経済統計と日本経済 第1回:イントロダクション

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イクル成分 のみから 需要側の動きの 仮置き値 の作成を行う これにより 次 QE から 2 次 QE への改定幅を縮小させることが期待される 本改善策は 22 年 4-6 月期 次 QE から導入する 本改善策の効果について 一定の仮定をおいて試算を行ったところ 民間企業設備の 2 年 7-9 月

2018年4-6月期2次速報値 時系列表1

時系列表1

第1章 低下から停滞に転じた鉱工業生産

結果の概要1

統計学入門

平成 22 年基準 秋田県鉱工業生産指数月報 平成 30 年 12 月分 鉱工業生産指数の推移 季節調整済指数全国 東北 : 平成 27 年 =100 秋田 : 平成 22 年 =

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日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

結果の概要

結果の概要

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

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【No

資料 1 SUT タスクフォース 意見取りまとめ (1) ー SUT 産業連関表の基本構成の考え方ー 2017 年 8 月 8 日国民経済計算体系的整備部会 部会長 SUTタスクフォース座長宮川努 1

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

わが国の経済・物価情勢と金融政策

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周期時系列の統計解析 (3) 移動平均とフーリエ変換 nino 2017 年 12 月 18 日 移動平均は, 周期時系列における特定の周期成分の消去や不規則変動 ( ノイズ ) の低減に汎用されている統計手法である. ここでは, 周期時系列をコサイン関数で近似し, その移動平均により周期成分の振幅

1 ( ) 4.1% 4.4% 4.% 1 ( ) 1.2%( ) 1.6% 3.8% 1( ) 5.6% 4, % 8 6.5% % 2 4.3% 47.8% 18.8% % 13 2, % 2.2% 13.% 218 ( ).

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目的 第 3 次産業活動指数の内訳大分類業種系列である情報通信業の季節調整済指数に特殊な動きが生じており 季節調整済指数の評価に注意を要する事態が生じている そこで 季節調整期間を長くしてモデルを再検討したり 様々な季節調整方法 (Decomp や X-13 ARIMA-SEATS) を試しつつ 公

英国統計学会の統計検定試験 季節調整関連問題の解答例 本解答例は 英国統計学会 (The Royal Statistical Society 以下 RSS 1) ) が公表している Higher Certificate 試験に関する解答例のうち 見本問題および 2007 年から 2010 年までの季

第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

資料 2-2 SUT タスクフォース 意見取りまとめ (1) ー SUT 産業連関表の基本構成の考え方ー 2017 年 8 月 24 日国民経済計算体系的整備部会 部会長 SUTタスクフォース座長宮川努 1

統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

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参考図表:2018年第2四半期の資金循環(速報)

生活衛生関係営業の景気動向等調査 平成17年7~9月期

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シニア層の健康志向に支えられるフィットネスクラブ

「石油TES普及のためのネットワークシステム構築に向けての調査」

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公表内容 2 本機関は業務規程第 22 条に基づき 需要想定の前提となる経済指標として 以下の項目の見通しを策定し 公表します ( 全国の経済見通しの策定 ) 第 22 条本機関は 需要想定の前提となる人口 国内総生産 (GDP) 鉱工業生産指数 (IIP) その他の経済指標について 当年度を含む

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平成 30 年 4 月 10 日公表平成 28 年 農業 食料関連産業の経済計算 ( 概算 ) - 農業 食料関連産業の国内生産額は 兆円で全経済活動の約 1 割 - 統計結果 1 農業 食料関連産業の国内生産額平成 28 年における農業 食料関連産業の国内生産額は 115 兆 9,63

第 7 章財政運営と世代の視点 unit 26 Check 1 保有する資金が預貯金と財布中身だけだとしよう 今月のフロー ( 収支 ) は今月末のストック ( 資金残高 ) から先月末のストックを差し引いて得られる (305 頁参照 ) したがって, m 月のフロー = 今月末のストック+ 今月末

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米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

