資源メジャー5社の 資源メジャー 5 社の動向比較 下げることが容易ではないコストの削減を懸命に行いながら 同時にトップライン ( 売上高 ) の死守 ( 維持 ) のため 全体的には増産の基調を強めた一年であった しかしながら 大小の事故や不採算権益の売却 鉱山の停止などの影響も避けられなかったことで 一部増産を続けた鉱種もあるものの全体でみると前年度 (2014 年通期 ) 比では生産量を落とした形になっている そこに右下がりの資源価格が容赦なくヒットしたことにより この会計年度末を迎えた各社は一斉に巨額の減損を発表すると同時に聖域でもある 配当 へ手を伸ばすことに繋がるという各社にとっては悪夢のような年だったのではないだろうか 110 株価チャート (2015 年 1 月 1 日を 100 として基準化 ) 90 (%) 70 50 30 15/01/02 15/02/24 15/04/17 15/06/09 15/07/30 15/09/21 15/11/11 16/01/05 16/02/25 BHP Billiton Ltd Rio Tinto Ltd Vale SA Anglo American plc Glencore plc 各社 2015 年 (BHP のみ 16 年上半期 ) の数値での全体比較 < 大手 5 社における 2015 年 1~ 12 月の生産状況サマリー > 銅 全体で5% の減少 Glencoreのアフリカオペレーション (Katanga 他 ) とBHPの南米 (Escondida) の落ち込みが大きく影響した形となった 前者は高コスト鉱山の停止 後者は品位低下が主要因との発表になっているが ともに経営にとっては厳しい内容 ニッケル 2014 年度比 9% 減は BHPが過去スピンアウトさせようとしたがSouth32にも組み入れることができなかった同社にとってはノンコアとなる豪州のニッケルアセット Nickel West(WA 州 ) の不調がその主因となっている もともとBHPのニッケルは外部ソースからの受け入れ ( 委託加工 ) も多かったところに 需要低迷でそのニーズが激減 それによって稼動効率も下がったことが主な要因となり更に業績を圧迫しているのではないかと推測される - 1 -
資源メジャー5社の動向 亜鉛 鉛 亜鉛は横ばい BHP Billitonのアセットによる産出 (Antamina/ ペルー ) 以外の大部分はGlencoreのアセットのみとなる Glencoreは世界の亜鉛生産量の約 1 割を担う巨大プロデューサー 北米の不調を主力の豪州で補った形であろう アルミニウム関連 BHPにおけるSouth32へのスピンアウトの影響により5 社合計は大きく減少 尚 アルミニウム アセットは過去にVALEがいち早く切り離している (2011 年 ノルウェーの大手 Norks Hydroへ売却 ) また あまり話題にはなっていないがGlencore 所有の米国のアルミナ工場も2016 年 1 月に米連邦破産法 11 条の適用を申請している 中国の巨大なキャパと生産量を背景に 今後も価格の上昇は見込めない金属資源の代表格となっているのだろうか メジャーの中ではアルミニウム加工の川下も強いRio Tinto 以外はどうも消極的というのがトレンドのようである そのRio Tintoは近代化して生まれ変わった Kitimat 製錬所が稼動を開始 鉄鉱石 ペレット 8% 増 主にRio TintoのPilbara( 豪州 ) の増加が寄与した形となった それ以外でも BHP Valeでも微増と経営の努力が見られる結果となっている 但し 2016 年央あたりからSAMARCO( ブラジル /BHPとVALEのJV) で起きたダム決壊事故の影響が出てくるものと思われる 6 4 2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 2011 年 1 月 2011 年 7 月 2012 年 1 月 2012 年 7 月 2013 年 1 月 2013 年 7 月 2014 年 1 月 2014 年 7 月 2015 年 1 月 2015 年 7 月 2016 年 1 月 アルミニウム銅鉛ニッケル錫亜鉛 鉄鉱石 (62% China Imp CFR) 金プラチナ 図 1-1 主要な資源価格の長期推移 (2011 年 1 月 4 日 =1 とした日次価格 ) 資源メジャー 金属部門の動向調査 2016-2 -
