1. 財務諸表の表示 - 総論 IFRS 対応により主要財務諸表の名称 形式が変更される (IAS 1 号 ) 現行 貸借対照表 (Balance Sheet) 損益計算書 (Profit or Loss Statement) キャッシュフロー計算書 (Cash Flow Statement) 株主資本変動計算書 (Statement of changes in equity) IFRS 財政状態計算書 (Statement of financal position) 包括利益計算書 (Consolidated Statements of Comprehensive Income ) キャッシュフロー計算書 (Statement of Cash Flows) 所有者持分変動計算書 (Statement of changes in equity) 表示形式 区分が従来と異なる 包括利益の概念が追加され 表示形式 区分が従来と異なる 直接法のキャッシュフローの作成要否について議論中
1.(1) 財務諸表の表示 - 包括利益についての概要 1 包括利益とは 包括利益 とは ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち 当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう その他の包括利益 とは 包括利益のうち当期純利益及び少数株主損益に含まれない部分をいう企業会計基準公開草案第 35 号包括利益の表示に関する会計基準 ( 案 ) より 包括利益 = 当期純利益 + その他包括利益 その他包括利益に該当するもの 現行の評価 換算差損益がその他包括利益に該当する具体的には その他有価証券評価差額金 繰延ヘッジ損益 為替換算調整勘定等
1.(1) 財務諸表の表示 - 包括利益についての概要 2 資本と当期利益の関係 ( 現行基準 ) 現行 貸借対照表の資本の部の前期末残高と当期末残高の差額の内訳は株主資本変動計算書で表現される 差額のうち 利益剰余金の増減は損益計算書の当期純利益と一致する 株主資本変動計算書 B/S 資本の部 損益計算書 期首 期中 期末 株主資本 株主資本増減 株主資本 株式資本 評価 換算差損益 評価 換算差損益増減 評価 換算差損益 評価 換算差損益 費用 収益 利益剰余金 利益剰余金 利益剰余金 当期純利益 当期純利益 当期純利益 株主資本変動計算書の期末残高と B/S 資本の部の各項目は一致する 当期純利益 ( フロー ) は利益剰余金の内訳としてストックされる
1.(1) 財務諸表の表示 - 包括利益についての概要 2 資本と包括利益の関係 (IFRS 基準 ) IFRS 株主資本変動計算書の基本的な内容は評価 換算差損益の表記がその他包括利益に変更されることを除き変更なし 包括利益計算書にその他包括利益の増減が追加される 株主資本変動計算書 期首 期中 期末 財政状態計算書 ( 所有者持分 ) 包括利益計算書 株主資本 株主資本増減 株主資本 株式資本 その他包括利益 その他包括利益増減 その他包括利益 その他包括利益 費用 収益 利益剰余金 利益剰余金 利益剰余金 当期純利益 当期純利益 当期純利益 株主資本変動計算書のその他包括利益増減と包括利益計算書のその他包括利益増減と一致する 株主資本変動計算書の期末残高と資本の部の各項目は一致する その他包括利益増減 包括利益計算書に その他包括利益 が新たに開示対象となる
1.(1) 財務諸表の表示 - 包括利益計算書の書式 包括利益計算書は 1 計算書方式と 2 計算書方式があり 任意で選択可能 <<1 計算書方式 >> < 包括利益計算書 > 当期純利益計算 当期純利益 XXX その他包括利益 包括利益 XXX 従来の損益計算書に該当する部分については非継続事業等の別の論点で変更が発生している <<2 計算書方式 >> < 損益計算書 > 当期純利益計算 当期純利益 XXX < 包括利益計算書 > 当期純利益 XXX その他包括利益 包括利益 XXX
1.(1) 財務諸表の表示 - 包括利益への SAP での対応 レポートの表示は当期純利益に該当する勘定科目とその他包括利益に該当する勘定科目を区別した勘定体系で財務諸表バージョンを作成することで対応可能 現行 評価 換算差額等は B/S 科目なのでその他包括利益も B/S 科目扱いとなる 財務諸表バージョン ( 日本基準 ) < 貸借対照表 > 資産負債資本 資本金利益剰余金評価 換算差額等 < 損益計算書 > 営業損益経常損益特別損益当期純利益 IFRS 財務諸表バージョン (IFRS) < 財政状態計算書 > 事業投資財務非継続事業所有者持分資本金利益剰余金その他包括利益累計額 < 包括利益計算書 > 事業損益財務損益非継続事業損益当期純利益その他包括利益 財政状態計算書のその他包括利益累計額は貸借対照表の評価 換算差額と同じ 包括利益計算書に B/S 科目のその他包括利益が追加されることに注意 包括利益以外の表示項目の違いについては別項 ( 非継続事業 ) 参照
1.(2) 非継続事業の定義 非継続事業とは 既に処分された企業の構成単位 または 売却目的保有に分類される企業の構成単位 かつ いずれかの要件を満たしていること 1) 独立の主要な事業分野又は営業地域の事業を現すこと 2) 独立の主要な事業分野又は事業を処分する 統一された計画の一部であること 3) 転売のみのために取得した子会社であること 構成単位とは当該企業の他の部分から営業上及び財務報告上明確に区別できる事業およびキャッシュフローから成る (IFRS 第 5 号 ) 少なくとも BS/PL が個別に出力できる区分であることが必須要件 例 ) Lenovo に売却された IBM のパソコン事業 非継続事業を財務諸表上 他の事業 ( 継続事業 ) と区別して表示しなければならない 継続事業 非継続事業の変更が発生した場合 過年度遡及が必要
