本文_平成30年度 土木技術支援・人材センター年報.indd

Similar documents
i-Construction型工事の概要 (素案)

<4D F736F F F696E74202D A957A A81798CBB8FEA8C9F8FD8826F A DB91B6817A2E505054>

出来形管理基準及び規格値 単位 :mm 編章節条枝番工種測定項目規格値測定基準測定箇所摘要 1 共通編 2 土工 3 河川 海岸 砂防土工 2 1 掘削工 基準高 ±50 法長 l l<5m -200 l 5m 法長 -4% 施工延長 40m( 測点間隔 25m の場合は 50m) につき 1 箇所

JCM1211特集01.indd

<4D F736F F F696E74202D F18B9F8E9197BF A43494D95818B A4A8C9F93A282CC82BD82DF82CC8AEE916292B28DB881758C9A9

出来形管理基準及び規格値 単位 :mm 編章節条枝番工種測定項目規格値測定基準測定箇所摘要 1 共通編 2 土工 3 河川 海岸 砂防土工 2 1 掘削工 法長 ç 基準高 ±50 ç<5m -200 ç 5m 法長 -4% 施工延長 40m( 測点間隔 25m の場合は 50m) につき 1 ヶ所

BIM/CIM 活用における 段階モデル確認書 作成マニュアル 試行版 ( 案 ) 平成 31 年 3 月 国土交通省 大臣官房技術調査課

i-construction ~ 建設現場の生産性革命 ~ 建設業は社会資本の整備の担い手であると同時に 社会の安全 安心の確保を担う 我が国の国土保全上必要不可欠な 地域の守り手 であることから 建設業の賃金水準の向上や休日の拡大等の働き方改革による生産性向上が必要不可欠 国土交通省では 平成 2

1. 河川 道路関係 ICT の全面的な活用の推進に関する実施方針 ( 平成 31 年度 ) 要領名 U R L ICT の全面的な活用の推進に関する実施方針 ( 平成 31 年度 ) 別紙 (1から23) 一式ダ

<4D F736F F F696E74202D E372E CF6955C A F548B FA8EC08E7B8FD896BE8F D8D87955D89B

SK (最終161108).xlsx

I. 担い手の確保 育成 週休 2 日チャレンジサイト を開設し 週休 2 日の確保に取り組む現場や様々な取組の共有を図り 建設業の取り組む 働き方改革 を応援します 新規 1 整備局ホームページ内に 週休 2 日チャレンジサイト を開設し 週休 2 日の確保に取り組む企業 ( 工事 ) を紹介して

業界で躍進する 工事現場 の 要 登録基幹 技能者 登録基幹技能者制度推進協議会 一財 建設業振興基金

Microsoft Word - ICT土工における実際の効果と課題について_0123修正2

Microsoft PowerPoint - 建設ICTとは?.ppt

<4D F736F F D EBF8AC7979D8AEE8F BD90AC E A82CC89FC92E88A E646F63>

働き方改革実現に向けた週休二日の取得に関する取組について 直轄工事における週休二日取得の取り組み 施工時期の平準化適正な工期設定 週休二日算定が可能な 工期設定支援システム の導入 工事着手準備期間 後片付け期間の見直し 余裕期間制度の活用週休二日を考慮した間接費の補正 < 週休二日対象工事 > 対

Microsoft Word - ★01H26試行工事.doc

5 H H H H 管理技術 (TS 出来形管理 ( 土工 )) 管理技術 (TS 施工技術 (TS 施工技術 (TS 土質形状が当初と違うものであった そのため 新たに設計データを作成し 土質の変化毎に TS による計測を実

スライド 1

目次 1.CALS システム利用から完了までの流れ 2 2. 納品データの登録 書類の提出 決裁 納品物を作る 5 3. 納品情報の入力 案件基本情報 書類納品情報 写真 図面等の納品情報 電子納品媒体作成 一括

プレゼンテーションタイトル

タイトル

Microsoft PowerPoint - 【資料6】業務取り組み

*17

表紙1_4

202000歩掛関係(151001) END.xls

第三者による品質証明制度について 参考資料 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

テーマ : コンクリート舗装工事の効率化に貢献する技術 〇技術公募の対象とする技術 コンクリート舗装に関する新設工事あるいは補修工事の効率化に資する技術であること 施工管理の効率化に資する技術であること 国土交通省 土木工事施工管理基準及び規格値 の出来形の規格値を満たすこと 舗装の構造に関する技術

