職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反

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平成  年(行ツ)第  号

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

(2) 本件選挙は, 平成 28 年法律第 49 号 ( 以下 平成 28 年改正法 という ) 及び平成 29 年法律第 58 号 ( 以下 平成 29 年改正法 という ) により改定された本件区割規定による選挙区割りの下で施行されたものであるが, これに至る法改正等の概要は次のとおりである ア

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

最高裁○○第000100号

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

13 条,14 条 1 項に違反するものとはいえない このように解すべきことは, 当裁判所の判例 ( 最高裁昭和 28 年 ( オ ) 第 389 号同 30 年 7 月 20 日大法廷判決 民集 9 巻 9 号 1122 頁, 最高裁昭和 37 年 ( オ ) 第 1472 号同 39 年 5 月

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

平成  年(オ)第  号

定している (2) 通達等の定めア 生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について ( 昭和 29 年社発第 382 号厚生省社会局長通知 以下 昭和 29 年通知 という 乙 1) は, 一項本文において, 生活保護法第 1 条により, 外国人は法の適用対象とならないのであるが, 当分の間,

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

5B85F4C4ED706DCF AB

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

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の上記アの期間に係る標準報酬月額を44 万円に訂正する必要がある旨のあっせんをした ( 甲 1の18ないし21 頁, 丙 4) (2) Aの標準報酬月額の決定等ア厚生年金保険法 ( 平成 24 年法律第 62 号による改正前のもの 以下 厚年法 という )100 条の4 第 1 項 3 号及び4 号

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

(イ係)

る改正が行われるにとどまった その結果, 同 47 年に施行された総選挙時における選挙区間の投票価値の較差は最大 4.99 倍にまで拡大し, 最高裁昭和 49 年 ( 行ツ ) 第 75 号同 51 年 4 月 14 日大法廷判決 民集 30 巻 3 号 223 頁においては, 当該較差の下での議員

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

平成 27 年度 特定行政書士法定研修 考査問題 解答と解説 本解答と解説は 正式に公表されたものではなく 作成者が独自に作成したものであり 内容の信頼性については保証しない 以下の事項に全て該当 遵守する場合にのみ 利用を許可する 東京都行政書士会葛飾支部会員であること 営利目的でないこと 内容を

という ) 開始に係る各相続税 ( 以下 本件各相続税 という ) の申告をしたところ, 処分行政庁から本件各相続税の各更正及びこれらに係る重加算税の各賦課決定を受け, 裁決行政庁からこれらに係る原告らの審査請求を却下する旨の各裁決を受けたのに対し, 上記各更正のうち原告らが主張する納付すべき税額を

最高裁○○第000100号

Microsoft Word - 行政法⑨

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

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指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

Taro-婚姻によらないで懐妊した児

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

1市町村の選挙管理委員会は 政令で定めるところにより 登録月の一日現在により 当該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有する者を同日(同日が地方公共団体の休日に当たる場合(登録月の一日が選挙の期日の公示又は告示の日から当該選挙の期日の前日までの間にある場合を除く )には 登録月の一日又は同日の直後の

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

 

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

25 年に制定された公職選挙法の定数配分規定は, 上記の参議院議員選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり, その後に沖縄県選挙区の議員定数 2 人が付加されたほかは, 平成 6 年法律第 47 号による公職選挙法の改正 ( 以下 平成 6 年改正 という ) まで, 上記定数配分規定

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

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日税研メールマガジン vol.111 ( 平成 28 年 6 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 取締役に対する報酬の追認株主総会決議の効力日本大学法学部教授大久保拓也 一中小会社における取締役の報酬規制の不遵守とその対策取締役の報酬は ( 指名委員会等設置会社以

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は, 亡 AとBとの間の子である 原告は, 所得税法 16 条 2 項の規定により, その営む事業に係る事業場の所在地である渋谷区を納税地としている イ亡 Aは, 平成 年 月 日に死亡し, 原告は, 渋谷区 α 番地 1ほか所在の区分所有建物及

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

い ( ただし 当該書面を交付しないで是正の要求等をすべき差し迫った必要がある場合 は この限りでない ) こととされていることに留意すること (2) その他地方自治法第 245 条の5 第 5 項の規定により 是正の要求を受けた地方公共団体は 当該事務の処理について違反の是正又は改善のための必要な

平成  年(オ)第  号

<解説資料> 処分取消訴訟における原告適格

- 2 - り 又は知り得る状態であったと認められる場合には この限りでない 2~7 略 (保険料を控除した事実に係る判断)第一条の二前条第一項に規定する機関は 厚生年金保険制度及び国民年金制度により生活の安定が図られる国民の立場に立って同項に規定する事実がある者が不利益を被ることがないようにする観

