第 9 部 宇宙空間における制度的枠組 第 1 章 総 論 国際社会は 宇宙空間における軍事利用を禁止又は制限する幾つかの国際的な枠組みを既に作成してきている 例えば 1967 年に発効した宇宙条約は 宇宙を宇宙空間と月その他の天体とに分け 宇宙空間については 核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ

Similar documents
第 4 回日豪外務 防衛閣僚協議 日本とオーストラリア : 平和と安定のための協力 共通のビジョンと目標 1. 玄葉光一郎日本国外務大臣, 森本敏日本国防衛大臣, ボブ カー オーストラリア外務大臣, スティーブン スミス オーストラリア国防大臣は,9 月 14 日にシドニーにおいて会談し, 地域的

よる 誓約 への留意 ( パラ 139) 核兵器使用の影響は瞬時又は長期的な結末をもたらし, それが以前理解されていたよりもずっと深刻であることを確認 ( パラ 140) あらゆる核兵器の使用による壊滅的で非人道的な結末に関する深い懸念は, 核軍縮分野における努力を下支えし続けるべき鍵となる要因であ

地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会 (UNCE-GGIM) 報告 2012 年 8 月ニューヨークで第 2 回の地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会 (UN Committee of Experts on Global Geospatial Information Ma

エチオピア 2017 年 2 月 エチオピアは FATF 及び ESAAMLG( 東南部アフリカ FATF 型地域体 ) と協働し 有効性強化及び技術的な欠陥に対処するため ハイレベルの政治的コミットメントを示し 同国は 国家的なアクションプランや FATF のアクションプラン履行を目的とした委員会

の自由 妨げられない通商活動 自制と 1982 年の国連海洋法条約 (UNCLOS) を含む国際法の普遍的な原則に従った紛争の平和的手段による解決を推進することの重要性を強調した 我々は ARF や ASEAN 海洋フォーラム拡大会合等を通じた情報共有や能力構築を含む 海洋安全保障及び海上の安全に関

Security declaration

ANNUAL REPORT

2-工業会活動.indd

<4D F736F F D D312D348D5A814082CD82B582AA82ABB8DEDBB0CADED9A5BAD3DDBDDE2E646F63>

2009年3月12日

2008年6月XX日

NPT 体制の維持 強化 核軍縮 中国の核戦力増強への対応 核戦力の透明性 核兵器の非人道性 中東非大量破壊兵器地帯 包括的核実験禁止条約 (CTBT) 早期発効 2. 核軍縮 不拡散分野の当面の課題 2010 年 NPT 運用検討会議で行動計画を採択 2015 年 NPT 運用検討会議に向けて核軍

法務スキルアップ研修 第1回

間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

G7 ICT マルチステークホルダー会議からの成果を歓迎する 6. 我々は 2016 年 6 月 21 日から 23 日にかけてメキシコのカンクンで開催される イノベーション 成長及び社会の繁栄をテーマとした デジタル経済に関する OECD 閣僚級会合の成果に期待する 7. 我々は デジタル連結世界

Taro-青木.jtd

2. 測位衛星のシステム提供者 ( プロバイダー ) 間の国際協力の重要性現在 全地球規模 ( 全球型 ) のグローバルな衛星測位システム (GNSS) として 米国の GPS 欧州の GALILEO ロシアの GLONASS 中国の北斗の 4 システムが整備される予定である また 地域型のシステム

の権利 包摂的な貿易 持続可能な開発並びに伝統的な知識を促進することの重要性並びに公共の利益のために締約国が規制を行う権利を有することの重要性を再確認すること並びに他の国又は独立の関税地域のこの協定への加入を歓迎することを決意して 次のとおり協定した 第一条環太平洋パートナーシップ協定の組込み1締約

