札幌市教育振興基本計画第3章

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基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります 基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります (1) 基礎的 基本的な学力の定着児童 生徒一人ひとりが生きる力の基盤として 基礎的 基本的な知識や技能を習得できるよう それぞ

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幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続の在り方について ( 報告 ) ( 概要 ) 子どもの発達や学びの連続性を踏まえた幼児期の教育 ( 幼稚園 保育所 認定こども園における教育 ) と児童期の教育 ( 小学校における教育 ) の円滑な接続の在り方について検討し 以下のとおり 報告をとりまとめた 1

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第 4 章基本的な考え方 1. 計画推進の基本的な視点 本計画は 以下に示す基本的な視点をふまえて 各施策 事業の展開を図っていきます 協働とパートナーシップにもとづく活動の充実地域福祉の主役は その地域に暮らす市民です 地域福祉の取り組みを進めていくためには 市民 事業者 行政がお互いに理解し 尊

新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申のポイント等)

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

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社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

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第2節 茨木市の現況

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3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

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Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題

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資料 目 次 事業方針 実施計画 みんなで福祉の風土を広げよう 住民 関係機関 団体のネットワークで身近な福祉活動を進めよう 一人ひとりの安全で安心な暮らしを守ろう Ⅳ 推進基盤の強化 主な年間行事等

市民自治の捉え方 市民自治 市民参加協働 市民の自立的な活動 市の領域 協働の領域 市民の領域 市の責任と主体性によって独自に行う領域 市の主体性が強く 市民が市に協力する領域 市民と市がそれぞれの主体性のもとに協力して行う領域 市民の主体性が強く 市が市民に協力する領域 市民の責任と主体性によって

人権教育の推進のためのイメージ図

第3節 重点的な取り組み

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札幌市教育振興基本計画

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により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地

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人間関係を深めるとともに, 児童が自己の生き方についての考えを深め, 家庭や地域社会との連携を図りながら, 集団宿泊活動やボランティア活動, 自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない その際, 特に児童が基本的な生活習慣, 社会生活上の

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幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

整整合合 本計画は 第三次宜野湾市総合計画 ( 案 ) に則するものとして位置づけられます また 第 2 次宜野湾市男女共同参画計画 や他の関連する計画との整合性をもったものとして定めています 一方 本計画には母子の健康確保を盛り込むことが定められていることから 宜野湾市母子保健計画 は本計画に包含

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4 施策別計画 4 施策別計画 施策別計画の見方 施策の方向性を示しています 関連する施策と連携の内容を示して 取組の目標を示しています います なお 市民協働や人権 行政 施策の必要性を示しています の効率化などを内容とする まちづ 取組の現状と課題を示しています くりを進めるための基盤 である施

はじめに

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Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

3 地域コミュニティ活動について 地域コミュニティ活動 への参加について よく参加している 時々参加している とい う回答は 55.4% となりました また 参加したことはない と回答された方以外を対象に 地域コミュニティ団体の課題と 思うもの を尋ねたところ 回答が多かったものは 以下のとおりです

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第 1 章 札幌市幼児教育振興計画の策定 本計画は 主に幼稚園教育を対象とする 本計画は 平成 18 年度から概ね10 年間を計画期間とし 今後はこの方向性に基づいて早期に具体的な施策 ( アクションプログラム ) を打ち出していく 本計画は 社会情勢の変化などに対応し 必要に応じて計画の見直しを行

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学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

スライド 1

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大泉町手話言語条例逐条解説 前文 手話は 手指の動きや表情を使って視覚的に表現する言語であり ろう者が物事を考え 意思疎通を図り お互いの気持ちを理解しあうための大切な手段として受け継がれてきた しかし これまで手話が言語として認められてこなかったことや 手話を使用することができる環境が整えられてこ

基礎的 はんよう汎用的能力は 分野や職種にかかわらず 社会的 職業的自立に向け て必要な基盤となる能力であると考える 例えば 企業が新規学卒者に期待する力は 就職の段階で 即戦力 といえる状態にまで学校教育を通じて育成することを求めているわけではなく 一般的には コミュニケーション能力 熱意 意欲

学生確保の見通し及び申請者としての取組状況

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

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活動状況調査

図人権教育を通して育てたい資質 能力 人権教育の指導方法等の在り方について [ 第三次とりまとめ ] をもとに作成 5

も少なくありません こうした状況に鑑み 舞鶴市は 言語としての手話の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進を図ることにより 全ての市民が障害の有無によって分け隔てられることなく 自分らしく安心して暮らすことができる地域社会を実現するため この条例を制定するものです 2. 条例の

①CSの概要


資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

第4章 道徳

Taro-全員協議会【高エネ研南】

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札幌市教育研究推進事業のあらまし Ⅰ. 札教研事業とは 1. 経緯 札幌市教育研究推進事業( 札教研事業 ) は 札幌市教育研究協議会 ( 昭和 25 年 5 月創設 ) いわゆる 札教研 の研究 研修活動部分を引き継ぐ形で 平成 19 年度より新たに教育委員会の事業として推進されて今日に至る 2.

