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地方分権の推進に関する意見書 豊かな自治と新しい国のかたちを求めて 地方財政自立のための 7 つの提言 平成 18 年 6 月 7 日地方六団体 全国知事会全国都道府県議会議長会全国市長会全国市議会議長会全国町村会全国町村議会議長会

資料 1 税財政制度を通じた論点 Ⅰ 現状と課題 1. 地方財政の財政の概要 地方財政の平成 23 年度決算は 歳入約 兆円 歳出 97.0 兆円となっている なお 借入金残高は約 兆円と依然と高い水準にある 国と地方における最終支出ベースにおける比率は 42:58 となって

(2) 消費税率 10% への引上げ時に導入が予定されている軽減税率制度については 消費税 地方消費税の引上げ分のうち地方交付税原資分も含めると 約 3 割が地方の社会保障財源であり 仮に減収分のすべてが確保されない場合 地方の社会保障財源に影響を与えることになることから 確実に代替財源を確保するこ

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別添資料 1 日本再興を支える地方税財政の確立に向けて 都市からの提言 真の地方自治は 地方自治体が自らの権限とそれに見合う財源により 主体的に行財政運営を行うことで初めて実現できるものである 一方で 地方財政は 年間約 10 兆円に上る巨額の財源不足が生じているほか 国と地方の歳出比率と税収比率が

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

資料1 第3回災害救助に関する実務検討会における意見に対する回答

つに分けて契約した事態について内部牽制が機能していなかった イ 監査の状況 監事 監査室 経理課総務監査係等 公認会計士の各監査機関等において 監査対象の重複 漏れが極力生じないよう 各監査機関等が監査計画を調整するなどして 効率的 効果的な監 査を行うことが必要だが いずれの監査機関等も 本件の契

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3 国 道州 基礎自治体の役割と権限 役割分担については 次のような意見があった 中間報告に国の役割として挙げられている16 項目については限定列挙とする意見と16 項目は例示であり さらに役割分担を考えていくべきとの意見があった 例えば 国土政策 農林政策 教育等は国 地方が協力して対処する問題が

事務 権限名事務 権限の概要 事務量 ( アウトプット ) No.2 土地家屋調査士試験の実施 目的 土地家屋調査士となる資格を有する者は, 主に土地家屋調査士試験に合格した者であるため, 法務大臣は, 毎年 1 回, 土地家屋調査士試験を実施している 根拠法令 土地家屋調査士法, 土地家屋調査士法

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私立幼稚園の新制度への円滑移行について

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税源配分及び財政調整 < 税源配分 > 特別区と大阪府の事務分担に応じて財源を配分するとともに 特別区間の税源偏在の解消を図るために必要な税財源を大阪府の税源として配分 特別区税 大阪府が賦課徴収する税を除く市町村税( 個人市町村民税 市町村たばこ税 軽自動車税等 ) 大阪府税 市町村税のうち法人市

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4 合併を選択した理由 合併を選択した理由は 直面する財政危機への対応よりも 将来に向けた行政体制の充実 強化や行政サービスの維持 向上 合併を選択した理由 地方分権時代にふさわしい基礎自治体としての行政体制の充実 強化を図るため 20 市町村 効率的 効果的な行財政運営により 行政サービスを維持

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市町村合併の推進状況について

1 地域主権改革 Q1-6 市町村の人口規模はどのぐらいが適正かについて どういう議論があるのですか A1-6. 市町村の適正な人口規模について 大阪府自治制度研究会 においては 次のような検証 とりまとめがされています 検証 効率的な行政運営 備えるべき組織体制 望ましい行政サービス提供の 3 つ

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Taro-委員会発案第1号(地方財政の充実~)

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陳情議決結果一覧 ( 平成 19 年 5 月 ~ 平成 23 年 4 月 ) 番号受理年月日件名付託委員会 議決年月日 結 果 陳情 第 1 号 H 非核日本宣言 を求める意見書の提出要請について 総財委 H 採 択 陳情第 2 号 H 原爆症認定制度の抜本的改

