4770CE8DBA29F FA002CAB7

Similar documents
指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

審決取消判決の拘束力

1 特許庁における手続の経緯原告は, 名称を 5 角柱体状の首筋周りストレッチ枕 とする発明につき, 平成 20 年 10 月 31 日に特許出願 ( 本願 特願 号, 特開 号, 請求項の数 1) をし, 平成 25 年 6 月 19 日付けで拒絶

REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

1B9F27D289E5A B000BA3D

4F1803FBFF227B8C E002B126

15B74DCDD67EE CE

にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

B0B820DFD845F9DE49256B7D0002B34

BE874F75BE48D E002B126

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

3-1 2 修繕工事の実態 ( ヒアリング ) 計画修繕は 定期点検等で明らかになった建物の劣化の補修のため 調査 診断 修繕計画の作成 工事の実施へと 区分所有者の合意を形成しつつ 進められる 当勉強会で実施したヒアリングより 管理会社による点検 定期点検は 1 回 / 年の頻度で行っている 目視

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

号 以下 本願 という ) をしたが, 平成 23 年 10 月 26 日付けで拒絶査定を受けたので, 平成 24 年 1 月 31 日, これに対する不服の審判を請求するとともに, 手続補正書を提出した ( 以下 本件補正 という ) 特許庁は, この審判を, 不服 号事件とし

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

0B80C636C430F43B492570DF001E5C6

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

<4D F736F F D F93FC82E D835382CC82DD816A2E646F63>

4CAE B10001CD83

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

Taro jtd

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

第 1 原告の求めた判決 特許庁が無効 号事件について平成 23 年 12 月 28 日に した審決を取り消す 第 2 事案の概要本件は, 被告の請求に基づき原告の本件特許を無効とした審決の取消訴訟であり, 当裁判所が取り上げる争点は, 実施可能要件及びサポート要件の充足性の

平成  年(オ)第  号

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

O-27567

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

例 2: 組成 Aを有するピアノ線用 Fe 系合金 ピアノ線用 という記載がピアノ線に用いるのに特に適した 高張力を付与するための微細層状組織を有するという意味に解釈される場合がある このような場合は 審査官は 請求項に係る発明を このような組織を有する Fe 系合金 と認定する したがって 組成

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡 平成 29 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 13 日 判 決 原告株式会社コーエーテクモゲームス 訴訟代理人弁護士 佐 藤 安 紘 高 橋 元 弘 吉 羽 真一郎 末 吉 亙 弁理士 鶴 谷 裕 二

(Microsoft Word \224\255\225\\\201yMSH\201z \224\273\214\210\201i\217\244\225W\201j.doc)

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

freee・マネーフォワード特許訴訟の解説

184FFEABBFDEF9C A0023C7C

最高裁○○第000100号

下 本件特許 という ) の特許権者である 被告は, 平成 23 年 11 月 1 日, 特許庁に対し, 本件特許を無効にすることを求めて審判の請求をした 特許庁は, 上記請求を無効 号事件として審理をした結果, 平成 25 年 9 月 3 日, 特許第 号の

DE02AD849256DB3000CCBA

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

(3) 中規模改修工事費 建設年代別にm2単価を設定する 大規模改修後及び改築後は 水準別にm2単価を設定し 冷房設備ありの場合は別途m2単価を設定して加算する 表 中規模改修工事費 大規模改修前 大規模改修後 改築後 中規模改修建設年代改築後改築後大規模改修後円 / m2従来改築一般施

イ使用年数基準で更新する施設 ( ア ) 使用年数基準の設定使用年数基準で更新する施設については 将来の更新需要を把握するためにも 更新するまでの使用年数を定める必要がありますが 現時点では 施設の寿命に関する技術的な知見がないことから 独自に設定する必要があります このため あらかじめ施設を 耐久

Microsoft Word - 【6.5.4】特許スコア情報の活用

インド特許法の基礎(第35回)~審決・判例(1)~

1A210C11C8EC A77000EC45

二重床下地 という 参考図参照) として施工する方法がある 二重床下地は 支持脚の高さを一定程度容易に調整することができること また コンクリートスラブと床パネルとの間には給排水管等を配置できる空間があることから 施工が比較的容易なものとなっている 2 本院の検査結果 ( 検査の観点 着眼点 対象及

平成 25 年 12 月 17 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 10 月 17 日 判 決 原告エイトマイハートイン コーポレイテッド 訴訟代理人弁護士 五十嵐 敦 出 田 真樹子 弁理士 稲 葉 良 幸 石 田 昌 彦 右

198 第 3 章 減価償却資産の取得価額 キーワード ソフトウエアに係る取得価額購入したソフトウエアの取得価額は 1 当該資産の購入の代価と 2 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用との合計額とされています 引取運賃 荷役費 運送保険料 購入手数料 関税 その他の当該資産の購入のために要

表紙1_4

最高裁○○第000100号

平成25年5月  日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

Microsoft Word - TOKLIB01-# v1-Chizai_Bukai_ docx

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

原告は, 平成 26 年 12 月 9 日, 指定役務を第 35 類 市場調査又は分析, 助産師のあっせん, 助産師のための求人情報の提供, 第 41 類 セミナーの企画 運営又は開催, 電子出版物の提供, 図書及び記録の供覧, 図書の貸与, 書籍の制作, 教育 文化 娯楽 スポーツ用ビデオの制作

本件は, 特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である 争点は, 進歩性の有無である 1 特許庁における手続の経緯 (1) 被告は, 平成 23 年 10 月 7 日に特許出願をした特願 号 ( 以下 原出願 という ) の一部である, 発明の名称を 位置検出装置 と

平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

 

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

争点は,1 引用例 2 記載事項の発明該当性の判断の遺脱の有無,2 同発明該当性の判断の誤り及び3 本願発明の進歩性判断の誤りの有無である 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 24 年 5 月 2 日, 名称を 放射能除染装置及び放射能除染方法 とする発明につき, 特許出願 ( 特願 201

特許庁は, 平成 24 年 7 月 31 日付けで拒絶査定をしたため, 原告は, 同年 11 月 12 日, これに対する不服の審判を請求した 特許庁は, これを不服 号事件として審理し, 平成 2 5 年 10 月 28 日, 本件審判の請求は, 成り立たない との審決 (