泉大津

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25 周年を迎えたコミ協の新たな取組 について ( 報告 ) 20 周年に向けての見直し検討報告書 に明示された方策等の推進状況を企画総務部会で精査したところ そのほとんどが既に実施もしくは改善されていることがわかった ついては これらの事業は引き続き実施することとし 新たに 地域コミュニティ が抱

Ⅳ 第 2 次計画の目標 : 第 2 次計画で新たに設定した項目 府民主体 府民と行政と団体 行政と団体 1 内 容 新 規 栄養バランス等に配慮した食生活を送っている府民の割合 2 朝食欠食率 第 1 次計画策定時 35 現状値 第 2 次計画目標 第 2 次基本計画目標 24% 15% 60%

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Transcription:

第 3 章 札幌市教育ビジョン 1 札幌市の教育が目指す人間像教育基本法では教育の目的として 教育は 人格の完成を目指し 平和で民主的な国家及び社 会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならな い と示されています 本計画では 札幌市の教育が目指すべき人格 すなわち 平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な姿 を簡潔に表現するに当たり これまでの 札幌市教育推進の目標 の基本的な考え方は 今後 10 年を見据えたとしても適切なものであると考え 札 幌市の教育が目指す人間像 を次のとおり掲げます 自立した札幌人 いかに時代が変わろうとも 人格の完成 に向けては 一人の人間として 自立 することが 求められます 基本幼児期には遊びを通して 人や自然と豊かに関わり 自分が誰かの役に立っていると感じるなど 施策 自己肯定感や自己有用感を育むことが 自立 への第一歩です そして 発達段階に応じて 様々 な社会体験を通じ 自らの人生を自らの責任で引き受け 一人の人間として生きる自覚をもち 未来に向かって行動することが大切です しかし この自覚は決して 自分さえよければ といった利己的な考え方や 孤立して生きることを求めるものではありません 他者を自分と同じ 自立した存在 として尊重し 共に支え合いながら生きていくという 共生 の思いを併せもつことが不可欠です そして 共生 の対象は 身近な家族や地域の方々はもとより 世代や性別 国籍 文化の違い 障がいの有無などにかかわらず 同じ時代を生きている世界中の人々 さらには 今の社会を築き上げた先人やまだ見ぬ未来の世代までをも含むものです また 誰もが 様々な課題を自らの問題と考え 互いの個性や多様性を認め合う寛容さと相互の信頼感のもとで 持てる能力を十分に発揮して積極的に社会参加し 生きる喜びと幸せを感じてほしい と願うものです 本計画では このように 広く 時や空間を超えた他者との 共生 への願いを込め 共生 と一体となった幅広い意味をもつ 自立 を 自立した と表現しています 一方 平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質 は 時代の変化に伴って変わるものであり また 同じ時代であっても 地域の状況によって左右されるものです 今後 人口減少社会の到来や 生産年齢人口の減少に伴う経済規模の縮小が見込まれる中 これ までの右肩上がりの社会構造を前提とした価値観は大きく変わりつつあり いわゆるパラダイム 37 の転換が求められています 市民は 都市の活力と生活の質を高めるとともに 先人が知恵と努力 で築き上げてきた この自然豊かで文化芸術の薫り高いまちを 次世代に良好な形で引き継いでい かなければなりません 37 パラダイム ある時代や分野において支配的規範となる 物の見方や捉え方 のこと