Microsoft Word - 行政法⑨

 

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

3 被告は, 原告に対し, 金 3453 万 2652 円及びこれに対する平成 23 年 12 月 14 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件訴訟は, 原告が, 被告の製造販売に係るデジタルカタログについて, 原告の特許権を侵害している旨主張して, 被告に対し

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民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

従業員 Aは, 平成 21 年から平成 22 年にかけて, 発注会社の課長の職にあり, 上記事業場内にある発注会社の事務所等で就労していた (2) 上告人は, 自社とその子会社である発注会社及び勤務先会社等とでグループ会社 ( 以下 本件グループ会社 という ) を構成する株式会社であり, 法令等の

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

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(Microsoft Word - \217\200\224\365\217\221\226\312)

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

当法 22 条 2 項,3 項により本件滞納社会保険料等の徴収に関する権限を承継した被告に対し, 本件滞納社会保険料等のうち平成 17 年 5 月分以前のもの ( 以下 本件請求対象社会保険料等 という ) についての納付義務は時効等により消滅しているとして, 本件交付要求のうち本件請求対象社会保険

定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

個人情報の保護に関する規程(案)

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

上告理由書・構成案

メ 札幌市オンブズマン条例 平成 12 年 12 月 12 日条例第 53 号 改正 札幌市オンブズマン条例 平成 15 年 10 月 7 日条例第 33 号 平成 20 年 11 月 7 日条例第 36 号 目次第 1 章総則 ( 第 1 条 第 4 条 ) 第 2 章責務 ( 第 5 条 第 7

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

平成 24 年 8 月 24 日判決言渡 平成 23 年 第 284 号代議員会議決無効確認請求事件 判 主 決 文 1 原告が, 平成 23 年 1 月 18 日をもって被告の設立事業所でないことを確認する 2 被告は, 原告のために,A 厚生年金基金規約別表第 1から 株式会社 B, 長野県諏訪

市町村合併の推進状況について

日商協規程集

第 1 民法第 536 条第 1 項の削除の是非民法第 536 条第 1 項については 同項を削除するという案が示されているが ( 中間試案第 12 1) 同項を維持すべきであるという考え方もある ( 中間試案第 12 1 の ( 注 ) 参照 ) 同項の削除の是非について どのように考えるか 中間

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

48

第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項に より いずれも棄却すべきである 第 5 調査審議の経過審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日審議経過 平成 30 年 3 月 6 日 諮問 平成 30 年 4 月 26 日審議 ( 第

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

社会福祉法人○○会 個人情報保護規程

審決取消判決の拘束力

Microsoft Word - 一弁知的所有権研究部会2017年7月13日「商標登録無効の抗弁」(三村)

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平成 24 年 11 月 22 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ウ ) 第 784 号衆議院議員総選挙公示差止等請求事件 主 文 1 本件各訴えをいずれも却下する 2 訴訟費用は原告らの負担とする 事実及び理由 1 請求 (1) ア主位的請求内閣は, 天皇に対し, 平成 24 年 11 月 16 日の衆議院解散に基づく総選挙の施行の公示に係る助言と承認をしてはならない イ予備的請求仮に上記アの選挙の施行の公示がされたときは, 内閣は, 中央選挙管理会及び各都道府県の選挙管理委員会に対し, 上記アの選挙につき公職選挙法別表第 1に定める選挙区割りに基づく選挙事務の管理をさせてはならない (2) 内閣は, 国会に対し, 公職選挙法別表第 1につき1 人別枠方式を廃止し人口に比例して議員定数を配分する法律案を提出せよ 2 事案の概要 (1) 本件は, 平成 24 年 11 月 16 日の衆議院解散に基づき同年 12 月 4 日公示, 同月 1 6 日施行予定の衆議院議員総選挙 ( 以下 本件選挙 という ) の選挙人である原告らが, 最高裁平成 22 年 ( 行ツ ) 第 207 号同 23 年 3 月 23 日大法廷判決 民集 65 巻 2 号 755 頁 ( 以下 本件大法廷判決 という ) が後記 (2) のとおり判示したにもかかわらず, 国会が1 人別枠方式を廃止することなく, 本件大法廷判決により違憲状態にあるとされた区割規定を維持し続け, 平成 24 年 11 月 16 日には, 議員定数の配分は公 1

