1 小学校入学前の子どもの学びとは 幼児期の生活のほとんどは 遊びによって占められています 子どもは遊びを中心として 頭も心も体も動かして様々な対象と直接関わりながら 総合的に学んでいます (1) 幼児教育と子どもの学び 幼稚園の遊びの一場面子どもたちがものを転がす遊びに集中しています 子どもたちは

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Taro-スタートカリキュラムの意義

ICTを軸にした小中連携

ポイント 1: 幼児教育と小学校教育の特徴や違いを理解する 保幼小の円滑な接続に向けて まずは 幼児教育と小学校教育の特徴や違いを理解することが重要です 幼児教育 幼児期の教育では 幼児の自発的な活動としての 遊び を通して 様々な体験や学びの芽生えを積み重ねることができるよう 保育者が環境を構成し

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

新しい幼稚園教育要領について

幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続の在り方について ( 報告 ) ( 概要 ) 子どもの発達や学びの連続性を踏まえた幼児期の教育 ( 幼稚園 保育所 認定こども園における教育 ) と児童期の教育 ( 小学校における教育 ) の円滑な接続の在り方について検討し 以下のとおり 報告をとりまとめた 1

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

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平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

1 幼児期の教育 保育と小学校教育の違い 幼児期の教育 保育と小学校の教育では 発達の段階の違いだけでなく 教育課程等の違いもあります まずは相互を理解することが必要です 幼児期の教育 保育と小学校教育との間には このように教育課程や指導方法の相違点がある一方で 5 歳児から小学校低学年までの発達の

乳児期からの幼児教育について 大阪総合保育大学 大方美香

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

基本方針 これまでも幼稚園は幼稚園教育要領に 保育園は保育所保育指針に基づいた幼児教育 保育を展開してきた また 平成 20 年 3 月の大幅な改定により 3 歳児から5 歳児の教育に関する内容では整合性が図られている しかし 統一されたカリキュラムがないことで 幼稚園と保育園の内容に違いがあるかの

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

1 国の動向 平成 17 年 1 月に中央教育審議会答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について が出されました この答申では 幼稚園 保育所 ( 園 ) の別なく 子どもの健やかな成長のための今後の幼児教育の在り方についての考え方がまとめられています この答申を踏まえ

なぜ, スタートカリキュラム? 子供のこんな思いに応えることができます! 小学校ってどんなところかな? 友達できるかな? 楽しいといいな! 園ではいろいろなことをしてきたよ 学校ではどんなことをするのかな? 早く知りたい, やってみたい! お兄さん, お姉さんはすごいな あんなふうになりたいな! 私

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

Taro-自立活動とは

教育調査 ( 教職員用 ) 1 教育計画の作成にあたって 教職員でよく話し合っていますか 度数 相対度数 (%) 累積度数累積相対度数 (%) はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 0

第4章 道徳

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

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Microsoft Word 教育課程の編成

幼稚園と小学校の連携の在り方について 学びの連続性 の視点に立って考察する 3 研究内容と考察 (1) 学びの連続性 に立った幼稚園と小学校の連携とは何か中教審の答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について は 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえ 今後の幼児教育の方向性と

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人間関係を深めるとともに, 児童が自己の生き方についての考えを深め, 家庭や地域社会との連携を図りながら, 集団宿泊活動やボランティア活動, 自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない その際, 特に児童が基本的な生活習慣, 社会生活上の

教育と法Ⅰ(学習指導要領と教育課程の編成)

2 研究の歩みから 本校では平成 4 年度より道徳教育の研究を学校経営の基盤にすえ, 継続的に研究を進めてきた しかし, 児童を取り巻く社会状況の変化や, 規範意識の低下, 生命を尊重する心情を育てる必要 性などから, 自己の生き方を見つめ, 他者との関わりを深めながらたくましく生きる児童を育てる