第1章第2章第3章第4章基本施策 5章資料編25 第本計画では このような状況を受け止め 様々な課題解決に果敢に立ち向かっていく資質を有する人間の在り方を 札幌人 と表現しています 札幌の豊かな自然や社会 文化の中で 学び 生活した経験をもつ者が その恵まれた環境の中で育まれる創造力や豊かな心などの総合的な素養を生かし ふるさと札幌への思いを心にもち 伝統や文化を尊重しながら 国際的な視野ももって 札幌をはじめ様々な地域や国で活躍する人になってほしいという思いが込められています すなわち 自立した札幌人 とは 未来に向かって創造的に考え 主体的に行動する人心豊かで自他を尊重し 共に高め合い 支え合う人ふるさと札幌を心にもち 国際的な視野で学び続ける人 であることを意味します 2 基本的方向性今後 10 年を見据えたとき この人間像を実現するためには 情報化や国際化の進展など社会経済情勢の大きな変化により 知識の多様化や陳腐化が一層進行する状況を踏まえ 学校の卒業をもって学びが終了するのではなく 幼児期から生涯にわたって学び続けることが必要です 市民が 自ら生きていく中で学びを主体的に捉えることができるよう 学校教育の段階から 連続した学びの体制を整備するとともに 子ども一人一人の心身の発達の段階と学校や地域の実態を踏まえ 札幌の自然や社会 文化等の豊かな環境を生かしながら 学ぶ力 - 知 豊かな心 - 徳 健やかな身体- 体 の調和のとれた 生きる力 を育んでいくことが大切です あわせて 学校教育と生涯学習の学びの垣根を低くして 子どもから大人までの様々な世代が 地域や社会に主体的に関わりながら 共に学ぶ体験を積み重ねるなどして 共に生きる力 を培うことが重要となります こうした 自ら学び 共に生きる力を培う学び を推進することが 自立した札幌人 を実現するための要といえます また この学びの推進に当たっては 市民が 経済面や地理的 時間的な制約を気にせず 安心して様々な学びにつながることができるよう 学びの場と機会を保障する観点が不可欠であり 多様な学びを支える環境 を充実させる必要があります 加えて 教育が人と人との関わりの中で進められる営みであることを踏まえると 真に この人間像を実現するためには 日々展開される様々な学びを通して 社会が人を育み 人が社会をつくる という好循環を生み出すなど 実際に回り始める 仕組み を作り上げることが大切です 例えば 世代や立場などが異なる様々な市民が 学びを仲立ちとして出会い そこでの学びが人と人とのつながり いわゆる地域コミュニティ 38 の形成 活性化へとつながり さらに この地域コミュニティが核となって 次なる学びの深化が図られるということなどが想定されます このように 市民ぐるみで支え合う仕組み を作り上げることで 一人一人の生涯にわたる学びと実践の循環が生まれ ひいてはまちづくりの活力の源となります 38 地域コミュニティ 地縁 血縁 文化的背景 価値観などに基づく共同体のうち 地縁的な要素の大きいもののこと

第1そして こうした環境の中で育ち 成長した世代が 自然体で次世代と学びを支え合うようにな章り 世代間の循環につながることも期待されます 以上を踏まえて 今後 10 年間で 自立した札幌人 を実現するため 以下の三つの基本的方向第2性から教育施策を展開していきます 章自ら学び 共に生きる力を培う学びの推進第多様な学びを支える環境の充実3章市民ぐるみで支え合う仕組みづくりこれらの基本的方向性は それぞれが独立しているのではなく 環境の充実や仕組みづくりによっ第て学びが推進される一方 学びを進めていく中で環境の改善や仕組みを見直す必要性が生まれるな4ど 相互に関連しているものです 章基本的方向性 1 自ら学び 共に生きる力を培う学びの推進基本施策 背景 変化が激しく 一層複雑化する社会にあっては 与えられた情報を短期間に覚え 正確に再生す る力だけではなく 身に付けた知識や教養と それらを生かした柔軟な思考力を発揮して 新しい 価値を創造したり 個人や社会の多様性を尊重しつつ 異なる他者と協働したりする能力等が求め られています また 多様な知識が次々に生み出され 急速に流通していく中 一律の正解が見いだされないよ うな課題が複雑に生起しており 自分が社会にどのように貢献しているのかを感じづらくなってき ています そのような中にあっては 自己肯定感を高めるとともに 自分の夢を描きつつ 自己の 実現に向けて意欲的に取り組もうとする心を養うことが必要です そして 生涯にわたり 自分に必要な知識や能力を自ら認識し それらを身に付け 他者との関 わり合いや実生活の中で活用し 実践できるような主体的 能動的な力が必要とされています 展開の考え方 本計画では 市民一人一人が 生涯にわたって主体的に学び続けることができるよう 学校教育 と生涯学習における縦の接続と横の連携を強化し 自ら学び 共に生きる力を培う学びの推進 を図りながら 自立した札幌人 として必要な資質や能力を育みます 第5そのために 幼児期から初等中等教育段階 ( 小学校から高等学校まで ) の学校教育においては 学章ぶ力 - 知 豊かな心 - 徳 健やかな身体 - 体 の調和を図りながら 生きる力 を育むため 主体的に学ぶ意欲につながる 自ら学ぶ喜び や 孤立することなく他と関わりながら自立しようとする意欲につながる 共に生きる喜び を それぞれ実感できるような教育を推進していきます あわせて どこにあっても ふるさと札幌への思いを心にもち 国際的視野ももって活躍できる資よう 自らのアイデンティティーとしての ふるさと札幌のよさ を実感しつつ 豊かな創造力料を育む 教育を推進していきます 編また 生涯学習の観点からは 子どもから大人までの市民が 自ら学ぶことや相互の学び合いを 26