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問 6 候補者氏名選挙区分所属政党あなたは 地方分権を進めるためにカギとなる課題は何だと考えていますか < その他具体的に > その他道州制導入の推進道州制導入の推進基礎自治体の強化 1,5,8 等は一体的に行うことが必要であり 一つを優先して他を置き去りにする話ではない 無回答 国の行政コストを削

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いる 〇また 障害者の権利に関する条約 においては 障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとされている 〇一方 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度 ( いわゆる欠格条項 ) については いわゆるノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン ( 社会的包摂 ) を基本理念とする成年

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歳入総額 区分 平成 年度の財政フレーム ( 単位 : 百万円 ) 30 年度 31 年度 合計 構成比 構成比 構成比 263, % 265, % 529, % 一般財源特別区税特別区交付金その他特定財源国 都支出金繰入金特別区債 167

Taro-★【2月Ver】01~05. ⑲計

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ための手段を 指名 報酬委員会の設置に限定する必要はない 仮に 現状では 独立社外取締役の適切な関与 助言 が得られてないという指摘があるのならば まず 委員会を設置していない会社において 独立社外取締役の適切な関与 助言 が十分得られていないのか 事実を検証すべきである (2) また 東証一部上場

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Ⅳ 地方交付税

国家公務員の大幅な削減(常勤約3 7千人 非常勤約6 9千人)社会保険庁の抜本改革について 社会保険庁の問題点 国民の視点に 立っていない サービス 予算執行 の無駄 非効率な 業務運営 保険料徴収 の不徹底 内部統制 ( ガバナンス ) の不足 個人情報の不適 切な取り扱い 業務改革緊急対応プログ

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3 車体課税 自動車取得税の見直し 自動車取得税の税率 ( 一定税率 ) を以下のとおり引下げ ( 平成 26 年 4 月 1 日以降 ) 自家用自動車 ( 軽自動車を除く ) 5%( ) 3%( ) 営業用自動車 軽自動車 3%( ) 2%( ) いわゆる エコカー減税 について 環境性能に優れた

イ類似団体の状況 法定上限数 抜粋 30 人 ( 人口 8~ 10 万人 ) 34 人 ( 人口 10~ 14 万人 ) 定数が定数を減員の状況法定市数法定上限人2人3人4人5人6人7人8人9人上限数数より減員1と同じ (14.8%) 9 (23.1%) 10 人11 人以上 23

日本の地方自治その現状と課題

社会福祉法人による生計困難者に対する利用者負担の減免

2 都市的税目に乏しい市町村税 市町村税は 法人所得課税 消費 流通課税といった経済活動を反映する都市的税目に乏しいため 増大する都市的財政需要に市税収入が対応しきれない大きな要因となっています 都市的税目の割合比較 ( 平成 22 年度 ) 100% 80% 37.7% 34.9% 60% 資産課

( 注 ) 年金 医療等に係る経費については 補充費途として指定されている経費等に限る 以下同じ (2) 地方交付税交付金等地方交付税交付金及び地方特例交付金の合計額については 経済 財政再生計画 との整合性に留意しつつ 要求する (3) 義務的経費以下の ( イ ) ないし ( ホ ) 及び (

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平成 28 年度予算編成方針 我が国の経済は 景気は引き続き緩やかな回復基調を維持しているが その影響が地方経済にまで十分に行き渡っているとは言えず 我々地方の行財政運営の基本となる税等一般財源を確保するためには 臨時財政対策債に頼らざるを得ない状況が続くものと考える また 税制改正も予測されること

目 次 1 章策定の趣旨 1 1 これまで経緯 1 2 さらなる行財政改革の必要性 1 2 章行財政改革の基本的な考え方 2 1 推進期間 2 2 基本方針 2 3 重点項目 2 (1) 事務 事業の効率化の推進 3 (2) 定員管理の適正化及び人材育成の推進 4 (3) 民間活力の活用 4 (4)