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

<4D F736F F D E C982A882AF82E98E E968D8082D682CC91CE899E82C982C282A282C4>

<4D F736F F F696E74202D E518D6C8E9197BF A E8F5A91EE975C8E5A814590C E88AEE8F80>

平成 23 年 11 月 29 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 22 年 ( ワ ) 第 号特許権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 10 月 4 日 判 決 広島県呉市 < 以下略 > 原 告 株 式 会 社 H D T 同訴訟代理人弁護士 稲 元 富 保 同

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

templates

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

11総法不審第120号

出願人のための特許協力条約(PCT) -国際出願と優先権主張-

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

B63EE1C51AFE4AD B000BA3B

第 3 回検討会でご意見を頂いた内容に対する対応方針 ( 案 ) 中長期保全計画の策定において 更新 修繕 といった言葉の使い分けは明確にすべき その際 部位による使い分けや ライフサイクルコストの視点を踏まえた 更新 修繕 のレベル設定にも留意すること 建物を 使える 状態に維持するという観点から

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

4390CD461EB D090030AC8

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

<4D F736F F F696E74202D F955D89BF8AEE8F AEE8F CC8A F E B835794D48D8693FC82E8816A2E >

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

( 平成 12 年 )9 月 11 日に国際出願をし, 平成 21 年 3 月 12 日付け手続補正書により補正をした ( 以下 本件補正 という 本件補正後の発明の名称 1,1- ビス (4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの製造方法 ) が, 同年 8 月 18 日付け

Microsoft Word - クレームにおける使用目的に関する陳述 ☆米国特許判例紹介☆ -第105号-

8823FF07EC A80018A5B

SDATA_0A AC742240CB0_ _1

平成 30 年 3 月 28 日判決言渡 平成 29 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 14 日 判 決 原告株式会社 K A L B A S 同訴訟代理人弁護士 櫻 林 正 己 同訴訟代理人弁理士 後 呂 和 男 寺 尾 泰 一 中 山 英

構造 用途 鉄筋コンクリート造鉄骨 鉄筋コンクリート造 高品質の場合 普通の品質の場合 高品質の場合 重量鉄骨 鉄骨造 普通の品質の場合 軽量鉄骨 ブロック造れんが造 木造 学校庁舎 Y 100 以上 Y 60 以上 Y 100 以上 Y 60 以上 Y 40 以上 Y 60 以上 Y 60 以上

AM部会用資料(土木・建築構造物)

平成 24 年 12 月 28 日付け拒絶理由通知平成 25 年 1 月 21 日付け手続補正書 意見書の提出平成 25 年 10 月 30 日付け拒絶理由通知平成 25 年 11 月 19 日付け手続補正書 意見書の提出平成 26 年 4 月 16 日付け拒絶理由通知平成 26 年 5 月 9 日

Transcription:

平成 17 年 ( 行ケ ) 第 10401 号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成 17 年 12 月 21 日判決原告旭化成ホームズ株式会社同訴訟代理人弁理士中川周吉同中川裕幸同反町行良同大石裕司被告特許庁長官中嶋誠同指定代理人伊波猛同高橋祐介同高木彰同宮下正之主文 1 特許庁が不服 2003-2182 号事件について平成 17 年 2 月 2 1 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 事実及び理由第 1 請求主文と同旨第 2 争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 11 年 12 月 3 日, 発明の名称を 建物, 建物維持管理システムおよび建物維持管理シート ( その後, 建物およびその維持管理システム と補正された ) とする特許出願 ( 特願平 11-345095 号, 以下 本願 という 請求項の数は10である ) を行ったところ, 特許庁は, 平成 15 年 1 月 7 日, 拒絶査定をした そこで, 原告は, 平成 15 年 2 月 10 日, 拒絶査定不服審判の請求をし ( 不服 2003-2182 号 ), 同年 3 月 12 日, 本願に係る明細書 ( 以下 本願明細書 という ) について特許請求の範囲等の補正をした ( 以下 本件補正 という ) が, 特許庁は, 平成 17 年 2 月 21 日, 本件補正を却下した上で, 本件審判の請求は, 成り立たない との審決 ( 以下 本件審決 という ) を行い, その謄本は, 同年 3 月 4 日, 原告に送達された 2 特許請求の範囲 (1) 本件補正前の請求項 1 請求項 1 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材を使用する建物であって, 前記基本躯体を最長耐用年数とし, 前記外装部材の耐用年数と前記埋設設備部材の耐用年数とは, いずれも前記基本躯体の耐用年数の整数分の1であり, 前記基本躯体の耐用年数を基準に, 下位の耐用年数が上位の耐用年数全てに対して整数分の1とされ, 最長耐用年数の整数分の1の間隔で定期的にメンテナンスを行うように設計されたことを特徴とする建物 (2) 本件補正後の請求項 1( 以下, この発明を 補正発明 という ) 請求項 1 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材を, 定期的なメンテナンスの計画の対象部材として使用する建物であって, 前記基本躯体を最長耐用年数とし, 該最長耐用年数全体にわたって, 前記外装部材の耐用年数と前記埋設設備部材の耐用年数とは, いずれも前記基本躯体の耐用年数の整数分の1であり, 前記基本躯体の耐用年数を基準に, 下位の耐用年数が上位の耐用年数全てに対して整数分の1とされ, 前記下位の耐用年数の中の最小耐用年数の整数倍の間隔で定期的にメンテナンスを行うように設計されたことを特徴とする建物 なお, 補正発明は次のとおり分説することができる (a) 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材を, 定期的なメンテナンスの計画の対象部材として使用する建物であって, (b) 前記基本躯体を最長耐用年数とし, 該最長耐用年数全体にわたって, 前記外装部材の耐用年数と前記埋設設備部材の耐用年数とは, いずれも前記基本躯体の耐用年数の整数分の1であり, (c) 前記基本躯体の耐用年数を基準に, 下位の耐用年数が上位の耐用年数全てに対して整数分の1とされ, (d) 前記下位の耐用年数の中の最小耐用年数の整数倍の間隔で定期的にメ

