眼底カメラ 診療画像検査学
眼底カメラの特徴 眼底カメラは 瞳孔を通して眼底を照明 撮影し 血管の走行などから疾患を診断する方法 * 散瞳 ( 瞳孔を開く ) させて撮影を行う 眼病や生活習慣病 ( 高血圧 糖尿病 脳梗塞 高脂血症 ) などに起因する眼底画像の変化によりそれらの合併症が判断できる 散瞳剤を用いた散瞳型眼底カメラと自然散瞳を利用した無散瞳型眼底カメラがある
散瞳型 散瞳型と無散瞳型 診療放射線技師は撮影できない 眼底全域を撮影できる 散瞳剤を点眼して散瞳させる 片眼の撮影時に縮瞳が起きないので 連続撮影が可能となる 検査終了後も散瞳状態が持続するため 車の運転等の制限が生じる 無散瞳型 診療放射線技師も撮影が可能 眼球後局部に限定される 自然散瞳 ( 暗所にて待機 ) を利用して散瞳させる 片眼の撮影時に縮瞳が起きるので 連続撮影が不可能となる
撮影の方法 ( 無散瞳型 ) 散瞳 ( 瞳孔が開いた ) 状態にする ( 散瞳型と無散瞳型では散瞳させる方法が異なる ) 赤外線を照明に用い位置合わせを行う ( 赤外線を用いることで縮瞳することなく位置合わせが可能 ) ストロボ光を用いて撮影を行う ( ストロボを用いることで両眼共に縮瞳する ) 10 分程度時間をおいてもう片方を撮影する ( 両眼の撮影が基本となっている ) ( 散瞳型の場合は 連続撮影が可能 )
眼底の解剖
おさえておきたい画像解剖 視神経乳頭 中央にくぼみがあり 動静脈が出入りする 鼻側に位置する 黄斑 中心に中心窩があり 耳側に位置する 動静脈 静脈は動脈に比べ 太く暗い 動脈は終動脈で吻合がない
三日月状アーチファクト アーチファクト 被検眼と眼底カメラの対物レンズの位置関係が適切でない場合に生じる ( 上下左右を適正な位置にする必要あり ) 画像は被検眼が左にずれた ( アライメント不良 ) 画像で ずれた方向に三日月状の強い反射が現れている
フレアアーチファクト アーチファクト 白内障手術で眼内レンズ挿入が行われた患者に眼底カメラを実施すると レンズの縁がフレアとなって写りこむアーチファクトがしばしば発生する ( フレアの意味 ) 光学器械で レンズなどによって反射される光線が映像面に重なり 不正確な像を結ぶ現象
網膜 ( 中心 ) 動脈閉塞症 網膜中心動脈は乳頭上で分岐して 4 本の網膜動脈分枝になる 中心動脈が閉塞すると分枝動脈の血流がなくなるので 4 本の分枝動脈は糸のように細くなり 分節状の血柱がゆっくり流れていくのが観察される また網膜は乏血性浮腫になり 乳白色を呈する しかし中心窩を中心に直径 400μm の範囲は網膜血管がないので その部のみ正常な色調が保たれる 眼底写真ではまわりの乳白色の網膜の中央の黄斑中央の赤さが目立って見えるため 桜実紅斑 cherry red spot と呼ばれる 分枝動脈が閉塞するとその分枝のみが細くなり 還流領域が乳白色になる
網膜 ( 中心 ) 静脈閉塞症 網膜静脈閉塞症も網膜中心静脈閉塞症と網膜静脈分枝閉塞症に分けられる 網膜中心静脈が閉塞すると静脈分枝の血流は中心静脈に還流できないので眼底写真で見られる全ての分枝静脈が拡張 蛇行し 網膜出血が見られる 出血より虚血が強いこともある 虚血を示す所見として綿花様白斑が見られる 分枝静脈閉塞の場合には閉塞した静脈の拡張 還流領域の出血や綿花様白斑が見られる 分枝静脈閉塞はほとんどが動静脈交叉部で静脈が硬化した動脈に圧迫され あるいは絞抱されて 細くなった管腔に血栓が生じて発症する
急性骨髄性白血病 白血病ではドーナツ状の出血 ( ロート斑 ) がみられる P: 網膜前出血 CW: 綿花様白斑 R: ロート班 ( ドーナツ状の出血 )
視神経萎縮 視神経萎縮は 様々な病気が進行してあらわれ 視神経線維を構成している軸索や髄鞘は萎縮し消失する 視神経線維は外界から取り入れた刺激を脳の中枢に伝え視機能を果たしているため これが萎縮消失してしまえば 視機能は果たせなくなり 視力の減退や視野の縮小などが主な症状としてあらわれる 1 2 3 4 梅毒 頭蓋低骨折 脳腫瘍 内頸動脈瘤 外傷による視神経管骨折 遺伝家族性視神経萎縮などが原因で起こる単性純視神経萎縮 乳頭炎 視神経炎 うっ血乳頭などが原因で起こる炎性視神経萎縮 ビタミン欠乏 タバコ アルコール中毒などによる軸性視神経炎のあとの軸性視神経萎縮 緑内障のため視神経が圧迫されて起こる緑内障性萎縮 などがある
