 主な改正内容は次のようになっているが 前回 2003 年の改正ほどの必然性は感じられない 何故なのか法改正の狙いと保健所 食品衛生監視のあり方について考えてみた 食品衛生改正の趣旨 1 前回から 15 年が経過した 生活様式の変化 共働き世帯や高齢者単身世帯の増加 調理食品 外食 中食への需要の増加や健康食品への関心の高まり 食へのニーズの変化 輸入食品の増加など食のグローバル化の進展があった 2 食中毒は下げ止まりだが都道府県を超える広域な食中毒事案発生 拡大防止と食中毒発生数を抑制する必要がある より一層の衛生管理 行政の的確な対応が喫緊の課題 ( 懇談会の背景趣旨にあった 幼児や高齢者の食中毒への脆弱性 ( 例腸管出血性大腸菌 ) が消えた ) 3 2020 東京オリンピック パラリンピック 食品輸出の促進を見据える 国際基準と整合的な食品衛生管理が求められる 4 次期通常国会に食品衛生法改正法案を提出する 主な改正内容 1 広域的な食中毒事案への対策強化 第 144 号 2018 年 2 月 5 日発行 食品衛生法改正で食の安全 食品衛生監視はどうなる 〇広域的な食中毒事案の発生や拡大防止のために 国や都道府県が相互連携協力を明記 そのための体制整備 厚生労働大臣が国や都道府県関係者の広域連携協議会を設置できるようにする ( 一方通行? 都道府県や保健所設置市からの要望は 農水省関係との連携は?) 〇緊急を要する場合は 厚生労働大臣が当該協議会を活用して広域食中毒に対応できるようにする ( 国の権限強化?)

2 HACCP( ハサップ ) による衛生管理の制度化 〇食品衛生管理水準の向上 国際標準化を図り 事業者自らが取り組む衛生管理を推進 食品事業者 * と畜業者等や食鳥処理業者は 一般的な衛生管理と HACCP の関する計画を定め 遵守しなければならない 総合的衛生管理承認制度は廃止( 基準 A で対応?) * 常温で保存可能な包装済み食品のみを販売する営業など 公衆衛生に与える影響が低いと考えられる業種は対象から除く 3 特別の注意を要する成分等を含む食品による健康被害情報の収集 〇健康被害の発生を未然に防止する観点から特別に注意を必要とする成分等 * を含有する食品を販売等する事業者は その製品が健康に被害を生じさせている又は生じさせるおそれがある旨の情報を得た場合は 都道府県等を通じて厚生労働大臣に報告しなければならないこととする * 厚生労働大臣が薬事 食品衛生審議会の意見を聴いて指定する 〇厚生労働大臣等が健康被害に関する調査を行う場合には 関係者は健康被害に関する情報提供に努めるものとする ( 意味不明 わかりやすく 懇談会資料では リスクの高い成分を含むいわゆる 健康食品 等による健康被害防止対策 アメシバやコンフリーなどは流通禁止や販売禁止処分された例が挙げられていた ) 4 国際整合的な食品様器具 容器包装の衛生規制の整備 〇食品用器具 容器包装の安全性の確保や規制の国際的整合性の確保のため 合成樹脂等を対象として 規格が定められていない原材料を使用した器具 容器包装を販売してはならない ( ポジティブリスト制にする ) 製造者は 適正製造管理規範を遵守しなければならないこととする 器具 容器包装の製造者や販売者は 販売先の事業者に対し 製品が規格基準に適合する旨の情報を提供しなければならない〇器具 容器包装の原材料の製造者 器具 容器包装の製造者等から求められた場合には その情報の提供に努めなければならない 5 営業許可制度の見直し 営業届出制度の創設 都道府県ごとに異なる営業許可基準について 厚生労働省令で定める基準を参酌し 条例で定める ( 注 ) 現行の政令で定める営業許可業種について 営業実態等を踏まえた見直しを行う 営業を営もうとする者は 公衆衛生に与える影響が少ない営業を除き あらかじめ都道府県等に届け出なければならない