財政政策の考え方 不況 = モノが売れない仕事がない ( 失業増加 ) が代わりにモノを買う! 仕事をつくる ( 発注する )! = 財政支出拡大 ( がお金を使う ) さらに乗数効果で効果増幅!! 3 近年の経済対策の財政規模 名 称 内閣 事業規模 公共投資 減税 財政規模 日本経

景況 貴社の景況 平成 3 年 期の 貴社の景況判断 BSI を全産でみると 大企 中堅企は 上昇 超 中小企は 下降 超となっている 先行きを全産でみると 大企 中堅企は 上昇 超で推移する 中小企は 下降 超で推移するとなっている 貴社の景況判断 BSI( 上昇 - 下降 社数構成比) ( 単位

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第6章 海外勘定の推計

目次 調査結果の概要 1 小企業編 中小企業編 概況 3 概況 15 調査の実施要領 4 調査の実施要領 16 業況判断 5 業況判断 17 売上 1 売上 2 採算 11 利益 21 資金繰り 借入 12 価格 金融関連 22 経営上の問題点 13 雇用 設備 23 設備投資 価格動向 14 経営

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プライベート・エクイティ投資への基準適用

2018年度 第3四半期累計 1-9月 実績 2017年 19月期 2018年 19月期 増減 () 9,302 9, % +4.1% 営業利益 % 0.0% % +9.7% 親会社の所有者に 帰属する四半期利

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タイトル

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

Dependent Variable: LOG(GDP00/(E*HOUR)) Date: 02/27/06 Time: 16:39 Sample (adjusted): 1994Q1 2005Q3 Included observations: 47 after adjustments C -1.5

40,000 人 36,000 人 32,000 人 被保険者 被保険者数の年間推移 [ 年齢階層別 ] ( 5 カ年比較 / 平成 24 年 ~ ) 被保険者数が多い年齢層は 25~49 歳で 中でも最も多いのは 40~44 歳の階層となっています 28,000 人 24,000 人 20,000

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第1章 経済動態

2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

経済見通し

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物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

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企業物流短期動向調査 ( 日通総研短観 ) 調査結果 ( 抜粋 ) (2008 年 9 月調査 ) 2008 年 10 月 株式会社日通総合研究所 ホームページはこちら

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

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1 概 況

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実体経済 物価 (1) 現状判断 関連統計の動き 生産 輸出 増加している 増加している 鉱工業生産は 4~6 月に続き 7~9 月も前期比増加した後 10 月は小幅ながら前月比減少した 業種別にみると 輸送機械は 自動車部品を中心に緩やかに増加している 電子部品 デバイス はん用 生産用機械 (

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

本稿の分析目的 本稿では 平成 6 4 月に実施された消費増税による産業活動への影響について 前回の消費増税時 ( 平成 9 ) あるいはリーマンショック時にみられた産業活動への影響と比較しながら考察する 特に 前回増税時との比較においては 増税の前平均からの変動を比較することで 6 4 月に実施さ

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中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

建設経済モデルによる建設投資の見通し

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○ 問合せ先専用フリーダイヤル

平成14年度社会保障給付費(概要)

平成 28 年 3 月 25 日公表平成 25 年度 農業 食料関連産業の経済計算 - 農業 食料関連産業の国内生産額は 97.6 兆円で全経済活動の約 1 割 - 統計結果の概要 1 農業 食料関連産業の国内生産額平成 25 年度における農業 食料関連産業の国内生産額は 97 兆 5,777 億円

2018 年度第 3 四半期運用状況 ( 速報 ) 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に判断することが必要ですが 国民の皆様に対して適時適切な情報提供を行う観点から 作成 公表が義務付けられている事業年度ごとの業務概況書のほか 四半期ごとに運用状況の速報として公表を行うも

【IR付属資料2】120116地方公共団体の基金に係る資金の性質に応じた運用手法について

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1 見直したい費目のトップは 光熱費 で 82.9% 電力自由化の認知率も 97.1% を超える 各世帯の支出が発生している中で 見直したい費目の 1 位は 光熱費 で 82.9% 携帯電話料金 が 76.3% 食費 が 76.2% と続きました なお 光熱費を見直したい という意識は ライフステー

