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Transcription:

[ 筆頭代表幹事提言 ] こども保険 など幼児教育 保育無償化の財源 使途について 1. はじめに 平成 29 年 6 月 19 日 一般社団法人岐阜県経済同友会 筆頭代表幹事中村正 昨年の我が国の出生数は 現在の手法で統計を取り始めた 1899 年以降初めて 100 万人を割り込んだ ( 厚生労働省人口動態統計 ) 企業にとって将来の働き手が減少していくのは最大の経営課題である 国民にとっても社会保障制度を維持する面で大きな不安定要素を抱えることになる 子どもを持てる社会づくりは我が国の喫緊の課題である 骨太の方針 ( 政府の経済財政運営の基本方針 /6 月 9 日閣議決定 [ 参考 1]) は幼児教育 保育の早期無償化について言及し 財源の選択肢として1 財政の効率化 2 税 3 新たな社会保険方式 ( 自民党から提案されている無償化を社会保険料の引き上げで賄う こども保険 [ 参考 2])- を挙げている 企業経営者の立場から財源 使途などについて次の通り提案する 2. 財源 子育てを社会全体で支える必要があること 少子化リスクは全国民に及ぶことから 無償化は消費税など税負担で賄うのが原則である たとえば 消費税率を1% 引き上げれば 2 兆 5,000 億円程度の税収増となるが この増収分の使途を限定し無償化の財源とすることが考えられる しかし 現実的には 1 少子化対策が待ったなしの状況にあること 2 我が国が極めて厳しい財政状況にあること 3 増税論議に費やす政治的コスト - を踏まえると 消費税を中心に税負担のあり方について国民の考え方が定まるまでの緊急避難措置として 社会保険料を引き上げて財源に充てるのはやむを得ないと考える ただ 税で賄うのが原則であるから たとえば 高齢者から年金を通じて介護保険料を徴収するように すべての国民から社会保険のあらゆるチャンネルを利用して保険料を徴収すべきである この点について高齢者からは徴収せず代わりに医療 介護の給付改革を進めることで保険料を免除するといった考え方があるが 現役世代の理解を得るのは困難である 財政 ( 歳出 ) の効率化については 最も大きな課題である社会保障改革がスピード感を持って解決されるとは思えない 全国民に負担を課すのを踏まえ 国会議員が定数削減など 身を切る改革 を実施しても財政効率化の起爆剤とはなるものの 財源として成立するわけではない 1

なお こども保険 は子どもを持っていない人も保険料を負担しながら給付を受けられないことから 保険原理とは相いれないとする批判がある しかし 1 民間保険と公的保険は自ずと性格が異なること 2 当保険の目的は ( 子どもが必要な保育 教育等を受けられないために ) 少子化が進行することで国民が不利益を受けるリスクを社会全体で支える と捉えることができることから 保険の一形態として受け止めている 3. 新たな社会保険方式 ( こども保険 ) で集めた保険料の使途 幼児教育 保育の無償化以外にも 企業主導型保育事業 ( 会社がつくる保育園 [ 参考 3]) の推進のために活用する 1) 幼児教育 保育の無償化 こども保険 では一律に現金給付することを提案しているが 所得制限を設けるべきである こども保険 の財源規模 ( 保険料率 0.5% 案 の場合 ) は試算で 1 兆 7,000 億円とされているが 仮に所得制限により 10% 削減できれば 1,700 億円の財源を捻出できる 給付方式はバウチャー ( 個人が政府から受け取る使い道が限定された利用券 ) 方式とする 児童手当の目的は 児童の健全育成に加え 家庭等における生活の安定 ( 児童手当法第 1 条 ) で現金給付が適当であるが 当保険は幼児教育 保育の無償化を目指すものであるから 政策効果を確実にするバウチャー方式を採用すべきである たとえバウチャー方式であっても 国が少子化対策に本気で取り組む強力なメッセージとなる 2) 企業主導型保育事業の推進 所得制限で生まれた財源は 企業主導型保育事業を推進するために活用し 待機児童解消や女性活躍を促す 当事業の本年度予算額は約 1,300 億円であるから 所得制限により捻出される 1,700 億円と合わせると 約 3,000 億円の財源を確保できる 東京都では今 保育所整備が女性就労を後押しし それが新たな保育需要を生み出している この現象を見る限り 現在は待機児童がゼロの地方都市でも保育所整備を推進すれば 家庭に留まっている女性の就労を促し 保育需要が増加することが予想される 岐阜県の場合 出産 子育て期において離職する女性の割合が全国に比べて高いが 再び就労するための支援として子育て施設の整備を望む声が多い ( 岐阜県女性の活躍推進に関する調査 / 岐阜県 ) 加えて 通勤に自動車利用が多い本県では 子どもを持つ働き手にとって企業主導型保育所の設置は利便性が高いことも踏まえると 当事業の推進は人手不足が課題となっている県経済のプラス材料になる 2

