報告書要約2月28日「タイにおける省エネルギー技術として有効な屋根用省エネ塗料の技術協力事業」実証事業

Similar documents
Microsoft Word - セット版●報告書要約2月28日「タイにおける省エネルギー技術として有効な屋根用省エネ塗料の技術協力事業」実証事業 (2)

1

スライド 1

新規文書1


J I S J A S O 廃止提案書 1. 対象規格 JASO M 304:02 ( 自動車用発泡体 ) 2. 廃止の背景と理由この規格は自動車用の断熱 防音 防振及びクッション用材料の性能 試験方法を標準化する趣旨で 1969 年に制定され 以後 4 回の改正が行われた なお 本年度の定期見直し

Microsoft PowerPoint - 資料7-5.ppt

実験題吊  「加速度センサーを作ってみよう《

新事業分野提案資料 AED(自動体外式除細動器) 提案書

PowerPoint プレゼンテーション

はじめに 平素は格別のご高配を賜り 厚く御礼申し上げます 平素は格別のご高配を賜り 厚く御礼申し上げます この度は 屋根改修に際し 弊社 イソタンシステム ご提案の機会を賜りまこの度は 屋根改修に際し 弊社 イソタンシステム ご提案の機会を賜りました事を重ねて御礼申し上げます した事を重ねて御礼申し

Microsoft PowerPoint - 遮蔽コーティングの必要性 [互換モード]

(Microsoft PowerPoint - \216R\223c\221\262\230_2011 [\214\335\212\267\203\202\201[\203h])

< 検証実験の背景 > SNS 上で 夏場にエアコンをつけっぱなし運転したら電気代が安くなった という情報が拡散したことをきっかけに エアコンをつけっぱなしするのとこまめに入り切りするのでは どちらが安くなるか に関心が集まっています 夏場のエアコン利用に関して 100 名の方にアンケートを行ったと

品質マニュアル(サンプル)|株式会社ハピネックス

事例8_ホール素子

,745 3,000 JK

2

Microsoft Word - testing_method_desiccant_ docx

01盤用熱対策機器_coolcabi.indd

「節電対策パンフレット」(家庭向け)

三建設備工業つくばみらい技術センター汎用機器を用いた潜熱処理システムの運転実績

スライド 1

けいはんなエコシティ次世代エネルギー 社会システム実証プロジェクトにおける 電気のかしこい使い方プログラム の今夏の実施結果と今冬の実施概要について 平成 25 年 12 月 2 日関西電力株式会社三菱電機株式会社三菱重工業株式会社 関西電力株式会社 三菱電機株式会社 三菱重工業株式会社の 3 社は

Microsoft Word 後藤佑介.doc

azbil Technical Review 2011年1月号

能力グラフ 50Hz OCA-300BC-200V-R 60Hz 能力グラフの見方の説明は 編 P に掲載しておりますのでご参照ください OCA-300BC-200V-R 屋外盤用 外形寸法図 < 正面図 > < 側面図 > < 裏面図 > < 下面図 > パネルカット図 取付図 <

技術名

【配布資料】

店舗・オフィス用パッケージエアコン「省エネの達人プレミアム」新シリーズを発売

富士通セミコンダクタープレスリリース 2009/05/19

を大きくとる必要があるためだけではなく 急勾配の 状を採用した (写真3-1 図3-D 屋根により面積当たりの気積を大きくとることで上下 の温度差をつくり出し 熱気を上部へ逃がして 下部 3.2芝土屋根 のアクティブゾーンを涼しく保つ働きがあると考えら 高温多湿な東南アジアにおいて一般的な伝統的建築

QOBU1011_40.pdf

スライド タイトルなし

平成

パッシブ設計実測比較_薪ストーブ編


資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

真空ガラス スペーシア のご紹介 一般に使用されている一枚ガラスの約 4 倍の断熱効果を発揮!! お部屋全体を快適にします オフィスやパブリックスペースの環境は 冷房や暖房に常に取付専用グレチャン気を配らなければなりません 高断熱 Low-Eガラスしかし一方で経営者の方々にとっては節電対策も重要な項