土木工事書類スリム化ガイドの発行にあたり 関東地方整備局では 平成 20 年度の 土木工事書類作成マニュアル 策定を契機に 工事書類の簡素化に努めています また 平成 27 年度より 工事書類の提出方法を事前協議で明確にすることで 紙媒体の提出に加えて電子データを提出する二重提出の防止に向けて取り組

CAD事例集(大本組)

Ⅱ. 意見を交換するテーマ 1. 社会資本整備の進め方 (1) 公共事業予算の安定的 持続的な確保わが国経済は緩やかな回復基調にあるものの個人消費や民間投資は力強さを欠いており デフレからの完全脱却と安定的成長を実現する経済財政運営が 引き続き求められている 公共投資は内需を下支えするフローの経済効

<4D F736F F F696E74202D208FEE95F189BB8E7B8D B6790EC836F815B A E B8CDD8AB B83685D>

全建事発第 号 平成 30 年 12 月 27 日 各都道府県建設業協会会長殿 一般社団法人全国建設業協会会長近藤晴貞 公印省略 高力ボルトの需給安定化に向けた対応について ( 協力要請 ) 平素は本会の活動に対しまして 格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます さて 標記につきまして 国

Microsoft PowerPoint - 測量へのUAVの導入に向けた検討状況について

【手引き】完了時の手続について

( 対象工事等 ) 第 3 条 (1) 設計業務等は 全件実施とする ただし 建物調査及び工損調査 ( 以下 建物調査等とする ) や現場技術業務委託等については 試行とする (2) 土木工事の写真については 当初設計金額が1,000 万円以上のものは 実施とする また 当初設計金額が1,000 万

平成 29 年 6 月 1 日 ( 木 ) 国土交通省関東地方整備局企画部 記者発表資料週休 2 日の達成を目指す試行工事をスタートします ~ 建設業が取り組む 週休 2 日の定着 を発注者としてサポート ~ 関東地方整備局においては 平成 27 年度から 週休 2 日確保試行工事 ( 以下 試行工

KEN0109_施工技術の動向-三.indd

生産性向上に関する経緯 平成 28 年 1 月 4 日 1 国土交通大臣会見 1 平成 28 年 3 月 7 日 1 国土交通省生産性革命本部 ( 第 1 回会合 ) 2 平成 28 年 4 月 11 日国土交通省生産性革命本部 ( 第 2 回会合 ) 平成 28 年 8 月 31 日国土交通省生産

無人航空機に係る許可承認の内容平成 30 年度 地方航空局担当関係 ( 平成 29 年度の文書番号のもの ) 132 条 132 条の 2 1A: 進入表面 転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面 円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域又は航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとし

平成30年度事業計画書(みだし:HP用)

高性能 AE 減水剤を用いた流動化コンクリート 配合設定の手引き ( 案 ) - 改訂版 - 平成 21 年 6 月 国土交通省四国地方整備局

土木工事標準積算基準書1

< D92E8955C81698D488E968AC4979D816A2E786C73>

別紙 1 提出書類一覧様式番号 様式 1 様式 2-1 様式 2-2 様式 3 様式 4 様式名 施工体制確認調査報告書積算内訳書内訳明細書工程計画配置予定技術者名簿 次に該当する場合は 様式 4を提出する必要はありません 一般競争入札の場合 ( 開札後に提出のある 配置予定技術者の資格 工事経歴報

図 維持管理の流れと診断の位置付け 1) 22 22

国土技術政策総合研究所資料

Ⅱ 取組み強化のためのアンケート調査等の実施 (1) 建設技能労働者の賃金水準の実態調査国土交通省から依頼を受けて都道府県建設業協会 ( 被災 3 県及びその周辺の7 県を除く ) に対し調査を四半期ごとに実施 (2) 適切な賃金水準の確保等の取組み状況のアンケート調査国は 平成 25 年度公共工事

(Microsoft Word -

sangi_p2

資料の一部を省略することが出来る無人航空機 No. 製造者名称 ( 型式 ) 最大 離陸重量 確認した飛行形態の区分 ( 申請書の飛行形態区分 ) 確認日 1 PHANTOM 1 1.2kg A/B/C 注 1 /D 2016/5/24 2 PHANTOM 2 1.3kg A/B/C 注 1 /D