エコポリスセンターとの打合せ内容 2007

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

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平成 30 年 6 月 8 日 ( 金 ) 第 5 校時 尾道市立日比崎小学校第 4 学年 2 組外国語活動 指導者 HRT 東森 千晶 JTE 片山 奈弥津 単元名 好きな曜日は何かな? ~I like Mondays.~ 本単元で育成する資質 能力 コミュニケーション能力 主体性 本時のポイント

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

幼保連携型認定こども園教育・保育要領 中央説明会

3 平成 29 年 3 月に幼稚園教育要領 保育所保育指針 幼保連携型認定こども園教育 保育要領が改訂され 来年度から全面実施されます 新幼稚園教育要領等では 改訂の基本的な方針として 1) 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 の明確化 健康な心と体 自立心 協同性 道徳性 規範意識の芽生え 社会生

ハンドブックp10-14:東京都教育委員会

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幼児期の教育と小学校教育の接続について

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

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【参考資料1】審議のまとめ反映版

工業教育資料347号

1 一日の生活の連続性及びリズムの多様性への配慮 (1) 全体的な計画の作成幼保連携型認定こども園教育保育要領第 1 章総則では 幼保連携型認定こども園の 全体的な計画 の作成について示されています 全体的な計画は 保育所保育指針における保育課程 幼稚園教育要領における教育課程に当たります また 全

解答類型

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

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主語と述語に気を付けながら場面に合ったことばを使おう 学年 小学校 2 年生 教科 ( 授業内容 ) 国語 ( 主語と述語 ) 情報提供者 品川区立台場小学校 学習活動の分類 B. 学習指導要領に例示されてはいないが 学習指導要領に示される各教科 等の内容を指導する中で実施するもの 教材タイプ ビジ

文 研究ノー続期に育てるものは保育室 教室環境, 生活時程論Shiraume Gakuen University カリキュラムが, その点についてどのように試みられているかを整理する これらの自治体では, 幼保小の交流や接続を見通した取り組みが, 全ての園 学校を対象として接続期の教育課程を作成し,

学習指導要領改訂の方向性

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

60 金沢星稜大学人間科学研究第 11 巻第 2 号平成 30 年 2 月 要領を主な資料として内容を分析 考察する (1) 乳児保育に関わる ねらい及び内容 の3 視点,1 歳以上 3 歳未満児及び3 歳以上児に関わる ねらい及び内容 の5 領域, 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿, 小学

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3. ➀ 1 1 ➁ 2 ➀ ➁ /

61.8%

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果と対策 1 全国学力調査の結果 ( 校種 検査項目ごとの平均正答率の比較から ) (1) 小学校の結果 会津若松市 国語 A は 全国平均を上回る 国語 B はやや上回る 算数は A B ともに全国平均を上回る 昨年度の国語 A はほぼ同じ 他科目はやや下

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(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

目 次 1 実施方針策定の趣旨 P. 1 2 振興計画に基づく取組みと求められる対応 P. 1 (1)Ⅰ 期期間中の取組み (2) 新制度のもと求められる対応 3 当面の実施方針 P. 2 (1) 基本となる考え方 (2) 当面の実施方針 4 新制度のもとでの市立幼稚園 P. 3 (1) 市立幼稚園

平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果の概要 ( 和歌山県海草地方 ) 1 調査の概要 (1) 調査日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) (2) 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し

2 単元の目標 廿日市市 についての魅力を目的意識や相手意識を明確にして地域内外に発信することができる 自分たちの住む 廿日市市 に愛着をもつことができる 3 単元の評価規準 学習方法 自分自身 他者や社会 課題発見力 思考力 判断力 表現力 主体性 自らへの自信 対象と積極的にかかわる中で, 課題

単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

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愛媛県学力向上5か年計画

自己決定の場を設定する 自己存在感を持たせる 共感的な人間関係を育成する準備活動のどの場面で どの子どもを生かすのか 見通しを持って授業に臨む 導入の場面する 深める場面り返りの場面2 確かな学力の育成 複雑で変化の激しい現代社会に子どもたちが主体的に関わり よりよい社会を創造していくためには 一人

