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論文 世界金融危機と ASEAN5 の経済 石川幸一 Koichi Ishikawa 亜細亜大学アジア研究所教授 ( 財 ) 国際貿易投資研究所客員研究員 要約 ASEAN では 世界金融危機の影響により通貨急落 外貨準備の急減などの外貨流動性危機には陥った国はなかった 対外債務の管理 外貨準備の積増により危機への対応力を強化したためである サブプライムローンによる金融機関の破綻など金融危機の直接的な影響は極めて小さかったが 輸出は 2008 年 10 月から急減し始め製造業を中心に実体経済に大きな影響を与えた 輸出依存度の高い国は 2009 年はマイナス成長になる見込みである 2009 年の第一四半期を底に第 2 四半期には景気悪化のテンポが緩やかになり 大幅な財政支出と金融緩和による緊急経済対策の効果も加わり第 3 四半期には回復の兆しが見えてきた 2010 年は ASEAN 各国はプラス成長に回復する見通しである のリーマン ブラザースの破綻 ( リ はじめに ーマン ショック ) を契機に世界に 拡大し 世界大の金融危機が起きた 米国のサブプライムローン問題に 端を発した金融危機は 2008 年 9 月 GM の経営破綻に象徴されるように世界各国の実体経済への影響も深刻 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

であり 世界同時不況の様相を呈している IMF が 2009 年 4 月に発表した 世界金融安定性報告 によると サブプライムローン問題による欧米の金融機関の累積損失額は 4 兆 6720 億ドルであり 米国の S&L 危機の損失額 2730 億ドル 90 年代の日本の金融危機の損失額 7450 億ドルに比べるとはるかに巨額であり その震度の大きさを示している 本稿では 1997 年にアジア通貨危機を経験した ASEAN5( インドネシア マレーシア フィリピン シンガポール タイ ) に世界金融危機がどのような影響を及ぼしたのか これら諸国はどのように世界金融危機に対応したのか 実体経済への影響と回復の見通しについて論じている 1. 強化された外貨流動性危機への対応能力今回の世界金融危機により 急激な資本流出 為替レート急落 外貨準備大幅減少などの外貨流動性危機に陥り ハンガリー ウクライナな ど中東欧諸国や先進国ではアイスランドが IMF に支援を要請した 1997 年のアジア通貨危機ではタイ インドネシアと韓国が IMF に支援を要請したが 今回は ASEAN では 1 国もなかった ASEAN の通貨はリーマン ショック後下落し 特にインドネシアは下落幅が大きく中央銀行が介入をした その他の国は下落幅も小さく インドネシアを含め各国の通貨は 2008 年 12 月からは上昇に転じている ASEAN が外貨流動性危機を免れた理由は ASEAN 各国が 1997 年の通貨危機から教訓を学び危機の再発に備えてきたからである まず 対外債務を抑制してきたことが指摘できる 対外債務の GDP 比率をみると アジア通貨危機時の高い比率から各国ともかなり低下している ( 表 1) 特に タイは 74.6% から 27.3% に大幅に低下している タイの国際収支統計の その他投資 の負債項目をみると 1998 年から 2004 年の時期は海外からの借入を返済が上回っており 対外債務の返済を進めたことが示されている 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

