多様なアクセスを実現するワイヤレス技術

Similar documents
地局装置を介して位置情報管理サーバに伝えられ 位置情報として地図上に表示することができます 利用イメージを図 2 に示します 図 2 業務用無線システムの利用イメージ 3. 中継無線システムの開発 (1) 開発の背景中継伝送路を救済する既存の災害対策用無線システムでは 156 Mbit/s または

多様なサービスの創出を支えるワイヤレスアクセス技術

背景 オフィスや家庭での無線 LAN 利用に加えて スマートフォンの普及に伴い空港 駅や競技場 イベント会場におけるモバイルデータ オフロードが増えています さらに モノがインターネットにつながる IoT *2 (Internet of Things) などの進展によって 無線 LAN の通信量 (

資料2-3 要求条件案.doc

資料1-2 5GHz帯無線LANの周波数拡張に係る技術的条件の検討開始

資料 2-1 VHF 帯での利用を計画する 具体的システムの提案について 平成 30 年 12 月 21 日 ( 株 )NTT ドコモ 2018 NTT DOCOMO, INC. All Rights Reserved.

移動通信の将来像と ドコモのネットワーク戦略

campuswlan1

自律的無線ネットワークによる被災情報提供システム ~避難所間ネットワーク構築技術~

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF312D DA18CE382CC8C9F93A28E968D802E707074>

(3) 設備復旧対策事例 ~ 基地局及びエントランス回線通信事業者各社で取り組んだ主な基地局あるいはネットワーク設備復旧対策としては 光ファイバー 衛星回線 無線 ( マイクロ ) 回線の活用による伝送路の復旧や 山頂などへの大ゾーン方式 ( 複数の基地局によるサービスエリアを1つの大きなゾーンとし

03_13_ソリューション.indd

アウトライン ネットワーク利用形態の変革 ネットワーク関連技術への取り組み 将来のネットワークインフラを支える技術 まとめ 2

報道資料

背景 スマートフォンやタブレットとインターネットの普及により いつでも どこでも 高速のインターネット環境を利用したいという社会ニーズが顕在化し 高速走行する列車と地上間の高速通信環境の実現に向けた研究開発が各所で実施されています 最近では旅客サービス以外にも 走行車両内の防犯カメラ映像や営業車によ

センターでは,WAP からの位置情報を受信し, WAP が適切に設置されたかどうかを確認する 提案システムのシーケンス概要 図 2 に提案システムのシーケンスを示す. 携帯端末は,WAP から無線 LAN の電波を受信すると, DHCP サーバに対して IP アドレスを要求する. この要

「フレッツ・テレビ」及び「スカパー!プレミアムサービス光」の商用ネットワークを用いた4K映像伝送の成功について

2011-R 年 1 月 19 日 クラウド時代に対応した企業向け新ネットワークサービス Universal One の提供開始について ~ 高品質 高信頼ネットワークを国内外シームレスに展開 ~ NTT コミュニケーションズ ( 略称 :NTT Com) は クラウド利用に最適化し

各種の固定電話回線で無鳴動 双方向接続を提供する LifeLink 集中監視システム 株式会社関西コムネット代表取締役社長中沼忠司目次 1. はじめに 2.LifeLink 集中監視システム 3. 無鳴動 双方向接続を可能とする4 通りの方式 4. 既設の T-NCU 集中監視システムを 継続して活

多様化するサービスに向けたアクセスシステム技術

無線LAN/Wi-Fiの通信技術とモジュール活用

ic3_lo_p29-58_0109.indd

2015 年 1 月 30 日 平常時にも災害時にも活用できる デジタルサイネージを核としたスマートフォン向け情報共有サービスの実証実験を開始 ~ 公衆無線 LAN 内 公衆無線 LAN 間の機器通信を WebSocket と WebRTC を用いて実現 ~ NTT コミュニケーションズ ( 略称

2 ユーザ 網インタフェースの概説 2.1 インタフェース規定点 参照構成ユーザ側設備と網側設備との接続形態について 参照点と機能群という2つの概念によりモデル化した参照構成を図 2.1 各機能群の概要を表 2.1に示します 同図で参照点 T 参照点 SはTTC 標準 JT-I411で定