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平成 30 年度なごや小学校努力点推進計画 1 研究主題なかまとともに感性輝くなごやっ子 (1 年次 ) 2 研究主題について本校では 昨年度までの努力点研究において 道徳や特別活動の時間を中心に 子ども一人一人の成長と互いの認め合いをめざすことで 子ども自らが なごや小でよかった と感じられるよう

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

実践 報告書テンプレート

農山漁村での宿泊体験活動の教育効果について

第 1 章総則第 1 教育課程編成の一般方針 1( 前略 ) 学校の教育活動を進めるに当たっては 各学校において 児童に生きる力をはぐくむことを目指し 創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に習得させ これらを活用して課題を解決するために必要な思考力 判

総合的な学習の時間とカリキュラム・マネジメント

訂されている 幼稚園 小 中学校学習指導要領改訂の基本的な考え方として 次の 3つがあげられる 1. 子供たちに求められる資質 能力を明確にし それらを社会と共有していくという社会に開かれた教育課程を実現していく 2. 現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で 知識の理解の質を高めていく 3

学習指導要領の趣旨を実現する授業づくりのポイント

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幼児教育とは: 幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改訂を受けて

目 次 1. 策定の趣旨 2 2. 基本理念 2 3. 計画の期間及び推進状況の把握 2 4. 計画の対象 2 5. 第 1 次計画 における成果と課題 2 (1) 成果 2 (2) 課題 3 6. 計画の全体構想図 3 7. 推進事業 4 (1) 家庭における読書活動の推進 4 (2) 地域 図書

地域の幼児教育の拠点となる幼児教育センターの設置及び「幼児教育アドバイザー」の育成・配置に関する調査研究 実施報告書(2年次)(4)

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平成27年度公立小・中学校における教育課程の編成実施状況調査結果について

高松っ子いきいきプラン策定の趣旨 本プランは, 就学前の子どもが幼稚園 保育所 幼保一体化施設など, どこに在籍していても, 等しく質の高い教育 保育を受けられるよう, 各施設が積み上げてきたものを生かしつつ, 今後, 重点的に取り組むための方針や具体的な取り組みを示しています さらに小学校との連携

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

改訂幼稚園教育要領と改訂小学校学習指導要領における幼小接続今井康晴 後藤正矢 リキュラムなど様々に展開されている 例えば先行研究においても 幼小接続をふまえた教育活動の研 1, 究 2 また幼小接続の教育課程研究 3 など多岐に及んでいる しかし 本論文の主題とする改訂幼稚園教育要領と改訂小学校学習

子ども・子育て支援新制度における教育委員会の役割について 3

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資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

「標準的な研修プログラム《

2 教育及び保育の 標 Q17 認定こども園法第 9 条に規定する6つの教育及び保育の目標の達成に努めるとともに これらが満 3 歳未満の園児の保育にも当てはまることを理解している Q18 第 2 教育及び保育の内容に関する全体的な計画の作成 教育及び保育の内容に関する全体的な計画は 教育及び保育を

Transcription:

平成 28 年 7 月 11 日栃木県教育委員会事務局学校教育課編集第 469 号 はじめに 1 1 小学校入学前の子どもの学びとは 2 2 幼児教育の成果を生かすスタートカリキュラム 4 3 スタートカリキュラム編成 実施のポイント 6 おわりに 8 子どもの学びや育ちをつなぐスタートカリキュラム ~ 幼児教育の成果を生かすスタートカリキュラムの編成と実施 ~ はじめに 幼児教育と小学校教育が円滑に接続し 体系的な教育が組織的に行われることは 子どもの発達や学びの連続性を保障するために極めて重要です 幼稚園教育要領 保育所保育指針 幼保連携型認定こども園教育 保育要領 小学校学習指導要領においては 幼児教育と小学校教育の接続に関して相互に留意する旨が規定されており 各学校 施設では 幼児と児童の交流活動や教職員の意見交換などの取組が広く行われるようになりました また スタートカリキュラムを編成し 入学当初の指導の効果を高めていく取組も進められています そこで本号では 子どもが 明日も学校に来たい と思えるようなスタートカリキュラムの在り方などについて解説します 小学校入学当初の一場面子どもはなぜ 生き生きと学習に取り組んでいるのでしょう それは 生活科を中心とした特別なカリキュラムの中で 子どもが幼児期の学びや育ちを基礎として 主体的に自己を発揮し 学んでいるからです - 1 -