一太郎 10/9/8 文書

300

この長期にわたる紛争に対する政治的解決を達成することとマグレブ アラブ連合の加盟国間の協 力の強化は 安定および安全 同様にサヘル地域の全ての人々のための仕事 成長および機会を導き出 すことに貢献するであろうことを認識し 国際連合西サハラ住民投票監視団 (MINURSO) を含む 全ての平和維持活動

<92508F838F578C76955C81408EE88E9D82BF8E9197BF2E786C7378>

第6回国際課税DG 際D6-1

条第一項に規定する国際平和協力業務の実施等に関する重要事項九自衛隊法 ( 昭和二十九年法律第百六十五号 ) 第六章に規定する自衛隊の行動に関する重要事項 ( 第四号から前号までに掲げるものを除く ) 十国防に関する重要事項 ( 前各号に掲げるものを除く ) 十一国家安全保障に関する外交政策及び防衛政

政策目標 5-2: 多角的自由貿易体制の維持 強化及び経済連携の推進並びに税関分野における貿易円滑化の推進 1. 政策目標の内容自由貿易の推進は我が国の対外経済政策の柱であり 力強い経済成長を実現するためには 自由貿易体制を強化し 諸外国の活力を我が国の成長に取り込む必要があるというのが 政府全体と

オランダ宇宙事業及び宇宙物体の登録に関する法律(宇宙事業法)

責任ある農業投資 - 原則の策定に向けた背景と概要 年 7 月 外務省

目次 1. 調査概要 Page 2 2. 回答者属性 Page 3 3. 問 1. 地球儀を俯瞰する外交 Page 4 4. 問 2. 日本の国連安保理非常任理事国としての取組 Page 5 5. 問 3. 東アジアの安全保障政策 Page 6 6. 問 4. 女性参画推進における国際的取組 WAW

Ⅰ. 経緯 国際金融コミュニティにおける IAIS の役割は ここ数年大幅に増加している その結果 IAIS は 現行の戦略計画および財務業績見通しを策定した際には想定していなかった システム上重要なグローバルな保険会社 (G-SIIs) の選定支援やグローバルな保険資本基準の策定等の付加的な責任を

平和維持活動業績資料を含む 平和維持活動の有効性に関する資料が 明快で十分に特定された達成条件に基づいて 派遣団の活動の分析と評価を改善するために用いられることを確保するという事務総長への安保理の要請を想起し 派遣団が その職務権限を効果的に実行するために必要とされる技能と柔軟性を保持するような M

Microsoft Word - ★(ワードセット版)CONNEX基本指針

タイトル

グループ発表 PKO 賛成派平和のための PKO 2015/06/16 山上咲子 1.PKO( 国連平和維持活動 ) とは何か PKO は一般的に 国連の安全保障理事会の決議に基づいて 加盟国による特別な部隊を作り 紛争の起った地域に派遣して紛争の拡大 再発防止 停戦後の平和維持のために行う活動 と

三衆議院議員稲葉誠一君提出自衛隊の海外派兵 日米安保条約等の問題に関する質問に対する答弁書一について1 我が国が安全保障理事会の常任理事国となるためには 国連憲章の改正が必要であるが 安全保障理事会の常任理事国は 国連憲章の改正についても いわゆる拒否権を有しており 一般的にいつて 国連憲章の改正に

防衛交流の基本方針について(通達)

PowerPoint プレゼンテーション

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

ドーハ ラウンド交渉の一分野である貿易円滑化については 平成 26 年 11 月のWTO 一般理事会において 貿易円滑化協定に関する改正議定書 が採択され 今後 3 分の2 以上の加盟国が受諾した時点で本協定は発効することになりました 各 WTO 加盟国がこの協定を実施することにより 貿易規則の透明

第 4 部 核不拡散 第 1 章 地域の不拡散問題と日本の取組 第 1 節 北朝鮮 1. 北朝鮮をめぐる最近の情勢北朝鮮の核 ミサイル問題は 国際社会の平和と安全に対する重大な脅威であり 特に核問題は国際的な核不拡散体制に対する重大な挑戦である 2002 年 10 月に北朝鮮がウラン濃縮計画を有して

