緒論 : 電気事業者による地球温暖化対策への考え方 産業界における地球温暖化対策については 事業実態を把握している事業者自身が 技術動向その他の経営判断の要素を総合的に勘案して 費用対効果の高い対策を自ら立案 実施する自主的取り組みが最も有効であると考えており 電気事業者としても 平成 28 年 2

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参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日

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御意見の内容 御意見に対する電力 ガス取引監視等委員会事務局の考え方ることは可能です このような訴求は 小売電気事業者が行うことを想定したものですが 消費者においても そのような訴求を行っている小売電気事業者から電気の小売供給を受け 自らが実質的に再生可能エネルギーに由来する電気を消費していることを

問題意識 民生部門 ( 業務部門と家庭部門 ) の温室効果ガス排出量削減が喫緊の課題 民生部門対策が進まなければ 他部門の対策強化や 海外からの排出クレジット取得に頼らざるを得ない 民生部門対策において IT の重要性が増大 ( 利用拡大に伴う排出量増加と省エネポテンシャル ) IT を有効に活用し

1. はじめに 1 需要曲線の考え方については 第 8 回検討会 (2/1) 第 9 回検討会 (3/5) において 事務局案を提示してご議論いただいている 本日は これまでの議論を踏まえて 需要曲線の設計に必要となる考え方について整理を行う 具体的には 需要曲線の設計にあたり 目標調達量 目標調達

番号文書項目現行改定案 ( 仮 ) 1 モニタリン 別表 : 各種係 グ 算定規程 ( 排出削 数 ( 単位発熱量 排出係数 年度 排出係数 (kg-co2/kwh) 全電源 限界電源 平成 21 年度 年度 排出係数 (kg-co2/kwh) 全電源 限界電源 平成 21 年度 -

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

資料 2 接続可能量 (2017 年度算定値 ) の算定について 平成 29 年 9 月資源エネルギー庁

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

( 太陽光 風力については 1/2~5/6 の間で設定 中小水力 地熱 バイオマスについては 1/3~2/3 の間で設定 )) 7 適用又は延長期間 2 年間 ( 平成 31 年度末まで ) 8 必要性等 1 政策目的及びその根拠 租税特別措置等により実現しようとする政策目的 長期エネルギー需給見通

第1章

日本市場における 2020/2030 年に向けた太陽光発電導入量予測 のポイント 2020 年までの短 中期の太陽光発電システム導入量を予測 FIT 制度や電力事業をめぐる動き等を高精度に分析して導入量予測を提示しました 2030 年までの長期の太陽光発電システム導入量を予測省エネルギー スマート社

参考資料3(第1回検討会資料3)

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律の制定の背景及び概要 ( 平成 22 年 11 月 ) 資源エネルギー庁総合政策課編

政策体系における政策目的の位置付け エネルギー基本計画 ( 平成 22 年 6 月 18 日閣議決定 ) において 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を 2020 年までに 10% とすることを目指す と記載 地球温暖化対策基本法案 ( 平成 22 年 10 月 8 日閣議決定 )

地球温暖化対策計画について 地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため 政府が地球温暖化対策推進法に基づいて策定する 我が国唯一の地球温暖化に関する総合計画 温室効果ガスの排出抑制及び吸収の目標 事業者 国民等が講ずべき措置に関する基本的事項 目標達成のために国 地方公共団体が講ずべき施策等に

れなくなる 特に 小規模の新規参入事業者にとって このリスクに対応するシステムが設けられていなければならない すなわち 万が一 小売販売事業者が倒産した場合には 送電を担う旧電力会社の責任で電力供給が保証されることになっており そのためには 在来の地域独占の旧電力会社が その発電量を補償する仕組みに

MARKALモデルによる2050年の水素エネルギーの導入量の推計

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H28秋_24地方税財源

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2 政策体系における政策目的の位置付け 3 達成目標及び測定指標 1. 地球温暖化対策の推進 1-2 国内における温室効果ガスの排出抑制 租税特別措置等により達成しようとする目標 2030 年の電源構成における再生可能エネルギーの割合を 22~24% とする 租税特別措置等による達成目標に係る測定指

平成20年度税制改正(地方税)要望事項

スライド 1

02 IT 導入のメリットと手順 第 1 章で見てきたように IT 技術は進展していますが ノウハウのある人材の不足やコスト負担など IT 導入に向けたハードルは依然として高く IT 導入はなかなか進んでいないようです 2016 年版中小企業白書では IT 投資の効果を分析していますので 第 2 章

