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第 1 章簡易無線の現状と課題第 1 節調査検討に至る背景と目的 (1) 取り組みの背景と経緯簡易無線は 簡単な手続きで使用できる無線システムとして広く利用されており 現在 全国で約 70 万局 (150MHz 帯簡易無線は約 13 万 8 千局 ) 北陸管内でも約 1 万 4 千局 (150MHz 帯簡易無線は約 4 千 2 百局 ) が開設されており 平成 20 年 3 月 26 日の総務省総合通信基盤局より発表されている 小電力を用いる自営系移動通信の利活用 高度化方策に係る技術的条件について ( 情報通信審議会からの一部答申 ) でも記載されている様に 近年国民生活においては 携帯電話に代表される公衆系移動通信が広く普及しているが 一方 目的や用途が比較的限定された自営系移動通信でも MCA 無線など大電力で大規模なシステムから簡易無線局や特定小電力無線局などの小電力で小規模なシステムまで様々な分野で広く活用されている このような状況の下 自営系移動通信のうち 主に中小企業や個人で用いられる小電力で小規模なシステムの更なる利活用 高度化に向け 簡易無線局等の最適なデジタル方式の導入等に必要となる技術的条件について審議を行った結果 下記の技術的条件を導入する事となった これにより 400MHz 帯の簡易無線は平成 20 年 8 月にデジタル方式が導入され 音声による情報伝達に加えてデータ通信への利用も可能となったことから現在ますます利用が拡大している一方 150MHz 帯の簡易無線にデジタル方式は未だ導入されていない なお 総務省は平成 22 年 2 月に公表した 周波数再編アクションプラン において 150MHz 帯の簡易無線はアナログ方式の山間部における根強い需要を考慮しつつ デジタル方式の導入を検討するとしている 簡易無線局等に適したデジタル方式の技術的条件 四値周波数偏位変調 (4 値 FSK 方式 ) の導入デジタル変調方式の中で 機器の小型化に適し 携帯性の高い無線機の製品化を可能とする変調方式の追加 キャリアセンス機能の導入簡易無線局等間において 周波数の共用を有効活用するため キャリアセンス機能を導入することとし その技術的条件を定めたこれにより 登録制の無線局の対象とし 電波法改正により創設された無線局の運用者の変更制度の対象無線局とすることが可能 高所等の利用を可能高層ビル等高所での作業等の利用需要をかんがみ 現行の地上高 30mまでの運用制限を緩和するための技術的条件を策定 -1-

簡易無線のデジタル化と利用拡大 従来の簡易無線局 アナログ式 音声通信が利用主体 データ伝送や高度利用等のニーズの多様化等の需要の増加や周波数の逼迫が懸念 運送業 工事現場等で利用 400MHz 帯簡易無線局にデジタル方式を導入 多様なニーズに対応 データ伝送システム データ伝送速度の向上により新たな利用ニーズに対応 レジャー用途 ( 高所 上空を含む ) 狭帯域化により周波数の有効利用が図られ トラヒックの増 チャンネル不足の問題を改善し 様々なシーンで利用可能に 短期需要( レンタル ) 用途混信防止機能の付加により レンタル制度の実現 イベントなど短期的又は急なニーズに対応 400MHz 帯の既存アナログ用チャンネルの数 55ch デジタル化によりチャンネルの数 100ch! (35ch はキャリアセンス機能搭載の登録局用 ) 図 1-1 簡易無線局等のデジタル化と利用拡大 (2) 取り組みの目的 400MHz 帯の簡易無線は 平成 20 年 8 月にデジタル方式が制度化され 音声による情報伝達に加えてデータ通信への利用も可能となったこともあり ますます利用が拡大している一方 150MHz 帯の簡易無線にデジタル方式は未だ導入されていない しかし 150MHz 帯の簡易無線は 400MHz 帯に比べ通信距離が長く 山間部など地形上不利な条件においても通信が確保しやすい特徴から地方においては根強い需要があり 早急にデジタル方式の導入が望まれている このことから 本調査検討会は 150MHz 帯の簡易無線にデジタル方式は未だ導入されていないのは 150MHz 帯の周波数がたいへん逼迫していることから デジタル方式を導入するのに必要な周波数帯域を確保することができない状況にあるためと想定し その対応策の一つとして 既存の 150MHz 帯アナログ簡易無線の周波数帯内においてデジタル方式の周波数を共用できないかと考え デジタル簡易無線用の周波数の効率的な割当方策 並びに共用して使用する際に必要な条件等について調査検討を行うことにより 150MHz 帯デジタル簡易無線の制度化へ向けての一助とするとともに 周波数の効率的な利用に資することを目的として開催したものである -2-