職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反の総選挙が行われる事態を回避するために, 内閣が本件選挙の施行の公示に係る助言と承認をすることやその公示がされたときに本件選挙につき選挙事務の管理をさせることの差止めをした上, 違憲状態を解消するために, 内閣が1 人別枠方式を廃止し人口に比例して議員定数を配分する法律案を提出することの義務付けをし, 国会が本件大法廷判決の判示に従った法律改正をするようにすることが不可欠であると主張して, 内閣の所属する国を被告とし, いずれも行政事件訴訟法 5 条の民衆訴訟として,1 主位的に, 同法 3 条 7 項 ( 差止めの訴え ) の趣旨を類推し, 内閣が天皇に対し本件選挙の施行の公示に係る助言と承認をすることの差止めを求め,2 予備的に, 同項の趣旨を類推し, 本件選挙の施行の公示がされたときは, 内閣が中央選挙管理会及び各都道府県の選挙管理委員会に対し本件選挙につき公職選挙法別表第 1に定める選挙区割りに基づく選挙事務の管理をさせることの差止めを求めるとともに, 併せて,3 同条 6 項 1 号 ( 非申請型の義務付けの訴え ) の趣旨を類推し, 内閣が国会に対し公職選挙法別表第 1につき1 人別枠方式を廃止し人口に比例して議員定数を配分する法律案を提出することの義務付けを求める事案である なお, 原告らは, 本件各訴えは行政事件訴訟法 5 条の民衆訴訟として提起したものである旨を明言しており, 本件各訴えを同法 3 条の抗告訴訟と解する余地はない (2) 本件大法廷判決の判示衆議院議員選挙区画定審議会設置法 ( 以下 区画審設置法 という )3 条の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区の区割基準のうち各都道府県の区域内の選挙区の数は各都道府県にあらかじめ1を配当した上で決定するこ 2

ととするいわゆる1 人別枠方式に係る部分並びに同区割基準に従って改定された公職選挙法 13 条 1 項及び別表第 1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区の選挙区割りは, 平成 21 年 8 月 30 日施行の衆議院議員総選挙の時点において, いずれも憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていたものであり, 事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に, できるだけ速やかに上記区割基準中の1 人別枠方式を廃止し, 区画審設置法 3 条 1 項の趣旨に沿って公職選挙法 13 条 1 項及び別表第 1を改正するなど, 投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要がある (3) 原告らは, 請求の原因として, 別紙 2( 訴状の写し ) 及び別紙 3( 平成 24 年 11 月 19 日付け原告第 1 準備書面 ( 請求拡張の申立て ) の写し ) のとおり主張している 3 当裁判所の判断 (1) ア上記 2のとおり, 本件各訴えは, 本件選挙の選挙人である原告らが, 憲法に適合しない状態での本件選挙の施行を避けるため, 本件選挙の施行の公示に係る助言と承認や内閣が本件選挙につき選挙事務の管理をさせることの差止めを求め, さらに, 本件選挙を始めとする今後施行される衆議院議員総選挙の適正を期するため, 国会において, 本件大法廷判決の判示に従い, 区画審設置法 3 条の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区の区割基準中の1 人別枠方式を廃止し, 同条 1 項の趣旨に沿って公職選挙法 1 3 条 1 項及び別表第 1を改正するなど, 投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずることを求めて, 選挙人たる資格に基づいて行政事件訴訟法 5 条の民衆訴訟として提起したものであるということができる しかし, 民衆訴訟は, 選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する客観訴訟であり ( 同条 ), 本来的な司法権の審判対象として裁判所法 3 条 1 項に定める法律上の争訟には該当せず, 法律に定める場合において, 法律に定める者に限り, 提起することができるものである ( 行政 3

事件訴訟法 42 条 ) ところ, 公職選挙法及びその他の関係法令の規定を精査しても, 本件各訴えのような選挙人たる資格に基づいて当該選挙に関する行為の差止めを求める訴えや義務付けを求める訴えを提起することができる旨を定めた法律の規定や, そのような訴訟を提起することができることをうかがわせる法律の規定は見当たらないのであって, 本件各訴えはいずれも不適法なものというべきである イ ( ア ) この点について, 原告らは, 最高裁昭和 49 年 ( 行ツ ) 第 75 号同 5 1 年 4 月 14 日大法廷判決 民集 30 巻 3 号 223 頁ほかの判例が議員定数の配分規定の違憲を主張して公職選挙法 204 条の選挙の効力に関する訴訟を提起することが許されるとしてきたことによれば, 議員定数の配分規定の違憲性が明らかであり, 事後的な手段では回復することができない場合には, 抗告訴訟で認められている差止めの訴え及び義務付けの訴えに関する規定を民衆訴訟に類推適用することも可能であり, 本件各訴えのような差止めの訴え及び義務付けの訴えを民衆訴訟として提起することも許されると解すべきである旨を主張する ( イ ) しかし, そもそも, 差止めの訴え及び義務付けの訴えは, 国民個人の個別的な権利又は法律上の利益の保護を目的とする主観訴訟であり, 法律上の争訟である抗告訴訟の一類型であるから, これらの訴えに関する規定を上記アで説示したとおりそれと性質の異なる民衆訴訟に類推適用することは原則としてできないものというべきであり, これらの訴えと類似する訴訟類型が公職選挙法等の法律により特に設けられている場合であればともかく ( 現行の行政事件訴訟法 43 条には, そのような訴訟類型があることを前提として差止めの訴え又は義務付けの訴えに関する規定を準用する定めも置かれていない ), 民衆訴訟について, これらの訴えに関する規定の趣旨を類推して創設的に同様の訴訟が認められると解することは困難である 4