Microsoft Word 後藤佑介.doc

バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

( 別紙 ) 中国電力株式会社及び JFE スチール株式会社 ( 仮称 ) 蘇我火力 発電所建設計画計画段階環境配慮書 に対する意見 1. 総論 (1) 石炭火力発電を巡る環境保全に係る国内外の状況を十分認識し 本事業を検討すること 本事業を実施する場合には 本事業に伴う環境影響を回避 低減するため

これは 平成 27 年 12 月現在の清掃一組の清掃工場等の施設配置図です 建替え中の杉並清掃工場を除く 20 工場でごみ焼却による熱エネルギーを利用した発電を行っています 施設全体の焼却能力の規模としては 1 日当たり 11,700 トンとなります また 全工場の発電能力規模の合計は約 28 万キ

平成 30 年度地方税制改正 ( 税負担軽減措置等 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 その他 ) No 8 府省庁名環境省 対象税目個人住民税法人住民税事業税不動産取得税固定資産税事業所税その他 ( ) 要望項目名 要望内容 ( 概要 ) 再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置の延長

資料2:地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(議論のたたき台)(案)

エネルギー規制 制度改革アクションプラン (11 月 1 日 ) の概要 重点課題と詳細リスト 現時点で政府が取り組むこととしている又は検討中の事項を 実施 検討事項詳細リスト (77 項目 ) として取りまとめ その中から 3つの柱で計 26 項目の重点課題を特定 1 電力システムの改革 (9 項

) まとめ シート 複数の電源に共通する条件等を設定します 設定する条件は 以下の 6 つです. 割引率 - 0% % % 5% から選択. 為替レート - 任意の円 / ドルの為替レートを入力. 燃料価格上昇率 ( シナリオ ) - 現行政策シナリオ 新政策シナリオを選択 4. CO 価格見通し

日本の約束草案:2030年目標の概要と課題

海外における電力自由化動向

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スライド 1

4 木質バイオマス発電設備 (2 万 kw 未満 木質バイオマス燃料の年間利用率 80% 以上と見込まれるもの ) < 下記要件のいずれかを満たすもの > 年間稼働率 80% 以上と見込まれるもの kw あたりの資本費一定以下 2,000kW 未満 62 万円 /kw 以下 2,000kW 以上 2

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FIT/ 非 FIT 認定設備が併存する場合の逆潮流の扱いに関する検討状況 現在 一需要家内に FIT 認定設備と非 FIT 認定設備が併存する場合には FIT 制度に基づく買取量 ( 逆潮流量 ) を正確に計量するため 非 FIT 認定設備からの逆潮流は禁止されている (FIT 法施行規則第 5

はじめに Ⅰ 豊かで活力ある経済社会を支えるエネルギー政策のあり方 はじめに Ⅰ 1 エネルギー政策に関する基本的考え方と現在のエネルギー情勢 (1) エネルギー問題は 国民生活と事業活動の基盤となる極めて重要な政策課題 (2) 安全性の確保を大前提に 安定供給 経済合理性 環境適合性のバランス S

お知らせ

本日の説明内容 1. グリーン購入法の概要 2. プレミアム基準策定ガイドライン

整力を確保する一方 小売部門が GC までの自社需要の想定誤差に対する予備力を確保する対 応をしていることから 一部の旧一般電気事業者については 送配電部門と小売部門が確保し ている予備力の合計値が 調整力公募制度開始以前と比較して増加している ( 卸電力取引所活性化の必要性 ) 旧一般電気事業者の

取組概要 ( 申請書からの転記 ) 全 般 排 出 量 の 認 識 取組名称 認証取得者名取組の概要 適用したカーボン オフセット第三者認証基準のバージョン認証の有効期間オフセット主体認証ラベルの使途 認証対象活動 認証番号 :CO 有効期間満了報告書受領済み 持続可能な島嶼社会の発展に

新とする理由⑴ 政策目的 車体課税については 平成 23 年度税制改正大綱において エコカー減税の期限到来時までに 地球温暖化対策の観点や国及び地方の財政の状況を踏まえつつ 当分の間として適用される税率の取扱いを含め 簡素化 グリーン化 負担の軽減等を行う方向で抜本的な見直しを検討 することとされて