第 2 節 150MHz 帯簡易無線のデジタル化の利点と必要性 (1) デジタル化の利点デジタル方式の場合は 雑音のないクリアな音質であること 通信内容の漏洩防止を図れること データ伝送に適した方式であること そして周波数占有帯域幅の狭帯域化 ( アナログ方式の約 1/3) で周波数の効率的な利用が可能となるなどのメリットがある デジタル方式であれば 音声による情報伝達に加えてデータ通信への利用も可能となる (2) デジタル化の必要性簡易無線は 無線従事者の資格を必要とせず 簡単な無線局免許手続きだけで気軽に使用できる無線通信システムとして 広く利用されており アナログ方式の簡易無線局は 現在全国で約 70 万局 北陸管内でも約 1 万 4 千局が開設されている しかしながら 従来のアナログ方式は 音声通信による利用が主であるため データ伝送などニーズの多様化等による需要の増加に対して十分に対応しているとは言えず また需要の増加による周波数の逼迫 通信トラフィックの輻輳による障害 通信内容の漏洩なども懸念されることから 平成 20 年 8 月には 400MHz 帯の簡易無線に簡易無線のデジタル方式が制度化され 同方式が導入された このため 現在 400MHz 帯の簡易無線は 音声による情報伝達に加えてデータ通信への利用も可能となったこともあり ますます利用が拡大している 一方 150MHz 帯の簡易無線は 150MHz 帯の周波数がたいへん逼迫しており デジタル方式を導入するのに必要な周波数帯域を確保することができない状況にあるため デジタル方式は未だ導入されていない -3-

第 3 節日本国内外の簡易無線 (1) 国内簡易無線の現状前節でも記されているように全国で約 70 万局が開設されておりその内訳は 下記のとおりである 我が国の簡易無線の免許局は 主に 150MHz 帯 ( アナログ ) 350MHz 帯 ( アナログ ) 400MHz 帯 ( デジタル アナログ ) があるが 表 1-1 が局数の推移である 参考に北陸管内の数値を表 1-2 に記す 平成 20 年には 電波法令の改正により 400MHz 帯はデジタル化されることとなり デジタル方式で 351MHz 帯に計 35 波 467MHz 帯 65 波が割り当てられた 400MHz 帯デジタル化普及の為 1 筐体に ( デジタル )467MHz 帯 65 波と ( アナログ )465MHz 帯と 468MHz 帯の計 35 波を併せて搭載したものは 一つの無線局として申請できることとなった 同年周波数再編アクションプラン ( 平成 20 年 11 月改定版 ) において 400MHz 帯は 輻輳軽減と電波の有効利用の為デジタル方式普及を進め 350MHz 帯と 400MHz 帯がデジタル化され 400MHz 帯のアナログ方式は平成 34 年 11 月 30 日までの使用期限となった 平成 22 年には 周波数再編アクションプラン ( 平成 22 年 2 月改定版 ) において 150MHz 帯も デジタル化を検討し 400MHz 帯は デジタル方式を普及し 平成 34 年 11 月 30 日までにアナログ方式からの移行を図る事が公表された 表 1-1 アナログ簡易無線局の推移 ( 全国 ) 周波数帯 150MHz 350MHz 400MHz 合計 局数 前年比 局数 前年比 局数 前年比 局数 前年比 平成 14 年 190,026 0% 80,924 0% 311,858 0% 582,808 0% 平成 15 年 181,627-4.4% 84,844 4.8% 319,708 2.5% 586,179 0.6% 平成 16 年 173,956-4.2% 89,902 6.0% 330,084 3.2% 593,942 1.3% 平成 17 年 164,989-5.2% 92,897 3.3% 347,653 5.3% 605,539 2.0% 平成 18 年 160,956-2.4% 92,503-0.4% 368,542 6.0% 622,001 2.7% 平成 19 年 157,498-2.1% 95,051 2.8% 396,860 7.7% 649,409 4.4% 平成 20 年 151,766-3.6% 94,704-0.4% 422,926 6.6% 669,396 3.1% 平成 21 年 146,064-3.8% 93,310-1.5% 423,072 0.0% 662,446-1.0% 平成 22 年 138,374-5.3% 87,426-6.3% 419,691-0.8% 645,491-2.6% 平成 22 年 - 平成 14 年 -51,652-27.2% 6,502 8.0% 107,833 34.6% 62,683 10.8% -4-