ンテナンスを行うように (e) 設計されたことを特徴とする建物 3 本件審決の理由別紙審決書写しのとおりである 要するに, 補正発明は, 特開平 10-46 832 号公報 ( 甲 1, 以下 刊行物 1 という ) 及び特開平 8-193423 号公報 ( 甲 2, 以下 刊行物 2 という ) に記載された発明に基づいて, 当業者が容易に発明をすることができたものであるから, 特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとして, 本件補正を却下した上, 本件補正前の請求項 1 に係る発明についても, 同様に, 当業者が容易に発明をすることができたものであるから, 特許法 29 条 2 項の規定により特許を受けることができない, というものである 本件審決が認定した補正発明と刊行物 1 記載の発明との一致点及び相違点は, 次のとおりである ( 一致点 ) 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材を, 定期的なメンテナンスの計画の対象部材として使用する建物であって, 前記基本躯体を最長耐用年数とし, 少なくとも 40 年間にわたって, 前記基本躯体の耐用年数の整数分の 1 のメンテナンス間隔であり, 前記基本躯体の耐用年数を基準に, 下位のメンテナンス間隔が上位のメンテナンス間隔全てに対して整数分の 1 のメンテナンス間隔とされ, 下位のメンテナンス間隔の中の最小のメンテナンス間隔の整数倍のメンテナンス間隔で定期的にメンテナンスを行うように設計された建物 ( 相違点 1) 定期的に行うメンテナンスの全期間について, 補正発明が, 最長耐用年数全体にわたって 行うように設計したものであるのに対して, 刊行物 1 記載の発明では, 少なくとも 40 年間にわたって 行うように設計したものである点 ( 相違点 2) 外装部材及び埋設設備部材の耐用年数とメンテナンス間隔との関連について, 補正発明が, 外装部材及び埋設設備部材の耐用年数をメンテナンス間隔としたものであるのに対して, 刊行物 1 記載の発明では, 外装部材及び埋設設備部材 ( 建築部材及び設備機器 ) の耐用年数とメンテナンス間隔とを関連づけたのか否か定かでない点 第 3 原告主張に係る本件審決の取消事由本件審決は, 補正発明と刊行物 1 記載の発明との一致点を誤認して相違点を看過し ( 取消事由 1), また, 相違点 2 についての容易想到性の判断を誤った ( 取消事由 2) 結果, 本件補正に係る独立特許要件の判断 ( 補正発明の進歩性の判断 ) を誤って本件補正を却下し, 本願に係る発明の認定を誤ったものであり, これらの誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから, 取り消されるべきである 1 取消事由 1( 一致点の誤認, 相違点の看過 ) 本件審決は, 補正発明と刊行物 1 記載の発明との一致点を誤認し, 相違点を看過したものである (1) 設計された建物 について補正発明は, メンテナンスの手間, 時間及び費用を抑制できる建物を提供できるようにするため, 基本的部材の耐用年数を, (b) 前記基本躯体を最長耐用年数とし, 該最長耐用年数全体にわたって, 前記外装部材の耐用年数と前記埋設設備部材の耐用年数とは, いずれも前記基本躯体の耐用年数の整数分の 1 であり, (c) 前記基本躯体の耐用年数を基準に, 下位の耐用年数が上位の耐用年数全てに対して整数分の 1 とされ,(d) 前記下位の耐用年数の中の最小耐用年数の整数倍の間隔で定期的にメンテナンスを行う との要件を満たすように予め設定し, それに基づいてメンテナンスを行うように (e) 設計されたことを特徴とする建物 である これに対して, 刊行物 1 に記載されたものは, 設計が既になされた後の建物について, その構造をそのまま受け入れた上でメンテナンス計画を行うものであり, 予め, 耐用年数を設定し, それに基づいてメンテナンスを行うように 設計された建物 ではない したがって, 本件審決は, 補正発明と刊行物 1 記載の発明との一致点として 設計された建物 である点を誤認し, 補正発明が前記 (b)~(d) の構成を有するように設計された建物であるのに対し, 刊行物 1 に記載されたものは, 既

に建築された建物についてのメンテナンス計画であり, 両者は技術分野が相違する 点を看過したものである (2) 定期的メンテナンス の対象部材について補正発明は, 定期的なメンテナンス対象部材を耐用年数が設定できる 基本的部材 に限定し, 耐用年数が変化してしまう 付帯的部材 は定期的メンテナンスの対象としないことにより, 前記 (b)~(d) の構成を成立可能として, メンテナンスの手間, 時間及び費用を抑制できる建物を提供できるようにしたものである すなわち, 補正発明において, 仮に, 基本的部材 に加えて 付帯的部材 を一緒に 定期的メンテナンス の対象とするなら, 少なくとも 付帯的部材 については (c) 前記基本躯体の耐用年数を基準に, 下位の耐用年数が上位の耐用年数全てに対して整数分の1とされ,(d) 前記下位の耐用年数の中の最小耐用年数の整数倍の間隔で定期的にメンテナンスを行う ことができるような建物を設計できないことが明らかである したがって, 補正発明において, 定期的にメンテナンスを行う 部材として, 付帯的部材 は除外されるべきことは明白であり, かつ, そのことは メンテナンスの手間, 時間及び費用を抑制できる建物を提供する という補正発明の目的 効果等からも当然である これに対して, 刊行物 1の記載によれば, その図 6(A) には, 建物の建築部材 ( 前記基本的部材 ) や設備機器 ( 前記付帯的部材 ) を一緒にして, 更新費用を計算し, 集計したメンテナンス計画が示されているというべきである このように, 刊行物 1は, 基本的部材と付帯的部材とを一緒にしたメンテナンス計画であり, 基本的部材の耐用年数, メンテナンス間隔について, 前記 (b)~(d) の構成を採用するものではない したがって, 本件審決は, 補正発明と刊行物 1 記載の発明との一致点として 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材を, 定期的なメンテナンスの計画の対象部材として使用する建物 であり, 少なくとも40 年間にわたって, 前記基本躯体の耐用年数の整数分の1のメンテナンス間隔であり, 前記基本躯体の耐用年数を基準に, 下位のメンテナンス間隔が上位のメンテナンス間隔全てに対して整数分の1のメンテナンス間隔とされ, 下位のメンテナンス間隔の中の最小のメンテナンス間隔の整数倍のメンテナンス間隔で定期的にメンテナンスを行う 点を誤認し, 補正発明は, 定期的メンテナンスに適した基本的部材と, 使用状況や頻度により耐用年数が変化する付帯的部材とを区分し, 基本的部材について前記 (b)~ (d) の構成を有するように設計された建物であるのに対し, 刊行物 1に記載されたものは, 基本的部材と付帯的部材を一緒にしてメンテナンス計画を立てている という両者の相違点を看過したものである 2 取消事由 2( 相違点 2の判断の誤り ) 本件審決は, 刊行物 2 記載の発明を誤認して, 相違点 2の判断を誤ったものである (1) 刊行物 2 記載の発明の認定の誤り本件審決は, 刊行物 2の図 14,15に基づき, 刊行物 2 記載の発明を, 複数種類毎に複数の部位から構成される建築物の各部位の修繕仕様に応じた耐用年数を基準として, 劣化診断後, 予め定める年度までの間 (20 年間 ) における, 例えば,2 年或いは12 年の耐用年数毎に実施される修繕数量と修繕単価とから各年度毎に必要な修繕費用を求めることにより, 長期にわたって, 各年度毎における建築物の修繕日程計画および修繕費用計画を作成すること と認定した しかしながら, 図 14,15に示された修繕周期は, 劣化診断時期や劣化診断結果, あるいは劣化診断後のグレード選択に左右されるものであるし, かつ基準となる建物の耐用年数も示されていないから, 補正発明のような基本躯体の耐用年数と関連付けられた耐用年数であると認定することは不可能である (2) 相違点 2の判断の誤り本件審決は, 相違点 2は刊行物 2 記載の発明から当業者が容易に想到し得たものにすぎないと判断しているが, 上記のとおり, 本件審決の刊行物 2 記載の発明の認定は誤りであるから, それを前提とする本件審決の相違点 2についての判断は誤りである 第 4 被告の反論本件審決の認定判断に誤りはなく, 原告の主張する取消事由には理由がない 1 取消事由 1( 一致点の誤認, 相違点の看過 ) について (1) 設計された建物 について