CONTENTS 1. 放送 と モバイル の違い 2. モバイルデータトラヒックの現状と推移予測 3. スマホによる動画視聴の現状 4. トラヒック急増への対応状況 5. 5G で目指す世界 6. モバイルによる4K/8K 動画同時配信の実現性 7. 5G における4K/8K 動画サービスのイメー

<4D F736F F F696E74202D208EFC A6D95DB939982C98AD682B782E988D38CA98F9182CC8E518D6C8E9197BF5F E707074>

2015 年 3 月 27 日日本電信電話株式会社沖電気工業株式会社波長多重技術を用い経済的に伝送距離と伝送容量を拡大する PON 技術を共同開発 ~ 世界初 40km の伝送距離 従来の 40 倍の伝送容量 32 倍の収容ユーザ数を実現する広域光アクセス実証実験に成功 ~ 日本電信電話株式会社 (

15群(○○○)-8編

PowerPoint プレゼンテーション

資料 3 第 4 世代移動通信システムに関する 公開ヒアリング資料 2014 年 1 月 23 日 Copyright 2014 eaccess Ltd. All rights reserved

PowerPoint プレゼンテーション

ィングを使う設計にすることはあまりない これを使うと混雑なく使えるチャネル数が足りなく なるためである 関連記事 : 高速な チャネルボンディング はいいことだけなのか? こうした事情から 無線 LAN の通信が実測で 1Gbps を超えられるかどうかを試したことがあ る人は少ないのではないだろうか

マルチベンダー間での100 ギガビットイーサネット相互接続実験に成功

オフィスに新しいスタイル 場所にとらわれないコミュニケーション環境を実現 FUJITSU Network は 小規模オフィスに必要なインフラ機能 SIPサー バ / ルータ / 無線LANアクセスポイント / スイッチ / PSTN-GW を A4サイズ1台に コンパクトに集約 導入前 アナログ回線

CONTENTS 1. 5G が目指す世界 2. 5G サービス提供のイメージ 3. ( 想定 ) 5G 導入シナリオ 4. 5G 早期実現に向けた NTT ドコモの取り組み状況 5. 5G 早期実現と発展に向けた課題認識 1

アジェンダ 注目のキーワード SDN SD-WANの登場 SD-WAN 導入の課題 SD-WAN 検討ポイント 導入事例紹介

電波利用料技術試験事務に関する評価検討会議事次第

平成 30 年度事業報告 一般財団法人自治体衛星通信機構 当機構は 地方公共団体等において通信衛星を共同利用するための設備を設置し 運用することによって 防災情報及び行政情報の伝送を行うネットワークの整備促進を図り もって地域社会における情報通信の高度化及び地域の振興に寄与することを目的として平成

<4D F736F F F696E74202D DC58F4994C5817A D C90BC C835B83938E9197BF2E >

スライド 1

テンプレートのご提案

PowerPoint プレゼンテーション

資料 31-2 固定電話網の移 概要と 今後の通信ネットワークについて 平成 28 年 日本電信電話株式会社東日本電信電話株式会社 本電信電話株式会社

サポート付き簡単オフィスWi-Fiサービス「ギガらくWi-Fi」の提供開始について

(2) サービスの特長 1グローバル規模で同一環境の導入が可能国内だけでなく Arcstar グローバル IP-VPN サービス提供国を中心に世界各国で提供するため グローバル規模で同じサービスが利用できます そのため 今まで国ごとに稼動がかかっていたシステム構築 管理の集約による効率化や 同じコミ

エリクソンの5Gに対する展望と取り組み

01_61_特集.indd

技術協会STD紹介

Beyond 5G時代のアクセスネットワーク技術実現に向けた取り組み

多様な周波数帯を活用した性能拡大に向けた取り組み

無線 LAN について 1 無線 LAN について 無線を使って構築されるLAN IEEE( 米国電気電子学会 )802 委員会のIEEE802.11グループで標準化されたものが無線 LA Nとして広く使用されている 無線 LAN 技術の推進団体であるWi-Fi Allianceによって相互接続性の

屋内 3 次元 測位 + 地図 総合技術開発 現状 屋内 3 次元測位統一的な測位手法 情報交換手順がなく 共通の位置情報基盤が効率的に整備されない 技術開発 屋内外のシームレス測位の実用化 (1) 都市部での衛星測位の適用範囲拡大 (2) パブリックタグ 屋内測位の標準仕様策定 効果 3 次元屋内