図 1-2 アナログ簡易無線局の推移グラフ ( 全国 ) 表 1-2 アナログ簡易無線局の推移 ( 北陸 ) 周波数帯 150MHz 350&400MHz 合計 局数 前年比 局数 前年比 局数 前年比 平成 14 年平成 15 年平成 16 年平成 17 年 5,249 0% 9,430 0% 14,679 0% 平成 18 年 5,059-3.6% 9,272-1.7% 14,331-2.4% 平成 19 年 4,851-4.1% 9,395 1.3% 14,246-0.6% 平成 20 年 4,606-5.1% 9,353-0.4% 13,959-2.0% 平成 21 年 4,449-3.4% 9,247-1.1% 13,696-1.9% 平成 22 年 4,190-5.8% 9,253 0.1% 13,443-1.8% 平成 22 年 - 平成 17 年 -1,059-20.2% -177-1.9% -1,236-8.4% -5-

図 1-3 アナログ簡易無線局の推移グラフ ( 北陸 ) 表 1-3 デジタル登録局の推移 ( 全国 ) 全国 調査日時 包括登録局 個別登録局 合計 前調査比 平成 21 年 6 月 5,316 0 5,316 0% 平成 21 年 9 月 10,055 11 10,066 89% 平成 21 年 12 月 15,122 51 15,173 51% 平成 22 年 3 月 17,810 102 17,912 18% 平成 22 年 6 月 21,749 144 21,893 22% 平成 22 年 9 月 26,193 214 26,407 21% 平成 22 年 12 月 30,692 237 30,929 17% 平成 22 年 12 月 - 平成 21 年 6 月 25,376 237 25,613 482% 図 1-4 デジタル登録局の推移グラフ ( 全国 ) -6-

表 1-4 デジタル登録局の推移 ( 北陸 ) 北陸 調査日時 包括登録局 個別登録局 合計 前調査比 平成 21 年 6 月 6 0 6 0% 平成 21 年 9 月 34 0 34 467% 平成 21 年 12 月 96 0 96 182% 平成 22 年 3 月 215 0 215 124% 平成 22 年 6 月 323 0 323 50% 平成 22 年 9 月 494 0 494 53% 平成 22 年 12 月 557 0 557 13% 平成 22 年 12 月 - 平成 21 年 6 月 551 0 551 9183% 図 1-5 デジタル登録局の推移グラフ ( 北陸 ) (2) 海外デジタル業務無線の現状ア業務無線用デジタル通信方式業務無線用のデジタル通信方式として標準規格化されているものとして 以下のような方式がある APCO P25 TETRA DMR dpmr /dpmr 446-7-