刊行物 1 の記載からみて, 当該刊行物に記載された技術は, 建物の設計段階において, それに使用される個別部材, 機器 ( 建築部材及び設備機器 ) についての修繕 更新のコストを含む全収支を考慮するようにした建物についてのものを包含し得るメンテナンス計画であることは容易に推測できることであり ( 乙 1~ 3), 原告が主張するような 設計が既になされた後の建物について, その構造をそのまま受け入れた上でメンテナンス計画を行うもの に限定されないものである また, 刊行物 1 の記載によれば, 当該刊行物に記載されたメンテナンス計画が, それら個別部材, 機器の個々の部材についてそれぞれ予め設定した耐用年数に基づいてメンテナンスを行うように計画されたものであることが認識される (2) 定期的メンテナンス の対象部材についてそもそも, 補正発明は, 耐用年数が設定できる基本的部材 と 耐用年数が変化してしまう付帯的部材 とを一緒に 定期的メンテナンス の対象とすることを除外していない なぜなら,1 建物が構成部材として 基本的部材 の外に 付帯的部材 をも有することは常識である,2 本件補正後の本願明細書の請求項 3 が, 定期的にメンテナンスが必要な部材と, 任意に更新すればよい部材とに仕分けられており と改めて規定している,3 基本的部材 と 付帯的部材 とを一緒に定期的メンテナンスの対象部材とした場合に, 補正発明の前記 (b)~ (d) の構成を満たすことが原理的に不可能であるとする理由はないからである したがって, 刊行物 1 記載の発明が, 付帯的部材を基本的部材と一緒にしているからといって, これにより直ちに, 刊行物 1 記載の発明が補正発明に比して格別に異なるものということはできない 一方, 刊行物 1 の図 6(A) の集計グラフには, 10 年目,15 年目, 20 年目,30 年目,40 年目の修繕 更新費用が突出する節目の年度 が発生しているところ, 基本躯体 としての躯体構造の耐用年数が 60 年である鉄筋コンクリート造の建物における, 外装部材および埋設設備部材 に相当する外壁や給排水管などの修繕周期については,10 年や 15 年, あるいは,10~20 年の間で設定することが一般的であり ( 乙 2,3), しかも, 大規模な修繕工事の周期にあわせて修繕工事の周期を集約させることが周知の事項である ( 乙 1) から, 刊行物 1 に記載されたメンテナンス計画において, 上記 修繕 更新費用が突出する節目の年度 を,10 年毎あるいは 15 年毎の間隔のものにそれぞれ分けて, これら各年毎に発生する大きな更新費用を, 原告が主張する 基本的部材 に関するもの ( 付帯的部材 に関するものも含まれる可能性があるが ) であると認定することに何ら不都合はない 2 取消事由 2( 相違点 2 の判断の誤り ) について (1) 刊行物 2 記載の発明の認定について刊行物 2 の記載によれば, 刊行物 2 のメンテナンス計画は, 建築物の劣化診断後に作成されるものであるとしても, 少なくとも, 建築物の各部位の更新時の設計に応じた耐用年数とそれのメンテナンス間隔とを関連づけたものであり, また, その対象となる既存の建物も, 補正発明と同様に, 各部材についての耐用年数を予め設定して設計された建物であることは明らかである また, 当該メンテナンス計画は, 鉄筋コンクリート構造のマンションなどの集合住宅用の建物に適用されるものであり ( 段落 0002, 0004, 0064 等 ), その耐用年数が, 60 年 であることは明らかであるから ( 甲 5), 基準となる建物の耐用年数は示されている (2) 相違点 2 の判断について上記のとおり, 刊行物 2 記載の発明の認定に誤りはないから, 相違点 2 の判断についての原告の主張は, 前提を欠き失当である そもそも, 補正発明は, 刊行物 2 記載の発明について考慮しなくても, 刊行物 1 記載の発明及び周知の事項から, 当業者が容易に想到し得たものにすぎない 第 5 当裁判所の判断 1 取消事由 1( 一致点の誤認, 相違点の看過 ) について (1) 原告は, 補正発明が, 前記 (b)~(d) の構成を可能とするように 設計された建物 であるのに対し, 刊行物 1 記載の発明は, 既に建築された建物についてのメンテナンス計画であるから, 本件審決は, 補正発明と刊行物 1 記載の発明との一致点として 設計された建物 である点を誤認し, 両者の技術分野の相違を看過した旨主張する ア刊行物 1( 甲 1) には, 次の記載がある ( ア ) 本発明に係るシステムでは, 建築の構造部材等は一般的にはその法

