第25回税制調査会 総25-1

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(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

平成 22 年 12 月 7 日 資料 ( 資産課税 )

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

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事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

3. 住宅税制 消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を平準化し 及び緩和する観 点から 住宅税利について以下のとおり所要の措置を講じます 住宅ローン減税を平成 26 年 1 月 1 日から平成 29 年末まで 4 年間延長し その期間のうち平成 26 年 4 月 1 日から平成 29

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

平成 22 年 11 月 25 日 資料 ( 資産課税 )

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

2011年税制改正のポイント

Microsoft Word - 第58号 二世帯住宅の敷地にかかる小規模宅地等の特例

第 5 章 N

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

102 第 4 章 農業 農地の承継時の特例 資価格は 国税庁 HPの路線価ページから確認できます なお 平成 30 年度税制改正において 対象となる農地の範囲等が改正されました 詳細は 後記 6を参照してください 3 適用要件 (1) 被相続人この特例の対象となる被相続人は 次のいずれかに該当する

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

平成19年12月○日

第6回税制調査会 総6-3

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

おき 太郎様 Inheritance Report 相続診断書 税理士法人おき会計 平成 28 年 7 月 20 日作成

(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

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(1) 政策目的 多様な就業の機会を提供すること等により我が国の経済の基盤を形成している中小企業の事業承継を円滑化することにより 中小企業の事業活動の継続を実現し 雇用の確保や地域経済の活力維持につなげることを目的とする (2) 施策の必要性 全国の経営者の平均年齢は年々上昇しており 例えば資本金

2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

平成16年版 真島のわかる社労士

事業承継関連税制について 関東経済産業局 平成 30 年 6 月 中小企業金融課

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

速報!  平成27年度税制改正セミナー

Microsoft Word 役立つ情報_税知識_.doc

Microsoft Word - 第67号 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点

12. 小規模宅地等の特例の見直し 1. 改正のポイント (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用される ただし (2)1 の改正について 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしていた宅地等を平成 32 年

Microsoft Word - 第65号 二世帯住宅と小規模宅地等の特例

障財源化分とする経過措置を講ずる (4) その他所要の措置を講ずる 2 消費税率の引上げ時期の変更に伴う措置 ( 国税 ) (1) 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成 31 年 10 月 1 日とする (2) 適格請求書等保存方式が導入されるまでの間の措置について 次の措置を講ずる 1 売上げを税

( 図表 1-2) 課税割合 ( 課税対象被相続人数 / 被相続人全体 100(%) ( 注 ) 財務省公表資料による こうした中で 多くの相続税納税者にとって評価額が高額で相続税納税上の負担増が大きい一定の小 規模宅地については 課税強化への影響を緩和するため 相続税強化が行われた 2015 年に

Microsoft Word - 東日本大震災により被害を受けた場合の相続税・贈与税の取扱い

日税研メールマガジン vol.143 ( 平成 31 年 2 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 平成 31 年度税制改正大綱の解説 ( 2) 税理士金井恵美子 * 本稿では 前号 ( vol.142) に引き続き 平成 31 年度税制改正の大綱 に示された改正事

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スライド 1

2018年度税制改正大綱 - 資産税関連の主な改正点

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除 公的年金等控除から基礎控除へ 10 万円シフトすることにより 配偶者控除等の所得控除について 控除対象となる配偶者や扶養親族の適用範囲に影響を及ぼさないようにするため 各種所得控除の基準となる配偶者や扶養親族の合計所得金額が調整される 具体的には 配偶者控除 配偶

所令要綱

第 6 回令和元年度固定資産評価実務者勉強会 第 3 部 税理士による最近の各種課税評価に関するお話 講師 : 税理士 不動産鑑定士 赤川明彦 ( 株式会社土地評価センター取締役 ) copyright 2019 KOTOBUKI PROPERTY ASSESSMENT all rights res

1. 相続税 (1) 基礎控除額の引き下げ 1) 改正の趣旨現在 ( ) の相続税の仕組みは 下図の通りです すなわち 合計課税価格から 基礎控除額を除いた課税遺産総額が相続税の計算の対象となるため 合計課税価格が基礎控除額の範囲内である場合には 相続税が課税されません その結果として 現状の相続税

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住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