加齢黄斑変性症 眼底の網膜の中心部を黄斑といい 視力が最もでる大事な部分 黄斑下の脈絡膜に 加齢によって新しい血管 ( 脈絡膜新生血管 ) ができる病気を加齢黄斑変性症という 新しくできる血管は未熟なため強い水漏れや出血を起こし易く 水漏れや出血が黄斑に起こった場合に視力が著しく低下する
網膜剥離 網膜がはがれることを網膜剥離という 網膜色素上皮細胞と神経網膜の接着は弱いので 何らかの原因で神経網膜が網膜色素上皮細胞からはがれて 硝子体の中に浮き上がってしい網膜剥離をきたす 網膜剥離は 裂孔原性網膜剥離と呼ばれる網膜に裂孔を伴うものが一般的
糖尿病の合併症 糖尿病の合併症として 糖尿病性網膜症がある 初期の網膜症では 自覚症状がでない 小血管障害を生じ 画像上に小血管瘤 小さいしみ状 点状の出血 網膜の浮腫と脂質代謝の異常物質が沈着し 網膜に硬性白斑 ( リポイド沈着 ) がみられる 糖尿病網膜症 糖尿病網膜症の分類 網膜新生血管の増殖の有無によって非増殖 ( 単純網膜症 背景網膜症とも呼ばれる ) 前増殖 増殖に分ける Davis の分類が多用される 1) 非増殖糖尿病網膜症 2) 前増殖糖尿病網膜症 3) 増殖糖尿病網膜症 糖尿病性網膜症の単純型 ( 画像 )
蛍光眼底造影検査 血液の流れの状態や 通常の眼底検査では発見できない病変の状態を詳しく調べることを目的としている 糖尿病網膜症や加齢黄斑変性症の診断には欠かせない検査 また 網膜の血管から血液の成分が漏れているかどうか 漏れていればその場所はどこか といったことも判定できる
蛍光眼底造影検査 造影法 腕の静脈から色素 ( フルオレセインまたインドシアニングリーン ) を注射しながら 眼底カメラで網膜の血管の連続写真をとる 血液に入った色素は蛍光を発するので フィルターを通すと白く写る 毛細血管が詰まっている部分は暗く写るため 正常な部分とはっきり区別することができる 異常な場合に疑われる病気糖尿病性網膜症 加齢黄斑変性症 網膜血管梗塞 ぶどう膜炎など
読影の基礎 問 1 眼底写真像について誤りはどれか ( 出題ミス : 解答は 1 つしかない ) B C A 1. 画像は左眼の像を示す 2. A は黄斑部を示す 3. B は視神経乳頭を示す 4. C は網膜動静脈を示す 5. 緑内障では黄斑部の異常が見られる
緑内障 一般的に緑内障は 眼圧が上昇することで視神経が障害される疾患とされ 眼圧を下降させることが治療法として有効とされている しかし 正常眼圧緑内障もあり必ずしも眼圧上昇だけが原因であるとはいえない 緑内障によって障害を受けた視神経乳頭では 陥凹拡大がみられるようになる 眼底写真により視神経乳頭の陥凹拡大を判定することで緑内障の診断ができる
緑内障の眼底写真 視神経乳頭は丸く少し赤み ( 毛細血管 ) があり 正常でも陥凹部が白く描出される 緑内障の画像では白い部分が拡大 ( 視神経乳頭陥凹拡大 ) し赤みが消えている 正常 緑内障
読影の基礎問 2 眼底写真 ( 無散瞳 ) について誤りはどれか 1. 三日月状アーチファクトはカメラの左右位置がズレた場合に生じる 2. 有孔ミラーの外縁で反射した光が網膜を照射する 3. 有孔ミラーの内側を通過した光が CCD を照射する 4. 網膜全域を撮影する 5. ピント合わせには赤外光 撮影にはキセノンランプのフラッシュ光を使用する
三日月状アーチファクト 被検眼と眼底カメラの対物レンズの位置関係が適切でない場合に生じる ( 上下左右を適正な位置にする必要あり ) 画像は被検眼が左にずれた ( アライメント不良 ) 画像で ずれた方向に三日月状の強い反射が現れている
眼底カメラの構造 1 照明光はリングスリットによりドーナツ状の光となり 有孔ミラーにより曲げられ網膜を照射する 2 網膜の反射光は有孔ミラーの中心を通過して撮影用カメラに届く
読影の基礎問 3 眼底写真 ( 無散瞳 ) について誤りはどれか 1. 写真はフレアが描出されている 2. フレアは ピント調節が不正確で辺縁が未露光の画像が描出される 3. カメラの前後位置がズレた場合 フレアが描出される 4. 左右の眼底を連続して撮影する 5. 撮影の画角は約 45 が一般的である
