サイエンスのために大学図書館とオープン ができること (20 分 ) エルゼビア ジャパン主催フォーラム オープン サイエンスのミライ 第 20 回図書館総合展 2018/10/30 林豊 ( 九州大学附属図書館 eリソース課 ) hayashi.yutaka.927@m.kyushu-u.ac.jp http://orcid.org/0000-0001-7761-3444
自己紹介 九州大学附属図書館 e リソース課システム企画係 システム全般の担当 ( 旧リポジトリ担当 ) 12 年目 ( 京大 国立国会図書館 京大 九大 ) 学生時代は数学専攻 いろいろ書いたり話したり https://researchmap.jp/hayashiyutaka
1. 学術情報流通の課題 サイエンスを支える基盤として
2 1 質保証された学術情報が効率的に 流通し 研究者が適切な評価を受け 1 られるサステイナブルなしくみ が崩れている ( 商業出版社にコントロールを握られている ) 3
1 コスト 質保証 ジャーナルが値上がりする理由 寡占化 非代替性 論文の爆発的増加 ( 中国 インドなど ) 為替 + 消費税 ( 日本 ) 査読コストはどのくらい? 査読 ( 質保証 ) 研究者はジャーナルの価値の源泉を無償提供 なぜ? ポストオープンピアレビューの可能性 ハゲタカジャーナル / 国際会議の問題 出版流通コストの分担 機関 ( 購読 ) 著者 / 助成機関 (APC 投稿料?) 読者 (PPV)
2 流通 アクセス 機関リポジトリ ( グリーンオープンアクセス ) 学内紀要 博士論文 成功 査読論文 うまくいってない ( 著作権譲渡契約がネック ) オープンアクセスジャーナルの普及 APC( 値上がり?) ハイブリッドによる二重取り問題 近年の動向 プレプリントサーバーのブーム ( 研究者による受容 ) Article Sharing(SharedIt Wiley Content Sharing Cambridge Core Share) Sci-Hub 潰せばそれで終わり?(e.g., 漫画村 ) オープンアクセスジャーナルへの転換 (OA2020) ジャーナル不買というカード (e.g., 独 Project DEAL) 出版社飛ばしのしくみ (Gates Open Research European Open Access Platform) 欧州助成機関の強気なポリシー (Plan S)
欧州助成機関による Plan S 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 論文著者は 無制限の著作権を留保する 全ての出版物は cc-by などのオープンライセンスで出版されなければならない 助成機関は OA 雑誌および OA プラットフォームの満たすべき条件を確立する 適切な OA 雑誌やプラットフォームが存在しない場合 助成機関はその構築に向けて支援をする 論文の OA 出版のための費用は 研究者個人ではなく 助成機関もしくは学術機関が負担する OA 出版費用に関する助成額は標準化され 上限が設けられる 透明性を確保するため 助成機関は大学 研究機関 図書館に対して そのポリシーと戦略をこの原則に合わせることを要求する この原則は 全ての学術出版に適用されるが モノグラフや著書については 履行開始が 2020 年 1 月 1 日に間に合わない可能性があることは理解されている 長期保存およびエディトリアルの革新可能性から オープンアーカイブやリポジトリにおける研究成果の登録は認められる ハイブリッドモデルの学術雑誌は 本原則に適合しない 研究助成機関はこの原則の履行状況をモニターし 違反していた場合は 制裁措置を取る Cite: RCOS Diary miho チャネル (2018/9/6 付 ) https://rcos.nii.ac.jp/en/miho/2018/09/20180906/
Gates Open Research Cite: ビル ゲイツ氏 論文公開で世界主導 ( 日本経済新聞 2018/10/6 付 ) https://www.nikkei.com/article/dgxmzo36185510v01c18a0tjm000/
European Open Access Platform 構想 Cite: Rather than simply moving from paying to read to paying to publish, it s time for a European Open Access Platform (LSE Impact Blog, 2017/4/10) http://blogs.lse.ac.uk/impactofsocialsciences/2017/04/10/rather-than-simply-moving-from-paying-toread-to-paying-to-publish-its-time-for-a-european-open-access-platform/