1 小学校入学前の子どもの学びとは 幼児期の生活のほとんどは 遊びによって占められています 子どもは遊びを中心として 頭も心も体も動かして様々な対象と直接関わりながら 総合的に学んでいます (1) 幼児教育と子どもの学び 幼稚園の遊びの一場面子どもたちがものを転がす遊びに集中しています 子どもたちは この遊びを通して何を学んでいるのでしょう 子どもの姿や言葉 これを上に持ち上げて ここから転がしたいんだ 子どもの学び * やりたいことに向かって心と体が働く どうすれば うまくいくかな そうか こうすればいいんだ! * 工夫したり 試したりする * 物の性質や仕組みに気付く ぼくが押さえるから そっと転がして もっと早く転がらないかな やった 成功だ!! * 言葉のやり取りで互いの思いを共有する * 新しい考えを生み出す * 共通の目的を達成する 子どもは 遊びに集中していく中で ものによって転がり方に違いがあることに気付いたり 樋 ( とい ) の斜度を変えながら試行錯誤する楽しさを味わったりします また 友達と一緒に遊ぶ中で 人と関わるよさを感じたり 対立した意見を調整していく大切さを学んだりします 遊びは幼児期特有の学びのスタイルと言えます このように 一つの遊びを展開する中で 子どもはいろいろな経験をし 様々な資質 能力を身に付けます 幼児教育の基本は 環境を通して行う教育 です この 環境を通して行う教育 とは 子どもが自ら進んで動き出したくなるような学習環境の設定に基づく教育です 写真の例でいうと 教師はねらいを持って転がりやすいものや樋といった子どもが遊びたくなるような環境を設定し 子どもがその環境に自ら関わって遊ぶことを通して 育てたい子どもの姿に近づくことを期待します 幼児教育の教育方法は ねらいを学習環境に反映させることによって 子どもの主体的な活動を誘発しようとする教育方法です - 2 -

(2) 幼児教育における 5 領域 幼稚園教育要領等では 卒園までに育つことが期待される心情 意欲 態度である ねらい とそのねらいを達成するために指導する事項である 内容 が 幼児の発達の側面からまとめて 5 領域 ( 健康 人間関係 環境 言葉 表現 ) に編成されています 幼児期の子どもたちは 5 領域の内容を総合的に身に付け 学びの芽生えを持って小学校へ入学してきます 領域 健康 健康な心と体を育て, 自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う 領域 表現 感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して, 豊かな感性や表現する力を養い, 創造性を豊かにする 領域 言葉 経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し, 相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て, 言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う 領域 人間関係 他の人々と親しみ, 支え合って生活するために, 自立心を育て, 人とかかわる力を養う 領域 環境 周囲の様々な環境に好奇心や探究心を持ってかかわり, それらを生活に取り入れていこうとする力を養う 図中の文言は幼稚園教育要領から抜粋 (3) 幼児教育から小学校以降の教育へ 幼児教育の目標は ~ しようとする のように 子どもの育ちの方向性を重視するのに対し 小学校以降の教育は ~ ができる といった具体的な目標への到達を重視します これは 幼児教育が幼児の生活や経験を重視する経験カリキュラムに基づき展開されるのに対し 小学校以降の教育が学問体系の獲得を重視する教科カリキュラムを中心に展開されるからです 幼児教育 経験カリキュラム 方向目標 ~ しようとする 環境を通して幼児の自発的な活動を導く指導 個人内評価を重視 幼児教育と小学校以降の教育をつなぐスタートカリキュラム 小学校以降の教育 教科カリキュラム 到達目標 ~ ができる 教科書等の教材を活用した系統的な指導 目標準拠評価 このように 遊びを中心に総合的に学ぶ幼児教育と各教科等を中心に系統的に学ぶ小学校以降の教育には 大きな違いがあります そこで 小学校に入学した子どもが これまでの学びや育ちを基礎として 主体的に自己を発揮し 学ぶことができるようにするためのスタートカリキュラムが必要となるのです - 3 -