Microsoft Word - 防露試験ガイドライン doc

日本市場における 2020/2030 年に向けた太陽光発電導入量予測 のポイント 2020 年までの短 中期の太陽光発電システム導入量を予測 FIT 制度や電力事業をめぐる動き等を高精度に分析して導入量予測を提示しました 2030 年までの長期の太陽光発電システム導入量を予測省エネルギー スマート社

PowerPoint プレゼンテーション

1. 背景 目的 -1- CO2 排出量 の削減 地球温暖化防止 電力消費の削減と平準化 電力不足への対応 グローバルな要求事項 今後の電力供給体制への影響が大きい 地球温暖化が叫ばれる中 グローバルな要求事項として CO2 排出量の削減が求められている 加えて震災後の電力供給体制に対し 電力消費そ

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

1次元伝熱モデル(非定常)

OCA-0BC-0V/V (-CE) 能力グラフ OCA-0BC-V (-CE) W W W W

マイナス電位発生機能付 床暖房システム マイナス電位発生機能と床暖房のダブル効果でオールシーズン快適ライフ! イオン くんにしてからリラックスできる時間が増えたように感じます 家族にも笑顔が増えましたね 床暖房にしてから部屋の空気がきれいになりました 何よりも家族みんなの健康が一番だね

ACモーター入門編 サンプルテキスト

OCA-0BCD-V 能力グラフ OCA-0BCD-V 50Hz 60Hz (W) 0 ( ) (W) 0 ( ) 盤内希望設定温度 盤内希望設定温度 800 標 準 タイプ 側面取付型 能力

untitled

高塗着スプレーシステムの適用 加藤雅宏 1) 伊藤秀嗣 2) 大柴雅紀 3) 後藤宏明 3) 新谷憲正 3) 二股誠 3) 1. はじめに鋼橋の塗装に於いてエアレス塗装方式は刷毛やローラー塗りに比べて施工能率が高く塗装仕上がり品質も良い反面 スプレーミストの飛散が多いため現場で使われることが少なかっ

円筒型 SPCP オゾナイザー技術資料 T ( 株 ) 増田研究所 1. 構造株式会社増田研究所は 独自に開発したセラミックの表面に発生させる沿面放電によるプラズマ生成技術を Surface Discharge Induced Plasma Chemical P

店舗・オフィス用パッケージエアコン 室内ユニット「てんかせ2方向」シリーズを発売

OUTGAS 対策 GIGA フィルタシリーズ ULPA/HEPA フィルタ / 中高性能フィルタ GIGA FILTER 製品一覧 名称略称特長ウェーハ吸着有機物量ボロン発生量ボロン含有量 GIGA MASTER GM 低有機物 低ボロン 上記の数値は シリカ試験一般品との比較値を示す 次世代の半

Microsoft Word -

1. はじめに 1 需要曲線の考え方については 第 8 回検討会 (2/1) 第 9 回検討会 (3/5) において 事務局案を提示してご議論いただいている 本日は これまでの議論を踏まえて 需要曲線の設計に必要となる考え方について整理を行う 具体的には 需要曲線の設計にあたり 目標調達量 目標調達

4 推進体制別途添付いたします 5 公表の方法等 ホームページアドレス 閲覧場所 窓口で閲覧 所在地 冊 子 閲覧可能時間 冊子名 入手方法 その他

食肉製品の高度化基準 一般社団法人日本食肉加工協会 平成 10 年 10 月 7 日作成 平成 26 年 6 月 19 日最終変更 1 製造過程の管理の高度化の目標事業者は 食肉製品の製造過程にコーデックスガイドラインに示された7 原則 12 手順に沿ったHACCPを適用して製造過程の管理の高度化を

42

<4D F736F F F696E74202D2092B788E42D C838B834D815B8C768E5A2E B8CDD8AB B83685D>

研究成果報告書

2019 年 1 月 18 日 インド共和国アーメダバード市における 日本で規格化され世界標準規格でもある UHF 帯 V2X 通信技術を応用した緊急車両優先システムの実証実験 の実施について 株式会社ゼロ サム 株式会社トヨタ IT 開発センター 0. サマリー 〇株式会社ゼロ サムと株式会社トヨ