世界金融危機と ASEAN5 の経済 表 1 対外債務の GDP 比 1995 1996 1997 2005 2006 インドネシア 63.4 58.3 65.1 47.9 37.5 マレーシア 40.6 41.3 49.8 39.9 36.0 フィリピン 51.7 51.0 59.1 57.7 47.4 シンガポール 9.8 10.4 13.7 タイ 60.0 63.5 74.6 30.0 27.3 ( 出所 )Asia Development Bank(2008)Key Indicators 2008 次に 対外債務の外貨準備に対する比率が小さかったことである IMF によると 危機的な状況となった国々は外貨準備が対外債務額以下の国が多かったが ASEAN5 では対外債務が外貨準備を上回った国はなかった アジア通貨危機時と比較すると シンガポール以外の各国で対外債務の外貨準備に対する比率が大幅に縮小している ( 表 2) さらに ASEAN5 の短期債務の比率は シンガポール 32.6% タイ 30.6% とこの 2 カ国はやや高いが インドネシア 17.7% マレーシア 23.9% フィリピン 10.4% と低いレベルである 外国資金の引き揚げという事態が起きた場合 問題となるのは逃げ足の速い短期債務であり その比率が小さければ影響は限定される また 外貨準備が潤沢であれば 為替レー トの急落に対し市場介入する余地が大きい ASEAN 各国は 通貨危機以降対外債務を慎重に管理し 危機に対する抵抗力を強化してきたことが示されている ASEAN 各国の外貨準備額は 通貨危機時に比べ数倍に増加している ( 表 3) ASEAN 各国は 1997 年の通貨危機時による為替急落に対し 市場介入による通貨防衛を図ったが 外貨準備が不十分だった そのため 通貨危機後 外貨準備を積み増してきた たとえば マレーシアの外貨準備は 1995 年の 238 億 9900 万ドルから 2007 年には 1010 億 8400 ドルに 4.2 倍の規模に拡大している これら 5 カ国を合計すると 1995 年の外貨準備は 1522 億 4600 万ドルだったが 2007 年には 4421 億 7200 万ドルと 4.2 倍となっている 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

表 2 外貨準備に対する対外債務比率 1997 年 2006 年 インドネシア 783.4% 307.5% マレーシア 225.9% 63.9% フィリピン 578.2% 262.6% シンガポール 19.3% 230.1% タイ 407.9% 82.5% ( 出所 ) アジア開発銀行資料により作成 表 3 外貨準備額の推移 ( 単位 :100 万ドル ) 1995 1996 1997 2005 2006 2007 インドネシア 14,787 19,281 17,396 34,731 42,588 56,925 マレーシア 23,899 27,130 20,899 69,917 82,194 101,084 フィリピン 7,799 11,773 8,769 18,494 22,967 33,751 シンガポール 68,816 76,964 71,390 116,172 136,260 162,957 タイ 36,945 38,645 26,893 52,065 66,985 87,455 ( 出所 )Asia Development Bank(2008)Key Indicators 2008 外貨準備が増加した背景には これら諸国が経常収支赤字国から黒字国に転換したことがある ( 表 4) アジア通貨危機時にはシンガポールを除き 経常収支は赤字であり 特にタイは経常収支赤字額が GDP 比で 7.9%(1995 年 1996 年 ) に達していた 各国とも 1998 年には経常収支が黒字に転換し その後は年により変動はあるものの 黒字基調となっ ている 投資収支は赤字基調となったものの 赤字額は経常収支黒字額より全体として小さく また 投資収支が黒字になる年もあったことから外貨準備が毎年増加して行った 特に 2006 年と 2007 年は 経常収支黒字が大幅に増加するとともに直接投資 証券投資 その他投資 ( 借入など ) の流入額も拡大し 外貨準備が大幅に積み増しされている 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

世界金融危機と ASEAN5 の経済 表 4 経常収支の対 GDP 比 1995 1996 1997 2006 2007 インドネシア -3.2-3.4-2.3 3.0 2.5 マレーシア -8.6-3.3-4.4 16.3 15.5 フィリピン -4.4-4.8-5.3 4.5 4.4 シンガポール 17.1 15.0 15.5 21.8 24.3 タイ -7.9-7.9-2.1 1.1 6.1 ( 注 ) マイナスは赤字 ( 出所 )Asian Development Bank(2008)Key Indicators 2008 2. 世界金融危機の影響の経路世界金融危機が影響を与える経路は 4 つあった まず サブプライムローン担保証券に投資した金融機関が損失を被るという直接的な影響である 欧米では多くの銀行がサブプライムローンへの投資で大きな損失を受けたが ASEAN では直接的な影響は小さかった アジア各国別の金融機関のサブプライムローンへの投資額および損失額の全貌は明らかにされていないが アジア開発銀行によると マレーシアの銀行のサブプライムローン関連の損失額は 1 億ドル 損失額の銀行資本に対する比率は 0.3% 資産に対する比率は 0.03% である 米国の場合 損失額の資本比率は 10.03% 資産比率は 1.02% であるから二桁小さく 損失が軽微だったことを示している (1) この背景には 1997 年のアジア通貨危機で大きな打撃を被った ASEAN 諸国の金融機関が 通貨危機の経験を教訓に経営の健全化に努めるとともに海外のリスク商品への投資には慎重になったことがあげられる 金融危機以降 経営が悪化した銀行に対する公的資金注入 破綻銀行の国有化と売却や銀行の合併などによる再編 不良債権買取機関の設立による不良債権の処理と債務再編 銀行の自己資本比率の引上げなどの金融改革が実施され 不良債権比率は大幅に低下した ( 表 5) 第 2 の経路は 金融機関の経営悪化により起きた信用収縮である 米国と欧州では 金融機関が次々と経 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

