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講義「○○○○」

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発生頻策順位サブシステムシステム安全性 命 FMEA による空気圧制御システムにおける安全性解析の実践 職業能力開発総合大学校中村瑞穂 FMEA(Failure Mode and Effects Analysis: 故障モード影響解析 ) は, 国内および海外でも製品開発から運用までのすべてのライフサイクルにおいて製品, 運用の問題を解決するツールとして活用されている手法である 職業能力開発分野では在職者訓練 ( 能力開発セミナー ) では人気コースとなっている 学卒者訓練 ( 専門課程, 応用課程 ) では担当者, テーマにより総合製作実習, 開発課題で行われている程度であるが 実践技術者 ( テクニシャンエンジニア ), 生産現場のリーダ などの養成には必要な技術である 本報では代表的空気圧制御システムの構成例を定めて, 各種コンポーネントについてFMEAを行い, 安全に関係する故障モードの抽出を行い, 安全システム構築に必要な条件を検討した 第 2 章ではFMEAの概要と解析手順について示した, 第 3 章では解析対象となる代表的空気圧制御 システムの構成例を示し, 各種コンポーネントについてFMEAによる解析結果を示した 第 4 章では FMEAの解析結果について考察を行い, 空気圧制御システムでは圧力上昇, 下降の両側に安全に関係する故障モードが存在すること示した その結果, 圧力上昇, 下降についての監視機能が必要であることを考察した さらに, 第 5 章では今回のFMEAの解析結果について教育訓練での活用した場合に予想できる効果について述べることより実践技術者育成のための資料として供したい 2.1 FMEAの概要 FMEAは信頼性解析手法の1つで, システム ( 装置 機器 ) を構成する部品や機器で発生した故障が上位のサブシステムやシステムへ及ぼす影響を表 1 のようなワークシートを使用して解析する手法である FMEAは品質管理, 信頼性, 保全性, 安全性 表 1 基本的 FMEA ワークシート システム 機器名 機能 故障モード 原因 度影響致度対策対-11- 安全に対する取り組み 2

解析などが目的であり自動車, 家電, 重電, 鉄道などの多くの産業で使用されている ISO9000シリーズではFMEAが改善ツールとしてあげられている また,ISO9000をベースとした TS/ISO16949( 自動車セクター規格 ) ではFMEA の実施が要求事項とされているため, 自動車メーカはFMEAの実施を部品メーカなどに対して取引条件としている場合もある これらの背景からFMEAは製品の品質保証や改善には欠かせないツールであることがわかる ⑴ 2.2 FMEAの手順 FMEAはワークシート ( 表 1) を使って, FMEA 解析グループ (3 5 名 ) を編成して, 図 1のFMEAにおける解析手順により作業を以下のとおりに行う 解析グループには解析対象システムについて経験があり高い技術レベルを持った中堅, ベテラン技術者を中心で構成するのが理想的である 図 1 ⑴ FMEA 手順 -12-1 解析対象システムの理解解析対象となる製品全体を理解していることであり, 具体的には製品の機能, 性能, 構造, 材質, システムとしての任務, 製造方法, 製造工程, 使用環境, 起動 停止, 運転条件 ( 運転頻度, 稼働時間など ), 保全方法などを理解していることである 2 信頼性ブロック図の作成 FMEA 実施での信頼性ブロック図はシステム, サブシステム, ユニット, 使用機器 ( 部品, 機器, 回路, モジュールなど ) などの分解レベルを表している すなわち, サブシステムや機器などの要素間の機能的な相互依存性を明らかにすることができるため, 一つ部品で発生した故障モードが上位の機器, サブシステム, システムなどへの影響を追跡するために使用する 信頼性ブロック図の代わりに解析対象システムが機械や装置であれば全体的な組立図などを利用している場合もある 3 故障モードの抽出故障モードは機器や部品で発生する故障 ( 機能停止型故障, 機能低下型故障 ) の状態または現象である 故障モードの抽出は, 解析対象システムが運用されているときに発生する物理的, 化学的, 機械的, 電気的, 人為的などが故障モードの原因であり, アイテム ( システム, 機器, 部品など ) で故障が発生する仕組み ( 故障のメカニズム ) を考察することが必要であり, 漏れがないように抽出する 4 影響度解析影響度解析は部品で発生した故障モードのサブシステム, システムへの影響, 安全性, 経済性などにどのような影響が生じるかを定性的に求め, 各影響について表 2の評価点表により, 評価レベルを決め, 式 ⑴により各影響の評価レベルの合計を求めたのが影響度である 影響度解析の範囲は製品によりすべてが異なるため企業または組織で設計改善または工程 作業改善をできるレベルであることが基本であるため解析グループであらかじめ設定しておく必要がある 技能と技術 1/2013