2 幼児教育の成果を生かすスタートカリキュラム (1) スタートカリキュラムとは 幼児期の子どもたちは遊びながら様々な資質 能力を身に付け 小学校以降には教科学習を中心として学ぶことにより様々な資質 能力を身に付けます 遊びを通した学びと教科学習を通した学びをつなぐの が生活科であり 小学校入学当初における生活科を中心としたカリキュラムがスタートカリキュラムです 小学校学習指導要領解説生活編 では以下のように記述されています 第 4 章指導計画の作成と内容の取扱い (p43~p45) 1 指導計画作成上の配慮事項 (3) 国語科, 音楽科, 図画工作科など他教科との関連を積極的に図り, 指導の効果を高めるようにすること 特に, 第 1 学年入学当初においては, 生活科を中心とした合科的な指導を行うなどの工夫をすること 例えば,4 月の最初の単元では, 学校を探検する生活科の学習活動を中核として, 国語科, 音楽科, 図画工作科などの内容を合科的に扱い大きな単元を構成することが考えられる こうした単元では, 児童が自らの思いや願いの実現に向けた活動を, ゆったりとした時間の中で進めていくことが可能となる 大単元から徐々に各教科に分化していくスタートカリキュラムの編成なども効果的である (p45) 栃木県教育振興基本計画 2020- 教育ビジョンとちぎ - では スタートカリキュラムを 小学校に入学した児童が 幼児期の遊びや生活を通した学びや育ちを基礎として 主体的に自己を発揮し 学ぶことができるようにするための 生活科を中心とした合科的なカリキュラム と説明しています スタートカリキュラムは 幼児教育の遊び的要素と小学校教育の教科学習の要素の両方を組み合わせた合科的 関連的なカリキュラムです 入学当初の生活科を中心とした合科的な指導は 子どもの 明日も学校に来たい という意欲をかき立て 幼児教育から小学校教育への円滑な接続をもたらし 新入生の小学校へのスムーズな 適応 を促すことが期待されます (2) 生活科を中心とした合科的な指導 生活科を中心とした合科的な指導とは 大きな単元の目標 ( 子どもを育てる方向性 ) を定め 遊び的要素の強い活動や教科にも連動するような活動を取り入れることです 例 ) 単元名 がっこうだいすき 目標 ( 子どもを育てる方向性 ) 学校が大好きになり 明日も学校に来たいと思える子どもを育てる 合科的な指導 1 活動学校探検 ( 生活 )+ 本に親しもう ( 国語 ) 内容生活科の学校探検で校内を探検する中で 図書室では多くの子どもが様々な本に興味を示すことが予想される そこで図書室を探検した際には自由に本を読む時間を取ったり絵本を読み聞かせたりして 子どもの興味に即した活動を行う 合科的な指導 2 活動学校探検 ( 生活 )+ 好きな場所を紹介しよう ( 図画工作 ) 内容生活科で探検した場所の中には初めて目にしたものや驚いたことなどがあり それを誰かに伝えたいという思いをもつことが予想される そこで印象に残った場所を絵に描き 友達などに紹介する活動を行う - 4 -