営が悪化 破綻したため リスクに敏感となり 信用不安が拡大し 資金の引き揚げあるいは回収が始まり 銀行間短期市場で資金不足が生じた しかし ASEAN での信用収縮は欧米に比べるとはるかに小さかった 民間銀行の国内資金供給は 2008 年第 3 四半期以降一部の国では伸び率が低下しているが 全体としてみれば 資金供給は細っていない ASEAN 各国の銀行間短期市場の金利は 2008 年 9 月のリーマン ショック以降も全体的には上昇しておらず 2009 年に入ると中央銀行の資金供給もあり 低下している ただし インドネシアでは 2008 年 9 月に中規模の銀行が破綻してから銀行間市場での資金調達が難しくなり 自動 車や 2 輪車のローン審査が厳格化しこれら耐久消費財の販売が減少するなどの影響が出ている 第 3 の経路は輸出の減少であり これが実体経済に最も深刻な影響を与えている ASEAN の大輸出先ある米国の輸入は 2008 年 11 月に前年同期比でマイナスに陥り 2009 年に入ってからは 3 割前後の大幅な減少が続いている ASEAN 主要国の輸出の前年同月比伸び率は マレーシアなど 4 カ国が 2008 年 10 月には減少に転じ 11 月からは全ての国が減少となった ( 表 6) 減少幅も月を追うごとに拡大し フィリピンは 2008 年 12 月には 40% を超え 2009 年 1 月にはマイナス 24.4% のタイを除き 30%~40% の減少となっている 表 5 不良債権比率の推移 1999 2007 インドネシア 32.9 8.5 マレーシア 11.0 2.2 フィリピン 13.6 3.9 シンガポール 5.3 1.8 タイ 38.6 5.3 ( 出所 )Asian Development Bank(2009) Asian Development Outlook 2009 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

世界金融危機と ASEAN5 の経済 表 6 アジア主要国の輸出伸び率の推移 2008 年 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 2009 年 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 インドネシア 24.8 29.9 29.0 4.7-1.8-18.7-35.0-32.3-28.3-22.6-28.7 マレーシア 32.7 15.8 16.0-6.7-10.9-20.1-35.3-27.4-26.3-34.7-35.0 フィリピン 6.0 7.0 1.5-14.6-11.0-40.2-40.6-39.0-30.7-35.2-26.9-24.5 シンガポール 28.5 16.6 17.7-5.2-15.5-21.9-40.4-29.1-28.3-32.9-30.7-28.5 タイ 29.0 10.1 13.2-4.2-26.8-21.9-24.4-17.5-26.7-25.2-23.3-22.6-25.2 ( 出所 ) 各国通関統計により作成 4 番目の経路は 株式市場の低迷である リーマン ブラザースの破綻以降 世界の株式市場で株価が大幅な低下を続けて 1 年間で世界の株式時価総額は半減した 株価の低落により資産額の減少した銀行や企業は資金確保のため株式を売却し さらに株価が下落するという株価の逆スパイラル現象が発生している また 逆資産効果により個人は消費を手控え 需要の減少を加速させた ASEAN でも 2008 年 9 月あるいは 10 月から下落が加速した 下落率は 9 割を超えたアイスランド 7 割を超えたロシアなどと比べれば小さいが 4 割から 5 割の下落となっている 国際収支統計により証券投資の流入額をみると 2008 年後半から流出額が増加しており 金融危機の影響が明らかである たとえば インドネシアでは 2008 年に入り証券投資流入額が減少し リーマン ショックの起きた第 3 四半期にマイナス ( 流出 ) に転じ 第 4 四半期には流出額が拡大している 年間でみると 流入額は 2007 年の 35 億 5900 万ドルから 2008 年には 3 億 2200 万ドルに一桁減少している ただし 株価は 2009 年第 2 四半期から回復している 3. 製造業に深刻な影響世界金融危機は ASEAN の実体経済に影響を及ぼしている その例として自動車販売台数があげられる ASEAN の 4 カ国の自動車の販売台数はリーマン ショック以降大幅な減少を続けている タイは 2008 年 7 月から前年同月比の販売台数が減 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