資料 2 国際宇宙ステーション (ISS) 計画概要 平成 26 年 4 月 23 日 ( 水 ) 文部科学省研究開発局 1

PowerPoint プレゼンテーション

日本産食品の輸入規制の撤廃の要請,3 原子力安全 ( 安全最優先の原子力発電所の再稼働,IRRSフォローアップミッション実施の要請,OSARTフォローアップミッション受入れ等 ),4 原子力の平和的利用 ( 平和と開発のための原子力 に係る天野事務局長の取組への支持, 本年 11 月の原子力科学技術

撃のリスクが 全ての地域と加盟国に影響する可能性があることに懸念を表明し 民間航空に対するテロ攻撃について深刻な懸念を表明しそしてそのような攻撃を強く非難し 民間航空が 外国人テロ戦闘員による輸送手段として用いられる可能性があることにまた懸念を表明し そして 1944 年 12 月 7 日にシカゴで

Microsoft Word - 37.doc

マーシャル諸島による国際司法裁判所 (ICJ) への提訴 メディアセミナー 核廃絶へ世界の今と日本の課題 2014 年 7 月 18 日 山田寿則 ( 明治大学 国際反核法律家協会 ) 1

Microsoft PowerPoint - 環境問題と持続可能な社会(田中).ppt

Taro-青木.jtd

11

監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書

いる 〇また 障害者の権利に関する条約 においては 障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとされている 〇一方 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度 ( いわゆる欠格条項 ) については いわゆるノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン ( 社会的包摂 ) を基本理念とする成年

謝辞

<4D F736F F F696E74202D F B8817A93648AC E096BE8E9197BF E >

大綱コンセプトの変遷 初めて策定した 51 大綱 (1976 年策定 ) においては 自らが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう 必要最小限度の防衛力を保有するという考え方 すなわち 基盤的防衛力構想 を採用 その後 東西冷戦の終結といった国際情勢の変化 より安定した安全保

前提 新任務付与に関する基本的な考え方 平成 28 年 11 月 15 日 内 閣 官 房 内 閣 府 外 務 省 防 衛 省 1 南スーダンにおける治安の維持については 原則として南スー ダン警察と南スーダン政府軍が責任を有しており これを UNMISS( 国連南スーダン共和国ミッション ) の部

HP掲載後微修正】日本側共同声明案和文

<4D F736F F F696E74202D F8D E9197BF817990C296D890E690B6817A288CF6955C89C229>

PowerPoint プレゼンテーション

これまでの G7 コミットメント及び持続可能な開発のための世界的な枠組み を定める 2030 アジェンダに沿って行動する必要性を認識しつつ, 我々 G7 首 脳は, 以下にコミットする 強靱な沿岸及び沿岸部コミュニティ 1. より良い適応計画, 緊急事態への備え及び回復の支援 我々は, 政策ギャップ

<4D F736F F F696E74202D2091E63289F18EF68BC65F AD8DF496CD8B5B8CF08FC25F E348C8E323293FA5F >

制度見直しに関する主な方向性については 次の通り考えるものとする 1. ビッグデータ時代におけるパーソナルデータ利活用に向けた見直し 個人情報及びプライバシーの保護に配慮したパーソナルデータの利用 流通を促進するため 個人データを加工して個人が特定される可能性を低減したデータに関し 個人情報及びプラ

政府開発援助大綱 平成 15 年 8 月 29 日 外務省経済協力局

日米地位協定の環境補足協定

Taro-青木.jtd

はじめに サントリーグループは 企業理念として定める 人と自然と響きあう と Growing for Good 及びサントリーグループ企業倫理綱領に基づき 安全 安心で高品質な商品 サービスをお届けするために 国連グローバル コンパクト 署名企業として公正 公平な取引を実施し サプライチェーン上のお