(3) 学びの芽生え から 自覚的な学び へ 小学校 1 年生は ゼロからのスタートじゃない! という考えに立つかどうかで スタートカリキュラムのつくり方や実践は大きく変わります 実際 子どもは幼児期に多くのことを学んできていますが その姿は小学校からは見えにくいものです 小学校の中では最年少であり 環境の変化などから不安を感じている 1 年生の姿を見ると ゼロから丁寧に教えなくては という気持ちになりがちです しかし ゼロからのスタートではありません スタートカリキュラムスタートブック ( 文部科学省国立教育政策研究所平成 27 年 1 月 ) 遊びや生活を通して総合的に学んでいく幼児期の教育課程と 各教科等の学習内容を系統的に配列した児童期の教育課程は 内容や進め方が大きく異なります そこで 入学当初は 幼児期の学び方と児童期の学び方を行きつ戻りつしながら 幼児期の豊かな学びと育ちを基礎として 子どもが主体的に自己を発揮できるようにする場面を意図的につくることが求められます それがスタートカリキュラムであり 幼児期の 学びの芽生え から児童期の 自覚的な学び をつなぐ重要な役割を担っていると言えます これから本格的にスタートカリキュラムを編成する場合 各学校に配布されている スタートカリキュラムスタートブック ( 文部科学省国立教育政策研究所平成 27 年 1 月 ) を参考にしてください (http://www.nier.go.jp/kaihatsu/shidousiryou.html) - 5 -

3 スタートカリキュラム編成 実施のポイント 各学校にあるスタートカリキュラムを 幼児教育の成果を生かし子どもの学びや育ちをつなぐスタートカリキュラムとするために 安心 成長 自立 の三つのポイントで見直してみましょう 安心子どもの できる を生かしていますか? 入学した子どもは 新しい環境の中で初めて出会う人や場所等に戸惑うこともあり 入学当初の指導が トイレの使い方 や 正しい座り方 等の できない を前提にした適応指導になりがちです その前に 幼稚園等で親しんできた遊びや分かりやすい環境を用意して これまでに育まれた できる を生かして 幼稚園と一緒だ! 友達ができた! という 安心 を生み出すものにしましょう 例えば 入学式翌日の 1 校時の活動を ねらい 集団生活のきまりを知り 学校のきまりを身に付ける 活動 トイレの使い方 廊下の歩き方等の説明 その前に ねらい 幼児期の遊びを行い 気持ちをほぐして生活する 活動 みんなで歌おう 手遊び 読み聞かせ 成長 学び をつなぐものですか? 一つの小学校には 複数の幼稚園等から経験の異なる子どもたちが入学してきます 集団生活を送るために 始めにきまりありき の指導になりがちです 幼稚園等では 遊びや生活の中で様々な 学びの芽 を育みます 子どもが必要感に基づいて自主的に取り組もうとする 学びの芽 を生かした活動や 幼児期の経験を生かして 自分たちでルールややり方を考える 学びの場 を大切にし 成長 を促すようにしましょう 子どもの自主性を大切にする例えば 係を決めるとき先生 今日は 係を決めます 窓係は 2 人 黒板係は 生活の中の子どもの姿をきっかけに 先生 太郎さんが 窓を開けてくれたのね 朝の空気は気持ちがいいね これまでの経験を生かす例えば 給食が始まるとき先生 台ふきは 由紀さんね やり方は まず 幼児期の経験を聞きながら 先生 幼稚園や保育所では どうやっていたかな? - 6 -

自立生活科を中心とした合科的なものですか? 生活科は 幼児期の 遊びの中の学び と似ていて 入学当初の学習の中に 他教科の学習要素がたくさんあります どの教科のどのような要素があるか どのような力が身に付くのかを 教師自身が子どもの目線で考え明確にする必要があります 例えば 学校探検では 算数国語 自分の名前をノートに書いて教えたよ 池に赤い魚が 3 匹と黒い魚が 4 匹いたよ 音楽 音楽室のハンドベルを鳴らしたよ 図画工作 給食を作る部屋の大きなお鍋を絵に描きたいな 大単元 学校だいすき! 仲良しいっぱい! 体育 体育館で大きなボールを触ったよ 生活科の究極の目標は 自立への基礎を養う ことです 生活科を中心とした合科的な指導を充実させることで 自分で考え判断し行動するなどの態度を育み 自立 への基礎を養いましょう スタートカリキュラムの編成 実施に当たって 気を付けることは何ですか? スタートカリキュラムの編成に当たって 各学校によって 地域や子どもの状況が異なることから どの ような期間 どのような方法で行うかは それぞれの学校において判断し 適切に編成されるべきものです また 実施に当たっては 子どもの実態等に応じて 適宜計画を修正するなど 柔軟性をもたせることも大切なことです そして 年度末等には 当該年度のスタートカリキュラム全体の評価 改善をし 次年度の編成に生かしていく必要があります つまり 編成 実施に当たってはカリキュラム マネジメントを適切に実施していくことが重要となります 以下そのための留意点を示します 1 幼児教育について理解していることが前提です 幼児教育と小学校教育には 保育や教育の目標 方法 評価等において 様々な違いがあります 幼児教育の成果を生かしたスタートカリキュラムの編成には 入学前の子どもが 何のために ( 目的 ねらい ) どういうことを ( 活動 経験 ) どのように ( 場 環境 時間 ) 学んできたかを知っていることが必要となります そのためには 実際に 幼稚園や保育所や認定こども園等の一日の生活の流れや子どもの様子を見たり 幼稚園 保育所 認定こども園等の教職員と合同の研修をしたりするなどして 子どもの発達の過程 や 遊びを通した学び について 理解することが望まれます - 7 -