定耐用年数, 計画耐用年数が約 60 年となっているため, 耐用年数に達したときには新しい建物を建築するといった考え方によりそのライフサイクルコストから除いている 建築の対称としては, 屋根, 外壁, 建具, 床, 内装といった耐用年数以内に修繕, 更新を必要とするものに重点を絞ってマスターデータベースを構築している ( 段落 0012 ) ( イ ) 建物の建築部材及び設備機器の各名称に対するマスターデータは, 寸法や数量, 容量, 使用態様, 運転時間等を解析データとして入力 指定することにより, 修繕 更新のコストを計算し, 時期を求めるための所定の演算式とそのパラメータをデータとして有するものである ( 段落 0013 ) ( ウ ) 解析データが入力されると, マスターデータで指定された演算式を使って修繕 更新のコスト, 時期を求める ( ステップ S13) ( 段落 001 9 ) ( エ ) 発明の効果 以上の説明から明らかなように, 本発明によれば, 既存システムのように個別建築部材の仕上げ内容, 使用材料等が異なる場合や, 設備機器では型式, 容量等が異なる場合にそれぞれを個別のマスターデータとして取り扱うのではなく, マスターデータに演算式を導入して入力データから演算式を用いて修繕 更新のコスト, 時期を求めるので, 従来よりも広範囲にわたる建物の建築部材及び設備機器に関して修繕 更新のコスト, 時期を求めることができる したがって, ビルの設計から建設, 運用に関わる全収支のシミュレーションを簡便に行うことができる ( 段落 0030 ) イこれらの記載からすると, 刊行物 1 には, 解析データの入力により, 建築部材等に対応して作成されているマスターデータに基づき, 修繕, 更新の時期を演算により求めてメンテナンス計画を立てることが記載されていると認められる しかしながら, 当該メンテナンス計画の対象とされるのが建物であることは明らかである また, 刊行物 1 において, 建物は, 耐用年数に達したときには新しい建物を建築するといった考え方 で建築されるものであり, 耐用年数以内に修繕, 更新を必要とする建築部材等に限って, 修繕, 更新用のマスターデータベースが構築されるものと認められるから ( 上記 ( ア )), 刊行物 1 の建物は, 当初から, 修繕, 更新を行う部材と行わない部材とを分けて設計されるものであることが認められる また, 刊行物 1 のメンテナンス計画によれば, ビルの設計から建設, 運用に関わる全収支のシミュレーションを簡便に行うことができる ( 上記 ( エ )) ところ, そのために用いるマスターデータは, 寸法や数量, 容量, 使用態様, 運転時間等を解析データとして入力 指定することにより, 修繕 更新のコストを計算し, 時期を求める ( 上記 ( イ )) ためのものである したがって, 上記マスターデータは, 耐用年数等の基礎データを同時に有するものであって, 収支計算を実施できるに止まらず, 建築部材等に応じた, 修繕, 更新時期のシミュレーションも同時に実施可能であることが明らかであるから, 設計段階における, 建築部材等の選定にも使用され得るものであると解される そうであれば, 刊行物 1 記載の発明も, 設計された建物 の発明ということができ, 補正発明と刊行物 1 記載の発明の技術分野が異なるということはできないから, 上記原告の主張は採用できない (2) 次に, 原告は, 補正発明が, 耐用年数が設定できる基本的部材と耐用年数が変化する付帯的部材とを区分し, 定期的メンテナンスの対象を基本的部材に限定することにより, 前記 (b)~(d) の構成を達成したものであるのに対し, 刊行物 1 記載の発明は, 基本的部材と付帯的部材を一緒にしたメンテナンス計画であるから, 本件審決は, 補正発明と刊行物 1 記載の発明との一致点として, 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材を, 定期的なメンテナンスの計画の対象部材として使用する建物 であり, 少なくとも 40 年間にわたって, 前記基本躯体の耐用年数の整数分の 1 のメンテナンス間隔であり, 前記基本躯体の耐用年数を基準に, 下位のメンテナンス間隔が上位のメンテナンス間隔全てに対して整数分の 1 のメンテナンス間隔とされ, 下位のメンテナンス間隔の中の最小のメンテナンス間隔の整数倍のメンテナンス間隔で定期的にメンテナンスを行う 点を誤認し, 上記相違点を看過した旨主張する ア補正発明は, 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材を, 定期的なメンテナンスの計画の対象部材として使用 し, 下位の耐用年数の中の最小耐用年数の整数倍の間隔で定期的にメンテナンスを行うように設計された 建物の発明であり, メンテナンスを行う 方法 の発明ではないから, 実際にメンテナンスを行