資料3-1 温室効果ガス「見える化」の役割について

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

2(1) 総量削減義務と排出量取引制度のポイント (2010 年度 ~) 大規模事業所向け制度の主な変更点等 旧制度 ( 地球温暖化対策計画書制度 ) 新制度 ( 排出総量削減義務と排出量取引制度 ) 温室効果ガス排出量の削減対策推進義務 排出総量の削減義務と排出量取引制度の導入 計画書等の作成 提

資料 3 ー 1 環境貢献型商品開発 販売促進支援事業 環境省市場メカニズム室

1. 調整力公募について 本年 4 月に施行された第 2 弾の改正電事法により 新しいライセンス制度が導入されたことを受け 一般送配電事業者が電力供給区域の周波数制御 需給バランス調整を行うこととなっている そのために必要な調整力を調達するにあたって 一般送配電事業者は原則として公募の方法で調達する

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扉〜目次

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2017(平成29)年度第1四半期 決算説明資料

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公開用_ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の定義と評価方法(150629)

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揮発油税等の当分の間税率とその環境効果 揮発油税の概要 揮発油税及び地方揮発油税の税率は 昭和 49 年度税制改正において税率引上げが行われた際に 暫定的な措置として 租税特別措置法により税率の特例措置が講じられて以来 平成 20 年度改正において平成 30 年 3 月末までの 10 年間の措置とし

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フロン類製造業者等の フロン類の使用合理化の状況

資料3

環境税導入の都道府県別負担の評価

目 次 1. トップランナー制度について 1トップランナー制度の概要について 3 2トップランナー基準に関する基本的な考え方について 5 3トップランナー基準に関する主な規定について 8 4トップランナー基準策定及び運用の流れについて 9 2. ラベリング制度について 1ラベリング制度の概要について

200kW 未満 272 万円 /kw 以下 200kW 以上 1,000kW 未満 109 万円 /kw 以下 1,000kW 以上 3 万 kw 未満 39 万円 /kw 以下 4 木質バイオマス発電設備 (2 万 kw 未満 木質バイオマス燃料の年間利用率 80% 以上と見込まれるもの ) <

2018年度第1四半期 決算説明資料

LED 照明の種類 LED 照明は主に器具と光源が一体化したシーリングライトなどの LED 照明器具 と白熱電球や蛍光灯の光源部分を LED に置き替えた LED ランプ に分類されます ( 図 2-1) 省エネ性と環境性が重視され 公共建築物で使用された LED 照明器具の採用機種数は 2010

( 出所 ) 中国自動車工業協会公表資料等より作成現在 中国で販売されている電気自動車のほとんどは民族系メーカーによる国産車である 15 年に販売された電気自動車のうち 約 6 割が乗用車で 約 4 割弱がバスであった 乗用車の中で 整備重量が1,kg 以下の小型車が9 割近くを占めた 14 年 8

整力を確保する一方 小売部門が GC までの自社需要の想定誤差に対する予備力を確保する対 応をしていることから 一部の旧一般電気事業者については 送配電部門と小売部門が確保し ている予備力の合計値が 調整力公募制度開始以前と比較して増加している ( 卸電力取引所活性化の必要性 ) 旧一般電気事業者の

資料3 船舶ワーキンググループにおける検討方針等について

資料2-1 課税段階について

バイオ燃料

望の内容平成 28 年度税制改正 ( 租税特別措置 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 ) ( 経済産業省経済産業政策局産業再生課 ) 制度名産業競争力強化法に基づく事業再編等に係る登録免許税の軽減措置 税 目 登録免許税 ( 租税特別措置法第 80 条 ) ( 租税特別措置法施行令第 42 条の


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1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

ここに議題名を入力

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整力を確保する一方 小売部門が GC までの自社需要の想定誤差に対する予備力を確保する対 応をしていることから 一部の旧一般電気事業者については 送配電部門と小売部門が確保し ている予備力の合計値が 調整力公募制度開始以前と比較して増加している ( 卸電力取引所活性化の必要性 ) 旧一般電気事業者の

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第14回税制調査会 総務省説明資料(・地方税務手続の電子化等2・個人住民税2)

経営指標の概要 ( 電気事業 ) 1. 経営の状況 ( 電気事業全体で算出 ) 算出式 ( 法適用事業 ) 算出式 ( 法非適用事業 ) 1 経常収支比率 (%) 1 収益的収支比率 (%) 指標の意味 経常収益 100 経常費用 総収益 100 総費用 + 地方債償還金 法適用企業に用いる経常収支