個人版事業承継税制の創設について 現行税制上の事業承継支援特例を踏まえた検討

1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

平成 31 年度 税制改正の概要 平成 30 年 12 月 復興庁

相続税に関するチェックリスト

平成 31 年度住宅関連税制改正の概要 ( 一社 ) 住宅生産団体連合会 平成 31 年 3 月 (1) 住宅ローン減税の拡充 ( 所得税 個人住民税 ) 消費税率 10% が適用される住宅取得等をして 2019 年 10 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの間にその者の居住の用に

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事業承継税制の拡充・資産税逃れ対策等

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公益法人の寄附金税制について

Ⅰ 法人関連税制 1 減価償却制度 2 年連続の大改正になった背景 減価償却制度については 平成 19 年度税制改正により 残存価額および償却可能限度額の取扱いが廃止される大改正が行われ 定率法はいわゆる 250% 定率法 と呼ばれる従来にない新しい計算の仕組みが採用されました そして平成 20 年

納税猶予打切りリスクの緩和 利子税率の引き下げ 承継 5 年超で 5 年分の利子税の免除 債務控除方式の変更 債務控除を株式以外の財産から行うことで 納税猶予の効果を高める < 平成 27 年度税制改正 > 贈与税の納税猶予 免除制度の拡充 1 代目が存命中に 2 代目が 3 代目に納税猶予 免除制

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

平成 22 年度税制改正大綱 ( 抄 ) 平成 21 年 12 月 22 日閣議決定 第 3 章各主要課題の改革の方向性 5. 資産課税 (1) 相続税 贈与税相続税は格差是正の観点から 非常に重要な税です バブル期の地価急騰に伴い 相続税の対象者が急激に広がったことなどから 基礎控除の引上げや小規

小規模宅地等の評価減の特例 1. 概要 居住用や事業用宅地を相続した場合 小規模とされる一定面積までを 50%~80% 評価減できる特例があります ( 措置法 69 条の 4) 区分宅地の区分事業や居住の見込減額割合対象面積 1 号特例特定事業用等宅地等 1 親族が相続して事業を継続 80% 400

Microsoft Word - 文書 1

03_税理士ラスパ_相続税法_答案用紙-1.indd

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2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

ラリーマン 相続税の申告は? 45 相続税の申告はどのようにすればよいのでしょうか 相続が開始したことを知った日 ( 通常は被相続人が死亡した日 ) の翌日から 10 か月以内に 被相続人の住所 地の所轄税務署に申告し 相続税を納付する必要があります 申告書を提出する人が 2 名以上いる場合は 共同

社会保障 税一体改革大綱(平成24 年2月17 日閣議決定)社会保障 税一体改革における年金制度改革と残された課題 < 一体改革で成立した法律 > 年金機能強化法 ( 平成 24 年 8 月 10 日成立 ) 基礎年金国庫負担 2 分の1の恒久化 : 平成 26 年 4 月 ~ 受給資格期間の短縮

2 税額控除等の計算 ( 単位 : 円 ) 項目対象者計算過程金額 答案用紙 Chapter2 問題 3 課税価格の計算 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 分割財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 2 みなし取得財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額

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各年の住宅ローン控除額の算出 所得税から控除しきれない額は住民税からも控除 当該年分の住宅ローン控除額から当該年分の所得税額 ( 住宅ローン控除の適用がないものとした場合の所得税額 ) を控除した際に 残額がある場合については 翌年度分の個人住民税において 当該残額に相当する額が 以下の控除限度額の

金融商品と資金運用

用語の意義 この FAQ において使用している用語の意義は 次のとおりです 用語 意義 所得税法 ( 所法 ) 所得税法 ( 昭和 40 年法律第 33 号 ) をいいます 所得税法施行令 ( 所令 ) 所得税法施行令 ( 昭和 40 年政令第 96 号 ) をいいます 改正所令 所得税法施行令の一

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平成23年度税制改正の主要項目

第2回税制調査会 総2-2

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1. はじめに 中小企業経営者の高齢化が進展する中 事業承継の円滑化は喫緊の課題です 平成 30 年度税制改正において 事業承継の際に生ずる相続税 贈与税の負担を軽減する 非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例 ( 以下 事業承継税制 ) が抜本的に改正されました 本改正では