平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題

仕切.indd

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

安全保障会議 ( 現行 ) の概要 ( 構成 ) 委員長 : 内閣官房長官 委 安全保障会議 ( 構成 ) 議長 : 内閣総理大臣 事態対処専門委員会 内閣総理大臣の諮問に基づき 以下の事項を審議 国防の基本方針 防衛計画の大綱 対処基本方針 武力攻撃事態 / 周辺事態等への対処 / 自衛隊法第 3

⑴ 政策目的本件は, 我が国において開発資金のための国際連帯税 ( 国際貢献税 ) を導入し, 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ 等, 国際的な開発目標の達成に対応 貢献するために, 世界の開発需要に対応し得る幅広い開発資金を調達するもの これは, 外務省政策評価, 基本目標 Ⅵ 経済協

2. 各検討課題に関する論点 (1) 費用対効果評価の活用方法 費用対効果評価の活用方法について これまでの保険給付の考え方等の観点も含め どう考 えるか (2) 対象品目の選定基準 1 費用対効果評価の対象とする品目の範囲 選択基準 医療保険財政への影響度等の観点から 対象となる品目の要件をどう設

第 8 回平和市長会議総会 会期 : 平成 25 年 (2013 年 )8 月 3 日 ( 土 )~6 日 ( 火 ) 会場 : 広島国際会議場 グランドプリンスホテル広島グランドプリンスホテル広島は 8 月 3 日 ( 土 )19 時から行う歓迎レセプションの会場となります 総会メイン会場の広島国

財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書

預金を確保しつつ 資金調達手段も確保する 収益性を示す指標として 営業利益率を採用し 営業利益率の目安となる数値を公表する 株主の皆様への還元については 持続的な成長による配当可能利益の増加により株主還元を増大することを基本とする 具体的な株主還元方針は 持続的な成長と企業価値向上を実現するための投

<4D F736F F D E9197BF342D32817A B7982D BF CC8EA993AE8ED482C98AD682B782E990A28A458B5A8F708B4B91A582CC93B193FC8B7982D18D B4B91A D A89BB82C982C282A282C42E646F6378>

1 自衛隊に対する関心 問 1 あなたは自衛隊について関心がありますか この中から 1 つだけお答えください 平成 30 年 1 月 関心がある ( 小計 ) 67.8% 非常に関心がある 14.9% ある程度関心がある 52.9% 関心がない ( 小計 ) 31.4% あまり関心がない 25.9%

Microsoft Word SB48andAPA1-5.docx

<4D F736F F F696E74202D E9197BF A8F B AF C982C282A282C42E B8CDD8AB B83685D>

Microsoft Word - _別紙)外為法.doc

目 次 1. 改訂の趣旨 1 2. 宇宙開発利用の特性 意義及び課題 1 3. 昨今の防衛省の取組 2 4. 防衛省の宇宙開発利用に関する基本方針 3 ⑴ 宇宙空間に対する考え方 3 ⑵ 統合機動防衛力 の構築に資する宇宙開発利用のあり方 3 ⑶ 今後の重点的な取組 4 ア.3 つの視点に係る取組

<4D F736F F D B835E8BA4974C8EE888F E63294C5816A8F4390B E31322E F4390B394C5816A2E646F63>

Taro-文書1

新旧対照表

ISO/TC176/SC2/N1291 品質マネジメントシステム規格国内委員会参考訳 ISO 9001:2015 実施の手引 目次 1.0 序文 2.0 ISO 9001:2015 改訂プロセスの背景 3.0 ユーザグループ 4.0 実施の手引 4.1 一般的な手引 4.2 ユーザグループのための具

参考資料 1-1 本年次報告の位置付け サイバーセキュリティ戦略 (2015 年 9 月 4 日閣議決定 ) に基づく二期目の年次報告 2016 年度のサイバーセキュリティに関する情勢及び年次計画に掲げられた施策の実施状況を取りまとめたもの ウェブアプリケーション (Apache Struts 等