女性が働きやすい制度等への見直しについて

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P10 第 2 章主要指標の見通し 第 2 章主要指標の見通し 1 人口 世帯 1 人口 世帯 (1) 人口 (1) 人口 平成 32 年 (2020 年 ) までの人口を 国勢調査 ( 平成 7 年 ~22 年 ) による男女各歳人口をもとにコーホー 平成 32 年 (2020 年 ) までの人口

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NEWS 2020 速報 の一部を改正する法律案 REPORT 総会の様子 2025 GDP 3 02 vol

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スライド 1

資料9

第14回税制調査会 総務省説明資料(・地方税務手続の電子化等2・個人住民税2)

平成 29 年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について ( 平成 28 年 8 月 2 日閣議了解 ) の骨子 平成 29 年度予算は 基本方針 2016 を踏まえ 引き続き 基本方針 2015 で示された 経済 財政再生計画 の枠組みの下 手を緩めることなく本格的な歳出改革に取り組む 歳出

タイトル

各府省からの第 1 次回答 1. 災害対策は 災害対策基本法に規定されているとおり 基礎的な地方公共団体である市町村による第一義的な応急対応と 市町村を包括する広域的な地方公共団体である都道府県による関係機関間の総合調整を前提としている を活用してもなお対応できず 人命又は財産の保護のため必要がある

病院等における耐震診断 耐震整備の補助事業 (1) 医療施設運営費等 ( 医療施設耐震化促進事業平成 30 年度予算 13,067 千円 ) 医療施設耐震化促進事業 ( 平成 18 年度 ~) 医療施設の耐震化を促進するため 救命救急センター 病院群輪番制病院 小児救急医療拠点病院等の救急医療等を担

平成28年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

(3) その他 全日制高校進学率の向上を図るため 更に公私で全体として進学率が向上するよう工夫する そのための基本的な考え方として 定員協議における公私の役割 を次のとおり確認する 公立 の役割: 生徒一人ひとりの希望と適性に応じて 多様な選択ができるよう 幅広い進路先としての役割を担い 県民ニーズ

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

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内部統制ガイドラインについて 資料

7 民法改正 : (13) 選択的夫婦別姓の実現 (14) 婚姻最低年齢 再婚禁止 (15) 婚外子相続分差別規定廃止 是正 8 性暴力 : (16) 性暴力禁止法 (17)DV 防止法 9 日本軍 慰安婦 : (18) 河野 村山談話 (19) 国家の謝罪と補償 10 性的健康 : (20) 刑法

第2回税制調査会 総2-2

1_【鑑】「生活困窮者自立支援法の施行に伴う多重債務者対策担当分野との連携について(通知)」の一部改正について

新潟の発展 成長 日本海側での更なる拠点性の向上 県市連携による地域活性化 新潟にふさわしい自治制度 二重行政 二元行政の見直しによる行政の効率化 高度な行政機能の全県への波及 基礎自治体における更なる自治権の強化 2 具体例からのアプローチ 新潟州構想の検討にあたっては, 現在提案されている各地

2 保険者協議会からの意見 ( 医療法第 30 条の 4 第 14 項の規定に基づく意見聴取 ) (1) 照会日平成 28 年 3 月 3 日 ( 同日開催の保険者協議会において説明も実施 ) (2) 期限平成 28 年 3 月 30 日 (3) 意見数 25 件 ( 総論 3 件 各論 22 件

庁議案件No

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[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

目 次 はじめに 検討の視点 2 2 分権型社会における行政の役割分担 4 (1) 国と地方の役割 4 (2) 広域自治体と基礎自治体の役割 8 3 分権型社会における広域自治体の要件 (1) 広域的な課題を迅速 適切に処理できること (2) 自立性が高いこと 11 4 現行制度による対

