2010 年 10 月 4 日愛知感染予防ネットワーク講演会 こどもの感染予防 ー感染症に罹らないためには 罹ったらどうする? ー 一社アレルギー科 こどもクリニック副院長 小児科アレルギー専門医 鳥居明子
予防接種の基礎知識 定期接種 ( 無料 ) 黒字任意接種 ( 有料 ) 赤字 生ワクチン 異なる種類の ワクチン間に限ります ポリオ MR 麻しん 風しん BCG 水痘 おたふくかぜ 不活化ワクチン DPT DT( 三種混合 2 種混合 ) 日本脳炎インフルエンザ b 型菌 ( ヒブ ) 肺炎球菌 インフルエンザ A 型 B 型肝炎 子宮頸癌 4 週間おく 1 週間おく 生ワクチン 不活化ワクチン
さあ 生まれたての赤ちゃんに 1 歳までのワクチン計画を立ててみよう!! < 結核 > BCG ワクチン ( 生 ) で予防します 生後 6 か月 ( 概ね 3~4 か月 ) までに 保健所で接種します 赤ちゃんが罹った場合 結核性髄膜炎などの重症になりやすく 死亡することがあります < ジフテリア -Diphtheria>< 百日咳 -Pertussis>< 破傷風 -Tetanus> 三種混合 (DPT) ワクチン ( 不活化 ) で予防します ジフテリアは喉にジフテリア菌が感染し 呼吸困難になったり 心筋炎 神経麻痺による呼吸障害になり重症化します 百日咳は連続した咳が長期間継続し 呼吸困難や肺炎 無呼吸による脳症を発症します 破傷風菌は土の中にいる菌で 傷口から侵入し菌毒素で全身の神経を麻痺させ死に到ります < インフルエンザ b 型感染症 > ヒブワクチン ( 不活化 ) で予防します < 肺炎球菌感染症 > プレべナーワクチン ( 不活化 ) で予防します ともに細菌性髄膜炎を引き起こし 死に到ります 保育所などで 感染することが多く 髄膜炎は予測不能です
細菌性髄膜炎の起炎菌 B 群連鎖球菌その他 肺炎球菌 大腸菌 ブドウ球菌髄膜炎菌 31.1% 60.3% Hib 1 2 3 4 5 6 7
年齢により異なるヒブワクチン プレべナーワクチンの接種回数について ヒブワクチン年齢別 接種回数 生後 2~7 か月未満 生後 7~12 か月未満 1~5 歳未満 3~8 週間間隔で 3 回 1 年後 1 回追加接種 3~8 週間間隔で 2 回 1 年後 1 回追加接種 1 回接種のみ プレべナーワクチン年齢別 接種回数 生後 2~7 か月未満 4~8 週間間隔で 3 回 ( ただし 3 回目は 1 歳未満内に ) 60 日間以上あけて 1 回追加接種 (1 歳から 1 歳 3 か月内 ) 生後 7~12 か月未満 4~8 週間間隔で 2 回 (1 歳以降 ) 2 回目の接種後 60 日間以上の間隔で 1 回追加接種 1 歳以上 ~2 歳未満未満 60 日間以上あけて 2 回 2 歳以上 ~9 歳以下 1 回接種のみ
さあ 生まれたての赤ちゃんに 1 歳までのワクチン計画を立ててみよう!! 出生 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 か月ヒブワクチン 3 肺炎球菌ワクチン 3 三種混合ワクチン 1 ヒブワクチン 1 肺炎球菌ワクチン 1 B C G 三種混合ワクチン 2 肺炎球菌ワクチン 2 ヒブワクチン 2 三種混合ワクチン 3 接種のポイント!! ヒブと肺炎球菌ワクチンは DPT と同時接種可能です BCG は保健所で 3~4 か月健診後に行う生ワクチンです BCG 接種まえに 最低一回は DPT などを接種できると理想的です ポリオは保健所で接種 最近 数十年は自然発症はありません 接種プランのゆとりある時にお勧めします
1 歳からは何をうったらよいのかしら? 1 歳の誕生日 1 歳 2 歳 3 歳 4 歳 5 歳 6 歳 7 歳 7 歳半麻疹 風疹ワク チン 1 水痘ワクチンおたふくかぜワクチン肺炎球菌ワクチン追加三種混合ワクチン追加ヒブワクチン追加接種のポイント!! ヒブと肺炎球菌ワクチンと DPT の追加が必要です 同時に接種可能です 1 歳の誕生日を境に 麻疹 風疹 水痘 おたふくワクチンなどの生ワクチンが接種可能です 水痘やおたふくは発症者も多く流行もあるので 保育園や幼稚園入園前には是非接種しましょう 小学校就学前 1 年間に 麻疹 風疹ワクチンの 2 回目接種が必要です 3 歳から日本脳炎接種開始がお勧めです 日本脳炎ワクチン 1 日本脳炎ワクチン 2 日本脳炎ワクチン追加 1 年後麻疹 風疹ワクチン 2
麻疹 風疹ワクチンと日本脳炎ワクチンの特例措置 麻疹 風疹ワクチンは現在 2 回接種することになっています また ちょうど抗体が減尐する時期に 集団生活を送っているひとたちにワクチン導入する目的で平成 20 年 4 月から平成 25 年の 3 月末の 5 年間だけの時限措置として第 3 4 期がもうけられました 第 3 期 中 1 にあたるかた 4 月 1 日から 3 月 31 日までに接種 公費券については学校より配布 第 4 期 高校 3 年生公費券については住民票のある自宅に送付 日本脳炎ワクチンは今年 8 月 過去に接種を受けられなかった者にたいする接種機会の確保として 9 歳以上 13 歳未満の者に対する日本脳炎ワクチン 1 期と 2 期の機会を開始しました 全く接種していない者は この期間に 3 回接種する 1 回接種済み者は この機会に 1 週間以上間隔をあけて 2 回接種する 2 回接種済み者は この機会に 1 回接種する 国は 2 期に対してはいまだ積極的な接種勧奨は行っていません