平成19年度・地球工学研究所の知的財産に関する報告会 - 資料集

送信チャネライサ 要素回路実験装置 ( 衛星通信システム初期設計のための送信チャネライサ およびDBF 方式用励振分布シミュレータ等の試作 ) 衛星搭載移動体通信システムミッション系の高線形性固体増幅器要素試作 受信チャネライサ /DBF 用励振分布シミュレータ試作品 ( 衛星通信システム初期設計の

2) では, 図 2 に示すように, 端末が周囲の AP を認識し, 認識した AP との間に接続関係を確立する機能が必要である. 端末が周囲の AP を認識する方法は, パッシブスキャンとアクティブスキャンの 2 種類がある. パッシブスキャンは,AP が定期的かつ一方的にビーコンを端末へ送信する

モノ向け利用を加速する広域無線アクセスへの取り組み

メッシュ型無線解説 メッシュ型無線解説 to LAN 基地局 バックホール用 :.11j 中継局 バックホール用 :.11j 中継局 バックホール用 :.11j ネットワーク機器 制御データ アクセスポイント用 :.11b/g アクセスポイント用 :.11b/g 映像 / 音声等 無線 LAN 内蔵

平成25年度電波の利用状況調査の評価について

電波法関係審査基準 ( 平成 13 年 1 月 6 日総務省訓令第 67 号 ) の一部を改正する訓令案新旧対照表 ( 下線部は変更箇所を示す ) 改正案 現行 別紙 2 ( 第 5 条関係 ) 無線局の目的別審査基準 別紙 2 ( 第 5 条関係 ) 無線局の目的別審査基準 第 1 ( 略 ) 第

帯電話加入数携帯電話加入者数の推移 年 9 月末現在加入数 ( 人口普及率 ) 携帯電話: 約 13,930 万加入 (108.8%) 第 3 世代携帯電話 (3G): 約 10,730 万加入 (83.8%) 3.9 世代携帯電話 (LTE): 約 3,200 万加入 (25.0%)

<4D F736F F F696E74202D2091E F12D96B390FC92CA904D82D682CC899E97702E707074>

5G の基本コンセプト 1 1 5Gは 有無線が一体となって 超高速 多数同時接続 超低遅延といった様々な要求条件に対応することが可能な優れた柔軟性を持つ あらゆる利用シナリオでユーザが満足できるエンド ツー エンドの品質を提供 必ずしも全ての要求条件に対応するネットワークを整備する必要はなく ユー

2020 年以降の新たな 移動通信システム構築に向けて ( 検討課題 : 新しい電波利用の姿 ) ~ 豊かな社会に向けた ものづくり の観点から ~ 2014 年 4 月 25 日富士通株式会社 電波政策ビジョン懇談会プレゼンテーション資料

資料 2-1 IoT 時代の電気通信番号に関する研究会事業者ヒアリング説明資料 2019 年 1 28 株式会社インターネットイニシアティブ

PowerPoint プレゼンテーション

Kumamoto University Center for Multimedia and Information Technologies Lab. 熊本大学アプリケーション実験 ~ 実環境における無線 LAN 受信電波強度を用いた位置推定手法の検討 ~ InKIAI 宮崎県美郷

PowerPoint プレゼンテーション


動電話端末 の定義を追加 IP 移動電話端末が具備すべき機能として 基本的機能 ( 発信 応答 終了 ) 自動再発信の機能 送信タイミング 位置登録制御 緊急通報機能等について規定を整備 ( 移動電話端末とほぼ同様の項目 ) (2)IP 移動電話端末に係る新たな技術基準適合認定の整備 ( 諮問対象外

資料 19-3 J:COM サービスの IPv6 アドレス対応状況について 2012 年 5 月 30 日 株式会社ジュピターテレコム

05_31_グローバル.indd

ネットワーク高速化装置「日立WANアクセラレータ」のラインアップを強化し、国内外の小規模拠点向けに「オフィスモデル」を新たに追加

UWB(Ultra Wide Band: 超広帯域 ) 無線システムについて UWB 無線システムの概要 UWB 無線システムとは : 非常に広い帯域幅にわたって電力を拡散させて 数百 Mbps 規模の高速通信を可能とする無線システム 電力 (W/MHz)

電波に関する問題意識(原座長提出資料)