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全自病協第 582 号 平成 27 年 2 月 13 日 地方会議担当支部長様 公益社団法人全国自治体病院協議会 会長 邉見公雄 平成 27 年度地方会議における共通議題について 日頃から支部活動にご尽力をいただき感謝申し上げます さて 平成 27 年度地方会議における共通議題について 常務理事会で

鳩山政権の経済政策の効果

Transcription:

作成年月日 作成部局 平成 21 年 7 月 27 日 企画県民部政策室政策担当課長 自民党 公明党に対する 道州制への慎重な対応について の提出 1 趣旨各政党において 道州制 の政権公約 ( マニフェスト ) への盛り込みが検討されているが 本来国の形のあり方の問題でありながら もっぱら地方制度の問題として議論されている最近の状況を鑑みると 中央集権の強化と地方切り捨てに繋がりかねない このため 道州制ありきで議論を進めることがないよう 自民党 公明党 民主党に対し道州制の問題点をまとめた文書を提出し 慎重な対応を要請する 2 時期 平成 21 年 7 月 3 提出先 自民党 公明党 民主党の政務調査会長等の党執行部及び県関係国会議員 4 内容 別添のとおり < 問い合わせ先 > 企画県民部政策室政策担当課長 078-362-4005

平成 21 年 7 月 道州制への慎重な対応について 兵庫県知事井戸敏三 各政党においては 究極の分権改革とも言われる 道州制 について マニフェストへの盛り込みが検討されています しかし 道州制は本来国の形のあり方の問題であるにもかかわらず もっぱら地方制度の問題として議論されている最近の状況を鑑みると 国 地方を通じた統治システムの抜本改革には到底なり得えないばかりか 中央集権の強化と地方切り捨てに繋がりかねません 府県域を越える広域行政課題については 道州制を導入するまでもなく 現行の地方自治法に基づく広域連合制度を活用することでその多くが解決可能であり 関西においては 国の地方支分部局が処理している広域事務についても 民主的なコントロールのもとで一元的に担うことができる関西広域連合 ( 仮称 ) の設立に向けて取り組んでいます 今後は 多くの問題点がある道州制の議論に惑わされず 道州制に代わる抜本的な地方分権改革を具体化し 国 地方を通じた統治システムを抜本強化することを要請します 1 道州制の問題点 道州制の実像がいまだ明確でなく 漠然とした期待のみが大きすぎる 府県のあり方だけが議論され 国の統治機構全体の議論がおろそかにされている 中央政府の解体再編や国会の機能縮小に向けた合意形成はできるのか 国の行財政改革や財政再建の手段とされてしまう可能性が大きい 国の総合出先機関的道州となり かえって中央集権化が進む恐れがある 道州間格差 特に財政格差をどうするのか また 道州内の地域間格差が拡大する 道州の自治財政権や自治立法権が保障されるかどうか担保がない 広大な区域となる道州では 住民の意思が地方政治に反映されにくくなる 今以上の市町村合併を住民が支持するとは思えない 地方の切り捨てに繋がりかねない 道州の位置づけが憲法上明確にされなければならないのではないか - 1 -