小学校 6 年生や中学 1 2 年生で接種必要なワクチン 小学校 6 年生 2 種混合ワクチン ( ジフテリア 破傷風混合 ) 夏休み前に 小学校で問診票を配布 ( 定期接種 ) 量も通常の 5 分の 1 でわずか 0.1ml で副反応の尐ない 子宮頸癌予防ワクチン ( サーバリックス ) ワクチンで予防できる癌はこれしかありません 10 歳以上から接種可能 海外 ( とりわけ先進国 ) では 11~12 歳の尐女を中心に無料接種を行っている 性交前から接種することで 子宮頸がんの約 70% の発症を抑えるという ( 任意接種 3 回接種で 5~6 万円程度 ) 今年の 10 月から 近隣の名古屋市内在住の中学 1 2 年生は無料で接種可能になりました
子宮頸癌と予防ワクチンについて 1 子宮頸癌は子宮の入り口にできる癌で自覚症状がでにくい癌です 220~30 歳代女性で急増しており 日本では毎年約 15000 人が発症 3 原因は発がん性ヒトパピローマウイルス (HPV) の感染によるもの 性行為によって感染するため 多くの女性が一生のうち一度は感染すると考えられています 4 発がん性 HPV に感染して 数年から十数年かけてがん細胞が完成する 5 一度感染した HPV を排除する効果は無く これから感染する HPV を予防する効果しかないため 性交前の中学生からの接種が望まれる 6 主な発がん性 HPV である 16 型と 18 型の感染を予防する (60%) が すべての HPV を予防するわけではない 20 歳過ぎたら 定期的な子宮頸癌検診を!!
海外と比較してあまりにも遅れている日本の予防接種事情 日本はどこが遅れているのだろうか? 1 ワクチン接種費用がほとんどタダ ( 無料 ) である 2 ワクチンの種類が多い 例えば アメリカでは生後 2 ヵ月には B 型肝炎 ロタウイルス 不活化ポリオ DPT Hib 肺炎球菌ワクチンを同時接種する また 成長に伴い A 型肝炎や 子宮頸癌ワクチン 髄膜炎菌ワクチンも接種する 3 混合 ( 多価 ) ワクチンが存在する ドイツ DTP-IPV-Hib-HB 6 種混合ワクチン フランス MMR( 麻疹 ムンプス 風疹 ) アメリカ MMRV( 麻疹 ムンプス 風疹 水痘 ) 1 回接種で痛み回数の軽減!!
予防接種の基礎知識 疾病罹患後のワクチン接種間隔 麻しん 水痘 風しん おたふくかぜ 治癒後おおむね 4 週間程度おく 突発性発疹 手足口病 伝染性紅斑など 治癒後おおむね 1~2 週間程度おく そのほか 潜伏期間に注意必要 鼻水程度なら接種可能
< 予防接種時の注意 > 予防接種不適当者とは 37.5 度以上の明らかな発熱を有しているもの 妊娠しているもの (MR ワクチン接種などの生ワクチンの場合 ) 予防接種の成分によりアナフィラキシ を起こしたことがあきらかな者 ( 鶏卵や抗菌薬カナマイシンや安定剤ゼラチンや防腐剤チメロサールなどの接種液成分に対して ) 食物 ( 鶏卵 ) アレルギーの乳幼児へのインフルエンザワクチン接種は可能なのか? ワクチン液による皮内反応テスト ワクチン液 10 倍希釈 0.02ml, 皮内注射 軽度反応があった場合 0.1ml ずつ接種し 30 分 2 回にわけて経過を観察 15 分ほど経過をみて 発赤や膨疹なければ問題なしとして 規定量接種可能
こどもがよく罹る感染症と拡大経路と予防法 空気感染でひろがる病気 ( 結核 麻しん 水痘 ) を予防するには 感染の危険が無くなるまで 感染した園児に登園を控えてもらう必要があります 飛沫感染でひろがる病気 ( プール熱 インフルエンザ マイコプラズマ気管支炎 溶連菌感染症 百日咳など ) を予防するためには マスクの着用と手洗いが重要です 経口感染 ( 胃腸炎など ) でひろがる病気予防するためには 手洗いと便や嘔吐物の衛生的な処理が重要です 接触感染 ( すべての感染症 ) でひろがる病気予防するためには 手洗いが重要です
こどもがよく罹る感染症のとりわけ注意してほしいこと インフルエンザウイルス感染症は解熱した後 2 日を経過したら人に病気をうつす可能性が無くなります プール熱も発熱や眼球充血などの主要症状が消退した後 2 日を経過したら人に病気をうつす可能性が無くなります 溶連菌感染症は抗生物質治療開始後 24 時間を経て全身状態がよければ登校可能 長くても初診日とその翌日休めば人に病気をうつす可能性が無くなります しかし 溶連菌感染症後糸球体性腎炎の合併症予防のために一般に抗生剤を 10 日間のみきる必要があります 途中で無断に内服を中止しないように充分気をつけてください
お忙しい中 御静聴ありがとうご ざいました