通信ネットワークの将来と HATS の役割 HATS セミナー 2014 年 12 月 1 日齊藤忠夫東京大学名誉教授

Microsoft PowerPoint - PM4 安川_無線の基礎及びISA100.11a技術の特徴g.pptx

<4D F736F F F696E74202D E9197BF362D FA91978E968BC CC8CBB8FF393992E707074>

<4D F736F F D A91D196B390FC4C414E82CC8EFC CF8D5882C98AD682B782E9834B E63494C52E646F63>

航空無線航行システム (DME) 干渉検討イメージ DME:Distance Measuring Equipment( 距離測定装置 ) 960MHz から 1,215MHz までの周波数の電波を使用し 航空機において 当該航空機から地表の定点までの見通し距離を測定するための設備 SSR:Secon

NICT は産学との連携研究を推進 ICT 進展の過程 基礎 研究開発フェーズ 応用 実用化 自ら研究 NICT により実施 NICT 委託研究 ( 産学連携による ) NICT の大規模実験施設 設備の共用を含む 総務省委託研究 企業による製品開発 リスク高膨大な時間 短期間で実用化可能 1

報道関係各位 2018 年 6 月 13 日 NEC マグナスコミュニケーションズ株式会社 次世代の高速通信規格 G.fast に対応した集合住宅向け VDSL 装置 VC1602G/VF500G 発売 NEC マグナスコミュニケーションズ ( 本社 : 東京都港区 代表取締役社長 : 山内俊史以下

デジタルシステムの国内標準仕様 ( 案 ) の概要 国内標準仕様準拠により 実現する機能 1. 災害情報等の一斉配信サービスへの対応 2. スマートフォン連携による個人属性に応じた情報提供 3. 上での多言語による情報提供の方法 国内標準仕様概要 1. 災害情報等の一斉配信サービスへの対応 端末側に

資料 3-4 一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会 第 3 回将来のネットワークインフラに関する研究会 将来のネットワークインフラに関する研究会 ー新たなネットワークインフラの利活用 年 3 月 17 日一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会 (CIAJ)

資料 6-4 < 新世代モバイル通信システム委員会技術検討作業班 ( 第 6 回 ) 資料 > 5G 候補周波数帯における利用イメージについて KDDI 株式会社 2018 年 2 月 27 日 KDDI

スライド 1

(1000 字を超える長文のため 以下に主な意見趣旨を抜粋 ) 150MHz 帯生体検知通報システムについて 山岳救助用を含めて 142.5~ MHz と ~146.99MHz としたらどうか 登山者検知通報システムについては時間的なチャネル共用が可能のため 当該システムにお

<4D F736F F F696E74202D F B8817A93648AC E096BE8E9197BF E >

はじめに

0 NGN における当社利用部門サービスと網機能の対応関係及び各サービスのインタフェース条件等について 平成 2 8 年 1 1 月 3 0 日東日本電信電話株式会社西日本電信電話株式会社

お知らせ 平成 2 6 年 5 月 1 3 日 N T T 東日本長野支店 N T T ドコモ長野支店 NTTファシリティーズ長野支店 NTT グループ合同通信復旧訓練の実施について NTT 東日本長野支店 ( 所在地長野市新田町 支店長侭田達男 ) NTTドコモ長野支店 ( 所在地長

次世代無線LAN

802.11ac技術の機器組込み時に理解しておきたいこと

出岡雅也 旭健作 鈴木秀和 渡邊晃 名城大学理工学部

外出先でもインターネット環境があればデジタルノード局の運用ができる WIRES-X ポータブルデジタルノード機能 ポータブルデジタルノード機能によって 旅行先の宿泊施設 空港 車両 Wi-Fi アクセスポイントなどからワイヤーズエックスのノード局やルームへの接続が可能となり 従来の HRI-200

日立テレコムが米国のケーブルテレビ事業者からGPON システムを受注

PowerPoint プレゼンテーション

920MHz 帯 RFID の屋外利用等に関する技術的条件 調査検討報告書概要 2017 年 10 月 19 日 電気興業株式会社

2 SmaSvr SmaSvr システムの概要 テクノベインズでは 業務系周辺機器 業務系周辺機器が操作できる スマート端末 が操作できる スマート端末 が操作できる スマート端末アプリ環境 アプリ環境の提供 提供 を実現できる方法 実現できる方法 実現できる方法について研究してきた 研究してきた