Microsoft Word - パンフ原稿.doc

04 工程管理.xdw

スライド 1

公共建築改善プロジェクト(仮)

Microsoft Word - 1-1情報共有システム運用ガイドライン(案)改定案.doc

<8D488E96985F95B62E786C73>

ICT 活用工事 ( 土工 ) の流れ 1

取り組みの背景目的計測点群処理の課題とポリゴン活 体制機能概要と本システムの特徴機能詳細システム構成問合せ先

<4D F736F F D2093B998488E7B90DD8AEE967B B835E8DEC90AC977697CC2E646F63>

H28秋_24地方税財源

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - CHIYODA_EXPO2017.pptx

Q&A 集 Q1 社会保険等とは何か A1 社会保険等とは 健康保険 ( 協会けんぽ 健康保険組合等 ) 厚生年金保険 及び雇用保険をいいます Q2 国民健康保険組合に加入しているが 社会保険等未加入建設業者となるのか A2 法人や常時 5 人以上の従業員を使用する国民健康保険組合に加入している建設

<819B81798CF68A4A94C5817A E7B8D488AC7979D8AEE8F EA959489FC92F9816A5F E786C7378>

<4D F736F F D FC92E881698AC48E8B8AAF816A89F090E B95B62E646F6378>

018QMR 品質計画書作成規程161101

中央建設業審議会による提言について ( 平成 24 年 3 月 14 日 ) 建設産業における社会保険の徹底について ( 提言 ) 建設産業においては 下請企業を中心に 雇用 医療 年金保険について 法定福利費を適正に負担しない企業 ( すなわち保険未企業 ) が存在し 技能労働者の医療 年金など

<93798D488E7B8D488AC7979D977697CC E37817A2E786477>

Microsoft Word - 【外務省】インフラ長寿命化(行動計画)

2.別紙-1 UAV等を用いた公共測量実施要領

Taro-通知文

にしうすきひのがげちょう宮崎県西臼杵郡日之影町ふかすみきた 宮崎 218 号深角北地区改良工事 発注者 : 九州地方整備局延岡河川国道事務所受注者 : 日新興業 土工量 : 約 47,000m3 ICT の活用を積極的に取り入れ UAV による起工測量から GNSS 測量機器や MG 機械 GPRo

A4 経営事項審査の受審状況により確認方法が異なります なお 適用除外は 労働者の就業形態等によって適用除外とならない場合もあることから 元請負人は 年金事務所等に適用除外となる要件を確認した上で判断してください 経営事項審査を受審している場合 有効期間にある経営規模等評価結果通知書総合評定値通知書

屋内 3 次元 測位 + 地図 総合技術開発 現状 屋内 3 次元測位統一的な測位手法 情報交換手順がなく 共通の位置情報基盤が効率的に整備されない 技術開発 屋内外のシームレス測位の実用化 (1) 都市部での衛星測位の適用範囲拡大 (2) パブリックタグ 屋内測位の標準仕様策定 効果 3 次元屋内

工事名 : 工事工事番号 : 第 - 号工事場所 : 市 町 工事落札者決定基準 落札者決定基準 高度技術提案型 (PC 橋 ) 農林部 分類 評価 ( 審査 ) 項目 評価 ( 審査 ) 内容 評価 ( 審査 ) 基準 配点 技 術 提 案 書 技術提案に係る項目 総合的なコストの縮減に関する項目

資料の一部を省略することが出来る無人航空機 No. 製造者名称 ( 型式 ) 最大 離陸重量 確認した飛行形態の区分 ( 申請書の飛行形態区分 ) 確認日 1 PHANTOM 1 1.2kg A/B/C 注 1 /D 2016/5/24 2 PHANTOM 2 1.3kg A/B/C 注 1 /D

Microsoft PowerPoint - (修正4)電子納品の手引き案新旧対照表H30.4.1

2. 提出資料一覧表 落札予定者に求める提出資料は 要請書に示す調査区分 ( 基本調査または重点調査 ) に応じて下表に を付している内容とする なお 調査区分が 基本調査 の場合は 3 頁 ~4 頁に基づき作成すること 調査区分が 重点調査 の場合は 5 頁 ~7 頁に基づき作成すること 様式番号