うことは, 補正発明の構成要件であるとはいえず, 補正発明は, 上記の定期的なメンテナンスが実施できるように, (b) 前記基本躯体を最長耐用年数とし, 該最長耐用年数全体にわたって, 前記外装部材の耐用年数と前記埋設設備部材の耐用年数とは, いずれも前記基本躯体の耐用年数の整数分の 1 であり,(c) 前記基本躯体の耐用年数を基準に, 下位の耐用年数が上位の耐用年数全てに対して整数分の 1 とされ ている 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材 を, 建物の構成部材として用いたことに技術的意義を有するものと認められる すなわち, 上記 (b),(c) の構成を備えた建物であれば, 必然的に, (d) 下位の耐用年数の中の最小耐用年数の整数倍の間隔で定期的にメンテナンスを行う ことができるようになると認められるから, 補正発明と刊行物 1 記載の発明を対比するにあたっては, 刊行物 1 記載の発明が上記 (b),(c) の構成を備えているか否かの観点から行うことが妥当であるので, 以下そのような観点から検討する イ刊行物 1( 甲 1) には, 次の記載がある ( ア ) そのために本発明は, 建物の建築部材や設備機器の修繕 更新のコストや時期を求めてライフサイクルコストの管理を行う建物ライフサイクル解析システムであって, 建物の建築部材や設備機器のそれぞれの修繕 更新のコストや時期を求めるための演算式と各パラメータの値を有するマスターデータを格納するマスターデータ格納手段と, 建物の建築部材や設備機器のそれぞれのデータを入力し, 該入力したデータとマスターデータに基づき建物の建築部材や設備機器の修繕 更新のコストや時期を求める解析手段とを備えたことを特徴とするものである また, マスターデータは, 建物の建築部材や設備機器のそれぞれのデータ入力テーブルを有し, さらに複数の演算式を有し, 該演算式から建物の建築部材や設備機器のそれぞれに用いる演算式を指定することを特徴とするものである ( 段落 0007 ) ( イ ) 例えば吸収式冷凍機マスターデータは, 図 4 に示すように機器名称, 標準的な修繕項目及びそのサイクル, 機器詳細分類, 用途分類, 標準耐用年数, 標準偏差, 点検, 診断項目, 修繕 更新コスト等で構成している このように詳細分類, 用途分類の異なる部材, 機器も, 修繕項目, 修繕サイクルがほぼ同一で, 修繕コストは基本部材, 機器を基にして各種の演算式による計算が可能であるといった特性を持っているため,1 つのマスターデータとして取り扱うことができる これにより, 従来システムのように個別部材, 機器毎にデータベースを持つ必要がなく, その識別や管理が非常に容易になっている ( 段落 0014 ) ( ウ ) さらに, マスターデータについて詳述する 機器名称は, 建築業界において一般的にその目的, 機能が明確に判別できる名称を採用している 機器詳細分類, 用途分類は,3 種類設けてあり, 各分類は,5 つの細目を持っているため,1 つのマスターコードに対して最大 125 種類の部材や機器を登録することができる 例えば分類 1 は, 主としてその部材, 機器の更新年数に関わる項目を登録するために活用する 例えば吸収式冷凍機は同一機器であってもその使用頻度 ( 運転時間 ) によって標準耐用年数が変化するため使用頻度に併せたそれぞれの耐用年数, 標準偏差を登録する 分類 2, 分類 3 は, 部材, 機器の詳細仕様 ( 種類等 ) を登録する これにより, 各種詳細仕様によって変化する修繕, 更新コストを分類 2 及び分類 3 の細分に対応して, 後述の基本仕様に対する比率計算を行う ( 段落 0015 ) ( エ ) 標準耐用年数は, それぞれの部材, 機器の通常の耐用年数であり, 標準偏差は, 後述する診断機能によって部材, 機器の運転状況, 稼働状況によって残存寿命を計算し, リニューアル, リフォーム計画を作成するためのものである ( 段落 0016 ) ( オ ) 建物の建築部材や設備機器の全てについて同様の入力 演算処理を実行し, 入力 演算が終了したと判断すると ( ステップ S14), ライフサイクル計算書や長期保全計画書を編集して出力する ( ステップ S15) 図 6 は計算された修繕 更新のコストや時期等からなる解析結果のデータの編集例を示す図であり,(a) はライフサイクル計算書,(b) は長期保全計画書の例を示し, 解析対象となる建物の建築部材及び設備機器を入力することにより, それぞれの修繕サイクル, 改修サイクルから個別費用を算定して作成したものである ( 段落 0019 ) ( カ ) 発明の効果 以上の説明から明らかなように, 本発明によれば, マスターデータに演算式を導入して入力データから演算式を用いて修

繕 更新のコスト, 時期を求めるので, 従来よりも広範囲にわたる建物の建築部材及び設備機器に関して修繕 更新のコスト, 時期を求めることができる したがって, ビルの設計から建設, 運用に関わる全収支のシミュレーションを簡便に行うことができる ( 段落 0030 ) これらの記載からすると, 刊行物 1 記載の発明においては, 設計時点において, それぞれの部材, 機器の通常の耐用年数が既知であることを前提として, マスターデータに基づき, 演算によって, 建物の建築部材及び設備機器に関して修繕 更新のコスト, 時期が求められていることが明らかである ウまた, 刊行物 1( 甲 1) の図 4 には, 吸収式冷凍機の更新サイクルが 2 0 年であることが記載され, 図 6(A) ライフサイクル計算書には,40 年目までの経過年数毎に発生する, 管理業務委託費, 光熱用水費, 修繕費, 更新費についての積算費用 ( 単位 : 億円 ) がグラフ化して示されている このグラフによれば, 修繕費, 更新費の一方または双方が, ほぼ, 毎年のように算定されており, 中でも, 更新費については,10 年目,14 年目,15 年目,20 年目,23 年目,25 年目,27 年目,28 年目,29 年目,30 年目,40 年目などに, 大きな額が算定されていることが認められる エそして, 刊行物 1( 甲 1) には, 前記段落 0016 の記載に加え, 従来のライフサイクルコスト算出システムでは, 建築部材の全てを対象としているが, 本発明に係るシステムでは, 建築の構造部材等は一般的にはその法定耐用年数, 計画耐用年数が約 60 年となっているため, 耐用年数に達したときには新しい建物を建築するといった考え方によりそのライフサイクルコストから除いている 建築の対称としては, 屋根, 外壁, 建具, 床, 内装といった耐用年数以内に修繕, 更新を必要とするものに重点を絞ってマスターデータベースを構築している ( 段落 0012 ) と記載されている これらの記載からすると, 前記図 6(A) のグラフにおける更新費とは, 構造部材等の計画耐用年数を約 60 年と設定し, この計画耐用年数内において, 屋根等の部材, 機器の耐用年数が経過することにより, 新たなものに更新するのに要する費用であると解される オしかしながら, 上記の更新費が, いかなる部材, 機器の更新により発生するものであるのかは, 刊行物 1 に何ら記載されていない 構造部材等の計画耐用年数が約 60 年とされ, 吸収式冷凍機の更新サイクルが 20 年であることが記載されているとしても, 前記図 6(A) のグラフは, 診断後の修繕, 更新計画であるかもしれないから ( 前記段落 0016 ), 当初の設計段階における, 各部材, 機器の標準耐用年数に基づいて作成されたものであるかどうかは不明というほかない カしかも, 刊行物 1( 甲 1) には, 図 5 は全体の処理の流れを説明するための図である 本発明に係る建物ライフサイクル解析システムでは, 図 5 に示すようにまず, 建物の建築部材や設備機器をメニュー画面に従って選択する ( ステップ S11) ここでは, 建物の建築部材や設備機器を選択するメニュー画面から例えば建築部材を選択すると, 屋根, 外壁, 建具, 床, 内装の選択画面, さらに下位の分類の選択画面に順次切り換わり, 例えば最終的に選択された建物の建築部材や設備機器のデータ入力テーブルを表示する 次に, その建築部材や設備機器に関する寸法や数量, 容量, 使用態様, 運転時間等の解析データを入力する ( ステップ S 12) このとき, 選択された建物の建築部材や設備機器毎に表示されたデータ入力テーブル上で運転時間大 / 中 / 小のような項目の選択設定, 数値データの入力を行う 解析データが入力されると, マスターデータで指定された演算式を使って修繕 更新のコスト, 時期を求める ( ステップ S13) 建物の建築部材や設備機器の全てについて同様の入力 演算処理を実行し, 入力 演算が終了したと判断すると ( ステップ S14), ライフサイクル計算書や長期保全計画書を編集して出力する ( ステップ S15) 図 6 は計算された修繕 更新のコストや時期等からなる解析結果のデータの編集例を示す図であり,(a) はライフサイクル計算書,(b) は長期保全計画書の例を示し, 解析対象となる建物の建築部材及び設備機器を入力することにより, それぞれの修繕サイクル, 改修サイクルから個別費用を算定して作成したものである ( 段落 0019 ) と記載されている この記載からすると, 刊行物 1 のシステムでは, 建具, 床, 内装についても, 修繕 更新時期を算出しており, これらの建具, 床, 内装の少なくとも一部は, 補正発明でいう 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材 の範疇に含まれないものと認められるから, 刊行物 1 記載の発明は, 補正発明でいう, 耐用年数が定