イ各デジタル通信方式の詳細及び動向 ( ア ) APCO P25 C4FM(4 値 FSK の一種 ) を使用した 12.5kHz 帯域の FDMA 技術は Phase 1 と呼ばれ 主に北米 オーストラリアおよびニュージーランドにおいて 主に警察や消防等の公共安全システムで採用されている 現在 Phase 2 と呼ばれる TDMA (12.5kHz 帯域で 2 スロット ) 技術を採用した規格が完成に向かっている段階にある また 公共安全システムが VHF 帯から 700MHz 帯へ移行する中で 複数の周波数帯域に対応したマルチバンド機器 ( 一つの筐体に VHF/UHF/700/800MHz を収容 ) が市場に導入されつつある アメリカ政府は APCO P25 を公安安全システムの標準通信方式として指定しており 近年 20 社近くのメーカが製品を提供している APCO P25 の規格は TIA にて審議 策定されており その活動には無線機器メーカやエンドユーザーが参加できる APCO P25 はコンベンショナルシステム トランキングシステムならびに IP による広域ネットワーキングが可能なシステムとなっている ( イ ) TETRA π/4 DQPSK の TDMA (25kHz 帯域で 4 スロット ) 技術であり 当初は業務用無線と携帯電話のような回線事業での利用を想定していたが 現在はほとんどが業務用途として利用されている 主に欧州で採用されているが 世界各地域での利用も進んでいる APCO P25 のように 欧州の公安規格として指定されているが ユティリティ 鉄道 空港などでも多く採用されている APCO P25 に比べれば少ないものの 多くの無線機メーカから製品が提供されている TEDS (TETRA Enhanced Data Service) という大量データ通信規格も最近完成し 一部のメーカから TEDS 対応の製品がリリースされている TETRA の規格は ETSI ( 欧州電気通信標準化機構 ) にて審議 策定されている TETRA は基本的に広域なトランキング ( ネットワーク ) のシステムとなっている ( ウ ) DMR DMR は 4 値 FSK の TDMA (12.5kHz 帯域で 2 スロット ) 技術である DMR は欧州で策定された規格であるが 他の規格と同様に欧州域外にも製品は導入されている APCO P25 や TETRA とは異なり Business & Industry 用途がメイン市場であり 実際の製品の機能やコスト 利用形態は公安用途とはすみ分けがなされている DMR の規格は ETSI にて審議 策定されているが 別途メーカを中心に結成している DMR Association という団体で互換性テストや普及活動を行っている DMR には 3 つのカテゴリ (Tier) があり Tier 1 は低電力の移動局でライセンスフリー (= 特定小電力 ) Tier 2 はレピータを利用したコンベンショナルシステム Tier 3 はトランキングシステム という分類になっている 現時点では Tier2 の製品が導入されている -8-

( エ ) dpmr /dpmr 446 dpmr は 4 値 FSK の FDMA (6.25kHz 帯域 ) 技術である DMR と同様に欧州で策定された規格であり 上記の 3 つの規格に対して比較的新しい規格であることもあり 現時点では主に欧州で採用されている dpmr の規格は ETSI にて審議 策定されているが 別途メーカを中心に結成している dpmr MoU という団体で互換性テストや普及活動を行っている dpmr は DMR の規格化作業と並行して作業が進められ DMR の 3 種類の Tier が dpmr にも適用される Tier 1 に対応した規格が dpmr 446 であり Tier2/3 に対応した規格が dpmr となる 商標について : dpmr and the dpmr logo are trademarks of the dpmr MoU Association ウ各種システムと諸元 1995 年の ITU-R SG-8 WP8A において 周波数利用効率の高い狭帯域化方式の陸上移動デジタル通信システムとして 1 通話チャネルあたり使用帯幅が 6.25kHz 相当の方式が報告された -9-