資源メジャー5社の用語 紙面やグラフ等のスペースの都合により 商品名や事業名に略語を用いる場合もある 下記はその一覧である 略語一覧 O&G...Oil/ 原油 Gas/ ガスのどちらか もしくは両方 Coal... 以下のどちらか もしくは両方 Thermal Coal/ 一般炭もしくは燃料炭 ( 発電用 ) Metallurgical Coal/ 原料炭 ( 製鉄原料 ) Mn...Manganese/ マンガン ( 鉱石をさす場合もある ) Al... 以下のどれか もしくは全て...Bauxite/ ボーキサイト...Alumina/ アルミナ...Aluminium/ アルミニウム ( 米国表記ではAluminum) Cu...Copper/ 電気銅 ( 銅地金 ) もしくは銅精鉱 Zn+Pb...Zinc/ 鉛地金および Lead/ 亜鉛 ( ともに精鉱を含む ) Ni...Nickel/ ニッケルおよびその鉱石 PGM... 以下の貴金属およびその他の総称 Pt : Platinum/ プラチナ Pd : Palladium/ パラジウム Rh : Rhodium/ ロジウム Au+Ag...Au : Gold/ 金 Ag : Silver/ 銀 Ind. Minerals...Industrial Minerals ホウ素 ミネラルサンドなどの工業用原料 Alloys... ニッケル クロム マンガンなどの合金鉄類 Fert. Products...Fertilizer Products 窒素 リン カリの肥料製品等 - 3 -
資源メジャー5社の動向 事業セグメントについて ( 再掲載 ) 国際会計基準 IFRSにて求められている事業の内容毎にその業績と経営資源の内訳の開示の内訳単位である セグメント の定義について以下触れておく セグメントは 企業が業績管理を目的として内部使用する 事業セグメント およびその内部用の事業セグメントを決算データとして外部に開示する際の 報告セグメント に分類され それぞれにIFRSが定める基準がある 事業セグメントの決定 以下の要件のすべてに該当する場合 事業セグメントとして認識できる ( ただし 未だ 収益獲得に至っていない立ち上げ中の事業が事業セグメントに該当する場合もある ) 当該事業活動が費用を負担し 収益を得ている事 当該事業活動の最高意思決定者 1 が そのセグメントに配分する経営資源に関する意思決定を行い また定期的にその業績評価を行っている事 当該事業活動に関して 独立した財務情報が入手可能である事 2. 報告セグメントの決定 報告セグメントは決算データとして外部に開示される際の単位であり IFRS の定める (A) 集約基準および (B) 量的基準に従い 事業セグメントを報告セグメントに分類する -A: 集約基準 2 - 以下の要件のすべてに該当する場合 複数の事業セグメントを 1 つの事業セグメントに 集約できる 製品及びサービスの性質 生産過程の性質 当該製品及びサービスの顧客の類型又は種類 当該製品を配送し又は当該サービスを提供するために使用する方法 業種に固有の規制環境が存在する( 銀行 保険 公共事業など ) 単独の事業セグメントまたは集約基準によって 1 つにまとめられた事業セグメントは B の量的基準に従って 報告セグメントへの分類を行う 1 2 最高意思決定者とは CEO や COO などの特定の肩書を有する経営者を指すものでは無い 従い 経営会議や取締役会などのグループを指す場合もあれば カンパニー制の企業の場合はカンパニープレジデント 事業部制の場合は事業部長などの個人を指す場合もある 新日本有限責任監査法人 IFRS ポイント講座 : 第 14 部 事業セグメント から抜粋 資源メジャー 金属部門の動向調査 2016-4 -
資源メジャー5社の-B: 量的基準 - 以下の要件のいずれかに該当する場合 その事業セグメントは報告セグメントとして認識しなければならない 当該セグメントの売上高( 部門間の売上高を含む ) が 全てのセグメントの売上高の 10% を超える場合 当該セグメントの税引き後損益の絶対値が以下のどちらか大きい額の10% を超える場合 i. 利益が生じている全ての事業セグメントの利益の合計額 ii. 