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

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【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

本日の内容 リターン計算上の必須事項と実務への適用 時間加重収益率と外部キャッシュフロー時間加重収益率の計算方法フィーの取扱いシステム構築 運営上の課題 リスク指標の計算 ( ちらばり 標準偏差 ) ベンチマーク リターンの計算 その他 1

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2019 年 3 月期第 3 四半期連結業績概要 2019 年 3 月期通期見通しについて 常務執行役員山西哲司 2019 年 3 月期第 3 四半期決算説明会 TDK 株式会社 2019 広報グループ 2019/1/30 3

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労働法令のポイント に賞与が分割して支払われた場合は 分割した分をまとめて 1 回としてカウントし また 臨時的に当該年に限り 4 回以上支払われたことが明らかな賞与については 支払い回数にカウントしない ( 賞与 として取り扱われ に該当しない ) ものとされている 本来 賞与 として取り扱われる

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経済統計 Ⅰ 第 10 回 : 時系列データの分析 (2) 2015 年 6 月 13 日 元山斉 石田和彦 吉野克文 美添泰人

データの 季節変動 : 個人消費 ( 再掲 ) データ出所 : 国民経済計算 内閣府経済社会総合研究所 2

経済時系列データの 季節変動 ( 再掲 ) 多くの経済時系列データの変動には 季節性 がある 季節変動 : 月や四半期ごとに観測される ある程度周期的な変動 もっと周期の短い変動 ( 例えば 日次データの週ごとの周期的な変動 ) も 季節変動 と類似の性質がある 季節変動 が生ずる理由 : 1. 月や四半期ごとの日数の違い 2. 支払い習慣 ( ボーナス等 ) 3. 税金の納期 国の予算執行上の制約 ( 年度末など ) 4. 消費生活上の習慣 ( 新年度 中元 歳暮 クリスマス 等々 ) 等 季節変動を含んだデータから経済動向をみると 評価 判断等を誤るおそれ 3

季節変動を除いて時系列データを分析する方法 完全に周期的な変動であれば その周期分の総和を取れば消えるはずである 季節性は 周期 1 年 の周期変動なので 1 年分の和を取れば消せる 1 年 (12 か月 4 四半期 ) の 移動平均 を取ることで 季節性は除去できる ただし 1 年分のデータの個数は通常偶数なので 以下のような処理をする : 移動平均による季節性の除去の弱点 1. 約半年先までの観測値が必要 一番知りたい足元のことはわからない 2. 完全に周期的ではない一部の季節変動は除去できない 月ごとの営業日数の違い 週末の数 一部の祝祭日 等 4

移動平均による季節変動の除去 : 個人消費 5

季節調整法 上記のような欠点もカバーして 経済時系列データから季節変動を除去するためのプログラムが多数開発されている 時系列データから季節性を除去することを 季節調整 その手法は 季節調整法 と呼ばれる 季節調整法を適用した系列 ( 季節調整済 系列) を公表している経済統計も多い 主な 季節調整法 1 センサス局法 移動平均法をベースに アメリカの統計作成部署である センサス局 が開発 現在 多くの統計で用いられているバージョンは センサス局法 X-12 2 DECOMP 法 日本の統計数理研究所が開発 ( 移動平均とは異なる考え方に基づく方法 ) 3 TRAMO-SEATS 法 欧州で開発された手法 ( 移動平均とは異なる考え方に基づく方法 ) 6