1.(2) 非継続事業の損益計算書 損益計算のイメージ 現状 P/L 営業損益 営業損益 - 継続事業 営業損益 - 非継続事業 投資 - 継続事業 営業外損益 投資 - 非継続事業財務 - 非継続事業 特別損益 特別損益 - 継続事業特別損益 - 非継続事業 現行 財務 - 継続事業 現行の営業外損益は投資活動と財務活動に分離して表示する 特別損益は継続事業に関わるものは営業損益に含まれる 包括利益計算書 営業損益 営業損益 - 継続事業 特別損益 - 継続事業 投資損益投資 - 継続事業 財務損益財務 - 継続事業 非継続事業損益 営業損益 - 非継続特別損益 - 非継続 その他包括利益 非継続事業損益は各損益から非継続事業分を分離して別枠で表示する ( 純額表示 ) 投資 - 非継続財務 - 非継続 従来の損益計算書と同額特別損益 - 非継続事業 継続事業IFRS
流動資産 固定資産 1.(2) 非継続事業の貸借対照表 貸借対照表のイメージ 現状 B/S 現預金 売上債権 有形固定資産 無形固定資産 投資等 売却目的保有の非流動資産 仕入債務 短期負債 長期負債 資本 流動負債 固定負債 廃止事業に関わる資産 負債 (= 処分グループ ) 現行の流動 固定による分類ではなく 企業活動の区分による分類で表示する 非継続事業に関わる資産 負債は別枠で表示する 業継続資本所続事流動資産継事業現行 持分営業 投資 財務 有者 財政状態計算書 売上債権 固定資産のうち営業活動に関わるもの 投資等現預金業非処分グループ資産 売却目的保有の非 IFRS 仕入債務 負債のうち営業活動に関わるもの 負債のうち財務活動に関わるもの 処分グループ負債 事
1.(2) 非継続事業 - 処分グループについて 処分グループとは 一度の取引で一緒に売却や他の手段で処分される資産およびそれに関連する負債のグループである (IFRS 5) 具体的には 1 子会社の場合 ( 連結 ): 会社自体が処分グループとなる 子会社 B/S 資産 負債 資本 連結消去仕訳 子会社 B/S ( 連結消去後 ) 資産 連結消去後の会社単位の資産 負債が把握できることが必須要件 負債 連結 連結財政状態計算書 継続事業資産 非継続事業資産 継続事業負債 非継続事業負債 資本 2 事業部 営業地域の場合 ( 単体 ): 該当する部門が処分グループとなる ( 部門別 B/S P/L が作成されている前提 )
1.(2) 非継続事業のシステム対応 部門単位の非継続事業対応 1 継続 / 非継続事業を区別して表示できることが要件 財務諸表 残高データ 2 そのためには継続 / 非継続事業を残高データで区別できること 取引データ 3 変更があった場合の過年度遡及対応が取引データで可能であること 上記を実現する方法は下記の 2 案が考えられる 対応方針 ( 案 ) システム対応 (SAP の場合 ) 過年度遡及対応備考 継続事業 / 非継続事業を勘定科目で区別する 勘定コードの追加 財務諸表バージョンの変更 継続 非継続の変更があった場合は勘定振替仕訳を行う 事業の分類が大まかで非継続事業への変更の頻度が少ない場合に有効 継続事業 / 非継続事業を部門の種別で区別する 組織マスタの区分に事業の概念を追加 ( セグメント 機能領域等の項目を使用 ) し 継続 / 非継続の判定を行う 財務諸表はレポートペインタを用いて継続 / 非継続を区別して出力する 継続 / 非継続事業の区分を変更する ( ただし 事業の分割や変更がある場合の過年度の修正は困難 ) 事業の分類が詳細で非継続事業への変更の頻度が多い場合に有効
1.(3) 財務諸表の表示 - キャッシュフロー計算書 直接法キャッシュフローの作成について 営業債権 営業債務 減価償却費 等 間接法では営業 CF は売掛金 買掛金 減価償却費等から計算して導き出す 間接法キャッシュフロー計算書 営業 CF 投資 CF 財務 CF キャッシュフローから包括利益への調整表 B/S P/L 現行 調整表 直接法では営業 CF も入出金の流れを元に作成する 入出金データ 投資 CF 財務 CF については現状で入出金ベースで作成している 直接法 CF 直接法キャッシュフロー計算書 営業 CF 投資 CF 財務 CF 直接法 CF と貸借対照表 損益計算書の整合性を示すために新たに作成が検討されている IFRS? 営業活動の入出金の都度にキャッシュフロー計算上の属性を持たせるためにはシステム変更や業務運用上の負担が非常に大きいため 直接法 CF の作成要否は検討中
1.(3) 財務諸表の表示 - 損益項目の性質別開示 機能別分類 損益計算書でどの項目に属するかによって分類する 例 ) 減価償却費のうち 製造設備に関わるものは売上原価 管理部門で発生するものは販売費および一般管理費性質別分類 損益計算書の項目によらない費目によって分類する 機能別分類 性質別分類 製造原価 - 労務費 100 製造原価 - 減価償却費 400 労務費 300 販管費 - 労務費 200 減価償却費 700 販管費 - 減価償却費 300 システム対応する場合は 費目 属性で両方の表示が可能な仕訳データの持ち方が必要 非継続事業の費用については遡って分離表示できるようにする仕組が必要