150908_gaimushou_rachi_02

untitled

平成19年6月  日

3 4

中東非大量破壊兵器地帯を巡る見通しと課題 2015 年 4 月 11 日 2015 年度日本軍縮学会研究大会戸﨑洋史 ( 日本国際問題研究所 ) 1. 経緯 : 中東の拡散問題とNPT (1) 中東の WMD 拡散問題 WMD 拡散状況 イスラエル : 核兵器をおそらく保有 ;NPT BWC 未署名

はじめに 日本の平和と安全を維持し その存立を全うすることは 政府 の最も重要な責務です また 日本の安全保障政策を高い透明性をもって示すことも政府が果たすべき役割です 日本は 戦後 70 年以上にわたり 平和国家として歩んできました 自由 民主主義 人権 法の支配を擁護し 地域そして世界の平和と繁

2599 第十九章労働第十九 一条定義この章の規定の適用上 ILO宣言 とは 国際労働機関(以下この章において ILO という )の千九百九十八年の労働における基本的な原則及び権利に関する宣言並びにその実施についての措置をいう 労働法令 とは 締約国の法律及び規則又は法律及び規則の規定であって 次の

2) 本年 2 月 28 日に 玄葉外務大臣が政策研究大学院大学で行われた演説 我が国のグローバルな課題への取り組み ~ フルキャスト ディプロマシー の展開と協力フロンティアの拡大 ~ 1) について この間の外務省側発言での扱いや 平成 24 年度 国際協力重点方針 2) 内容を勘案するに この

国際社会の平和 安定及び我が国の安全保障への寄与 に係る取組状況について 資料 6-1 サイバーセキュリティ戦略 (2018 年 7 月 27 日閣議決定 ) 政策目的 : 自由 公正かつ安全なサイバー空間を創出 発展させ もって 1 経済社会の活力の向上及び持続的発展 2 国民が安全で安心して暮ら

<4D F736F F F696E74202D E378C8E313393FA A F BF38AD482C982A882AF82E988C DB8FE182C68D918DDB A957A A205B8CDD8AB B83685D>

既述のように 米ソ間では 60 年代半ばまでに 平和的目的 の利用とは自衛権の範囲内の軍事行動を含む 非侵略 利用であるという了解が成立していた 宇宙条約起草時において インドおよびハンガリーは 平和的利用とは 非軍事 と解すべきであるとして米国の姿勢を批判したが 他国からの発言はなく この議論が進

<4D F736F F D208DBB939C97DE8FEE95F18CB48D EA98EE58D7393AE8C7689E6816A2E646F63>

リオ +20 の現状 平成 24 年 6 月外務省国際協力局リオ +20 準備室

2

Transcription:

第 9 部 宇宙空間における 制度的枠組

第 9 部 宇宙空間における制度的枠組 第 1 章 総 論 国際社会は 宇宙空間における軍事利用を禁止又は制限する幾つかの国際的な枠組みを既に作成してきている 例えば 1967 年に発効した宇宙条約は 宇宙を宇宙空間と月その他の天体とに分け 宇宙空間については 核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せ ること 及び 他のいかなる方法によってもこれらの兵器を宇宙空間に配置 することを禁止している 天体については もっぱら平和的目的のために 利用されるものとし 天体上においては 軍事基地 軍事施設及び防備施設の設置 あらゆる型の兵器の実験並びに軍事演習の実施 を禁止し ている 宇宙条約以外では 1963 年に発効した部分的核実験禁止条約が 宇宙空間における核実験を禁止している 1978 年に発効した環境改変技術禁止条約は 宇宙空間の構造に変更を加える技術の軍事的使用その他の敵対的使用を禁止している 1984 年に発効した月協定は 月 を天体と宇宙空間の双方を含む概念と定義した上で 月は もっぱら平和的目的のために 利用されるものとし 月における武力の行使 武力による威嚇等を禁止した しかし 月協定の締約国は 主要な宇宙活動国を含まない16か国に留まっている 152 第 9 部宇宙空間における制度的枠組 / 第 1 章総論