原系列 と 季節調整済系列 : 個人消費 7

( 参考 ) 季節調整の適用に当たっての統計基準 1. 季節調整法を適用する場合の手法季節調整法を適用する場合は 手法の適切性について国際的に一般的な評価を受けている手法を継続的に使用する (X-12-ARIMA 等 ) 2. 季節調整法の適用に関する公表事項 I. 季節調整法の適用に当たっては 次に掲げる季節調整法の運用に関する情報を 季節調整値と併せてインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする 1 手法の名称 2 推計に使用するデータ期間 3 オプション等の設定内容及び設定理由 4 オプション等の見直しの頻度及び時期 5 季節調整値の改定の頻度及び時期並びに改定の対象とするデータ期間 6 その他参考となるべき事項 II. 前記 I. の場合において オプション等の設定内容について重大な変更があるときは 変更の影響 ( 例えば変更前に公表された季節調整値と変更後の季節調整値の差異 ) を併せて公表するものとする 3. 手法を変更した場合の公表事項適用している手法を変更するときは あらかじめ 変更内容 変更理由及び変更の影響 ( 例えば旧手法による季節調整値と新手法による季節調整値の差異 ) を インターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする 8

トレンド ( 直線の当てはめ ) と季節変動を除去した後の個人消費の変動 9

季節調整の難しさ 季節調整法とは 原系列の変動を 1 トレンド + 意味のある循環変動 2 季節変動 3 各期ごとの不規則変動に分解し 季節変動を取り出す作業 ある期に 原系列に 大きな変動 が変動が観察された時 それが 1 2( 正確に言えば 季節変動の変化 ) 3 のいずれであるのかを データのみから識別することは 原理的には困難 既存の季節調整手法を機械的に適用すると 実際には 3 である変動の一部が 季節変動要因の変化と認識されて 季節調整に反映されてしまうため 季節調整済のデータに歪みが生ずることがある 季節調整手法には こうした事態を回避するために 異常値 を取り除く ( 一時的なショックは季節要因に反映させない ) オプションも用意されているが そうしたオプションを適用すべきか否かの客観的な判断はやはり難しい いわゆる リーマンショック 後の輸出や生産の極端な変動が 以後の輸出や生産 およびそれらの数字を反映する GDP 等の季節調整済データに大きな変化を与え その解釈や基調判断を難しくするという問題が 現実に発生している 10

経済時系列データの分析の実際の例 (1):GDP 内閣府 月例経済報告 主要経済指標 ( 平成 27 年 5 月 ) より 11

経済時系列データの分析の実際の例 (2): 個人消費 内閣府 月例経済報告 主要経済指標 ( 平成 27 年 5 月 ) より 12

経済時系列データの分析の実際 景気の分析や判断等の場で行われる実際の経済時系列データ分析では トレンド (T) 循環変動 (C) 季節変動 (S) 不規則要因 (I) 等の概念は明示的には登場しない場合が多い 内閣府 月例経済報告 日銀 金融経済月報 等を参照 代わりに しばしば登場する概念 / 分析道具 : 前月比 前期比 前期比年率 前年同月比 前年同期比 等 時系列の分解 : もしトレンドが直線ならば 差を取ると ( トレンド部分は除去される ) 13

前年同期比と前期比 / 前月比 1 暦年ないし年度のデータの場合 : 前年比 =( 今年の値 - 昨年の値 )/ 昨年の値前年比 =( 今年の値 / 昨年の値 )-1 ( 通常は100 倍して % で表記 ) 2 四半期のデータの場合 : 前期比 =( 今期の値 / 前期の値 )-1 ( 同 ) 前年同期比 =( 今期の値 / 昨年の同期の値 )-1 ( 同 ) 前期比年率 =(1+ 前期比 ) 4-1 ( 同 ) 3 月次データの場合 : 前月比 =( 今月の値 / 前月の値 )-1 ( 同 ) 前年同月比 =( 今月の値 / 昨年の同月の値 )-1 ( 同 ) 前月比年率 =(1+ 前月比 ) 12-1 ( 同 ) 14