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Microsoft PowerPoint - 7.【資料3】国民健康保険料(税)の賦課(課税)限度額について

3 地球温暖化対策の推進に関する方針及び推進体制 (1) 地球温暖化対策の推進に関する方針 [ 基本理念 ] 人類が自然と調和し 未来にわたり持続可能な発展を実現するため NTT グループ地球環境憲章に則り NTT 西日本はグループ会社と一体になって 全ての企業活動において地球環境の保全に向けて最大

昨年の値上げは査定による圧縮で 家庭用は全社とも10% 以内であった 電力会社にコスト抑制努力を求めるのは当然であるが 原価の大半を占める燃料費の抑制のため 2017 年 4 月には米国産シェールガスの調達が拡大して現在の6 割程度のコストで調達可能になっているという 将来への期待値 を前提とした査

企画書タイトル - 企画書サブタイトル -

A.3 排出削減量の算定方法 A.3.1 排出削減量 ER EM BL EM PJ ( 式 1) 定義単位 数値 4 ER 排出削減量 1 kgco2/ 年 0 t<1 年 年 t<2.5 年 年 <t EM BL ベースライン排出量 2 kgco2/

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カーボンプライシングのあり方に関する検討会 における議論にあたって 平成 29 年 10 月 13 日電気事業連合会

緒論 : 電気事業者による地球温暖化対策への考え方 産業界における地球温暖化対策については 事業実態を把握している事業者自身が 技術動向その他の経営判断の要素を総合的に勘案して 費用対効果の高い対策を自ら立案 実施する自主的取り組みが最も有効であると考えており 電気事業者としても 平成 28 年 2 月に 電気事業低炭素社会協議会 を設立し 電力業界全体での温室効果ガス排出削減に取り組んでいるところ 電気事業低炭素社会協議会 2030 年度目標 排出係数 :0.37kg-CO 2 /kwh 程度 ( 使用端 ) 火力発電所の新設等への BAT 活用等 : 約 1,100 万 t-co 2 排出係数 0.37kg-CO 2 /kwh 程度は 政府の長期エネルギー需給見通しで示されたエネルギーミックスから算出される国全体の排出係数であり 2013 年度比 35% 相当と試算 2030 年度 CO 2 排出量 (3.6 億 t-co 2 ) 2030 年度の電力需要想定値 (9,808 億 kwh) =0.37kg-CO 2 /kwh 程度 2

緒論 : エネルギーミックスとカーボンプライシング 2030 年度において目指すべき電源構成は 3E のバランスと実現可能性を考慮して策定されたエネルギーミックスにて示されており 日本の掲げる約束草案である 温室効果ガス 26% 排出削減 (2013 年度比 ) は このエネルギーミックスの実現の結果として達成されるべきものである 仮に エネルギーミックスが実現されぬまま 削減目標のみが達成できたとしても 3E のバランスからは 我が国が目指すべき姿が実現されたものとは言い難い このため 地球温暖化対策の観点からも まずは エネルギーミックスの実現を至上命題として追求すべき エネルギーミックスの実現 維持には 再エネの導入 原子力の再稼働 新設 & リプレース が不可欠 再エネについては 再生可能エネルギー固定価格買取 (FIT) 制度が既に導入されており 国民による賦課金負担の下 導入が進んでいる また 原子力の稼働については 事業者の不断の努力による安全性を確立したうえでの国民理解が必須であるが カーボンプライシングは 必ずしもこの国民理解を促すものとはならず エネルギーミックスの実現を担保する施策にはならない 3

1. 電気事業低炭素社会協議会の取組実績 2016 年度実績 ( 暫定値 ) CO 2 排出量 排出係数 2016 年度 ( 参考 )2015 年度 販売電力量 ( 億 kwh) 8,340 8,314 CO 2 排出量 ( 億 t-co 2 ) CO 2 排出係数 (kg-co 2 /kwh) 調整前 4.32 4.44 調整後 4.31 4.41 調整前 0.518 0.534 調整後 0.516 0.531 協議会会員事業者のうち 当該年度に協議会の下で事業活動を行っていた事業者の実績を示す 地球温暖化対策の推進に関する法律 に基づき 電事連関係各社が当該年度に反映したクレジットは含めていない このクレジットは 2012 年度までの自主行動計画への反映を目的としたクレジットであることから 低炭素社会実行計画上の 2015 年度の調整後 CO 2 排出量及び排出係数には反映していない 4