Microsoft Word - 02H26補助金交付要領.doc

ベースライトのスタンダード 色を自然に引き立てる Ra95 スタンダードタイプも光束維持率を向上 HIDタイプは約 6 万時間のロングライフ 1

結露の発生を防止する対策に関する試験ガイドライン

<4D F736F F D EC08FD88A DFB8E715F96DA8E9F5F B C9A927A95A88A4F94E7816A2E646F63>

ウエダ本社_環境レポート_111007_04

PowPak Softswitch for Japan

(Microsoft Word - \224M\203R\203\223\203\214\203|\201[\203g\212\256\220\254.doc)

5

資料 2 接続可能量 (2017 年度算定値 ) の算定について 平成 29 年 9 月資源エネルギー庁

Microsoft Word - NDIS1204意見受付用_表紙.docx

工場など天井が高く、中・大規模な空間の効率的な空調を実現する置換換気空調用パッケージエアコンを製品化

<4D F736F F D2089C692EB BF B C838C815B CC AF834B E2895BD90AC E368C8E29>

全油圧ポンプ仕様表:日本プララド

自然熱エネルギー 未利用エネルギーを活用し 環境配慮に貢献する 配管システムのご提案 クリーンな エネルギーを 有効利用 で 様々なシーン ギー 利 用 自 然 熱 エネ ル 未利用熱回収タンクユニット ホット Reco FRP製貯湯槽 ホットレージ 熱交換槽 貯湯槽 架橋ポリエチレン管 温泉引湯

資料1 :住宅(家庭部門)の中期の対策・施策検討

目次 1 研究の動機 1 2 研究を始める前に 1 インターネットで調べる 3 研究の目的 1 4 研究の内容 1 追究 1 日なたと日陰の気温の違いを調べる 1 追究 2 よしずできる日陰と日なたの気温を調べる 3 追究 3 よしずに水をかけたら気温がどのように違うか調べる 6 追究 4 ミストや

4-(1)-ウ①

1

教師の持つ指導ポイント 評価規準 中国地方の送電線網の図を利用し, 発電所からの電力を消費地に届けていることを示す その際, 送電の途中では, 電線の抵抗のために電線が発熱して電気エネルギーが損失することを, 本単元の内容をもとに考察させる ( 自然事象への関心 意欲 態度 ) エネルギーは変換の際

<4D F736F F D DC58F4994C5816A8C9A8DDE E9197BF88EA8EAE2E646F6378>

SJ-XW44T/XW47T 3版

参 考 1. 工事請負契約書 2. 建設分野で使われるおもな単位 3.SI 単位換算率表

RMS(Root Mean Square value 実効値 ) 実効値は AC の電圧と電流両方の値を規定する 最も一般的で便利な値です AC 波形の実効値はその波形から得られる パワーのレベルを示すものであり AC 信号の最も重要な属性となります 実効値の計算は AC の電流波形と それによって

電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

発売の狙い 昨今の電力事情から節電に対する関心は高く 業務用エアコンにおいてもより一層の省エネ 節電を強く求められています また エネルギー効率が高い製品の使用を促進するために 省エネルギー法で 2015 年度に具体的に達成すべき基準値が定められています 当社は今回 機器本体の省エネ性の向上を図り

CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐火性能の評価 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLTによる木造建築物の設計法の開発 ( その 3) ~ 防耐火性能の評価 ~ 建築防火研究グループ上席研究員成瀬友宏 1 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐

(2) ベースラインエネルギー使用量 それぞれの排出起源のベースラインエネルギー使用量の算定方法は以下のとおり 1) 発電電力起源 EL BL = EL ( 式 1) 記号定義単位 ELBL ベースライン電力使用量 kwh/ 年 EL 事業実施後のコージェネレーションによる発電量 kwh/ 年 2)

温水洗浄便座性能試験項目および試験方法

見直し後11 基準相当1.64GJ/ m2年hh11 基準相当見直しH11 基準と見直し後の省エネ基準の比較について 住宅 建築物判断基準小委員会及び省エネルギー判断基準等小委員会平成 24 年 8 月 31 日第 2 回合同会議資料 1-1 より抜粋 設備機器の性能向上により 15~25% 程度省

1. 空港における融雪 除雪対策の必要性 除雪作業状況 H12 除雪出動日数除雪出動回数 H13 H14 H15 H16 例 : 新千歳空港の除雪出動状況 2. 検討の方針 冬季の道路交通安全確保方策 ロードヒーティング 2