3 研究評価 多様な研究評価 有名海外出版社のブランド信仰 機械的な評価指標 (IF 等 ) からの脱却 日本語による研究業績の評価 分野による違い (e.g., 学では査読論文より招待論文のほうが上だ ) オルトメトリクス 研究不正 再現性の担保 論文のエビデンスデータの保存 公開
ノーベル化学賞受賞者 野依氏の危惧 本の多くの研究者は論 を海外の学術誌に投稿する 採択されない論 も含めて 査読のために多くのデータを提供する 結果として知的資産である膨 な情報が海外へ 的に流出している 先端技術や産業と関わりのある機微なデータが含まれる場合もあり 出版社によってはデータの取り扱いや に不透明感がつきまとう 本では 海外出版社の評価システムに安易に乗っかっている 論 を管理する図書館の担当者を除くと ほとんどこの問題を認識していない 本の研究者はあまりに 中 的で 識が狭い この問題が解決しない最 の原因は指導者にある 学の学 や学部 は出版業界の仕組みを研究者たちに説明し 問題点を周知しなければならない そうしないと購読をやめようとしても 研究者は困ると 句を うだけだ Cite: 海外誌への論文投稿 知的資産の流出 野依良治氏 ( 日本経済新聞 2018/10/14 付 ) https://www.nikkei.com/article/dgxmzo36410180s8a011c1tjm000/
2. 大学図書館でできること 九州大学の取り組みの紹介
2018.10 九州大学キャンパス移転完了 新中央図書館グランドオープン (19,279 m2 )
九州大学の取り組み キャンパス移転 (2005-) 新中央図書館 (2018.10) 附属図書館事務組織再編 (2018.10) eリソース課 eリソースサービス室 専門職員 ( 資料電子化 保存担当 ) [1] eリソース管理係 [3] リポジトリ係 [2+1] システム企画係 [2] 他部署との関係 学術研究 産学官連携本部 /URA 薄い IR 室 研究者 DB リポジトリ連携で協力 デジタルライブラリ担当 [3]( 図書館 情報システム部 )
九州大学の取り組み オープンサイエンス関連の取組 機関リポジトリ公開 (2006.4) 蔵書検索 + 機関リポジトリ + デジタルアーカイブの統合 (2013.12) 研究データの保存等に関するガイドライン (2015.8) DOI 登録開始 ( 博士論文 紀要 )(2015.10) 九州大学オープンアクセス方針 (2016.1) & 研究者データベースとリポジトリの連携 (2018.1) ORCID 加盟検討タスクフォース (2017.10) JPCOAR スキーマ ( オープンサイエンス対応 ) 採用 (2017.12) ハゲタカジャーナルへの注意喚起? デジタルアーカイブのオープン化 (2018.10) オープンデータ推進 WG(2018.10-)
九州大学の取り組み : 今後 研究者との本音の対話 ( アドボカシー ) 情報提供ポータルサイト データポリシーの策定 (2019 年度?) 研究者とデータを守るために NII 研究データ基盤の導入 (2020 年度 ~) 管理基盤 (GakuNin RDM) 公開基盤 (WEKO3)
3. おわりに 実務経験を通して感じること
実務経験から感じること 著作権譲渡 + 査読無償提供 + 研究評価という 搾取 本質的な課題と大学図書館の取り組みがうまく噛み合ってない アクセスの問題 ( 表層 ) だけを改善しようとしても無理が生じる 内部は出版社にガチガチに固められている 抜本的な 改革 は単独では無理 大学図書館はどのラインまで手を出せるか?
実務経験から感じること 継続する論文数増加 出版コストの最適化 / 分担が必要 オープンアクセスジャーナルは悪夢の再演になるのでは? (APC 高騰 ) APC 投稿料? 出版社抜きのオルタナティブな出版エコシステム ( リポジトリベース ) は実現可能か? 研究者はそれに乗ってくれるか? 一部の文系研究者はリポジトリを非常に愛用 ( 出版社との棲み分けができている ) 主役である研究者の意識 / 意志がいちばん大事 ボイコットでも ジャーナル不買でも 抜本的な改革でも 大学図書館がすべきことは本音でのアドボカシー