少に転じ 2009 年に入ると 30% 前後に減少幅が拡大している マレーシアは 2008 年 8 月にマイナスに転じ 9 月は増加したもののその後は減少を続け フィリピンは 2008 年 10 月からマイナスに転じた 極端な動きを見せたのはインドネシアであり 2008 年 10 月は前年同月比で 76% の大幅増だったが 11 月と 12 月は前年並みとなり 2009 年 1 月から 20% を超える減少となった これらの国では 自動車はローンを組んで購入することが多く 金融危機発生以降ローンの審査が厳格になったことに加え 株価低落による逆資産効果も減少の要因に輪をかけた 今回の危機で最も影響を受けた産業は製造業である 国内市場販売が多い自動車だけでなく 輸出型の電気電子産業も大きな影響を受けた 製造業生産指数は 2008 年下期からマイナスに転じており 特に在庫調整が行われた 2009 年年初は減少幅が大きくなった ( 図 1) 影響は国により差があり 米国を主要市場とする輸出志向型の電気電子製品が製造業で大きな比重を占めているシンガポールやマレーシアで減少幅が大きく インドネシアは比較的小規模だった インドネシアは 輸出依存度が比較的小さいことに加え 国内市場販売型の 2 輪車や家電などへの需 図 1 製造業生産指数の推移 20.0 10.0 0.0-10.0-20.0 インドネシアマレーシアフィリピンシンガポールタイ -30.0-40.0 2008 年 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 2009 年 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 ( 出所 ) 日本総合研究所 アジア マンスリー 2009 年 7 月号により作成 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

世界金融危機と ASEAN5 の経済 要が底固く 2009 年に入るとこれら製品への販売が上向いている 輸出依存度の高い国はマイナス成長 2008 年下期から雇用情勢も悪化しており 製造業を中心に解雇 一時帰休 操業短縮など雇用調整が実施されている 失業率も上昇しつつあり タイでは 2008 年の 1%~1.5% から 2009 年には 2% 前後に上昇した マレーシアでは 2008 年の解雇者が前年比で 17.3% 増加し 失業率は 2008 年の 3.5% から 2009 年には 4.5% に上昇すると予測されている シンガポールでも電子産業を中心に 雇用調整が行われ 2009 年の解雇者数は アジア通貨危機時 (2008 年 ) の 2 万 9086 人を上回る可能性があるとの見方も出た 景気の急速な悪化により実質 GD P 成長率は 2008 年第 3 四半期から低下し 第 4 四半期には多くの国でマイナス成長を記録した ( 図 2) 2008 年上期の成長率が高かったことから通年でマイナス成長になった国はないが 2008 年の成長率は多くの国で急落している 国別に見ると シンガポール マレーシア タイで減少幅が大きく インドネシアでは比較的小さくなっている これは 図 2 四半期別実質 GDP 成長率の推移 ( 前年同期比 ) 10 8 6 4 2 0-2 -4-6 -8-10 2008 年第 1 四半期第 2 四半期第 3 四半期第 4 四半期 2009 年第 1 四半期第 2 四半期第 3 四半期 インドネシアマレーシアフィリピンシンガポールタイ ( 出所 ) 日本貿易振興機構アジア大洋州課 原資料は各国統計 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