M-COS-3 蒸気プロセス用電動減圧弁 ( セパレーター トラップ内蔵 ) 微圧用 ~ 0.3MPaG 特長 COS-3 に電動アクチュエーターを搭載 遠隔での減圧弁の二次側圧力の設定が可能 セパレーター トラップ内蔵 コントローラー部に二次側圧力をデジタル表示 (MC-2) 上限圧力設定機能付き

PowerPoint プレゼンテーション

スマートライフおすすめ BOOK P2_P 省エネ ネ エ 蓄 ネ 創エ! なるほど はじめに もう中学生! フ イ ラ ト ー マ ス が そ れが それ も くじ 地球温暖化と私たち 4 エネルギーと私たち 6 スマートライフ はじめよう スマートライフ 10 HEMS

京都大学博士 ( 工学 ) 氏名宮口克一 論文題目 塩素固定化材を用いた断面修復材と犠牲陽極材を併用した断面修復工法の鉄筋防食性能に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 塩害を受けたコンクリート構造物の対策として一般的な対策のひとつである, 断面修復工法を検討の対象とし, その耐久性をより

(2) ベースラインエネルギー使用量 それぞれの排出起源のベースラインエネルギー使用量の算定方法は以下のとおり 1) 発電電力起源 EL BL = EL ( 式 1) 記号定義単位 ELBL ベースライン電力使用量 kwh/ 年 EL 事業実施後のコージェネレーションによる発電量 kwh/ 年 2)

«Simple Apparatus» ATEX 準拠 904 プレソスタット スイスを拠点とする Trafag は 圧力 温度測定用の高品質センサおよびモニ タ機器の国際的な大手サプライヤです x 用途 N N 防爆領域 特徴 NN N N N N N N N N コンパクトな形状 堅固な筐体 保護

1 熱, 蒸気及びボイラーの概要 問 10 伝熱についての記述として, 誤っているものは次のうちどれか (1) 金属棒の一端を熱したとき, 熱が棒内を通り他端に伝わる現象を熱伝導という (2) 液体又は気体が固体壁に接触して流れ, 固体壁との間で熱が移動する現象を熱伝達又は対流熱伝達という (3)

<4D F736F F F696E74202D F81798E9197BF332D31817A8E7B90DD8AC7979D ED28CA48F4389EF C835B83938E9197BF81698FC C816A2E >

Transcription:

平成 24 年度 経済産業省委託事業 平成 24 年度 貿易投資円滑化支援事業 ( 実証事業 一般案件 ) タイにおける省エネルギー技術として有効な 屋根用省エネ塗料の技術協力事業 実証事業報告書 ( 要約版 ) 平成 25 年 2 月 社団法人日本塗料工業会 禁無断転載 無断転載禁止 1

報告書 ( 要約 ) 1. まえがき本事業は 経済産業省委託事業平成 24 年度貿易投資円滑化支援事業 ( 実証事業 一般案件 ) タイにおける省エネルギー技術として有効な屋根用省エネ塗料の技術協力事業として行ったものである 太陽の日射を反射して屋根からの熱の侵入を抑制する比較的廉価な省エネルギー手段である 高日射反射率塗料 は近年 JIS が制定され日本国内で需要が拡大している 高日射反射率塗料の反射率は一般塗料と比べて特に赤外線領域で大幅に高いため ( 図 1-1) 熱の侵入を抑制して省エネルギー効果を発揮することができる - - 高日射反射率塗料 一般塗料 図 1-1 塗料種と反射率上記の基本原理により高日射反射率塗料は日射エネルギー量の多い地域ほど省エネに対して有効である また 日射エネルギー量は緯度との関係が深く 日本国内でも東京と沖縄県とを比較すると緯度の低い沖縄県の方が約 2 割程度日射エネルギー量が高い傾向がある タイは沖縄県よりさらに低緯度に位置するため一層の高日射反射率塗料による省エネ効果が期待される 実際 タイ国での測定結果によれば 日射エネルギー量は東京に比べて約 4 割程度多いことが判明した なお 今回は塗膜内部での熱伝達を抑制する断熱塗料も合わせて 省エネ塗料 として評価することとした 2. 実証事業の特定 目的タイ国において 測定設備 装置を設置して省エネ塗料に関する下記の熱特性を定量的に測定し 省エネルギーへの寄与を定量的に把握する 屋根 室内等の温度上昇抑制 屋根からの侵入熱エネルギーの低減 無断転載禁止 2