第1章第2章第3章第4章基本施策 5章資料編27 第支援 促進することを通じて 学びを媒介とした人と人とのつながりや支え合いの豊かな関係性を創出するとともに 学びの成果を地域や札幌のまちづくりに生かすなど 継続的 自発的な学習活動を支援する総合的な施策を推進していきます そして これらの教育施策の展開に当たっては 途切れることのない一貫性 連続性のある学びを実現するための学びの場の連携が大切です また 共生社会の形成に向けて 障がいのある方々の自立と社会参加を目指し 一人一人の教育的ニーズに応じた指導や支援を行う特別支援教育の推進を図っていきます 基本的方向性 2 多様な学びを支える環境の充実 背景 子ども一人一人の能力を伸ばしつつ 社会において自立して生きる基礎を培うに当たっては 安心して学ぶことができる学校教育の環境整備は不可欠であり また 生涯学習社会における豊かな学びを実現するためには 多様な学びの環境が整備されることが基本的に保障されなければなりません 展開の考え方 自立した札幌人 の実現に向けて 基本的方向性 1 自ら学び 共に生きる力を培う学びの推進 を行うに当たっては 市民一人一人が 多様なニーズに応じた学びの機会を得ることができるよう 各成長段階での良質な教育の機会の保障の観点から 多様な学びを支える環境の充実 を図ります そのために まずは子どもの学びの中心である学校において 安心で信頼される体制づくりに努めるとともに 自然環境や機能性などにも配慮した安全 安心な施設整備等を行っていきます あわせて 札幌市全体の子どもの学びを支える観点から 豊かな質の高い教育環境の構築を行っていきます 生涯学習の観点からは あらゆる市民に生涯にわたって学ぶ機会を提供できるよう 多種多様な学習活動を支える生涯学習関連施設や図書館などの充実を図ります また 環境整備は 施設 設備を中心とする側面だけではなく 子どもに対する様々な支援体制などの側面も必要となります 子どもにとって学校での身近な存在である教職員については 個々の教育指導の意識や技術などの資質 能力を高めるとともに それを十分に発揮し 子ども一人一人に寄り添い 健やかな成長を支えていけるような取組を充実させていきます さらに いじめや不登校をはじめ 様々な要因により学校での学びに不安や悩みを抱える子どもが安心して学べるよう 子ども一人一人の状況に応じた支援体制を構築します 基本的方向性 3 市民ぐるみで支え合う仕組みづくり 背景 人口減少と少子高齢化が進行し 社会への参加意識の低下や人間関係の希薄化などの課題が指摘される一方 東日本大震災を契機に地域コミュニティの重要性が見直されている中にあっては 学校 家庭 地域がそれぞれの教育力を高め 共に手を携えていくことがますます重要となっています 現在 札幌市では 年間 1 万 5 千人を超える市民が様々な形でボランティアとして学校の教育活動に参画するとともに 子どもが地域の活動に参加する取組も進められています 今後より一層

第1学校 家庭 地域が実効性のある双方向の連携を図り 学びを通じたコミュニティの形成を積極的章に進めていく必要があります 展開の考え方 第2 自立した札幌人 の実現に向けて 基本的方向性 1 自ら学び 共に生きる力を培う学びの推進 章を行うに当たっては 市民一人一人が 学びを仲立ちとして相互に連携 協力するとともに この関係性が市内各所で定着して学びのコミュニティが形成されるよう 市民ぐるみで支え合う仕組みづくり に取り組みながら 全ての市民が 自立した札幌人 として必要な資質や能力を高めて第いくことが大切です 3章そのために 地域の潜在的な教育力を発掘し 商店街や企業などを含む地域の方々の学校教育への参画を促すとともに 子どもの地域活動への興味 関心を高め 参加を促進する環境整備を進めるなど 学校と地域が相互に結びつき 支え合う仕組みを整えます 第また 家族形態や社会構造の変化に伴い 家庭の教育力が低下している中 全ての家庭が子ども4の育ちや学びを支える主体の一つとしての意識を高め 力を付けていくことが必要です 章さらに 地域や学校が 支援を必要とする家庭を支える仕組みづくりに取り組むことで 家庭の教育力の一層の向上を図り 社会全体で子どもを支えていくことができるよう努めます 基本施策 第5章資料編28

第1章第2章5章資料編3 札幌市教育ビジョンの全体像 < 札幌市の教育が目指す人間像 > 第3章第4章基本施策 自立した札幌人 未来に向かって創造的に考え 主体的に行動する人心豊かで自他を尊重し 共に高め合い 支え合う人ふるさと札幌を心にもち 国際的な視野で学び続ける人 第< 基本的方向性 > 29