スライド 1

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44 相続税の課税件数割合 負担割合及び納付税額の推移 ( 億円 ) 40,000 35,000 19.6 30,000 バブル期以後は 相続税の課税件数割合 負担割合及び納付税額とも減少傾向にあり 足元では 課税件数割合は 100 人中 4 人 負担割合は 13.2% となっている 22.1 23.1 22.2 39,651 納付税額 負担割合 ( 納付税額 / 合計課税価格 ) (%) 24 20 25,000 16.7 13.2 16 20,000 13.0 12 15,000 7.9 6.8 10.8 15,366 8 10,000 5,000 0 4.6 4.6 4.3 4 1.9 2.1 課税件数割合 ( 年間課税件数 / 年間死亡者数 ) 410 0 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 ( 年 ) ( 注 ) 課税件数 納付税額及び合計課税価格は 国税庁統計年報書 により 死亡者数は 人口動態統計 ( 厚生労働省 ) による

45 四資産課税等 2. 相続税 わが国税制の現状と課題 21 世紀に向けた国民の参加と選択 ( 抄 ) 平成 12 年 7 月 14 日税制調査会 (3) 相続税の課題 1 税制改正の流れと相続課税 21 世紀における相続課税が その富の再分配機能 財源調達機能を どの程度 どのように発揮していくべきかは 税制全体の姿を踏まえ て考えていく必要があります 税制全体として見た場合の再分配機能は 今後とも個人所得課税がその中心的役割を果たしていくものと考えられます しかし 個人所得 課税の累進構造は相当程度フラット化の方向に緩和されてきました また 消費税が税体系で重要な役割を果たすようになってきています こうした変革は 経済に活力をもたらすことが期待されていますが 他方で 税制全体の再分配機能を弱める方向に働いてきたという指摘もあります 相続課税の持つ富の再分配機能に関し 相続課税にどの程度の累進性を持たせるか については 次のような二つの考え方があります 一方は 今後 相続により資産を取得する機会に恵まれた者とそのような機会を持たない者との間での資産格差が拡大し 自己の努力以外を要因とする資産集中が進めば 同世代間の機会の平等を確保することが困難となり 不平等感の高まりと勤労意欲の減退に結び付きかねないという考え方です 他方で 資産家層に過重な負担を求めることは 自らの資産を大きくして子供に引き継がせたいという意欲を削いで 経済の活性化にマイナスの影響を及ぼすという考え方もあります もとより どの程度の累進性をもって 税制全体を通じた再分配を行っていくかは その時々の経済社会状況やあるべき社会像により異なってくるものです また 相続課税に限らず 税率構造を考えるに当たっては その時々の財政状況も勘案しなければなりません ただ いずれにしても 租税が公的サービスの費用を国民皆で広く分かち合うものであることをも考えると 相続課税の対象者の範囲 については 相続課税がある程度の資産家層を対象とする税であると位置付けるとしても そのあり方を見直していく余地があるのではないでしょうか また 今後 国民負担率が長期的にはある程度上昇していかざるを得ないと見込まれる中では 相続課税が納税をする者の勤労意欲に直接に影響を及ぼさないという意味で 経済に与える歪みが少ない税であるという点に十分留意しなければなりません

46 抜本的な税制改革に向けた基本的考え方 ( 抄 ) 第 2 各論 6. 資産課税 ⑴ 相続税 1 相続課税の現状等と今後の方向性 平成 19 年 11 月 20 日税制調査会 相続税については 主にバブル期における地価の急騰に伴い 基礎控除の引上げ等の減税や 居住及び事業の継続に配慮した各種特 例の拡充が行われ さらに 平成 15 年度税制改正では最高税率の引下げを含む税率構造の見直しが行われた このため 近年地価がバブル期以前の水準にまで下落し 相続税の負担が大幅に緩和された結果 年間死亡者数のうち相続税の課税が 発生する割合が 4% 程度まで減少するなど その資産再分配機能や財源調達機能は低下している 近年の経済のストック化の中で 家計資産及び相続税の課税遺産における金融資産の額が著しく増加している 特に 高齢者世帯ほど資 産蓄積が多く 家計資産の格差も 高齢者世帯において顕著となっている また 相続人の数は年々減少してきており 今後ともそうした傾向が続くものと見込まれる中で 相続人の取得する財産額はさらに増加していくと考えられる こうした点を踏まえると 相続を機会に高齢者世代内の資産格差が次世代へ引き継がれる可能性も増してきていると考えられる また 高齢化の進展の中で 相続人自身も高齢化してきており 相続時点ではすでに相続人自身の資産形成も進んでいると考えられる このため 相続財産が相続人の生活基盤を形成するという意味合いは従来に比して薄れてきており 遺産における金融資産の増加等ともあいまって 相続税の担税力を有する層が拡大していると考えられる さらに 今日では公的な社会保障制度が充実し 老後の扶養を社会的に支えているが このことが高齢者の資産の維持に寄与することとなっている そこで 被相続人が生涯にわたり社会から受けた給付に対応する負担を 死亡時に清算するという考え方に立てば 相続税は 遺産が相続される時にその一部を社会に還元することによって 給付と負担の調整に貢献できると考えられる 以上の相続税を巡る環境の変化等からすれば これまでの改正により大幅に緩和されてきた相続税の負担水準をこのまま放置することは適当ではなく 相続財産に適切な負担を求め 相続税の有する資産再分配機能等の回復を図ることが重要である