空調エネルギーの低減 3. 実証事業の概要 背景タイ国 ( バンコク ) は緯度が 13 度 ( 東京は 35 度 ) であり通年で気温が高く 年間を通して ( 特に 12 月 ~4 月の乾季に ) 日射エネルギーが強いため 省エネ塗料の効果が顕著に発揮されると考えられる また東南アジアの要衝の地でもあることからより広い地域への普及も期待できる 事業実施体制社団法人日本塗料工業会が経済産業省から委託をうけ その役割の一部を関西ペイント株式会社 タイ関西ペイント株式会社 及び一般財団法人の日本塗料検査協会へ外注する体制である 実施スケジュール平成 24 年 8 月 ~9 月設備 測定システムの仕様検討 現地にて設備を設置 平成 24 年 10 月から実験を開始 設定条件を検討しながらデータを収集 平成 25 年 1 月からデータ解析を行い 2 月にタイ国においてセミナー発表 平成 25 年 2 月末に報告書を提出 タイにおける省エネ塗料実証事業委員会有識者 関連企業専門家からなる委員会を2 回開催し 進捗状況の確認とともに 実験方法に関するアドバイス 今後の課題への提言をいただく 事業実施の概要試験に用いた塗装系は 上塗りとして高日射反射率塗料及び一般塗料を用い 塗色は明度を変えた淡グレー色 中グレー色 濃チョコレート色とした また中グレー色には中塗りに断熱塗料を併用した系も使用した 具体的な塗装系は表 3-1に示す通りである 表 3-1 実験に用いた塗装系 無断転載禁止 3

試験には 比較的安価で擬似化した建物としてのボックス型試験体と 空調エアコン付きの小型プレハブ式試験棟を採用した ボックス型試験体の主な測定項目 ( ボックス型試験体の上面に各種塗板を設置 ) 1 屋根表面温度 裏面温度 2 屋根表面から裏面への熱エネルギー流量小型プレハブ式試験棟 ( 各種塗料を塗装した折板屋根をプレハブ式試験棟の上部に設置 ) 1 屋根表面温度 裏面温度 2 屋根表面から裏面への熱エネルギー流量 天井内から室内への熱エネルギー流量 3 空調エアコンの消費電力上記 2で使用する熱流センサーは測定する放熱面に取り付けられ その平面状微小抵抗体に熱が通過する時 熱エネルギーの大きさに比例する抵抗体の両面に生じる電圧差を検出することによって熱エネルギー流量を測定する 熱流センサーには熱伝導率の低い熱抵抗体を用い 接点数を多数とすることで高感度を得ることができる 4. 成果及び考察 1ボックス型試験体では 高日射反射率塗料は一般塗料と比べると 屋根 ( 塗板 ) 表面における温度差の最高値が 5~10 程度低くなることがわかった また 高日射反射率塗料塗装板を通過する累積熱エネルギー流量 (0~24 時 ) は一般塗料塗装板に比べ 20~ 50% 程度削減され 高日射反射率塗料の熱エネルギーの侵入抑制効果が確認できた 装置として比較的簡単で安価なボックス型試験体は今後の規格化に伴う標準試験方法 装置として有用であると考えられる 図 4-1 ボックス型試験体での表面温度比較例 無断転載禁止 4

図 4-2 ボックス型試験体での熱流値比較例 2プレハブ式試験棟では 高日射反射率塗料は一般塗料と比べると 屋根表面における温度差の最高値が 6~10 程度 天井表面温度で 2~4 程度低くなることがわかった また 屋根表面から裏面へ流れる累積熱エネルギー流量 (0~24 時 ) は高日射反射率塗料が一般塗料に比べ最大 25% 程度削減されることが確認できた 一方 断熱塗料は一般塗料を塗装した場合に比べ 屋根では最大 15% の熱エネルギー流量が削減されたが 天井面では顕著な差異は認められなかった 今回の塗装仕様では 高日射反射率塗料は断熱塗料に比べ熱エネルギーの流入抑制効果が大きい傾向が認められた エアコン消費電力の削減率について 高日射反射率塗料は一般塗料に比べて最大で 6% 程度であった 図 4-3 プレハブ式試験棟での屋根表面温度比較例 無断転載禁止 5