( 全国的な規制だけでなくなぜ地域ごとに規制があるのかの議論がなかった? 東京都は 消費者のために規制を重視してきた 生産地はどちらかといえば産業育成の観点での規制 となっている 規制緩和 全国展開の大企業への配慮?) 6 食品リコール情報の報告制度の創設 営業者が製造等をした食品等が 食品衛生法に違反をした場合等で 当該食品等を回 収する時 食品衛生上の危害が想定されない場合を除き 回収に着手した旨及び回収の状況を都 道府県知事等に報告する 料 ) 〇当該報告を受けた都道府県知事等 厚生労働大臣等に報告しなければならない ( 厚生労働省が国民に報告する? 参考資 7 輸入食品の安全性確保 食品輸出関係事務の法定化 〇輸出国において HACCP による衛生管理が講じられていることが必要な食肉 食鳥肉 等について HACCP を輸出国の政府機関が確認した施設等において製造等されたもの以 外は輸入禁止 入 〇乳 乳製品や生食用カキやフグなど食品衛生上のリスクが高まるおそれがある食品輸 食品衛生上の管理状況等について 輸出国政府による衛生証明書を添付させる 〇都道府県知事等は 輸出される食品の安全性に関する証明書の発行その他必要な措置 を行うことができることとする 8 その他 〇行政処分や罰則に関する規定や経過措置など所要の規定の整備を行う なぜ今 食品衛生法改正なのか 〇なぜか 今回の改正には 国民生活 食生活の安全 安心の視点が感じられない 前回の 2003 年の食品衛生法の大幅改正にはそれなりの必然性? があった 2001 年に 日本では発生しないとされていた BSE 牛の発見とその対応の悪さや 隠ぺい体質 国民の 健康よりは産業を守る体質等が表面化し 2002 年には食品事件の多発等があった 1 中国産冷凍ほうれん草から農薬検出 2 食品表示 ( 食肉 食鳥 ) の偽装 3 指定外添加物 ( 肉まん等 ) 使用 4 中国産やせ薬 ( 健康食品 ) 問題 5 無登録農薬 ( ダイホルタン等 ) 問題などがあった これをうけて食品安全基本法が創設され それと併せて 食品衛生法が改正された ただし この時も根底には 公衆衛生 から自己責任の 食品保健 への転換があった <2003 年の食品衛生法の目的改正の経緯 >

厚生労働省は 当初食品衛生法の目的にある公衆衛生を削除するとの提案をした 公衆衛生を保健衛生 ( 食品保健 ) に統一したかったが 保健所長や自治労連の公衆衛生部会などの反対もあり 公衆衛生 の文言が残った経緯がある 何故か 公衆衛生は憲法第 25 条で国の責任で向上させるという意味がある これを 自己責任で安全を守る という保健 ( 自らが健康を保つ ) 衛生に方向転換の意図が感じられた 食品衛生法改正の狙いは 今回の本当の狙いはアベノミクスの日本再興戦略 ( 世界で一番企業が活動しやすい国にするため ) を推進するために 許可手数料の削減 (20%) や食品の輸出のために HACCP を制度化することにある ただこれだけでは 重みがないので食品衛生法改正の体裁を整えるために食品衛生法改 正懇談会を開催したところ 本当に考えなければならない食の安全に関する意見や疑問が 出された 一つが いわゆる健康食品の規制 また 遺伝子組み換え食品などについての安全性 も議論のテーブルにあげざるを得なかった 逆に 少子 高齢化 対応で重要な O157 など生産地や畜産業などでの安全管理を徹 底させる課題については広域的対応ということに矮小化されてしまった < 狙い 1> 食品の輸出入の増加のため アベノミクス日本再興戦略のひとつ 世界的に拡大する 食市場 の獲得へ 農林水産物 食品の輸出額を 2020 年までに 1 兆円に倍増させ その実績を基に 2030 年に 5 兆円の目標 < 参考 > 農水省の FBI 作戦 世界の料理界での日本食材の活用推進 (Made FROM Japan) 日本の 食文化 食産業 の海外展開 (Made BY Japan) 日本の農林水産物 食品の輸出 (Made IN Japan) 〇輸出先のほとんどで HACCP が制度化されている 食品の輸出を拡大するためには HACCP を制度化する必要がある 国内の農民 農業を守ることより 一部の企業が海外で儲けられることが優先されて いる (TPP11 復活もあり 一層の日本農業の衰退を招く恐れ ) < 狙い 2> 規制改革推進会議の答申 ( 企業が活動しやすい国にするために ) の実現 2020 までに営業の許認可など事業負担の重い分野について 行政手続きコストを 2 0% 以上の削減を目指す 〇行政手続き簡素化の 3 原則 行政手続きの電子化の徹底 同じ情報は一度だけの原則 書式 様式の統一