1. 電気事業低炭素社会協議会の取組実績 CO 2 排出実績の推移 排出量 排出係数ともに調整後の値 2015 年度以降は協議会会員事業者のうち 当該年度に協議会の下で事業活動を行っていた事業者の実績を示し 2008~2014 年度は電事連及び新電力有志の実績合計を参考として示す 5

2. 電気事業における税負担およびエネルギーコスト 電気事業者は 既に多額の租税公課を負担しており 平成 27 年度では約 1 兆 280 億円 電気料金との関係からみると 平成 27 年度の一般家庭 1 件あたりの電気料金約 6,900 円 ( 消費税含みの 1 か月平均 ) の中に 電気事業者の支払う租税公課が約 400 円 お客さまが電気料金とともに支払う消費税が約 500 円 合計で約 900 円含まれていることになる 法人税 1,051 その他諸税 162 核燃料税 196 約 1 兆 280 億円 ( 電力 10 社 ) 電源開発促進税 3,159 固定資産税 3,237 法人税 租税公課 ( 法人税除く ) 1.8% 1.9 1.9 1.7% 2.0 1.9 3.8% 3.5 3.7 H24 H25 H26 5.5% 5.0 5.0 事業税 1,802 S49 H25 H26 H27 電気事業の租税公課負担推移 ( 億円 ) 公課 672 水利使用料道路占有料 全産業製造業カ ス 水道他電力 (10 社 ) 租税負担率の業種間比較 ( 売上高に対する割合 ) 6

2. 電気事業における税負担およびエネルギーコスト 原子力の再稼働が徐々に進展し 再生可能エネルギーの導入も進んではいるものの 電力の安定供給を継続するために いまだに火力発電が電源構成の約 85% を担っている 火力発電に係る燃料費については 約 7 兆円 (2014 年度旧一般電気事業者の合計 ) 電源構成の推移 電源比率の推移 2010 2013 2014 2015 再エネ 9.9% 10.7% 12.2% 14.3% 火力 59.3% 88.4% 87.8% 84.6% 火力比率 84.6% ( 石油等 ) 8.3% 14.9% 10.6% 9.0% (LNG) 27.2% 43.2% 46.1% 44.0% ( 石炭 ) 23.8% 30.3% 31.0% 31.6% 原子力 30.8% 1.0% 0.0% 1.1% 資源エネ庁 エネルギー白書 を基に作成 7

2. 電気事業における税負担およびエネルギーコスト 国際的に見ても 日本の LNG や石炭の輸入平均価格は高水準であり 電気料金も各国に比べて高いレベル LNG 輸入平均価格 (2015 年平均 ) 電気料金の国際比較 (2015 年 ) 最大 4.5 米ト ル /MMBTU 一般炭輸入価格 最大約 36 米ト ル / トン H25 H26 資源エネ庁 エネルギー白書 を基に作成 8

2. 電気事業における税負担およびエネルギーコスト 日本の電力業界は 既に他国と比較しても高水準な暗示的炭素価格を負担 電力中央研究所研究報告書より抜粋 9

参考 FIT 制度導入による国民負担 2012 年の FIT 制度導入以降 賦課金単価の上昇と共に買取費用が増加し 2017 年度の買取費用は約 2.7 兆円 2030 年度では約 3.7~4.0 兆円と見込まれる 標準家庭 (300kWh/ 月 ) における負担額を試算すると 導入当初 (2012 年度 ) は 66 円 / 月であるのに対し 2017 年度では 792 円 / 月と 12 倍に増大していることになる 資源エネ庁資料より抜粋 10

3. カーボンプライシングが導入された場合の影響 大型炭素税の導入 大型炭素税により 石炭火力とガス火力の短期限界費用の差を炭素税で埋めるとした場合 燃料単価次第で大きく変動するものの 一定の前提条件の下で試算すると 約 12,000 円 /t-co 2 の課税が必要となり 電気料金への価格転嫁率を 100% とすると 約 6.2 円 /kwh 上昇するものと試算される 一定の前提条件の下 既存の石油石炭税と温暖化対策税を 100$/t-CO 2 に置き換えたケースを想定すると 燃料費としては石炭が 136% LNG は 32% 石油が 29% 上昇し 電気料金における燃料費の割合を 4 割とすると 電気料金は約 28% 上昇するものと試算される いずれにしても 既に電気事業者の税負担やエネルギーコストは大きく 炭素税の導入により家計や産業に与える影響は増大する 排出量取引の導入 排出量が排出枠を超過し 排出枠を確保するためのコストを負担することで発電による収益が見込めない場合 事業の継続が困難となり 安定供給に大きな支障を来す可能性 排出削減コストの高い FIT 制度が導入されている現状では 温暖化対策の費用最小化を目的に排出量取引を導入する意味は少ない 原単位目標が義務化された場合 再生可能エネルギーの更なる上積みもしくは海外クレジットの購入等によって目標が達成されようとすると 電力コストは大幅に上昇し 家計や産業に与える影響は増大する 11