<4D F736F F F696E74202D2091E FCD91BD8F6489BB82C691BD8F E835A83582E >

Transcription:

IoT/5G 時代で求められる多様な無線アクセス 近年の通信インフラの進展と拡充に伴い, モバイル環境下でさまざまな通信サービスを享受できる生活スタイルが浸透してきました.2020 年代以降に向かっては, モバイル通信の高速化の進展による多様な品質のICTサービスが得られる生活の実現と,IoT (Internet of Things) インフラの拡充による新たな付加価値サービスの普及が見込まれます. そのため無線システムにおいては, 高速化だけでなく, エンドエンドの最適な品質提供, 多様性を実現する柔軟性が求められます. さらに, 超ルーラルエリア向けサービスや災害対策などのなくすことのできないサービス維持のための通信手段をお客さまに提供することは, これまで以上に大きな役割を担っていると考えます. 5G/5G+ 時代の無線アクセス技術 移動通信のデータトラフィックは, 年率約 1.4 倍のペースで増加しています (1).2020 年以降は, 現在よりさらに コンテンツのリッチ化, 通信インフラ利用の多様化が進展するため, 無線アクセスの総トラフィック量はさらなる増加が見込まれます. 現在無線アクセスは, キャリアが提供するモバイル回線による通信と無線 LANを用いた通信がおおよそ同量のトラフィック量となっていますが, 今後は今以上に, 無線 LANなどのこれまでユーザが個々に管理して利用していた無線局免許を必要としないアンライセンス帯無線が, 増え続けるトラフィックをカバーする役割を担う時代が来ると考えます ( 図 1). その際, ユーザがストレスなく高品質なサービスを享受できる環境を実現するには, モバイル回線とアンライセンス帯無線をまたいでシームレスに制御する技術と, 膨大な量となる基地局 アクセスポイント (AP) の展開を促進する技術が重要となり, 特にユーザが自身で設置するアンライセンス帯の基地局 APをいかにコントロールするかが鍵となると考え, 次のような技術の開発を進めています. アンライセンス帯システム連携技術アンライセンス帯の無線アクセス 2017 ワークショップアンライセンス帯無線第 5 世代モバイル電気通信事業用無線集つくばフォーラム 多様なアクセスを実現するワイヤレス技術 なかむら中 ひろゆき 村宏之 NTTアクセスサービスシステム研究所 プロジェクトマネージャ NTT アクセスサービスシステム研究所では, 2 つのプロジェクトにおいて多様なアクセスを実現するワイヤレス技術の研究開発に取り組んでいます. 本稿では,NTT グループによるネットワークサービスの将来を見据えた 202X 時代のモバイルサービスの高度化, および超ルーラルエリア向けサービスや災害対策などのなくすことのできないサービス維持への貢献に向けたワイヤレス技術の取り組みについて紹介します. 特は, 利用方法によってさまざまな無線規格が登場するため, 利用者は用途に応じて自在にAPを設置していくことが想定されます. これらのAPをネットワーク越しに最適に制御するために, アンライセンス帯プラットフォームによる無線リソースの管理と, ソフトウェア化されたホワイトボックス無線基地局の実現をめざしています. なお, これらの技術の一部は,2017 年より総務省主導で開始した5G 総合実証の中で, 高密度無線 LANの展開と, モバイルと連携した無線 LANの制御検証を始めています (2). 大容量無線エントランス技術 NTT 研究所ではスモールセル化して膨大な量となる基地局 APの展開を促進する技術として, 基地局 AP のエントランス回線の光ファイバの敷設が困難な場所等において, 回線の一部を無線化して収容するための大容量無線エントランス技術について検討しています ( 図 2). 本技術では, 比較的大容量伝送が可能なミリ波などの高周波数帯を用いて通信することを検討していますが, 設置条件の簡易化, 回線の効率化 大容量化の課題を解決す NTT 技術ジャーナル 2018.2 43