個人消費 ( 原計数 ) の前期比と前年同期比 民間最終消費支出 前期比 (%) 前年同期比 (%) 2005/ 1-3. 71,634.80 4-6. 71,126.60 7-9. 73,402.90 10-12. 74,968.30 2006/ 1-3. 73,080.70-2.52 2.02 4-6. 72,341.10-1.01 1.71 7-9. 73,298.20 1.32-0.14 10-12. 75,624.10 3.17 0.87 2007/ 1-3. 73,772.40-2.45 0.95 4-6. 72,994.40-1.05 0.90 7-9. 74,375.00 1.89 1.47 10-12. 75,921.60 2.08 0.39 2008/ 1-3. 74,152.30-2.33 0.51 4-6. 72,115.90-2.75-1.20 7-9. 73,751.10 2.27-0.84 10-12. 74,293.50 0.74-2.14 2009/ 1-3. 71,285.30-4.05-3.87 4-6. 71,599.90 0.44-0.72 7-9. 73,522.70 2.69-0.31 10-12. 75,933.90 3.28 2.21 2010/ 1-3. 73,976.20-2.58 3.77 4-6. 73,092.80-1.19 2.09 7-9. 76,130.70 4.16 3.55 10-12. 77,235.80 1.45 1.71 2011/ 1-3. 73,264.70-5.14-0.96 4-6. 73,287.30 0.03 0.27 7-9. 76,444.00 4.31 0.41 10-12. 78,223.00 2.33 1.28 2012/ 1-3. 75,956.00-2.90 3.67 4-6. 75,500.60-0.60 3.02 7-9. 77,097.30 2.11 0.85 10-12. 78,741.00 2.13 0.66 2013/ 1-3. 77,110.40-2.07 1.52 4-6. 76,878.60-0.30 1.83 7-9. 78,921.60 2.66 2.37 10-12. 80,588.00 2.11 2.35 2014/ 1-3. 79,840.70-0.93 3.54 15

季節変動と前期 ( 月 ) 比 前年同期 ( 月 ) 比 季節変動を含んだ経済時系列データから 前期 ( 月 ) 比 や 前期 ( 月 ) 比年率 を求めると 実際の経済動向を見誤るおそれが大きい 個人消費の前期比は 毎年 1-3 月期に大幅なマイナスとなっているが これは 1-3 月期に景気が落ち込んだことを示すものではない!! 季節変動への対処法 : 1 季節調整済 の統計データを用いて 前期比を求める 2 前年同期 ( 月 ) 比 をみる 欠点は 判断が遅れること ( 足もとの変化が判らない ) 季節調整済 計数が公表されていない統計では 自分で季節調整を行うか それが困難な場合は 前年同期 ( 月 ) 比 を用いる 季節調整済 計数が 信じられない 等の理由で 敢えて原計数の前年同期 ( 月 ) 比を用いているケースも 時折みられる 16

個人消費 ( 季節調整済計数 ) の前期比と前年同期比 民間最終消費支出 ( 季調済 ) 前期比 (%) 前年同期比 (%) 2005/ 1-3. 72131 4-6. 72614.85 7-9. 73084.025 10-12. 73359.075 2006/ 1-3. 73519.775 0.22 1.93 4-6. 73755.05 0.32 1.57 7-9. 73063.175-0.94-0.03 10-12. 73978.15 1.25 0.84 2007/ 1-3. 74249.125 0.37 0.99 4-6. 74427.425 0.24 0.91 7-9. 74110-0.43 1.43 10-12. 74215.85 0.14 0.32 2008/ 1-3. 74687.225 0.64 0.59 4-6. 73620.85-1.43-1.08 7-9. 73452.325-0.23-0.89 10-12. 72543.85-1.24-2.25 2009/ 1-3. 71919.775-0.86-3.71 4-6. 73086.375 1.62-0.73 7-9. 73090.475 0.01-0.49 10-12. 74129.775 1.42 2.19 2010/ 1-3. 74658.95 0.71 3.81 4-6. 74632.75-0.04 2.12 7-9. 75650.3 1.36 3.50 10-12. 75380.975-0.36 1.69 2011/ 1-3. 74035.525-1.78-0.84 4-6. 74761.425 0.98 0.17 7-9. 75958.8 1.60 0.41 10-12. 76418.9 0.61 1.38 2012/ 1-3. 76708.775 0.38 3.61 4-6. 77014.725 0.40 3.01 7-9. 76650.7-0.47 0.91 10-12. 77001.575 0.46 0.76 2013/ 1-3. 77797.95 1.03 1.42 4-6. 78356.2 0.72 1.74 7-9. 78526.25 0.22 2.45 10-12. 78825.65 0.38 2.37 2014/ 1-3. 80448.95 2.06 3.41 17