目 次 Ⅰ. 下水道土木工事施工管理基準及び規格値 1. 目的 1 2. 適用 1 3. 構成 1 4. 管理の実施 1 5. 管理項目及び方法 2 6. 規格値 2 7. その他 2 表 -1 出来形管理基準及び規格値 ( 管渠工事 ) 3 表 -2 出来形管理基準及び規格値 ( 処理場 ポンプ場

Microsoft PowerPoint - ICTã…Šã…�ç€fl_CIM玺表.ppt [äº™æ‘łã…¢ã…¼ã…›]

1. 生産性向上について建設現場での週休二日を拡大 定着させるためには 一層の生産性向上を進め 工期の延伸をできる限り抑制する必要などがあります このため 日建連では 2020 年までを対象期間とした 生産性向上推進要綱 を策定し 発注者 設計者 コンサルタントも巻き込んで生産性向上に取り組むことと

1 i-construction の実践 Contents 1. カナツ技建工業株式会社の紹介 2. i-construction への歩み 3. ICT 活用工事における試みと効果 4. ICT 活用の課題と今後の展開

Microsoft PowerPoint - 情報化施工概要【H 説明会】

Top message Contents Top message CTI Engineering CSR REPORT 2017 CTI Engineering CSR REPORT

Microsoft PowerPoint - ③ 測量設計_受注者編_公表用(Ver1).pptx

一般社団法人送電線建設技術研究会関西支部社会保険等の加入促進計画 1. はじめに 平成 27 年 4 月 24 日制定 建設産業においては 健康保険 厚生年金保険及び雇用保険 ( 以下 社会保険等 という ) の 1 法定福利費を適正に負担しない企業が存在し 技能労働者の医療 年金など いざというと

資料の一部を省略することが出来る無人航空機 No. 製造者名称 ( 型式 ) 最大 離陸重量 確認した飛行形態の区分 ( 申請書の飛行形態区分 ) 確認日 1 PHANTOM 1 1.2kg A/B/C 注 1 /D 2016/5/24 2 PHANTOM 2 1.3kg A/B/C 注 1 /D

000総括表001.xls

2) 受注者希望型当面の間 ( 標準歩掛制定までを想定 ) 原則として 受発注者で協議し 見積もり方式による精算変更を行う ただし UAV 写真測量および地上レーザ測量における機械経費等は算定式による計上を原則とする なお 導入にあたっては 通常の測量の積算よりも過度に費用があがらないように 見積を

イドライン が策定されたところです こうした中 平成 30 年 6 月 29 日に第 196 回通常国会で成立した 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律 ( 以下 働き方改革関連法 という ) に基づく改正後の労働基準法において 建設業については 平成 31 年 4 月の法施行から5

2 採用する受注者選定方式の検討について廃棄物処理施設整備事業で一般的に採用されている受注者選定方式は表 -2のとおりです 受注者選定方式の検討に際しての論点を下記に整理しましたので 採用する受注者選定方式について審議をお願いいたします 本施設に求められる5つの整備基本方針に合致した施設の整備運営に

福井県建設リサイクルガイドライン 第 1. 目的資源の有効な利用の確保および建設副産物の適正な処理を図るためには 建設資材の開発 製造から土木構造物や建築物等の設計 建設資材の選択 分別解体等を含む建設工事の施工 建設廃棄物の廃棄等に至る各段階において 建設副産物の排出の抑制 建設資材の再使用および

PowerPoint プレゼンテーション

平成20年度における物品調達等制限付一般競争入札試行の概要

< F2D8E9696B D2E6A7464>

LED 道路 トンネル照明の設置に関する補完資料 Ⅰ LED 道路照明 ( 連続照明 ) の設置について 道路照明のうち連続照明の設計については 道路照明施設設置基準 同解説に基づき 性能指標 ( 規定値 ) 及び推奨値 ( 以下 性能指標等 という ) から所定の計算方法により設置間隔等を算出し

無人航空機に係る許可承認の内容令和元年度 地方航空局担当関係 ( 平成 31 年度の文書番号のもの ) 132 条 132 条の 2 1A: 進入表面 転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面 円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域又は航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土

< F2D81798E9197BF817C A95BD90AC E >

Transcription:

平 30. 都土木技術支援 人材育成センター年報 ISSN 1884-040X Annual Report C.E.S.T.C., TMG 2018 3. 建設局の生産性向上に向けた取り組み Attempt of Productivity Improvement with The Bureau of Construction 技術支援課材料施工担当課長代理 石田教雄 1. はじめに我が国におけるインフラの整備 維持管理を支える建設産業は 技能労働者約 340 万人のうち 今後 10 年間で約 110 万人が高齢化等による離職の可能性があり また 若年者の入職が少なく 29 歳以下の技能労働者の割合は全体の約 1 割に留まっているなど マンパワー不足に陥っている 生産年齢人口が減少することが予想されている中 建設分野において 生産性向上は避けられない課題である そのような状況のなか 国土交通省は平成 27 年 11 月 24 日に建設現場の生産性向上を目的として i- Construction を導入すると発表した i-construction は 施工時期の平準化 ICT 技術の全面的な活用 ( 土工 ) と 規格の標準化( コンクリート工事 ) の 3 つの柱を軸に 労働者数が減っても生産性が向上すれば 経済成長を確保することが可能とするものである 建設局では i-construction を局事業に適用させるにあたり 都内特有の施工条件や規模等を十分に配慮しつつ導入するために 建設現場の生産性向上に関する検討 PT を立ち上げた その内容について報告する 2. 検討対象とする施策国土交通省が推進する i-construction の3つの施策のうち 二つの施策 ICT 技術の全面的な活用 ( 土工 ) と 規格の標準化 ( コンクリート工事 ) の取組内容について局事業への適用性を検証するとと もに 局事業に即した生産性向上に資する技術導入に向け検討を行った なお 施工時期の平準化 に関しては 財務局を中心に全局的に取り組んでいるところであるが本編では割愛する 3.ICT 技術の全面的な活用 ( 土工 ) 業界団体の意見情報化施工 (ICT 土工 ) に関する発注者と受注者の認識に乖離がないか PTが以下の業界団体にアンケート調査を行った ( 一社 ) 日本建設業連合会関東支部 ( 一社 ) 建設コンサルタンツ協会 ( 一社 ) 東京都建設業協会 ( 一社 ) 日本建設機械工業会 ( 一社 ) 日本建設機械施工協会 ( 一社 ) 日本建設機械レンタル協会 ( 一社 ) 日本写真測量協会 ( 一社 ) 日本測量機器工業会 ( 一社 ) 日本道路建設業協会一般財団法人日本建設情報総合センター導入による効果 ICT 技術導入により 施工や施工管理における工期短縮 労働力縮減 品質確保 安全確保の効果を挙げる意見が多く 特に丁張の設置とオペレータの丁張確認 および出来形確認のための測量作業の減少による施工効率の向上を挙げる意見が多い また 現場での測量作業が減少することで 重機と測量作業者との交錯が減り安全性が向上するとした意見も多い - 173 -

MachineControl の導入では オペレータの技量に関係なく高品質な施工が可能となったとする意見が多い 導入する際の課題導入にあたっては 機材等の導入コスト 技術を有する人材の確保 UAV(Unmanned Aerial Vehicle ドローン ) を使用する際の航空法をはじめとする法規制などが制約となる意見が多い 小規模工事は コストメリットが得られないことから 適用工事の選別にあたっては 施工規模 施工箇所等の考慮を訴える意見がある 衛星や通信等の電波が建物等により遮蔽され必要な精度が確保できないとする意見もある 図 -1 都心部の受信イメージ ICT 土工施工事例 ICT 土工の適用性を確認するために試験施工の現場を確認した 以下にその概要について示す 都市部特有の施工環境 ICT 重機の特性 ICT 重機は GNSS 衛星からの電波を受信 自機の X,Y,Z 座標を取得 設計面との関係を計算して施工するものである 理論上は4 個以上の衛星で座標取得は可能であるが 受信個数が少ないと位置精度が落ちてしまい GNSS による ICT 土工を中止せざるを得なくなってしまう また 衛星の配置は仰角 <15 ~ 天頂であることが望ましい ICT 重機を活用した工事を計画する場合は 設計段階において GNSS の受信環境を確認する必要があり その簡便な方法の一例として 内閣府のホームページに記載されている GNSS-View などで確認できる ただし 緯度経度が分までしか入力できないので最終的にはメーカーに確認すべきと考える 国交省の ICT 活用工事 土工 の実施方針では 施工規模に着眼して発注者指定型や受注者希望型を振り分けているが 東京都のような市街地では図 -1 に示すように 高層ビルや高架橋などにより 受信を遮断されたりマルチパス ( 反射波 ) による誤差の混入等 国交省が提示する施工規模や施工環境が違うことなど 大都市特有の環境が存在する そのため 施工環境 ( 受信状態 ) も ICT 活用工事 ( 土工 ) 実施方針を決める際の検討対象とした 江東治水事務所工事名 : 旧江戸川 ( 江戸川二丁目地区 ) 築堤工事工事概要 : 施工延長 L=650.0m 盛土 ( 築堤 )17130m 3 掘削 370m 3 土砂運搬 12360m 3 写真 - 1 Machine Control バックフォー写真 -2 オペレータが確認する画面丁張確認ではなく モニターで確認し作業を進める 設計面に沿って刃先が動くので 熟練工でなくても施工が可能 - 174 -