フレアアーチファクト 光源の反射がフレアとなり映り込む現象 1. 前後のアライメント不良により 画像の周囲にフレアが描出される 2. 白内障手術で眼内レンズ挿入が行われた患者に眼底カメラを実施すると レンズの縁がフレアとなって写りこむ ( フレアの意味 ) 光学器械で レンズなどによって反射される光線が映像面に重なり 不正確な像を結ぶ現象 1 2
撮影画角 現行の装置は 撮影画角 45 のものが多い 撮影画角 60 の広角のものもある レンズ 撮像素子 撮影画角
国家試験問題 問眼底写真を示す A はどれか 1. 虹彩 2. 黄斑部 3. 中心窩 4. 瞳孔 5. 水晶体
国家試験問題 問眼底写真を示す 誤っているのはどれか 1. A は視神経乳頭である 2. B は黄斑部である 3. 中心窩は黄斑部に存在する 4. 太く暗赤色に描出されているのが静脈である 5. 写真は右目である
国家試験問題 問無散瞳眼底写真撮影で正しいのはどれか 2つ選べ 1. 撮影前に眼振の有無を確認する 2. 両眼を閉じた状態で眼の位置合わせを行う 3. 始業前に撮影装置の赤外線強度分布を点検する 4. 眼瞼下垂のある患者では指で上眼瞼を挙上しながら撮影する 5. 撮影後 2 時間程度はコンタクトレンズの装着を避けるように指示する
1. 撮影前に眼振の有無を確認する 眼振とは 眼球の異常な動きのことで眼底カメラの検査時に眼振があると正確な位置合わせが困難であったり 安定した視野が得られないので検査前に眼振の有無を確認する必要がある 2. 両眼を閉じた状態で眼の位置合わせを行う 開眼させて位置合わせ 撮影を行う 3. 始業前に撮影装置の赤外線強度分布を点検する 1 機器の動作確認 電源を入れ各部が正しく動くか確認 ( ストロボは発光するか カメラは装着できているか 操縦管の機能に不都合はないか シャッターボタンは作動するかなど ) 2 レンズの掃除 ( 汚れ 傷があると写り込み読影の妨げになる ) 3 撮影光量 ( ストロボ発光量 ) の設定
4. 眼瞼下垂のある患者では指で上眼瞼を挙上しながら撮影する 上まぶたを上げる筋肉である眼瞼挙筋がうまく働かないために 上まぶたが上がりづらく 垂れ下がったままの状態を眼瞼下垂 ( がんけんかすい ) という 指で開眼させ撮影をする 5. 撮影後 2 時間程度はコンタクトレンズの装着を避けるように指示する 撮影前にコンタクトレンズを外すが 撮影後は装着をしても構わない
国家試験問題 問 無散瞳眼底カメラによる検査で正しいのはどれか 1. 撮影画角は 90 度である 2. 撮影光には赤外線を使用する 3. 眼底後極部の観察が可能である 4. 記録媒体として光電子増倍管を用いる 5. アーチファクトとしてミラージュ現象がある
国家試験問題問無散瞳眼底写真撮影で正しいのはどれか 1. 眼瞼部をアルコール消毒する 2. 画像はシャウカステンで観察する 3. 撮影終了直後から車の運転を許可してよい 4. 眼底出血が疑われる場合の撮影は禁忌である 5. ハードコンタクトレンズは装着したまま撮影できる
無散瞳眼底カメラ撮影で眼底の位置合わせ に用いられるのはどれか 1. 紫外線 2. 青色光 3. 黄色光 4. 赤色光 5. 赤外線
無散瞳眼底カメラのアーチファクトはどれ か 2 つ選べ 1. フレア 2. ミラー像 3. ストリーク 4. ラテラルシャドー 5. 三日月状
眼底撮影について正しいのはどれか 1. 診療放射線技師が撮影できるのは散瞳剤使用の場合である 2. 無散瞳では撮影視野に限界がある 3. 無散瞳では短時間に連続撮影するのに適する 4. 縮瞳しているときに撮影する 5. 乳頭と黄斑とを重ねて撮影する
眼底撮影について正しいのはどれか 1. 中心窩から動脈と静脈とが出入りする 2. 中心窩は視神経乳頭内にある 3. 散瞳薬は静脈注射する 4. 白血病ではドーナツ状の出血がみられる 5. 網膜中心動脈が閉塞されると視神経乳頭だけ描出される
課題 問題 眼底写真を示す 誤っているのはど A B れか 1. Aは視神経乳頭である 2. Bは黄斑部である 3. 中心窩は黄斑部に存在する 4. 太く暗赤色に描出されているのが静脈である 5. 写真は右目である * 問題を解く * シェーマを描き解剖名を記入する 記載事項 1. 眼底カメラの構造について記載する 2. その他に調べた内容があれば記載する