められた部材 ( 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材 ) と, 耐用年数が定められていない部材 ( これらについては, 後記コを参照 ) とを一緒に計画的なメンテナンスの対象とするものであると認められる したがって, 前記図 6(A) のグラフにおける更新費には, 上記耐用年数が定められた部材と, 耐用年数が定められていない部材の両方についての更新に要する費用が含まれていると解するのが妥当である キまた, 刊行物 1( 甲 1) には, 前記段落 0016 の記載に加え, 標準的な修繕項目及びそのサイクルは, それぞれの部材, 機器にタイ図区 ( ママ ) 固有の修繕項目及びそのサイクルを管理するものである 修繕内容は, 個別部材, 機器に対して必要な修繕, 更新内容が登録され, 次項にそれぞれの実施サイクルが登録される 補正 1 は, 修繕年限補正年数, 補正 2 は補正修繕年限であり, 具体的には, 事例にあるようにオーバーホールの標準サイクルは 6 年であるが, 設置後 14 年を経過した場合にはそれ以降のオーバーホールのサイクルを 4 年間隔に短縮する必要がある, といった修繕管理のあり方を示している このように部材, 機器の経年変化に即した管理を実施することが可能となる 修繕率は, 修繕に必要とされる数量を全体に対する比率で表している 特に建築部材の場合には, 天井や床の修繕といったように一定のサイクルで全ての修繕を行うのではなく, ある一定の比率での修繕項目が発生する 分散は, 分散処理可能の可否を登録する機能であり, 具体的には, 照明器具や消化器 ( ママ ) のように同一の仕様の機器が多数ある場合, 修繕サイクルにしたがって同時に全ての修繕を実施するのではなく, 予算の平準化を図るために一定の割合で実施時期をずらして実行可能な修繕項目かどうかを登録する機能である なお, 予算の平準化は, 建物規模等により管理方式が変わり, 個別オーナーの予算計画に関わる問題でもある 演算式は, 各修繕, 更新内容によって後述するようにそれぞれのコストがある特性を持っているためこれを演算するタイプを登録するものである ( 段落 0017 ) と記載されている これらの記載からすると, 刊行物 1 記載の発明において, 修繕 更新のコストや時期等を解析する場合,1 部材, 機器の標準耐用年数に加えて, 診断機能の結果である標準偏差が考慮されること,2 設置後一定年数を経過した場合にはそれ以降の修繕サイクルが短縮されること,3 一定のサイクルで全ての修繕を行うのではなく, ある一定の比率での修繕項目が発生すること,4 予算の平準化を図るために一定の割合で実施時期をずらすことなどが考慮されると認められるから, 図 6 に記載された 計算された修繕 更新のコストや時期等からなる解析結果のデータの編集例 も, 上記 1~4 のことを考慮した結果のものであると解される クそうであるなら,40 年目までの経過年数毎に発生する更新費が, いずれの部材, 機器によるものであるかを特定することはできないというべきであるから, 刊行物 1 の図 6(A) に, 少なくとも, 経過年数 10 年毎 (10,20,3 0,40 年目 ) あるいは 15 年毎 (15,30 年目 ) に, 大きな更新費用が発生することが記載され,10 年毎あるいは 15 年毎という間隔が, いずれも, 構造部材等の計画耐用年数 ( 約 60 年 ) のほぼ整数分の 1 の間隔であり, また, 上記 10 年毎あるいは 15 年毎のいずれの間隔においても, 下位の間隔が上位の間隔の整数分の 1 であるとしても, この間隔でのみ, 外装部材および埋設設備部材が更新され, これ以外の時期には更新されないと断定することはできない ケしたがって, 刊行物 1 記載の発明は, 補正発明の前記 (b),(c) の構成を備えたものとは認められず, 本件審決が, 補正発明と刊行物 1 記載の発明との一致点として, 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材 に関して, 前記基本躯体の耐用年数の整数分の 1 のメンテナンス間隔であり, 前記基本躯体の耐用年数を基準に, 下位のメンテナンス間隔が上位のメンテナンス間隔全てに対して整数分の 1 のメンテナンス間隔とされ ていると認定したのは誤りであり, 本件審決がこの点に関する補正発明と刊行物 1 記載の発明との相違点を看過したことは明らかである コこの点に関し, 被告は, まず, 刊行物 1 に記載のメンテナンス計画が, 耐用年数が変化する付帯的部材と基本的部材とを一緒にしたものであるとしても, 補正発明においては, 耐用年数が設定できる基本的部材 と 耐用年数が変化してしまう付帯的部材 とを一緒に 定期的メンテナンス の対象とすることを除外していないのであるから, 直ちに, 刊行物 1 記載の発明が, 補正発明に比して格別に異なるものということはできない旨主張する しかしながら, 前記のとおり, 本件補正後の請求項 1 には, 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材を, 定期的なメンテナンスの計画の対象部材とし