紹介した現場の GNSS 受信環境は良いと見受けられたが マンション近傍での作業や時間帯によっては受信状況は変化するとのことであった ICT 重機メーカーへのヒアリングによると施工管理値は バックフォーの刃先で3cm としており その制度が確保できない場合は マシンガイダンスやマシンコントロールでの作業は行わないとしていた 建設局の現状 ( 土工規模 ) 図 2 に建設局における平成 25 年度から平成 27 年 度の土量と件数のグラフを示す ( 浚渫などは除く ) グラフが示す通り土工量 1000 m3以下が殆どである ことが分かる そのため 情報化施工 (ICT 土工 ) の 図 - 2 局内の土工量と件数 ( 浚渫などは除く ) 対象とする閾値に関して検討を行った アンケート結果を見ると 小規模現場では ICT 土工のメリットが享受できないという意見があり 試行を含め採用された土工規模は平均的な値として土工量約 10 万 m 3 施工面積で約 3 万m2の大規模土工で実施されている 小型建設重機が作業するような現場は狭隘な場所が多く GNSS の受信環境が良好ではないことが多く メーカーも小型機よりも大型機 (1.4 m3 ) 開発に重点を置いているようである したがって 建設局が扱う現場の規模や市場で入手出来る ICT 建機の規模を考慮して小規模工事への ICT 土工の適用は十分な検討を行った 検討結果 ICT 活用工事 ( 土工 ) の実施方針を図 3に示す 平成 30 年度から ICT 舗装工の新規導入に伴い 分かりやすく改定した 適用工事 : 土工 ( 掘削工 盛土工 ) 法面整形工を含む 土木工事 No 入札公告時に ICT 活用工事 ( 土工 ) に設定 土工数量 20,000 m3以上 No 土工数量 500 m3以上 Yes Yes 3 の実施が可能な環境 受注者希望型 No 適用対象外 1) 土工 施工幅員 4.0m 未満の路体 ( 築堤 ) 盛土 路床盛土 2) 法面整形工 次の現場制約がある場合 機械施工が困難な場合 一度法面整形を完成した後 局部的に浸食 崩壊を生じた場合 法面保護工を施工する前に必要に応じて行う整形作業 ( 二次整形 ) をする場合 Yes 発注者指定型 1~5 を全面活用した場合 (1) 工事成績で加点評価する (2) 必要経費は当初設計で計上 1~5 を全面または複数活用した場合 1~5 のうち一段階のみ活用した場合 ICT 活用工事 建設生産プロセスの各段階において ICT 施工技術を活用する工事 1 3 次元起工測量 2 3 次元設計データ作成 3 ICT 建機による 3 次元施工 4 3 次元出来形管理等の施工管理 5 3 次元データの納品 3 次元測量データを貸与した場合は 1 は省略することができる (1) 工事成績で加点評価する (2) 必要経費は設計変更で計上 (1) 工事成績の加点対象としない (2)ICT 活用部分のみ設計変更で計上 従来施工 受注者から希望が無かった場合 その他 ICT 建設機械の施工等 自主的な活用は妨げない 図 - 3 ICT 土工の実施方針 (1) 工事成績の加点対象としない (2) 費用は計上しない - 175 -