平成 23 年度税制改正大綱 ( 抄 ) 平成 22 年 12 月 16 日閣議決定 第 2 章各主要課題の平成 23 年度での取組み 3. 資産課税 (1) 相続税 1 基本的な考え方相続税は格差是正 富の再分配の観点から 重要な税です 相続税の基礎控除は バブル期の地価急騰による相続財産の価格上昇に対応した負担調整を行うために引き上げられてきました しかしながら その後 地価は下落を続けているにもかかわらず 基礎控除の水準は据え置かれてきました そのため 相続税は 亡くなられた方の数に対する課税件数の割合が4パーセント程度に低下しており 最高税率の引下げを含む税率構造の緩和も行われてきた結果 相続税の再分配機能が低下しています 地価動向等を踏まえた基礎控除の水準調整をはじめとする課税ベースの拡大を図るとともに 税率構造について見直しを図ることにより 相続税の再分配機能を回復し 格差の固定化を防止する必要があります 税制抜本改革法 ( 平成 24 年法律第 68 号 )( 抄 ) 附則 ( 資産課税に係る措置 ) 第二十一条資産課税については 格差の固定化の防止 老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点からの相続税の課税ベース 税率構造等の見直し及び高齢者が保有する資産の若年世代への早期移転を促し 消費拡大を通じた経済活性化を図る観点からの贈与税の見直しについて検討を加え その結果に基づき 平成二十四年度中に必要な法制上の措置を講ずる 47

48 1 基礎控除の引下げ 2 税率構造の見直し 相続税の見直し 平成 25 年度税制改正 H27.1.1~ ~H26.12.31 5,000 万円 +1,000 万円 法定相続人数 3,000 万円 +600 万円 法定相続人数 (%) ( 税 率 ) 15% 20% 30% 40% H27.1.1~(8 段階 ) 50% 45% ~H26.12.31(6 段階 ) 55% 10% 0 1,000 万 3,000 万 5,000 万 1 億 2 億 3 億 6 億 ( 円 ) ( 各法定相続人の法定相続分相当額 ) 3 未成年者控除 障害者控除の見直し ~H26.12.31 H27.1.1~ 未成年者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 障害者控除 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数

49 最近における相続税の税率構造の推移 税率 (%) 5 億 70% 10 億 20 億 65% 45% 50% 55% 60% 50% 6 億 55% 30% 35% 40% 40% 45% 昭和 63 年 12 月改正 ( 昭和 63 年 1 月以降適用 ) 平成 4 年度改正 ( 平成 4 年 1 月以降適用 ) 20% 25% 20% 30% 平成 6 年度改正 ( 平成 6 年 1 月以降適用 ) 平成 15 年度改正 ( 平成 15 年 1 月以降適用 ) 10% 15% 平成 25 年度改正 現行 ( 平成 27 年 1 月以降適用 ) 0 1,000 万 3,000 万 5,000 万 1 億 2 億 3 億 ( 円 ) 各法定相続人の法定相続分相当額

税制改正に伴う相続税の実効税率の推移 (%) 35 昭和 63 年度改正前 配偶者 + 子 2 人 30 昭和 63 年度改正後 実効税率(納付税額 / 課税価 25 20 15 10 5 0 格)課税価格 平成 25 年度改正後 平成 4 年度改正後 平成 6 年度改正後 平成 15 年度改正後 0 5 10 15 20 ( 億円 ) 50

(%) 80 税制改正に伴う相続税の実効税率の推移 70 子 2 人 昭和 63 年度改正前 昭和 63 年度改正後 実効税率(納付税額 / 課税価 60 50 40 30 20 10 0 格)課税価格 平成 25 年度改正後 平成 4 年度改正後平成 6 年度改正後平成 15 年度改正後 0 5 10 15 20 ( 億円 ) 51