2 道州制に代わる抜本的な地方分権改革の提案 (1) 国の役割を純化し 内政は地方に任せる国の役割を外交 防衛 司法など国家の存立に関わる事務に純化し 国民生活に関わる行政は地方が担うという役割分担の基本原則を確立する 国の役割が限定される結果として 中央政府や国地方支分部局のあり方と併せて 国会や国会議員のあり方についても純化 縮小の方向で見直す また その際 地方意見の国政への反映が制度的に保障される仕組みを組み込む (2) 権限 財源 事務の一体的な移譲を断行する国と地方の役割分担の基本原則に沿って 義務付け 枠付けの廃止 権限移譲を徹底するとともに 地方が担う事務 権限に係る自治立法権を確立する また 国と地方の事務配分に見合った税財源配分となるよう 国から地方への税財源の移譲を進めるほか 国の直轄事業負担金制度など権限と財源の所在が一致しない不合理な制度を廃止する (3) 地方財源の水平調整制度を確立する偏在性が少ない税源を移譲しても 産業 地勢などの条件の違いによりなお残る地域間格差を解消するため 国の会計を介さずに地方自らが地域間の財源調整を行う地方共同税を具体化する (4) 二層制統治を基本とし住民自治を拡充する地方の統治機構は 基礎自治体と都道府県の二層制を基本とする 基礎自治体としてあまりにも大規模な人口を擁し 住民代表性のない区長が重要な職務を担う政令指定都市制度については 住民自治の観点から見直す (5) 地域の特性に応じた柔軟な広域行政体制を導入する 都道府県の区域を越える行政課題は 都道府県の広域連合で処理するなど課題対応型 フレキシブルな広域行政体制を活用する (6) 地方消費税の充実等税制の抜本改革を断行する社会保障関係費など増嵩する地方の財政需要に対応して 地方消費税の引き上げを含め 税源の偏在性が小さく 税収の安定性を備えた地方税体系を構築する - 2 -

平成 21 年 7 月 1 日 民主党の地方分権政策について 兵庫県 民主党が6 月 29 日 衆議院議員選挙マニフェストで打ち出す地方分権政策の原案を固めたとの報道をもとに 民主党の地方分権政策に係る論点を整理した 民主党においては 単に統治機構論としての 国のかたち の議論に偏重することなく 地方の自己決定 自己責任の原則が貫ける独立 自立型行政システムを構築することを基本に まずは 国から地方への権限 財源の大幅な移譲を実現することをめざし 以下の点に留意して 地方分権政策を推進されるよう提言する 国と地方の役割分担と統治機構のあり方について 1 国の役割を限定し組織 機構の再編の具体的道筋を明らかにすべき道州制の導入をはじめとする地方の統治機構のあり方ばかりを論ずるのではなく まずは国が担うべき役割を明らかにすべきである 具体的には 国の役割を外交 防衛 通貨 司法など国家の存立に関わる事務に純化することに伴い 必然的に 中央省庁の縮小 再編 国会の機能縮小が必要となることから 霞ヶ関の解体 再編の姿を国民がイメージできるよう 具体的な道筋を明らかにすべきである 2 道州制は地方分権ではない 広域自治体としての都道府県を活用すべき国の権限が現状のまま留保され 地方への権限 財源の移譲がないまま道州制を導入すれば 地方分権につながらない強制的で一律の都道府県合併が進むだけである 国の支配力が今よりも強化される 国の総合出先事務所的 な道州制となる危険性が高い また 道州制の導入は 三位一体改革において 多くの地方交付税が削減されたように 国の行財政改革や財政再建の手段となってしまう危険性が高いほか 現行の都道府県よりも広大な道州においては 住民自治 の確保が困難になるといった問題もある このため 都道府県がこれまで果たしてきた役割を正しく評価し 安易に道州制の導入を主張するのではなく 国から都道府県への権限 財源の大幅な移譲など 現行都道府県制度の下での地方分権改革を着実に進めるべきである - 1 -