4. 現行政策との整合 電気事業における自主的枠組みを支える仕組みとして H28 年 2 月に経産省 環境省の合意 ( 2 月合意 ) によって 省エネ法 高度化法 を用いたルール整備がなされ これに係る市場設計の検討が進行 電気事業者としても 各目標水準の達成に向けた検討 取り組みに着手 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会資料より抜粋 12

参考 2 月合意 ( 協議会発足時の政府のコメント ) 経産省 H28.2.9 公表の声明より抜粋 電力業界の自主的枠組みは 1 エネルギーミックスと整合的である 2CO 2 削減目標とも整合的である 3 主要な電力小売事業者が参加するものであることから 野心的な取組であると評価している 電力自由化の下でこの自主的枠組みの実効性を確保する措置を導入する 具体的には 1 発電段階では 省エネ法により発電効率の向上を 2 小売段階では 高度化法により販売する電力の低炭素化を それぞれ求めていく 環境省 H28.2.9 の会見録より抜粋 経済産業省は 省エネ法や高度化法に基づく基準の強化や新設を行い これらを指導 助言 勧告 命令を含めて適切に運用することによって エネルギーミックスの達成に向けて責任をもって取り組んでいく ( 略 ) 以上により 電力業界全体の取組の実効性を確保することとする 電気事業分野からの排出量や排出係数等の状況を評価して 0.37kg-CO 2 /kwh の達成ができないと判断される場合には 施策の見直し等について検討する アセスの個別案件の CO 2 審査においては 国の計画 目標との整合性についての状況を確認することになる 13

4. 現行政策との整合 省エネ法 高度化法 の目標水準はいずれもエネルギーミックスに基づいて設定されたものであり 温室効果ガス 26% 排出削減 (2013 年度比 ) という目標達成へのプロセスとしては 排出量取引や炭素税より実効的であると言える 加えて 電気事業者が 自主的な枠組 省エネ法 高度化法 の目標水準の達成に向けた投資を行う時点で CO 2 削減に係るコスト ( カーボンプライス ) は発生しており この際に 各事業者がそれぞれの実状に応じた創意のもとでの最適な選択を行うことができる点からは 排出量取引や炭素税に比べてより費用効果的であると考えている つまり 2 月合意 の内容は 日本オリジナルのカーボンプライシング と言えるものであり CO 2 排出削減への実効性 費用効果の双方の面において 先行する他国のカーボンプライシング ( 排出量取引 炭素税 ) に決して劣後するものではない 14

5. まとめ 電力業界では低炭素社会の実現に向けた自主的な枠組として 平成 28 年 2 月に 電気事業低炭素社会協議会 を設立し 2030 年度に 0.37 kg-co 2 /kwh 程度 を目標に取組みを進めているところ エネルギーミックスの実現 維持には 再エネの導入 原子力の再稼働 新設 & リプレース が不可欠であるが カーボンプライシングは原子力の稼働には必ずしも寄与せず エネルギーミックスの実現を担保する政策とはならない カーボンプライシング導入の可能性 有効性について評価しておくことの必要性について異論はないが カーボンプライシング導入国を過度に意識した 明示的な炭素価格 に固執することで 事業者による合理的な投資が制限され 本来果たすべきエネルギーミックスの達成が非効率になっては本末転倒 2 月合意 に基づき 省エネ法 高度化法 の各目標水準に向けた取組みを進めている現状下 カーボンプライシングが重複して導入されることは事業者として許容しがたい まずは 2 月合意 による取組みを尊重したうえで 省エネ法 高度化法 の取組みの実績 進捗および原子力の再稼働状況を踏まえつつ エネルギーミックスの見直しを含めた追加的政策措置の必要性を議論すべき 2030 年以降においても 新たに目指すべき 3E の姿としてのエネルギーミックスが策定され これの実現に向けた取組みが為されていくべきものと思料 15