輸出依存度 輸出減少の影響が大きかった電気電子産業の比重の大きさによる 輸出依存度は シンガポール 158.3%( 再輸出を含むと 201.4%) と最も高く マレーシアが 103.2% タイが 70.1% となっている ( 図 3) 一方 インドネシアは 輸出依存度が 30.6% と低い上に輸出志向型の電気電子産業の比重が小さく 2 輪車 や家電など国内市場型の産業の比重が大きいためである フィリピンも輸出依存度は 35.5% と低い 2009 年は 2008 年の成長率を下回りマイナス成長になる国も出てくる ( 表 7) 2001 年の米国の IT バブル崩壊時の GDP 成長率をみると シンガポールが前年の 9.9% からマイナス 2% に急減し 同様にマレーシアが 図 3 ASEAN5 の輸出依存度 (2008 年 ) 200 150 100 50 0 インドネシアマレーシアフィリピンシンガポールタイ ( 出所 )ADB(2008)Key Indicators 2008 により作成 表 7 アジア開発銀行の GDP 成長率の推移と予測 ITバブルアジア通貨危機崩壊世界金融危機回復へ 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2007 2008 2009 2010 韓国 4.5 4.7-6.9 9.5 8.5 3.8 5.0 2.2-3.0 4.0 インドネシア 7.8 4.7-13.1 0.8 4.9 3.8 6.3 6.1 3.6 5.0 マレーシア 10.0 7.5-7.4 6.1 8.3 0.3 6.3 4.6-0.2 4.4 フィリピン 5.9 5.2-0.6 3.4 6.0 1.8 7.2 4.6 2.5 3.5 シンガポール 8.1 8.5-0.9 6.4 9.8-2.0 7.7 1.1-5.0 3.5 タイ 5.9-1.4-10.5 4.4 4.8 2.2 4.9 2.6-2.0 3.0 ( 注 )2009 年と 2010 年はアジア開発銀行の予測 (2009 年 9 月 ) ( 出所 ) 日本貿易振興機構アジア大洋州課 原資料は各国統計 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

世界金融危機と ASEAN5 の経済 8.3% から 0.3% タイが 4.8% から 2.2% と大きな減少となった 一方でインドネシアは 4.9% から 3.8% へと 1.1 ポイントの減少と影響が小さかった 今回の危機でも同様の傾向が現れており インドネシアは 2009 年に入ってもプラス成長を維持している 2008 年の成長率は シンガポールが前年の 7.7% 成長から 1.1% に急落しているが インドネシアは 6.1% 成長である アジア開発銀行の見通し (2009 年 9 月 ) では シンガポール マレーシア タイがマイナス成長だが インドネシア フィリピンはプラス成長となっている マイナス幅が最大なのは IT バブル崩壊時と同様にシンガポールである タイは 政情不安による観光客の減少もマイナス材料となった インドネシアは 2009 年上期の総選挙と大統領選挙が消費を押し上げる要因となった (2009 年下期から緩やかに回復 ) アジア開発銀行の見通しでは 2010 年には全ての国でプラス成長となる 2009 年に入ってからの経済指標をみると 2009 年の第 1 四半期 に底入れし 第 2 四半期以降は輸出や製造業生産指数の減少率が小さくなってきており 株価も上昇し始めている インドネシアでは 輸出が 5 月以降前月比でプラスに転じている シンガポールの第 2 四半期の GDP 成長率は前年同期比マイナス 3.7% であるが 前期比では 20.4% の増加となった これは 新型インフルエンザの世界的な流行で生産 輸出が急増した製薬業界に牽引されたものである 第 3 四半期の前年同期比成長率は製薬に加え電気電子も生産が拡大した製造業が 8.3% のプラス成長となり 0.8% とプラスに転じている タイでは 新車販売台数が 9 月に前年同月比で 16 ヶ月ぶりに増加に転じた 2009 年下期に入り 雇用情勢は好転しつつあり タイでは契約を解除した派遣労働者を呼び戻す動きがみられ マレーシアでは 6 月に外国人労働者の新規雇用凍結解除を政府に申し入れている 株価も第 2 四半期中に各国ともリーマン ショック前の水準に戻してきている IMF の予測 (2009 年 7 月 ) では 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