4.ICT 活用工事 ( 舗装工 ) の新規導入 国交省の実施要領を参考に ICT 活用工事 ( 土工 ) 同様 局の工事発注規模等を踏まえ 新たに実施要領を策定 した ( 図 -4 参照 ) 図 - 4 ICT 舗装工の実施方針 5. 規格の標準化 (PCa 製品の導入 ) について業界団体の意見導入効果導入は 工程短縮を目的とするものが最も多く その他には 安全確保 品質確保等が挙げられる 導入により 従来工法と比較して 50% 程度の工程短縮効果 人員削減効果があるとする意見が比較的多くあった 導入課題一方で費用に関しては 従来工法と比較して 150%~ 200% 程度のコストアップとなるとの意見が比較的多くあった 建設局の現状と課題現状設計段階では 現場打ちとプレキャスト製品の経済 比較を行い 安価となる現場打ちを採用する傾向にある プレキャスト導入による効果は大きい反面 導入は設計変更ではなく施工承諾となることが多い 河川工事における笠コンの場合 当初設計では現場打ちで計画された案件でも殆どの場合施工段階でプレキャスト製品を採用されていることが多い ( 写真 -3 参照 ) 写真 - 3 PC パネル - 176 -

課題狭小地 空頭制限のある現場では プレキャスト製品を分割施工することになり 工期短縮のメリットが減少する傾向がある 製作段階においては 製造会社が限られており価格競争が生じず 製品価格が高額となるとともに プレキャスト製品は現場での作業時間は短縮できるが 製品製作に期間を要することがある 検討内容中川における笠コンクリート工において 現場打ち と PC パネル の比較を行った その結果 生産性に関してはm 当りの作業人数が 2/3 になり 初期コストに関しては Pca の方が 現場打ち に比べて若干大きくなるが 過去の実績化から補修工事費を考慮した場合には Pca の方が優位となる そのため 原則として当初設計からプレキャスト笠コンクリートを採用することとした 6. 機械式鉄筋定着工法 機械式鉄筋継手工法ガイドライン平成 28 年と平成 29 年に機械式鉄筋定着 継手工法に関する二つのガイドラインが国土交通省から発表された 機械式鉄筋定着工法の配筋設計ガイドライン (H28.7) [ 機械式鉄筋定着工法技術検討委員会 ] 現場打ちコンクリート構造物に適用する機械式鉄筋継手工法ガイドライン (H29.3) [ 機械式鉄筋継手工法技術検討委員会 ] 以下にガイドラインの目的と位置づけを紹介する ガイドラインの目的機械式鉄筋定着 継手工法が適切に使用され 建設工事における生産性向上に資することを目的として 技術的な留意事項を取りまとめたガイドラインを作成することとした 本ガイドラインに示された考え方を十分理解し 効果的な機械式鉄筋定着工法が活用されることを期待す る ( 前述 両ガイドラインの要約 ) ガイドラインの位置づけ本ガイドラインは 各種 ( 現場打ち ) コンクリート構造物の品質を確保した上で生産性向上を図ることを目的として 機械式鉄筋定着 継手工法を採用するにあたり その標準的な使用方法と 設計 施工上の留意事項について示したものである 構造物の設計段階において機械式鉄筋定着 継手工法の適用を計画する際は 本ガイドラインで示した事項を理解した上で それぞれの構造物が準拠している設計基準に示されている要求性能や前提条件を満たしているかどうかの判断を適宜行うこととする ( 前述 両ガイドラインの要約 ) 以下に両工法に関しての留意点を示す < 機械式鉄筋継手工法 > 塑性化考慮箇所においては 要求性能や構造細目等について各設計基準を確認 継手性能は 公的機関による技術確認により SA 級 ~C 級まで4 段階に分類 平成 29 年 3 月 1 日現在 SA 級 19 種 A 級 58 種が公的機関の技術確認済 使用時には 最新の証明書により適用条件や品質管理方法等を確認 < 機械式鉄筋定着工法 > 塑性化考慮箇所においては 要求性能や構造細目等について各設計基準を確認 橋梁床版等 疲労荷重の影響が大きい部材はガイドラインの対象外 性能に関して 公的機関による技術審査証明を受けたものを対象 使用時には 最新の技術審査証明情報を確認 工法毎に適用できる鉄筋強度 径 コンクリート強度等が異なる 検討結果上述のとおり それぞれの構造物が準拠している設 - 177 -