原系列前年同期比 と 季節調整済前期比年率 の比較 18

( 参考 ) 前年比と前期比の使い分け (GDP の例 ) 前年比 : 1 比較的滑らか ( 振れが小さい ) 2 計算方法による恣意性 多様性がない 3 足許の変化はわかりにくい ( 変化に遅れる傾向 ) 4 前年の数字の影響を受ける ( いわゆる 前年の裏 ) 前期比 : 1 足もとの変化を反映 2 振れが大きい ( 毎期の誤差 特殊要因等 ) 3 季節調整の難しさ に起因するノイズ 19

QUIZ( 第 10 回講義関連 ) GDP 統計の民間最終消費支出 ( 個人消費 ) の分析を行おうとしている 以下の分析方法は どの程度適切といえるか それぞれ理由を付して述べよ 1 2 3 4 5 最も変動が大きく 消費動向に関して様々な具体的分析ができそうなので 原計数の 前期比 を用いて分析することにした 1-3 月期は例年消費が減少するなど 周期的な変動がありそうなので 前年同期比 を用いて分析することにした 1-3 月期は例年消費が減少するなど 周期的な変動がありそうなので 季節調整済前期比 を用いることにした 前年同期比 前期比それぞれに長短があるので 前年同期比 と 季節調整済前期比 の数字を比べながら分析することにした 既製の季節調整済データは信頼できないので 原計数前期比 のデータの移動平均を取って 自分で季節変動を均して用いることにした 20

前年同期比や前期比の要因分析 : 寄与度分解 寄与度分解 の考え方 : 幾つかの項目の合計値である経済指標が そのうちどの要因によって増減したかを分析 ( 要因分解 ) する 仮設例 : 今月の生活費 :25,000 円 先月の生活費 : 20,000 円 うち 食費 :14,000 円 うち 食費 : 10,000 円 光熱費 : 8,000 円 光熱費 : 5,000 円 教養娯楽費 : 3,000 円 教養娯楽費 : 5,000 円 生活費合計の増加 =(25000/20000) 100-100=25% 食費の増加 :40% 光熱費の増加 :60% 教養娯楽費の増加 :-40%( 減少 ) 生活費の増加要因の分析 生活費の増加分 (5,000 円 )= 食費の増加分 (4,000 円 )+ 光熱費の増加分 (3,000 円 ) + 教養娯楽費の増加分 (-2,000 円 ) これを 先月の生活費 20,000 円で割ると : 生活費の増加率 (25%)= 食費の寄与度 (20%)+ 光熱費の寄与度 (15%) + 教養娯楽費の寄与度 (-10%) 生活費の増加は 食費の増加が主因であることがわかる 21

GDP 成長率の寄与度分解 どの要因 ( 支出項目 / 需要項目 ) によって Y の成長率が実現したか 景気を主導しているのは何か 仮設例と単純化 2012 年 Y=500 C=300 I=100 CG=100 ( 兆円 ) 2013 年 Y=550 C=330 I=130 CG=90 ( 兆円 ) 2013 年の GDP 成長率 (550/500)*100-100=10% 個人消費 C の成長率 (330/300)*100-100=10% 設備投資 I の成長率 (130/100)*100-100=30% 政府消費 CG の成長率 (90/100)*100-100=-10% GDP の増加 (50 兆円 )= 個人消費の増加 (30 兆円 )+ 設備投資の増加 (30 兆円 ) + 政府消費の増加 (-10 兆円 ) GDP 成長率 (10%)=C の寄与度 (6%)+I の寄与度 (6%)+CG の寄与度 (-2%) 22

GDP 成長率の寄与度分解 (QE 公表資料 ) 23

GDP 成長率の寄与度分解のグラフ 24