波数帯150MHz 帯アナログ簡易無線局用周波数におけるデジタル方式との周波数共用に関する調査検討会 表 1-5 海外の各種システムと諸元 項目欧州 アフリカ北米 南米アジア オセアニア 標準規格 システム 名称 ETSI ETSI ETSI TIA ETSI ETSI TIA EN300 392 TS102 361 TS102 490 TIA102 TS102 361 EN300 392 TIA102 TETRA DMR dpmr446 APCO P25Ⅱ DMR TETRA APCO P25 380-390MHz 150MHz 帯 149MHz 150MHz 帯 150MHz 帯 380-390MHz 150MHz 帯 上り 410-420MHz 400MHz 帯 446MHz 400MHz 帯 400MHz 帯 410-420MHz 400MHz 帯 主な用途公共業務一般業務簡易業務公共業務一般業務公共業務公共業務周下り間隔 チャネル間隔 806-825MHz 806-825MHz 806-825MHz 806-825MHz 390-400MHz 150MHz 帯 149MHz 150MHz 帯 150MHz 帯 390-400MHz 150MHz 帯 420-430MHz 400MHz 帯 446MHz 400MHz 帯 400MHz 帯 420-430MHz 400MHz 帯 851-870MHz 851-870MHz 851-870MHz 851-870MHz 10MHz 規定無し 10MHz 規定なし 規定無し 規定なし 45MHz(800M) 45MHz(800M) 45MHz(800M) 45MHz(800M) 25kHz 12.5kHz 6.25kHz 12.5kHz 12.5kHz 25kHz 12.5kHz 変調方式 π/4 シフト QPSK 4 値 FSK 4 値 FSK H-CPM/ H-DQPSK 4 値 FSK π/4 シフト QPSK 4 値 FSK (C4FM) 多重数 4 2 1 2 2 4 1 伝送速度 36kbps 9.6kbps 4.8kbps 12kbps 9.6kbps 36kbps 9.6kbps アクセス 方式 TDMA TDMA SCPC TDMA TDMA TDMA SCPC/FDMA 音声符号 化方式 ACELP AMBE+2 AMBE+2 AMBE+2 AMBE+2 ACELP IMBE ETSI : European Telecommunication Standardization Institute ( 欧州電気通信標準化機構 ) TIA : Telecommunication Industries Association ( 電気通信工業会 ) -10-

エまとめ海外ではこれから導入するデジタル無線システムは 複数の制御局をIPネットワークで繋いだマルチサイトのトランキング方式が主流になりつつある 各国とも公共安全 ( 警察 消防 救急 ) の無線システムは APCO P25 か TETRA の秘話性能にも優れた高価なデジタルトランキング方式の導入を目指している 電気 ガス事業者や公共施設 交通機関などは費用的に導入し易い DMR 方式 dpmr 方式を選択するものと想定される 北米ではアナログ方式のトランキング事業者が 4,000 社近くあり 今後デジタル方式のマルチサイトトランキングシステムへの移行が進むと考えられている 表 1-6 各種システムの動向 大分類 ユーザー 方式 説明 その他 公共安全 警察 APCO P25 アメリカ政府が システム費用が高額 ( 公安規格 ) 消防公安規格に指定秘話性能に優れる救急オーストラリア ニュアメリカでは導入に ージーランドでも採用 際し補助金あり TETRA 欧州の公安規格に指定 TEDS で広帯域化へ 世界展開も推進中 ( 中国が採用 ) 仕様拡張 プライベートユーティリティ DMR 欧州中心だが世界展開 MPT1327( 現在のアナ 事業者 ( 電気 ガス 水道事業者 ) 公共施設 も推進中 ログシステム ) がデジタルナローシステムへ移行する ( 中小飛行場 スクールハ ス 森林組合 ) 鉄道 運輸 タクシーなど dpmr 主に欧州で採用 -11-