評価レベル 評価基準 表 2 影響度評価点表 ( 例 ) システム サブシステムへの影響 安全性への影響 10 致命的システムに重大な損傷死亡事故 8 重大 機能喪失 6 機能低下 4 軽微 システムの一部に損傷 システムに1つの重大な影響を与える部品の損傷が軽微で, システムに与える影響が小さい 人身事故 ( 中程度の怪我 ) 軽傷または機械システムの破損 怪我 2 極小無視できる程度であるなし 6 各種対策への展開致命度の高い順に対策順位が決まることから致命度の高い故障モードが多い機器が重要機器となる また, 抽出された故障モードは, 解析対象システムの弱点であることから, 対策順位の高い順に対策を施す必要がある FMEAの結果が設計改善, 運用改善, 工程改善, 故障診断システムの設計などに反映されることになる 影響度 =[ サブシステム ]+[ システム ]+[ 安全性 ] ⑴ 5 致命度評価致命度は式 ⑵により発生頻度と4で求めた影響度の積により評価を行う 発生頻度については評価レベルを定めた表 3の評価点表により行う 表 3の評価点表は高い評価レベルは故障モードの発生頻度が高いものから順番にレベルが決まっている 3.1 解析条件解析対象となる代表的空気圧制御システムの構成例を図 2に示す 図 3には図 2による信頼性ブロック図を示す 図 2, 図 3を用いて解析を行う 動力源 付属機器 制御機能 作動機器 コンプレッサ アフタークーラ フィルタ エアシリンダ 表 3 発生頻度評価点表 ( 例 ) 評価レベル 評価基準 発生頻度 10 発生頻度が非常に高い 1 回 / 週以内 8 発生頻度が高い 1 回 / 月以内 6 故障の可能性がある 1 回 / 年以内 ドレンセパレータタンクドライヤ配管 レギュレータルブリケータ電磁方向制御弁流量制御弁 4 少ないが起こりうる 1 回 /5 年以内 2 故障がほとんど起こらない 1 回 /5 年以上 [ 致命度 ]= [ 故障モードの発生頻度 ( 評価レベル )] [ 影響度 ] ⑵ マフラ 図 3 信頼性ブロック図 図 2 代表的空気圧制御システムの構成例 -13- 安全に対する取り組み 2

表 4 空気圧制御システムの FMEA ⑵ 空気圧機器 ( コンポーネント ) コンプレッサ 故障モード 電源停止 モータ故障 影響度 ( 方向制御弁入力またはシリンダ出力 P0 への影響の仕方 ) コンプレッサが動作しないため 圧縮空気が供給されないので入力 P1 発生せず アフタークーラ 容器の一部破損 破損箇所より 圧縮空気が漏れるので入力 P1 発生せず ドレンセパレータ ボウル部破損 破損箇所から圧縮空気が排出され 入力 P1が発生せず タンク 本体破損 破損箇所より 圧縮空気が漏れるので入力 P1 発生せず ドライヤ 冷却器破損 破損箇所から圧縮空気が排出され 入力 P1が発生せず 安全弁 フィルタ レギュレータ 操作部のはずれ フィルタエレメント目詰まり 調整バネ折損 弁体が閉じた状態では 圧縮空気が流れず 入力 P1 は発生せず 弁体が開いた状態で 圧縮空気が排出されており入力 P1 が発生する フィルタエレメントが 90% 以上塵埃などで 目詰まりしたら入力 P1 は発生せず ハンドルを回しても圧力調整ができず 設定圧力値が 0MPa であれば 主弁が閉じているので圧縮空気は通過できないので入力 P1 は発生せず ハンドルを回しても圧力調整ができず 空気圧制御システムで必要な設定圧力値であれば入力 P1 は発生し続ける ハンドルを回しても圧力調整ができず 設定圧力値が低い値であれば 入力 P1 は発生する ルブリケータボウル破損破損箇所から潤滑油が漏れ 圧縮空気漏れによる圧力低下が発生する マフラ電磁方向制御弁流量制御弁エアシリンダ ごみ詰まりソレノイド焼損バネ折損スプール固着ごみ詰まりピストン固着ロッドパッキン割れチューブ破壊 シリンダ前側から排気される圧縮空気が排気ポートからマフラを通るときごみ詰まりにより排気できないので出力 P0 発生せず ソレノイドが励磁できなくスプールが動作しないため 圧縮空気の流れる方向が切換わらないので 出力 P0 発生せず ソレノイドが励磁されスプールが動作した場合ばねは伸びた状態で出力 P0 を生じ ソレノイドの励磁が OFF されたときスプールが自動復帰できなくなり 圧縮空気の流れる方向が切換わらないので出力 P0 が発生した状態で停止する ソレノイド非励磁状態 : ソレノイドが励磁されても スプールが固着して圧縮空気の流れる方向が切換わらないので 出力 P0 発生せず ソレノイド励磁状態 : ソレノイドが非励磁になっても スプールが固着して圧縮空気の流れる方向が切換わらないので 出力 P0 発生し続ける シリンダ前側から排気される圧縮空気が排気ポートからマフラを通るときごみ詰まりにより排気できないので出力 P0 発生せず 圧縮空気がチューブ内に入っても ピストン固着しているので出力 P0 発生せず 圧縮空気注入状態では出力 P0 は発生しつづける 割れ箇所から圧縮空気の漏れ 割れの大きさによっては P0 は発生するが圧縮空気の圧力 流量が不足して動作が鈍い 破壊箇所から圧縮空気の漏れ 出力 P0 発生せず ( 外国文献調査例約 60 例 および実施例 220 件 ) 技能と技術 1/2013-14-