3 広域的対応が必要な事務については広域連合制度を活用すべき防災 環境 観光など 現行の府県域を越える広域行政課題への対応が求められている このため 関西においては こうした課題に的確に対応する責任主体となる関西広域連合 ( 仮称 ) の設立に向けた検討を進めている 府県域を越える広域行政課題については 道州制を導入するまでもなく 都道府県制度の下で 特定課題対応型の柔軟な仕組みである広域連合制度を活用することでその多くが解決可能である 府県域を越えるという理由で国の出先機関が処理している広域事務についても 関西広域連合 ( 仮称 ) が民主的なコントロールのもとで一元的に担うことが可能となることから こうした地域主導の取組を尊重し 広域連合制度を活用すべきである 4 これ以上の市町村合併を押しつけるのではなく基礎自治体の多様性を尊重すべき相当程度の市町村合併が進み 一定程度の成果が認められる一方で 住民の声が届きにくい 周辺部が取り残される 地域のアイデンティティが失われるといった懸念が現実化している地域もある 市町合併に伴うこうした課題を検証することなく これ以上の合併を一方的に押しつけてはならない 住民自治の観点からも 基礎自治体の多様性を尊重すべきである 国と地方の関係について 1 国による義務付け 枠付けの見直しは 財政的関与と一体的に見直すべき実質的な義務付け 枠付けの廃止 縮減のためには 単に条項を見直すだけでなく 補助要綱等で定められている道路整備 学校運営 福祉施設等の基準など 財政的関与も一体的に見直すべきである 2 国直轄事業廃止後の直轄事業や地方単独事業の事業量確保について明示すべき国直轄事業負担金の廃止にあたり 単に負担金に相当する地方交付税を削減するのではなく これまで十分に措置されてこなかった経費に充てることができるように制度改革すべきである また 国における徹底した無駄の排除による効率的な事業執行と 国庫補助金の削減等により財源を確保し 直轄事業の必要な事業量を確保すべきである - 2 -

3 国の出先機関改革においては民主的統制の観点に留意すべき国から地方への権限移譲を徹底し 二重行政を排除するため 国の出先機関は廃止 縮小すべきである その際 民主的コントロールの及びがたい巨大な総合出先機関を創設し そこに権限や財源を集中させることは分権改革に逆行することに十分に留意すべきである また 国から地方への人員移管等に係る協議においては 移譲される事務 権限 それに必要な人員について徹底して精査するとともに 地方が主体的に選考できるようにすべきである 地方税財政制度について 1 補助金等の一括交付金化は国の財政的関与が行われない仕組みとすべき国が地方に対し事務を義務付ける場合 当該事務に係る費用について 国の責務として財源を保障する必要があるが その際 ひも付き補助金 から一括交付金に衣替えしても 配分や総額について国が決定するなど中央集権的な制度となる可能性もある こうした弊害を排除するためにも 大都市等不交付団体の取扱も含めて 現行の地方交付税や補助金とどのように違うのか 国による財政的関与が行われない仕組みとすべきである 2 地方財政調整等に関する新たな制度の具体案を早期に提示すべき現行の地方交付税制度よりも財源保障と自治体間の財源調整の機能を充実 強化した 地方財政調整等に関する新しい制度を創設すると主張されているが その仕組みや財源確保の方法について具体的に示されていない 現行の地方交付税が地方自治体間の財源の過不足を調整する財源調整機能だけでなく 総体としての地方の必要経費を保障するという財源保障機能を有し 各地方自治体の基準財政需要額と基準財政収入額による算定を通して標準的な行政水準を保障するという側面を持っていることに留意して 具体的な制度設計を明らかにすべきである 3 社会保障関係費の増嵩等を踏まえ地方消費税の充実等国民負担のあり方を議論すべき少子高齢の本格的な人口減少社会を迎えるなか 将来に対する国民の不安を払拭するためには 地域住民の生活に密着した行政サービスを地方が地域の実態に即して安定的に提供していくことが求められる しかし 地方においては 三位一体改革により地方交付税が大幅に削減されたうえ 今後 社会保障関係費等が確実に増 - 3 -

嵩することから 財源不足額がさらに拡大することが見込まれる まずは 国と地方の税源配分 5:5の実現を目指し そのための地方消費税の充実 引き上げに向けた道筋を示すべきである 4 消費税の全額年金財源化の検討については見直すべき社会保障の安定財源確保に向け 地方消費税分を含めて消費税の全額を年金財源化すると主張されているが 地方消費税及び消費税の地方交付税原資部分は地方の固有財源であることを踏まえて検討することが必要である このため 税制の抜本改革にあたっては 平成 21 年度税制改正法附則において 地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から 地方消費税の充実を検討する とあるとおり 増嵩する地方の社会保障関係費等の財政需要に対応して 地方消費税の増強及び消費税の地方交付税原資部分の確保を図るべきである - 4 -