( ウ ) また, 公職選挙法 204 条の選挙の効力に関する訴訟については, 同訴訟を提起することができること自体は同条に明らかに定められているのであって, ただ, 同法 205 条 1 項の規定が, 選挙の規定に違反することがあるときは選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り, 裁判所は, その選挙の全部又は一部の無効を判決しなければならないと定めており, 同訴訟は, 同法の規定に違反して執行された選挙の効力を失わせ, 改めて同法に基づく適法な再選挙を行わせることを目的とし, 同法の下における適法な選挙の再実施の可能性があることを前提とするものであることからすると, 同訴訟は同法自体を改正しなければ適法に選挙を行うことができないような場合を予定するものではなく, 同訴訟において議員定数の配分規定そのものの違憲を理由として選挙の効力を争うことはできないのではないかという疑いがないではなかったところ, 上記大法廷判決は, 同訴訟が選挙人において選挙の適否を争うことができる唯一の訴訟であり, これをおいては他に訴訟上同法の違憲を主張してその是正を求める機会はないことに鑑みて, 同法の規定が選挙権の平等に反することを選挙無効の原因として主張することも許されるとしたものである これに対して, 本件各訴えのような選挙人たる資格に基づいて当該選挙に関する行為の差止めを求める訴えや義務付けを求める訴えについては, このような訴訟を提起することができること自体を定めた法律の規定等が見当たらないことは, 上記アのとおりである上, このような訴訟を提起することはできないものとしても, 選挙人においては, 選挙が施行された後に, 当該選挙の効力に関する訴訟を提起することにより, 選挙の適否を訴訟上争うことはできるのであるし ( もっとも, 本件大法廷判決の言渡しから本件選挙に至るまでの経緯に照らすと, このような事後の是正手段が十分な有効性を有するものであるかという点については, 5

当裁判所としても, 若干の疑念を抱かざるを得ないところではあり, 本件大法廷判決の趣旨に反する状態で選挙が施行されることを防止したいという本件訴訟提起の意図自体は十分理解することができる ), 他方, 選挙に関する行為の差止めや義務付けを認めることにより国政の停滞を招くことがあれば, かえって種々の弊害が生ずるおそれがあり, また, 公職選挙法は, 各種選挙について, 選挙を行うべき事由が生じた日から一定の期間内に当該選挙を行う旨を定めている (31 条以下 ) ところ, 仮に選挙に関する行為の差止めや義務付けが認められるとするならば, これらの定めとの調整の問題が生ずることにもなる ( エ ) 以上のことを考慮すると, 上記大法廷判決ほかの判例が議員定数の配分規定の違憲を主張して公職選挙法 204 条の選挙の効力に関する訴訟を提起することが許されるとしてきたからといって, 現行の法制度の下における解釈論として, 本件各訴えのような差止めの訴え及び義務付けの訴えを民衆訴訟として提起することも許されるということはできないというべきである ウなお, 内閣が, 平成 24 年 11 月 16 日の臨時閣議で, 本件選挙を同年 12 月 16 日に施行することを定め, 同月 4 日付けで本件選挙の施行の公示をする旨を決定し, その旨を上奏したことは, 当裁判所に顕著であって ( 本件を本案事件として申し立てられた当庁平成 年 ( 行ク ) 第 号仮の差止等申立事件において相手方 ( 被告 ) が提出した疎乙 1( 閣議書 )), 本件各訴えのうち内閣が天皇に対し本件選挙の施行の公示に係る助言と承認をすることの差止めを求めるものは訴えの利益を欠くという意味においても不適法なものというべきである (2) そうすると, 本件各訴えはいずれも不適法であり, かつ, その不備はその性質上これを補正することができない 4 結論 6

よって, 行政事件訴訟法 7 条, 民事訴訟法 140 条を適用して, 口頭弁論を経ることなく本件各訴えをいずれも却下することとし, 訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法 7 条, 民事訴訟法 61 条,65 条 1 項本文を適用して, 主文のとおり判決する 東京地方裁判所民事第 2 部 裁判長裁判官川神裕 裁判官内野俊夫 裁判官佐野義孝 7