2 子ども一人一人の実態に配慮しましょう 小学校入学前の子どもは 幼稚園 保育所 認定こども園 その他 様々な環境で生活し 一人一人 の発達や学びは多様です 子どもの実態を把握し 一人一人に対応したきめ細かい指導が求められます そのためには 幼稚園 保育所 認定こども園から送付される要録等を活用し 子どもの発達や学びの状況に関する情報を共有することが大切です 3 学校全体で共通理解を図ることが大切です スタートカリキュラムを実施する際には 学年による合同授業や異学年との交流授業なども想定されることから その意義等について学校全体で共通理解を図ることが大切です また スタートカリキュラムを編成したり 実施後に評価 改善したりする際には 教務主任 1 年担任 生活科主任等が組織として取り組むことが望まれます 4 入学式等で保護者にも周知し 共に子どもの学びや育ちを支えましょう 児童の円滑な学校生活への適応を図る上で 保護者による児童への支援が重要であることから スタートカリキュラムの意義や具体的な指導について保護者に適切に周知することが大切です 5 近隣の幼稚園 保育所 認定こども園の思いを踏まえて編成したり 情報提供したりしましょう 幼稚園 保育所 認定こども園等と小学校との間で 相互に連携協力し 子どもの実態や指導の在り方などについて理解を深めるとともに 幼稚園 保育所 認定こども園等における生活や教育の成果を積極的に生かして スタートカリキュラムを編成することが重要です また 編成したスタートカリキュラムや子どもの学ぶ様子等を幼稚園 保育所 認定こども園等に知らせることで さらに連携が深まります おわりに 近年 幼児教育と小学校教育の連携の重要性が改めて強調されています 平成 27 年 8 月 26 日に中央教育審議会から報告された論点整理では 幼児教育と小学校教育の接続に関しては 全ての教科等において幼児教育との接続を意識した教育課程を編成したり 幼児教育の特色を生かした総合的な指導方法を取り入れたりするなど スタートカリキュラムの編成等を通じて 幼児教育との接続の充実や関係性の整理を図る必要がある とされ 生活科については 幼児教育との円滑な接続を図るスタートカリキュラムの中核となる教科として位置付けられるものであり 引き続きこの観点からの充実を図る という方向性が示されました スタートカリキュラムを編成 実施することで 子どもは安心して小学校での生活をスタートすることができ 自信を持って成長していくことが期待されます そして 主体的な学習の積み重ねが子どもの自立につながります 小学校は 入学してくる子どもたちのこれまでの歩みを受け止め その子の学びや育ちをつなぎ 明日も学校に来たい! という子どもの意欲をかき立ててほしいと思います 参考資料 初等教育資料平成 27 年 10 月号 (H27.10 文部科学省 ) 初等教育資料平成 26 年 12 月号 (H26.12 文部科学省 ) スタートカリキュラムスタートブック (H27.1 文部科学省国立教育政策研究所 ) 幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について ( 報告 ) (H22.11 幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議 ) - 8 -