米国は 2009 年のマイナス 1.4% から 2010 年は 1.7% ユーロ圏はマイナス 3.8% から 0.6% 日本はマイナス 2.5% から 0.5% 先進国で全体ではマイナス 2.2% から 1.3% 新興国及び開発途上国は 3.3% から 5.1% に回復すると見ている 特に 中国は 2009 年 8.4% 2010 年 8.6% と最も高い成長率を実現すると予測している ASEAN は 2009 年後半から回復に向かい 世界経済の回復に伴い 2010 年には回復軌道に乗ると考えられる 2008 年から 2009 年にかけて日本を含め世界各国で大規模な緊急経済対策が実施された ASEAN でも同様に経済を下支えしているのは緊急経済対策である たとえば タイの 2009 年上期の支出項目別に見た GDP は 民間消費支出と民間部門の総固定資本形成がマイナスとなっているのに対し 政府消費支出と公共部門の総固定資本形成がプラスとなっている ( 表 8) 緊急経済対策は 金融政策 財政政策 雇用社会政策に大別できる 金融政策は 金利引き下げ 資金調達支援 預金保護 金融安定化策 ( セーフティ ネット ) 政府系ファンドによる株式購入など株式市場支援などである 財政政策では 中小企業支援 ( 融資 債務保証 ) 大規模公共工事 予算の早期執行 一時金支給 電気 ガス料金引下げ ( マレーシア ) が実施されている 雇用社会対策に 表 8 タイ 2009 年の支出項目別 GDP 伸び率推移 第 1 四半期 第 2 四半期 GDP 成長率 -7.1-4.9 民間消費支出 -2.5-2.3 政府消費支出 3.6 5.9 総固定資本形成 -15.8-10.1 民間部門 -17.7-16.1 公共部門 -9.1 9.6 輸出 -16.7-21.8 輸入 -31.6-25.3 ( 出所 ) ジェトロ通商弘報 8 月 26 日付け ( 原資料はタイ国家社会開発庁 ) 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

世界金融危機と ASEAN5 の経済 は 公共部門での雇用創出 職業訓練 賃金凍結あるいは引下げ 外国人雇用の凍結 制限 ( マレーシアとシンガポール ) などが含まれる おわりに 2009 年下期からの緩やかな回復には 各国の財政金融政策の効果が大きい 輸出は徐々に回復しているが 欧米の回復は 2010 年に入ってからでありそのテンポは遅い 国内景気の動向を見ながら拡張的な景気対策を継続することが必要である 次に 保護主義的な政策をとらないことである 保護主義は 世界貿易をさらに縮小させ実体経済への影響を深刻化させ 経済回復を遅らせる 残念ながら 世界金融危機発生後 多くはないものの保護主義的な措置が実施されており ASEAN でもいくつかの国でとられている (2) たとえば インドネシアでは 電気電子製品の輸入業者登録義務化と輸入港を制限 政府調達で国産品を最大化 石油化学製品 鉄鋼 電子部品などの関税引上げなどの措置が発表され マレーシアでは鉄鋼製品に ついてマレーシア規格あるいは国際規格への適合を要求する措置が導入された これらは産業界の要望に基づく緊急避難的な措置と思われるが 保護主義的な措置をこれ以上拡大せず すでに導入された措置を見直していくことが必要である これまでのように米国市場に依存し輸出を拡大する成長パターンの維持が難しくなったことである 米国では危機発生後 貯蓄率が高まり 経常収支赤字が縮小している 米国頼みの輸出依存から成長パターンを変えていくことが課題となっている その方向は内需依存と新興市場への輸出促進である 内需依存度の高い国は金融危機の実体経済への影響が小さかった ASEAN の 1 カ国だけでは市場は大きくはなく 内需にも限界がある そのため ASEAN の市場統合を進め さらには 東アジア域内を 1 つの市場とする必要がある ASEAN 経済共同体を完成させるとともに日中韓と協力して東アジア FTA を実現させて行くことが急務となろう 次に 新興市場の開拓を進めて行く必要がある 中国は ASEAN の重要な市場となっている 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78

が インドを初めその他の新興市場への輸出を促進すべきである FTA はそのツールの一つになるであろう 注 1.Asian Development Bank(2009), Asian Development Outlook 2009, p31 2. 世界金融危機勃発後の各国の保護主義 的な措置については ジェトロ貿易投資 白書 2009 40-48 頁を参照 季刊国際貿易と投資 Winter 2009/No.78