〇重点分野と削減目標 営業の許可 認可に係る手続き 社会保険に関する手続き 国税 地方税 補助 金の手続き 削減目標行政手続きのコスト ( 事業者の作業時間 ) を 20% 削減 < 狙い 3> 自主管理のさらなる推進 HACCP の制度化で食品輸出事業者が海外で事業展開ができるようにすることと 国内的には自主管理で監視指導の簡素化 HACCP は 事業者自らが食中毒菌汚染等の危害要因をあらかじめ把握 (Hazard Analysis) し 原材入荷から給食提供までの工程で 危害要因を除去低減させる特に重要 な工程 (Critical Control Point) を決め 特別に管理し製品の安全性を確保する手法 とされている 〇 HACCP の本質 事業者自ら がポイント 自己責任路線ゆえに規制が緩くなるおそれ < 狙い 4> 2020 年の東京オリンピック パラリンピック向け 当初は東京オリンピック パラリンピックにくる外国人に食の安全をアピールするも のと強調されたが 実態として間に合わないし それほど重要視していなように思われる ただ先行して HACCP 対応ができる事業者にとっては宣伝材料になる程度か < 狙い 5> 少子高齢化 食生活の変化への対応 改正理由の課題として取り上げた割には 広域連携のみでそのたの問題解決の方策が なく マッチしていない 幼児の O157 対策や独居老人への食の安全対策なども重要にな る 子育て世帯や弁当配送業者任せで良いのかなど 食品衛生法改正で営業許可 保健所の監視指導はどうなる 食品衛生管理や保健所関係者は 具体的に食品の安全に効果のある 施策 対応が求められる 中小事業者では何ができるのか具体的援助をすることが求められる <HACCP 制度化と保健所監視員 > HACCP 制度は管理運営条項であり 許可条件にはならない常温で保存可能な包装済み食品のみを販売する営業など 公衆衛生に与える影響が低いと考えられる業種は対象から除く全ての施設で一般衛生管理とHACCPの 衛生管理計画 をたてることを義務付けるので 保健所は計画書があるかどうかの確認をする 2018 年 12 月 1 日の厚生労働省の説明会では 許可申請の時点では確認できないものを許可基準に入れることはできないので 衛生管理計画の策定や実行は監視指導時 更新時等に確認していくとのことである としている ただし もし事故を起こせば 衛生管理計画書 がないと 再開できない?

または 鮮度化されれば義務化のように 給食事業やテナントを受託する際は 衛生管 理計画書 が出来ていることが条件になるおそれがある 保健所等の指導は 1HACCP 制度への理解を深める努力が求められる HACCP が制度されると管理運営事項として営業に際して守らなければならない基準 なので 許可申請時 ( 営業始め時 ) あるいは日常的に保健所は事業者が HACCP 対応で きるように指導する 2 衛生管理計画書 の作成指導と適正に運用されているかの現場指導力の向上 日常監視時や営業許可更新時には 実施している一般衛生管理と HACCP についての 衛生管理計画書 が適正に運用されているかをチェックする 将来的には 衛生監視指導は 衛生管理計画書 を見て 計画書とおりに作業が出来て いるかを記録表などで確認するようになる 2017 年 11 月 15 日食品衛生法改正懇談会取りまとめによれば 国と都道府県等は 十分に連携を図りながら 事業者に対してきめ細かい支援を行っていくとともに より効 率的な支援を行うため 業界団体等との連携を図っていく必要があり また研修の充実等 により食品衛生監視員の資質向上を図り 体制強化に努める必要があること としている 保健所がだめなら業界団体にお願いする? パブリックコメント提出 この度の 食品衛生規制の見直しに関する骨子案 ( 食品衛生法等の改正骨子案 ) に関す る意見募集について 個人名で主に次のようなパブリックコメントを提出した 1 広域的な食中毒事案への対策強化について 〇厚生労働省関係だけの連携でなく 生産地農水省関係との連携強化を O157 ではキュウリの和えものや白菜の切り漬けなどが原因で起きており 産地まで 遡っての衛生管理を確認するなど 産地のとの連携の在り方を考える必要がある 2 HACCP の制度化について 〇小規模事業者には負担が大きく実施が形骸化される恐れ 具体的な支援策を 保健所食品衛生監視員の増員や資質の向上 農水関係との連携やすみわけをわかりやす くし 具体的な支援を要望する 3 特別の注意を要する成分等を含む食品について 〇 いわゆる健康食品 と明確化する 文章そのものが 一般の国民からみて何を言っているのかわかりません いわゆる健康 食品 などとわかりやすくする表記するよう希望する 5 営業許可制度の見直し 〇集約化だけでは食の安全は守れない 全国的に統一することと 各自治体の持つ特徴 生産地なのか消費地なのか等を考慮す る必要がある また 許可業種の集約化は現場での監視指導が大まかになる恐れがある 生肉や生魚な どそれぞれの危害要因があるので 重要な危害のあるものを扱う施設は個別の許可基準を 設ける必要があると考える

<その他 > 〇背景となった事象への具体的な対応策を食品衛生法改正の背景とされた少子高齢化や中食や調理食品へのニーズの増加に対する方策が不十分 広域連携だけで済ますのではなく 中小の食品工場の衛生管理についての具体的な指導や援助する方策が求められる 全体として 大規模事業者や食品の輸出入業者のための改正のように感じられるが 国民 消費者 中小規模事業にとってもより安全になるための食品衛生法改正になることを期待する 文責食の安全と公衆衛生主宰食品衛生アドバイザー 笹井勉 ( 元墨田区食品衛生監視員 )