損失が生じている全ての事業セグメントの損失の合計額の絶対値 当該セグメントの資産が 全セグメントの資産合計の10% 以上 ただし 上記によって報告セグメントに分類された売上 ( 外部売上 ) の合計が全体の 75% に達しない場合 量的基準を満たしていない事業セグメントを既存の報告セグメントに追加するか または量的基準を満たしていない事業セグメントを結合して 報告セグメントとする つまり その他 の報告セグメントにおける外部売上高は25% を超えてはいけない というルールである 表 1-1 および図 1-2 を用いて 報告セグメントの決定について 具体的に説明する 表 1-1 報告セグメントの分類方法 事業 A 事業 B 事業 C 事業 D 事業 E 事業 F 合計 外部売上 300.0 50.0 50.0 45.0 45.0 40.0 530.0 内部売上 30.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 55.0 合計 330.0 55.0 55.0 50.0 50.0 45.0 585.0 シェア 56.4% 9.4% 9.4% 8.5% 8.5% 7.7% 100% 税後損益 34.0 15.0 10.0 6.0 10.0 5.0 60.0 シェア 48.6% 24% 8.6% 14.3% 8.0% 100% 資産 650.0 200.0 100.0 100.0 100.0 100.0 1,250.0 シェア 52.0% 16.0% 8.0% 8.0% 8.0% 8.0% 100% 外部売上 75% テスト 1 回目 300.0 50.0 45.0 395.0 74.5% 2 回目 300.0 50.0 50.0 45.0 445.0 84.0% 利益 70 > 損失 10 なので 税後損益の 10% ルールは利益 70 に対して検討される つまり シェアの分母は 60 では無く 70 となる 税後利益 34.0 15.0 6.0 10.0 5.0 70.0 税後損失 10.0 10.0-5 -
資源メジャー5社の動向 事業 Aは売上 税後損益 資産の全てで10% 超のシェアを持つので 単独で報告セグメントに分類される 2. 事業 Bは税後損益および資産で10% 超のシェアを持つので 単独で報告セグメントに分類される 3. 事業 Eは税後損益で10% 超のシェアを持つので 単独で報告セグメントに分類される 4. 事業 C D Fは売上 税後損益 資産のいずれも10% 超のシェアを持つ項目が無いために その他に分類される 5. ただし 単独の報告セグメントの外部売上の合計シェアは74.5% で 75% を超えていないので 事業 C D Fのうちから 外部売上の最も高い事業 Cを単独の報告セグメントに加える これにより 単独の報告セグメントの外部売上の合計シェアが84% となり 単独の報告セグメントが確定した 6. 残る事業 Dおよび事業 Fはあわせて その他 の報告セグメントとして分類する なお 量的基準 は その基準を満たさない 事業セグメント を単独の 報告セグメント として開示することを妨げるものではない 量的基準 の意義は あくまでも その基準を満たす 事業セグメント について 報告セグメント として開示する事を義務付けている点にある つまり 上記の説明では その他の報告セグメントに分類した事業 DおよびFは それぞれ 単独で報告セグメントとして開示する事が可能であり もし それらが集約できる場合は 集約した状態の報告セグメントとして扱う事も可能である 図 1-2 はこれをフローチャートで表したものである 資源メジャー 金属部門の動向調査 2016-6 -
資源メジャー5社の 事業セグメント の決定 量的基準を満たさない事業セグメントについても 報告セグメント として開示可能である 量的基準はそれを満たす事業セグメントの開示義務を要求するものであり 要件を満たさない事業の情報開示を妨げるものでは無い A-1 A-2 B-1 B-2 C D-1 D-2 D-3 E F 集約基準 を満たすか? No C E F C D-1,2,3 F 量的基準 を満たすか? No Yes 事業セグメントの経済的な 特徴が類似し 集約基準の 過半数を共有しているか? Yes 複数の事業セグメントを結合できる No C D-1,2,3 F A-1,2 B-1,2 E 報告セグメント ( その他 ) の確定 報告セグメント の確定 D-1,2,3&F C C A-1,2 B-1,2 E <25% ( 外部売上高 ) 外部売上高 75% テストにより その他の報告セグメント から 単独の報告セグメント へ移動 >75% ( 外部売上高 ) 図 1-2 報告セグメントの決定フローチャート Yes 複数の事業セグメントを集約してもよい A-1,2 B-1,2 D-1,2,3 注意 : 単独の報告セグメントにおける外部売上高の合計が全体の 75% を超える必要がある - 7 -