て使用する建物であって と記載されており, この記載から, 補正発明における定期的なメンテナンスの計画の対象部材が, 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材 であることは, 文理上明らかである また, 本件補正後の本願明細書 ( 甲 3,4) には, 図 1, 図 2 において本実施形態に係わる建物は, 基本躯体 101, 外装部材 102, 埋設設備部材 1 03, 内装部材 露出設備機器 104 およびその他から構成される ( 甲 3 の段落 0019 ), 図 1, 図 2 において, 基本躯体 101 の部材として, 基礎, 鉄骨,ALC 等があり, 全て耐用年数 60 年の部材である 外装部材 102 の部材としては, 屋根葺材, 屋根防水層, 外壁 ( 防水塗装 ), 開口部等があり, さらに, 埋設設備部材 103 の部材としては, 給水給湯配管, 排水配管, 電気配線, ガス配管, 暖冷房の埋設配管, 情報関連配管, ユニットバス等がある 上記外装部材 10 2, 埋設設備部材 103 は, 耐用年数 15 年,30 年,60 年の部材で構成されている 一方, 図 1, 図 2 において, 内装部材 露出設備機器 104 の部材としては, 間仕切り壁下地, 天井下地, 壁仕上げ, 天井仕上げ, 床仕上げ, 内部建具, 家具, 造作等があり, 部材に耐用年数は設けられていない ( 甲 3 の段落 002 1, 0022 ), 次に, 基本躯体 101, 外装部材 102, 埋設設備部材 103, 内装部材 露出設備機器 104 の各々が包含する部材に対する, 定期的なメンテナンスの計画 ( 以下, メンテナンス プログラムと呼ぶ ) の実施形態を以下に述べる (1) メンテナンス プログラム対象部材図 2 に示すように, 下記の 2 条件を満たしている 基本躯体, 外装, 埋設設備 の 3 つの分野の部材を対象とする 1 その耐久性が建物全体の耐久性 ( 基本性能 ) に直接影響する部材 2 建物全体の耐久性 ( 基本性能 ) 維持のためには, 原則メンテナンス フリーまたは予防保全されるべき部材 (2) メンテナンス プログラム非対象部材 内装 露出設備 は, 上記メンテナンス プログラム対象部材の条件を満たさないことに加え, 下記の 3 点の特徴により, 原則として世間並みの耐用年数とメンテナンス システムによる対応で十分と考え, 図 2 に示すようにメンテナンス プログラム非対象とする 1 耐用年数が, 住み手の使い方や感覚に左右される面が大きいため, 維持管理をプログラム化する意味が無い 2 補修交換等は, 発生の都度で対応しても問題が無い 3 補修技術や補修部品の供給等は, 世の中で一般的に市販されている部品の活用により, 無意味なコスト上昇を抑制できる ( 甲 3 の段落 002 3 ) と記載されており, これらの記載からすると, 建物は, 基本躯体, 外装部材, 埋設設備部材, 内装部材 露出設備機器およびその他から構成され, 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材 についてのみ, 耐用年数が定められていること, 内装部材, 露出設備機器, および, その他の部材は, 建物全体の耐久性 ( 基本性能 ) に直接影響せず, 補修等の時期も予測できず, かつ, 必要があれば, 市販品等により補修等が可能であるなどの理由から, 耐用年数が定められていないことが認められる そうすると, 補正発明は, 建物が, 耐用年数が定められている部材 ( 基本躯体, 外装部材および埋設設備部材 ) と, 耐用年数が定められていない部材 ( 内装部材 露出設備機器およびその他 ) から構成されていることを前提に, 耐用年数が定められている部材をメンテナンスの計画の対象とするものであり, 耐用年数が定められていない部材については, 定期的なメンテナンスの計画の対象としていないものと認めるのが妥当である したがって, 被告の上記主張は, その前提を欠き, 採用できない ( もっとも, 補正発明の技術的意義が, 前記 (b),(c) の構成を備えた部材を建物の構成部材として用いた点にあることは, 前記のとおりである ) サまた, 被告は, 大規模修繕は一定の間隔で行われることが一般的であるところ, 大規模な修繕工事の周期にあわせて修繕工事の周期を集約させることが周知の事項といえるのであるから, 刊行物 1 記載の 10 年目,15 年目,20 年目,30 年目,40 年目の修繕 更新費用が突出する節目の年度 を,10 年毎あるいは 15 年毎の間隔のものにそれぞれ分けて, これら各年毎に発生する大きな更新費用を, 原告が主張する 基本的部材 に関するものであると認定することに何ら不都合はない旨主張する しかしながら, 大規模修繕が一定の間隔で行われることが一般的であり, このような大規模修繕に合わせて小修繕を行うようにして修繕工事の周期を集約させることが周知であるとしても, 前記のとおり, 刊行物 1 において, 更新時期は,1 部材, 機器の標準耐用年数に加えて, 診断機能の結果である標準偏差が考慮されること,2 設置後一定年数を経過した場合にはそれ以降の修繕サイクルが短縮

されること,3 一定のサイクルで全ての修繕を行うのではなく, ある一定の比率での修繕項目が発生すること,4 予算の平準化を図るために一定の割合で実施時期をずらすことなどを考慮して設定されるのであって, 一定の間隔で行われるとは限らないのであるし, また, 刊行物 1 の図 6(A) の集計グラフには,10 年周期,1 5 年周期に外れた時期にも, 大きな更新費用を発生する時期が存在するのであるから, そうであれば, 同グラフの 10 年周期,15 年周期に発生する大きな更新費用が 付帯的部材 を含めた 基本的部材 に関するものであり, それ以外は, 基本的部材 に関するものではないと断定することはできない (3) 以上のとおり, 本件審決は, 補正発明と刊行物 1 記載の発明との一致点の認定を誤って前記相違点を看過し, この相違点について判断をしないまま, 補正発明は刊行物 1,2 記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとして, 本件補正を却下したものであり, このことは本件審決の結論に影響を及ぼす誤りであることが明らかである 2 結論以上の次第で, 原告主張の取消事由 1 は理由があるから, その余について判断するまでもなく, 本件審決は取消しを免れない したがって, 原告の本件請求は理由があるから, これを認容することとし, 主文のとおり判決する 知的財産高等裁判所第 3 部 裁判長裁判官佐藤久夫 裁判官嶋末和秀 裁判官沖中康人