解析の目的は図 2のシリンダの出力 P0への影響と方向制御弁への圧縮空気の入力 P1への影響についてとする 解析のレベルはすべてのコンポーネントの故障モードとしている 今回は表 1の発生頻度, 影響度の評価点表による評価レベル付けと致命度, 対策, 対策順位については解析の目的から必要としないので表 4で表すように故障モードとP0,P1への影響のみとした 3.2 解析結果 FMEAの解析結果である表 4では出力 ( 方向制御弁入口圧力 P1), または, アクチュエータ出力 ( 圧力 P0) への影響の仕方で表している 全部は示さないが,13のコンポーネントにおける故障モードは220 件に上り, そのうち,15 件 (6.8%) はシステム内部の圧力が上昇する側の故障モードで,140 件 (64%) はシステム内部の圧力が低下する側の故障モードであった また, 残りの65 件 (30%) は安全に特に関しない故障モードであることがわかった FMEAはグループによる実施が原則であり, グループ員の経験 能力が解析の質を左右することになる 解析を行うに当たり最も重要なことは解析対象のシステムを理解していることであるため, 学生に学ばせるには解析対象のシステムの選定が重要である 図 2のような課題であれば学生は専門課程における専攻学科の油空圧制御, 専攻実技の油空圧制御実習で学んでいるため, 解析を行うなかで信頼性ブロック図の作成, 故障モードの抽出, 影響度評価を行うことにより, 空気圧制御システムの全体と各種コンポーネントの構造, 動作などについてコンポーネントの説明書, テキスト, 教材, 図面などを見て理解する必要があるため学科, 実習の復習となる さらに, 機械のメカニズムを検証することから分解 組立作業や設計 製図に必要な能力を向上させ高い効果が予想できる 現状の空気圧制御システムにおける圧力制御は図 2のレギュレータにより流体の圧力が設定値以上になった場合に内部の流体をシステム外部へ開放し, システム内の流体の圧力を強制的に低下させることでシステムの破壊などを防止する機能を持つが, この場合の危険側の故障 ( 圧力が低下できない側の故障 ) が考慮されていない また, 圧力が低下する側については何も行われていない 解析の結果から安全に関係する故障モードは圧力が上昇する側, 低下する側の両方に存在することがわかった したがって, 空気圧制御システムの安全システムの構築には圧力の上昇と低下の両方を検出する監視機能が必要であり,ISO13849-1( 制御システムの安全関連部 ) に沿った安全関連部としての監視機能の構築が必要である 空気圧制御システムで圧力上昇, 下降の両側に安全に関係する故障モードが存在すること示した その結果, 圧力上昇, 下降についての監視機能が必要であり,ISO13849-1に沿った安全関連部の構築の必要性について述べた また, 図 2のような代表的空気圧制御システムを構成する機器におけるFMEA 解析結果の教育訓練での活用について考察を行い, 専門課程, 応用課程による活用について述べた < 参考文献 > 1) 小野寺勝重 : 実践 FMEA 手法, 日科技連出版社,2000 2) 中村 蓬原 : 空気圧制御システムの論理構造とその適用, 日本信頼性学会第 19 回秋季信頼性シンポジウム発表報文集 pp73-7,2006.10.20-15- 安全に対する取り組み 2