図 4-4 プレハブ式試験棟での屋根の熱流値比較例 3プレハブ式試験棟には屋根と部屋との間に天井仕切りがあり熱の流れを緩和する働きをするため ボックス型試験体のほうが大きな熱エネルギー抑制効果を発揮したと考えられる プレハブ式試験棟は天井仕切りやエアコンによる部屋の空調など熱エネルギー移動に影響する要因が多く複雑な系となっている 今後天井への屋根以外からの熱移動やエアコンの消費電力の変動要因等について把握していく必要がある 4タイと日本との地域差を実験から比較した結果の概要は次の通りである 低緯度地域のタイでは日本に比べ日射量が多く しかも気温は日本と異なり通年で高いため年中日射の影響を低減させる必要がある 家屋へ侵入する熱エネルギーが大きい地域であるタイは エアコン消費電力も相対的に日本より大きいと考えられる熱エネルギー流量及びエアコン消費電力量抑制効果が高いと本事業で実証された高日射反射率塗料を使用することによって タイにおいては一層の省エネが実現できたものと考えられる 今後 本実証事業結果がタイ国のみならず他の低緯度地域における省エネ塗料の普及に寄与していくことが期待される 5タイにおける省エネ塗料実証事業委員会 第 1 回委員会では 進捗状況報告に対し 今後の測定データの活用等のため 湿度センサー 及び電流 電圧計の設置 エアコンガス圧力の確認等の要望事項が出された 第 2 回委員会では 第 1 回委員会の要望を取り入れたうえでの実証事業実験結果が報告され 実験方法 データ解析方法及び結果のまとめについて審議のうえ承認が得られた また 今後の課題として 熱量エンタルピーの試算 室内天井板のない状態での測定等のコメントが出された 6タイにおける報告会の開催平成 25 年 2 月 19 日タイ国にて実証事業の報告会と現地見学説明会を開催した 参加 無断転載禁止 6

者は 52 社 63 名であり 現地塗料会社 日系合弁塗料会社の他にタイ塗料工業会 大学 コンサルタント会社等が含まれており 省エネ塗料への関心の高さがうかがわれた 5. 今後の課題及び具体的戦略 5.1 貿易 経済協力を目的とした基礎情報としての戦略的活用今回の実証事業で得られた知見を タイをはじめとした東南アジア諸国との貿易 経済協力促進に向けていくには以下のような方法がある 日本の塗料メーカーが東南アジア諸国に省エネ塗料を展開する際の技術的資料として活用する 東南アジア諸国からの受注率を高めるには 現地の政府関係者 及び企業関係者との意見交換会 普及促進セミナー等が有効であり その際に今回の知見は有効な武器となりうる 今回の実証事業で有効性が確認された塗料の規格であるJIS K5675 屋根用高日射反射率塗料 を東南アジア各国に普及し定着させる 今後 日本の塗料製造会社が東南アジア諸国において省エネ塗料の市場開発を行うに際し 判断材料となる情報を得るための市場調査が必要となる 5.2 技術的な課題今回の知見 情報を一層確かで高度なものとするためには 引き続き必要なデータを集積していくことが必要である 以下はそのために必要な技術的課題である 5.2.1 安定電源の確保本実験はタイ関西ペイント株式会社工場建設工事作業所から電力供給をうけていたが 日ごとの電圧変動や度重なる突然の停電など電力供給環境は十分なものではなかった 今後は工場が稼働した時点で安定した電源を検討していく 5.2.2 データの入手方法現在 蓄積した測定データを1 週間ごとに USB メモリへ入れて回収し日本へ送信している 今後はブロードバンド回線を用いて自動送信し タイムリーにデータを入手できるよう検討していく 5.2.3 プレハブ式試験棟の測定値への影響要因解析天井の屋根以外からの空気移動 熱移動の状況や エアコン消費電力に係わる諸因子等十分把握できていない点について解析を検討していく 5.2.4 センサー 設備のメンテナンス各種センサーや設備は経時で性能が変化して測定値に影響を与えるようになる可能性がある 適宜 状況の確認作業を行い 正常な作動状態を保てるようメンテナンスや改善を検討していく 無断転載禁止 7