つくばフォーラム 2017 ワークショップ 図 1 アンライセンス帯無線を用いた 5G/5G+ アクセスの進展 図 ₂ る技術が求められます. これらの課題を解決するために,NTT 研究所では, 大容量通信を可能にするミリ波帯での空間多重伝送技術, 伝搬損失を補うための大規模アレイによるアンテナ高利得化技術, 複数局を同時収容する 大容量無線エントランス技術 P-MP(Point to MultiPoint) 通信技術について取り組んでいます. 次世代無線 LAN 高度化技術アンライセンス帯無線自体をさらに高機能化するための技術として, 次世代無線 LANの技術開発に取り組んで います. これまでの無線 LAN 規格では, 1 対 1 の通信区間のスループット向上とエリアカバー率向上を目標に進展してきましたが, 近年は混雑した駅構内でのスループット低下など稠密環境下での通信品質向上の問題が顕在化してきました. 解決の手段として, NTT 研究所では無線 LAN のAPでパケット単位に複数のアンテナを高速に切り替える分散スマートアンテナ技術と, アンテナをネットワークから最適にリソース制御 ( 周波数チャネルや送信出力 ) するアルゴリズムを開発しました ( 図 ₃). 本技術の効果をスタジアムで実証し,APを高密度に設置してもAP 間の電波干渉を低減して通信速度が向上することを確認しました (3). また同時に標準規格の策定を推進しており,IEEE802.11において稠密環境に対応する高効率を規格化した IEEE802.11axについては,2014 年 5 月のタスクグループ立ち上げから参画してきました (4). 44 2018.2

無線の電波伝搬特性を把握しモデル 化する技術は,5G/5G+ をはじめ, すべての無線通信システムにおいて必要不可欠となる技術です.NTT 研究所では継続的に, 既存の無線システムとの共用検討を通した新規周波数割当, 伝送特性評価を通したシステム設計 新規通信方式の確立, 場所ごとの伝搬状況に応じたセル設計 エリア設計への反映について取り組んでいます. 最新の取り組みでは,5G/5G+ の実利用環境として重要とされる都市部環境 混雑環境などさまざまな環境において800 MHz~66 GHzまでの多周波数帯を用いた伝搬測定 モデル化を実施しています ( 図 ₄). これらの結果は, 新規周波数割当 仕様策定を進めるためにITU-R(International Telecommunication Union - Radio communication Sector) 3GPP(3rd Generation 図 3 Partnership Project) での標準化活動において規格化を推進しています. なくすことのできないサービス提供へ無線システムの活用と取り組み NTT 研究所では, 電気通信事業用の無線システムとして, 主に, 山間部や離島などの光ケーブルの敷設が困難な超ルーラルエリアへ通信サービスを提供する無線システムと, 災害発生時において通信手段をお客さまに提供する無線システムを研究開発しています. それぞれの無線システムには, 地上系無線システムと衛星通信システムがあります. これらの電気通信事業用の無線システムは, 安心 安全な通信インフラを確保するために今後も期待されているため, さらなるコストの削減が求められているだけでなく, 高度なスキルを有する無線技術者が少なくなっていることから, 保守運用性の向 分散スマートアンテナ型協調無線 LAN 周波数横断電波伝搬モデル化技術 上が求められています.NTT 研究所 では, 研究所技術を活用して保守運用 の向上, 装置コスト削減に対し取り組 んでいます. 個別のシステムごとに, 取り組みについて説明します. 山間部や離島向け地上系無線シ ステム 山間部や離島向けの地上系無線シス テムとしては, 主に, 固定マイクロ 通信システム と 加入者系無線シス テム があります ( 図 ₅). 固定マイ クロ通信システム (5) は, 地理的条件や 経済的な理由により, 光伝送路の構築 が困難なエリアへ中継系伝送路を提供 する無線システムです. 加入者系無線 システムは, 山小屋などのメタル 光 ケーブル敷設が困難な超ルーラルエリ アへ電話回線等を提供する無線システ ムです. NTT 研究所では, 伝送容量を増加 しつつ長距離においても高品質な伝送

つくばフォーラム 2017 ワークショップ 図 4 5G+ に向けた電波伝搬特性の検討 を実現する技術により, 無線システムの適用領域を拡大することで, 複数の地上系無線システムの統一化 共通化を実現し, 装置コストを削減すべく取り組んでいます. 災害対策向け地上系無線システム災害対策向け地上系無線システムとしては, 4 つの研究所プロダクト 業務用無線システム 中継用無線システム 加入者系無線システム 置局設計ツール があります. 業務用無線システム (6) は, 現地作業者へ, 被災状況の伝達や復旧作業指示などを行うための社内連絡用の無線システムです. 中継用無線システム (7) は, 中継伝送路が被災した場合に, 迅速にサービス復旧させる手段として大容量無線通信が可能な可搬型の無線システムです. 加入者系無線システム (8) は, 災害発生時に避難所等でお客さまへ特設公衆電話やインターネット回線を提供する無線 図 5 主要な地上系無線システム 46 2018.2