相続税の課税価格階級別構成割合と納付税額の構成割合 ( 課税価格 ) 1.4% 4.2% 10 億円 5 億円 3 億円 4.2% 8.2% 31.6% 13.4% 2 億円 23.5% 47.2% 18.4% 1 億円 12.7% 25.6% 12.4% 1.4% 死亡者数課税件数納付税額 国税庁統計年報書 ( 平成 24 年度版 ) に基づき作成 52

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し 平成 25 年度税制改正 小規模宅地等の課税の特例は 被相続人の居住又は事業の用に供されていた宅地について 相続税の課税価格を80%( ) 減額する特例 平成 25 年度改正において 相続税の見直しに伴い 相続人の居住や事業の継続に配慮する観点から 下記の見直しを実施 ( ) 貸付用 ( 不動産貸付 駐車場 ) については 50% 減額 ( 限度面積 200m2 ) 1 居住用宅地の適用対象面積の見直し 上限 ~26.12.31 27.1.1 ~ 240m2上限 330m2 2 居住用宅地と事業用宅地を併用する場合の限度面積の拡大 改正前において 限定的に併用が認められていた居住用宅地と事業用宅地について 完全併用 ( それぞれの限度面積 ( 居住用 :330 m2 ( 改正後 ) 事業用 :400 m2 )) を認める ( 貸付用除く ) ~26.12.31 27.1.1 ~ 限定併用 完全併用 居住用 (A):240m2 事業用 (B):400m2 居住用 (A):330 m2 A 400 A+ B 730 + B 400 240 (A 330 B 400) 事業用 (B):400 m2 最大 400 m2 最大 730 m2 事業用宅地とは 農機具置場 ( 都市農業者 ) 店舗の敷地 ( 個人事業者 ) など 53

相続税における小規模宅地等の特例のイメージ 同居親族が居住用宅地等を取得した場合には 小規模宅地等の特例により一定面積まで相続税の課税価格が8 割減額されている 例 世田谷区の自宅土地 40 坪 7,500 万円 建物 1,000 万円 預貯金 2,000 万円を子 2 人が相続する場合 被相続人 相続人 母 遺産総額 1 億 500 万円 子 子 特例の適用なし ( 被相続人と相続人が別居 ) 課税価格 1 億 500 万円 相続税の総額 860 万円 負担割合 :8.2% 特例の適用あり ( 被相続人と相続人が同居 ) (7,500 万円 80%) 相続税の総額課税価格 30 万円 4,500 万円 自宅土地 6,000 万円 負担割合 :0.3% ( 注 ) 小規模宅地等の特例 : 居住用宅地等 330 m2 (100 坪 ) まで 事業用宅地等 400 m2まで課税価格を 8 割減額 ( 両者の併用も可能 ) 参考 東京 23 区における 1 世帯当たりの平均資産額 :8,157 万円 ( 全国消費実態調査 ( 平成 21 年 総務省 )) 内訳 自宅土地 :4,269 万円 自宅家屋 :1,551 万円 現預金 :1,543 万円 その他 :1,533 万円 債務 : 740 万円 54

非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度の流れ 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律 ( 平成 20 年 10 月 1 日施行 ) に基づく経済産業大臣の関与 続開始等相経産大臣の認定 10 ヶ月間 会社 後継者に関する要件の判定 申告期限5 年間 事業の継続 代表者であること 株式等の保有継続 雇用の8 割維持 (5 年間平均 ) 等 ( 注 1) 猶予税額が免除される 死亡 以外の例 会社の倒産 後継者への贈与 ( 心身の障害により代表権を失った場合には 経営承継期間内の贈与でも免除 ) 同族関係者以外の者に株式等を全部譲渡した場合 ( 譲渡対価等を上回る税額を免除 ) 民事再生計画の認可決定等があった場合 ( 再計算後の猶予税額等を上回る税額を免除 ) 株式等の 保有継続等 後継者の 死亡等 ( 注 1) 申告 担保提供 要件を満たさなくなった場合 株式等を譲渡等した場合 後継者の相続税額のうち 議決権株式等の 80% に対応する相続税の納税を猶予 ( 注 2) 発行済議決権株式等の 2/3 に達するまで ( 注 2) 全額納付 ( 注 3) 譲渡等した部分に対応する猶予税額を納付 ( 注 3) ( 注 3) 猶予税額の納付に併せて利子税を納付 年 3.6% 特例:0.8% 特例基準割合 1.8% の場合 猶予税額の免除 55