ただ 当事業を推進する際に重要なのは 経営基盤が弱く子どもを持つ従業員が少ない中小企業でも企業主導型保育所を持てるように たとえば 複数企業による共同設置や 他の企業が設置した保育施設に自社従業員の子どもを受け入れてもらう共同利用の方式を取る場合には 整備費や運営費の助成を手厚くするなど中小企業に配慮したシステムが必要である 財源は保育の質の向上にも活用する 保育に携わる保育士以外の従事者の研修をさらに充実させるほか チェック機能を強化して事故リスクを減らす万全の体制を取る そうすることで企業主導型保育所を質量ともに充実させ 我が国 特に地方における子育てと仕事の両立に欠かせないインフラにまで高める 社会全体に広く負担を求める以上 使途は多くの国民 企業の支持が不可欠である 当事業の推進は 財源の多くを負担する働き手と企業の意向に沿うほか 企業主導型保育所は地域住民も利用できるので厚生年金適用事業所以外の自営業者などにも支持されると考える 政府は今後 東京都など大都市圏の待機児童解消に当たり 大規模マンションでの保育園の設置促進 高騰した保育園の賃借料への補助などの対策を取る もちろん引き続き喫緊の課題として対処する必要があるが 東京一極集中が加速する現在の状態が続く限り解決するのは困難である 大切なのは政府関係機関や企業の地方移転などを強力に進めると同時に 保育所スペースを確保しやすい地方都市において当事業を推進し 企業皆保育所 < 希望する企業すべてに質の高い保育所が設置されること ( 共同設置や共同利用等を含む )> を目指すなど 子どもを持てる社会づくりを地方において着実に進めていくことである 広く全国各地から集められる保険料は 当事業推進のためにも活用されるべきである 4. 企業の負担 企業においては 失業率の低下から雇用保険料率が近年引き下げられているものの 最低賃金の上昇 人手不足などで人的コストは高くなっている 企業は現在 子ども 子育て拠出金 [ 参考 4] を支出しており 児童手当や企業主導型保育事業などに充てられているが こども保険 により社会保険料が引き上げられれば負担感は一層強くなる 地方の中小企業が負担増から賃金を抑制すれば家計収入の減少を招き 地方経済に負の影響をもたらす可能性がある 拠出金の率は子ども 子育て支援法により 上限が < 厚生年金加入者の標準報酬総額 0.25%> と定められており 現在は 0.23% が適用されている こども保険 が実施される場合には 現行の率のまま据え置くなどの配慮が必要である 以上 3

参考 1 骨太の方針 - 関連部分の要旨 - 幼児教育 保育の早期無償化や待機児童解消に向け 財政の効率化 税 新たな社会保険方式の活用を含め安定的な財源確保策を検討し年内に結論を得る 2 こども保険 こども保険 とは 幼児教育 保育の無償化を実現するため 財源を社会保険の引き上げ分で賄う構想 小泉進次郎氏ら自民党若手議員でつくる 2020 年以降の経済財政構想小委員会 が今年 3 月にまとめた 制度設計等は次の通り

[ 出所 こども保険 の導入 ~ 世代間公平のための新たなフレームワークの構築 ~] 3 企業主導型保育事業 ( 会社がつくる保育園 ) 企業が従業員のための保育施設を設置する際に整備費 運営費を助成する制度 待機児童解消のための保育の受け皿として 2016 年 4 月から内閣府により実施された 従来の 事業所内保育事業 とは異なり 市区町村の認可を必要としない認可外保育施設だが 認可施設並みの助成が受けられる 複数の企業が共同で設置することや 他企業との共同利用が可能 地域住民が利用できる 地域枠 を設けて運営できる 運営は保育事業者に委託することも可能

[ 内閣府作成チラシより ] 4 子ども 子育て拠出金 厚生年金保険の被保険者を使用する事業主が 全額負担する拠出金 ( 被保険者の負担はない ) 児童手当 放課後児童クラブ 企業主導型保育事業などの財源となる 拠出金額は 使用する被保険者個々の標準報酬月額及び標準賞与額に 子ども 子育て拠出金率を乗じて得た額の総額 子ども 子育て拠出金率は 平成 29 年度から 1000 分の 2.3 に引き上げられた ( 平成 28 年度は 1000 分の 2.0 平成 27 年度は 1000 分の 1.5) 法定の上限は 1000 分の 2.5 以上