集システムです 図 6 主要な衛星通信無線システム. 置局設計ツール (9) は, 災害対策向け地上系無線システムの基地局を設置する際に最適なビルを選定する置局設計ツールです. これらの 4 つの研究所プロダクトは, 旧システムよりも小型軽量化や機能の高度化を実現しています. さらに, NTT 研究所では, 業務用無線システムと加入者系無線システムのアンテナの小型化をめざしており, 可搬性の向上に貢献すべく取り組んでいます. 衛星通信システム NTT 研究所で研究開発している衛星通信システムは, 主に, 災害対策向け衛星通信システム と 離島向け衛星通信システム の 2 つがあります ( 図 6). 災害対策向け衛星通信システムは, 災害発生時に避難所等でお客さまに特設公衆電話およびインターネット回線を提供することが可能です. 離島向け衛星通信システムは, 海底光ケーブルの敷設が困難なエリアへ通信インフラを提供することが可能です. NTT 研究所では, 両方の衛星通信システムの基地局へ適用可能な衛星通信用のモデム装置類 (COM-U: COMmon Unit) (10) を開発しました. COM-Uは, 使用する周波数の配置を自由に設定できるため, 現行の衛星通信モデム装置類と比較して周波数の利用効率が向上しています. また, 現行の衛星通信システムは, 複数の装置を組み合わせて使用していますが, パッケージ化して 1 台の筐体に集約搭載しているため配線などが不要となり, 保守運用性を向上しています. 今後の展開 5Gの本格展開時代のトラフィックの加速度的な増加への対応に向けて, 無線 LANを活用した多様なモバイルサービスの展開に貢献していきます. また, 電気通信事業用無線システムにおいては, 無線技術者の減少の状況を勘案し, 運用性の向上に取り組んできましたが, 複数無線方式のマイグ レーション等により, さらなる運用者への負担軽減, 無線装置のコストダウンに貢献していきます. 参考文献 (1) http://www.soumu.go.jp/main_content/000430220. 特pdf s-news/01kiban14_02000297.html html 規格 IEEE 802.11ax の標準化動向, NTT 技術ジャーナル,Vol.28,No.11,pp.52-55,2016. デジタル無線方式の開発, NTT 技術ジャーナル,Vol.22,No.4,pp.63-66,2010. ない安定した連絡手段を提供する業務用無線システムの開発, NTT 技術ジャーナル, Vol.29,No.11,pp.47-49,2017. を両立した災害対策用可搬形デジタル無線システムの開発, NTT 技術ジャーナル, Vol.29,No.11,pp.44-46,2017. に安心 安全を届ける災害対策用加入者系無線システムの開発, NTT 技術ジャーナル, NTT 技術ジャーナル 2018.2 47 (2) http://www.soumu.go.jp/menu_news/ (3) http://www.ntt.co.jp/news2017/1710/171019a. (4) 篠原 岩谷 井上 : 次世代高効率無線 LAN (5) 宮城 安井 根本 中村 : 11 GHz 帯大容量 (6) 立川 永瀬 岩谷 中村 : 他社網に依存し (7) 立川 徳安 中村 : 長距離化と小形軽量化 (8) 徳安 立川 上野 立田 中村 : お客さま Vol.29,No.11,pp.50-53,2017. (9) 徳安 立田 中村 : 災害対策用無線システムの運用をサポートする置局設計ツールの開発, NTT 技術ジャーナル,Vol.29,No.11, pp.54-57,2017. (10) 山下 山中 小林 : 次期衛星通信システムを支える高効率グループモデムモジュールおよび高効率ターボ符復号化モジュールの開発, NTT 技術ジャーナル,Vol.27,No.12, pp.58-62,2015. 問い合わせ先 NTT アクセスサービスシステム研究所無線アクセスプロジェクト無線エントランスプロジェクト TEL 046-859-4100 FAX 046-859-4311 E-mail nakamura.hiro lab.ntt.co.jp