日本の軍縮 不拡散外交 ( 第七版 ) 第 2 章 宇宙空間における軍備競争の防止 (PAROS) 第 1 節 ジュネーブ軍縮会議 (CD) における PAROS に関する議論 長年 宇宙空間における軍備競争の防止 (PAROS: Prevention of Arms Race in Outer Space) は CD の議題の1つとして議論されてきた 1985 年から 1994 年までは CDの下に PAROSに関する特別委員会が設置され 宇宙条約を補完する新たな条約の作成の必要性 衛星攻撃兵器 対弾道ミサイル システムの評価などにつき議論が行われた しかし 実質的な成果は得られず その後 PAROSに関する特別委員会は設置されていない 2008 年 中国及びロシアが 宇宙空間への兵器の配置を禁止することを含む 宇宙空間における兵器配置防止条約 (PPWT) 案を CDに提出した (2014 年に改訂版を提出 ) CDは長年にわたって 軍縮条約の交渉を行うための作業計画を採択でき 第 2 節日本の立場 日本は 宇宙空間における軍備競争は防止されるべきであるとの観点から 宇宙における軍備競 ずにいたが 2009 年に12 年ぶりに作業計画をコンセンサスで採択した 同作業計画では 核兵器用核分裂性物質生産禁止条約 (FMCT) 交渉のための作業部会の設置が合意されるとともに PAROS については実質的議論を行うための作業部会の設置が合意された しかし 採択された作業計画を実施するための作業日程等についての合意が得られず 結局作業部会の設置にまでは至らなかった 上記のとおり CDでは作業計画が採択されない 又は 実施されない状態が長年続いていることから PAROSに関する特別委員会又は作業部会は長年設置されていないが 非公式な形での実質的議論は継続されている 第9部争の問題に関する様々な論点につき総合的に検討し CDにおける議論に積極的に参加している 第 9 部 宇宙空間における制度的枠組 / 第 2 章宇宙空間における軍備競争の防止 (PAROS) 153

第 3 章 宇宙活動に関する国際行動規範 第 1 節概要 1. 経緯近年 宇宙利用国や宇宙ゴミ ( スペースデブリ ) の増加 2007 年の中国による衛星破壊 (ASAT: Anti-Satellite weapon) 実験のような 国際社会として共同して対処すべき新たな課題が生じている この状況に対して CD 及び国連宇宙空間平和利用委員会 (COPUOS) を含む宇宙関連の多国間協議の場で法的拘束力を有する新たな条約の策定が困難な中 いわゆるソフトローの策定により 各国の関連の条約等の適切な履行を確保し 宇宙ガバナンスを構築するとの時流が形成されつつある そうした中 2008 年 12 月 EUが 法的拘束力を有しないソフトローとして EU 総務 対外関係理事会において 国際社会に対して提案するものとして 宇宙活動に関する国際行動規範案を採択した その後 各国との協議を踏まえ EUは 2010 年 9 月 EU 総務 対外関係理事会において国際行動規範案の改訂版を採択した EUは その後も各国との協議を続け 2012 年 6 月 同行動規範の多国間外交プロセスを正式に開始するため ウィーンにおいて すべての国連加盟国に開かれた最初の多国間会合 (multilateral meeting) を開催した その後 EUは 同行動規範に関する多国間の協議を本格的に開始するため キエフ (2013 年 5 月 ) バンコク (2013 年 11 月 ) 及びルクセンブルク (2014 年 5 月 ) において すべての国連加盟国に開かれたオープンエンド協議 (open-ended consultations) を開催した ( 注 : オープンエンド協議とは 結論を予断しない形で各国からの幅広い参加と議論を歓迎する意図での呼称 ) 第 3 回オープンエンド協議において 多くの国から 協議 の段階から 交渉 の段階に迅速に移行すべきとの意向が表明されたことを受け EU は 2015 年 7 月 ニューヨークにおいて 多国間交渉会合 (multilateral negotiations) を開催した 2.EU 提案の国際行動規範案の概要宇宙活動の活発化に伴って 宇宙活動の軍事利用と民生利用の境目が曖昧になる中 EUが提案する国際行動規範案は 軍事利用と民生利用の両方の宇宙活動をカバーすることを意図している また 各国の宇宙活動の透明性及び信頼を醸成する 透明性 信頼醸成措置 (TCBM) の一環と位置づけられている 具体的には 署名国は 事故 衝突その他の有害な干渉可能性を最小化する措置をとること 宇宙ゴミ ( スペースデブリ ) 発生低減のため宇宙物体の意図的な破壊等を差し控えること 宇宙物体への危険な接近をもたらす可能性のある運用予定 軌道変更 再突入 衝突等のリスクを通報すること 参加国は 他国が同規範のコミットメントに矛盾する活動を行っていると信ずるに足る理由を有する場合に協議を要請することができること等が盛り込まれている 154 第 9 部宇宙空間における制度的枠組 / 第 3 章宇宙活動に関する国際行動規範