計基準に示されている要求性能や前提条件を満たして いるかどうかの判断を適宜行うことを求めている 建設局の設計基準に織り込むには各製品の適用範囲 など多岐に渡っているため さらなる検討が必要と考 え 引き続き検討を行うこととした 7. 標準スランプの変更 背景 阪神淡路大震災以降 鉄筋コンクリート構造物の耐 震性能要求水準が高まり 配筋が高密度化した その結果 現場打ちコンクリート充填時の施工性低 下 充填不足が懸念されるようになり 流動性を高め たコンクリートの活用による生産性向上の必要に迫ら れた そのような中 平成 29 年 3 月に国土交通省が 流 動性を高めた現場打ちコンクリートの活用に関するガ イドライン を策定した ガイドラインの概要 土木工事では一般的に これまでスランプ 8cm のコ ンクリートを使用してきたが 配筋量の増大に伴い現 場での締固め 充填が困難なものとなっており 流動 性を高めたコンクリートを活用することで生産性の向 上を図ることが必要となった 近年 化学混和剤を適切に使用することで コンク リート品質に影響を与えず 必要な流動性を得ること が可能になっている 以上のことから 建設局内のスランプの現状を把握 するとともに検討を進めた 38% (2 件 ) 212% (3 件 ) 48% (2 件 ) 建設局工事の実態調査結果 建設局工事の実態調査では 擁壁工事や橋梁下部工 事等で施工性や品質の確保のためにスランプ値を高く している事例が確認された (25 件中 7 件で流動性を 高めたコンクリートを活用 )( 図 -5 参照 ) スランプ値 8cm を使用している案件でも ヒアリン グを行ったところ 現場でのスランプ試験後に流動化 剤を添加するなど 施工性の改善を行っている実態が 確認できた 検討結果 一般的な鉄筋コンクリート構造物の設計スランプ は 12cm を標準とする 現場で標準スランプ値 (12cm) 以外のスランプ値を用 いる場合は 妥当性を確認のうえ採用する 対象材料は 一般的な鉄筋コンクリート構造物用の レディーミクストコンクリートとする ( コンクリート舗装工 場所打ち杭等の水中コンク リート トンネル覆工 無筋コンクリートは対象外と する ) JIS 表記への移行について 今回 標準スランプを改定するにあたり JIS 表 記に移行することとした 例 )BB182B 普通 18-8-20BB 旧表記では下記例に示される 182 の後にくる B にス ランプ (8 cm 10 cm ) が意味されており 12 cmを示 すものは無く アルファベットを追加しなければなら ない 3 割近くの案件で流動性を高めたコンクリートを活用 172% (18 件 ) 8cm でも 流動化剤添加事例有 18cm 312cm 210cm 415cm 図 - 5 建設局工事実態調査結果 - 178 -

8.その他の検討内容 錐表面若しく外側水平表面の上空の空域 C 人口集中地区 DID の上空 ドローン(Unmanned Aerial Vehicle UAV)の有効活 用を検証 次の(A) (C)に該当する空域において 無人航空機 を飛行させる場合には あらかじめ 国土交通大臣の 許可を受ける必要がある 図-4 参照 土木技術支援 人材育成センターは A と C に 該当する ICT 土工のアンケート中に UAV ドローン を使用 する際の法規制等を障害とする意見 があったため A 空港周辺の空域 許可申請からセンター職員自ら国交省航空局の飛行許 B 地表又は水面から 150m 以上の高さ空域 空港やヘリポート等の周辺に設定されている進入表 可を取得し ドローンを操作し飛行検証を行った 面 転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面 円 図- 6 許可が必要な空域 図- 7 東京近郊の A,C に該当する地区 179

ドローンからの撮影写真 ( 写真 -4) を紹介する 遮熱性舗装を施しているセンター内敷地を撮影したものであるが 建物屋上からの撮影では斜めになってしまうところを真上から俯瞰でき 状況写真として説得性が向上した 写真 -4 遮熱性舗装空撮 9. まとめ ICT に関する技術は日々進化し それに合わせるように基準類も改訂されている 今回の検討で生産性が向上したものもあるが 都市部特有の課題もある 今後も局事業に最も適した技術を採用できるように引き続き 先を見据えた調査検討を進める予定である - 180 -