第9部日本の軍縮 不拡散外交 ( 第七版 ) 第 2 節 多国間交渉会合の概要 2015 年 7 月 ニューヨークの国連本部内において EUにより 宇宙活動に関する国際行動規範 多国間交渉会合が開催され 我が国を含む109か国 2 国際機関 6NGOが参加した 多国間交渉会合では 2012 年以来 4 回にわたって開催されてきた多国間の協議を踏まえ (1) 行動規範の内容や (2) 今後の協議の取り進め方について議論された (1) 行動規範の内容に関する議論主に 次の諸点について議論され 参加者間で一定の理解の深まりがあった ( ア ) 行動規範の目的 対象とする宇宙活動の範囲 ( スコープ ) 一般原則については 主に 対象を民生利用の活動のみとするのか 民生 軍事双方を含めた活動を対象とするのか また 宇宙において自衛権がどのように適用さ れるのか等について議論された ( イ ) また 関係国間の信頼と相互理解を増進し 宇宙活動の透明性を強化するための協力の仕組みについても議論された (2) 今後の取り進め方に関する議論多くの参加者から 規範の交渉は開放的 包摂的 (inclusive) 透明かつ非差別的な方法で行われるべきとの意見が表明された 今後の交渉を行う具体的な場として ジュネーブ軍縮会議 (CD) 国連宇宙空間平和利用委員会 (COPUOS) 国連総会 国連総会第一委員会 同第四委員会といった様々なフォーラムが提案された他 従来進められてきたアドホックな外交プロセスを支持する意見も表明された 今後 どの枠組みで交渉を進めていくか 関係国間で調整が行われる予定となっている 第 3 節 日本の立場と取組 日本は 宇宙ガバナンスの構築を目的としたソフトローの整備が 宇宙活動国間の信頼醸成及び日本の安全保障に貢献し 国際社会の宇宙活動の利益ともなるとの立場を踏まえ 国際行動規範案の基本的な概念や原則を支持している 2012 年 1 月には 玄葉光一郎外務大臣が 日本として EU が主導してきたイニシアティブを歓迎し 本件に関する国際的な議論に積極的に参加する用意があ る 旨表明した 日本は 宇宙空間の持続的かつ安全な利用を確保するための同国際行動を早期に策定すべく これまでの会合において積極的 建設的に議論に参加している また 同行動規範案が実効的かつ普遍的なものとし 多くの国が同行動規範案に参加できるよう アジア諸国をはじめ 関係国と密接に協力 意見交換している 第 9 部宇宙空間における制度的枠組 / 第 3 章宇宙活動に関する国際行動規範 155