HSE: 石油生産現場におけるゼロフレア及び省エネ化 2010 0 年 4 月 22 日 JOGMEC 調査部伊原賢 1 はじめに 石油生産現場における CO2 濃度の削減策として ゼロフレア と 生産操業の省エネ化 省エネの推進やエネルギーシステムの高効率化 天然ガスなどの低炭素エネルギー源へのシフト 原子力や風力 太陽光などの再生可能エネルギー 森林の CO2 吸収といった技術的方策と 炭素 / 環境税や排出権取引など市場原理を機能させる経済的かつ政策的方策が検討 CO2 排出削減対策 石油生産現場におけるゼロフレア及び省エネ化 では 図に赤枠で囲んだ4つの CO2 排出削減対策 に取り組み 2
話のポイント 石油開発業界の環境意識と環境対策の現状 ゼロフレアへの適用技術の動向 省エネ技術の動向 ゼロフレアのケーススタディ 省エネのケーススタディ ゼロフレア及び省エネ化への取り組み方 まとめ 3 別添カラー資料 1あり石油開発業界の環境意識と環境対策の現状 1 世界のガスフレアの多い地域 原油生産が増えるとフレア量は増える 生産が減退するとフレアは減る傾向 随伴ガスの販売と利用市場がない場合 止むを得ずフレア 中東 アフリカ西部 ロシア中央部がフレア量の多い地域 4
石油開発業界の環境意識と環境対策の現状 2 世界のガスフレア量の推移 世界の E&P 業界のフレア率 フレア量は年 150Bcm (5.297Tcf) レベルで 94 年より16 年間あまり変化ないが 石油の生産効率が上がるに伴い 2006 年より減少傾向 E&P 業界のフレア率は年々減少しています (7.5m 3 / バレル @1994 年 6m 3 / バレル @ 2008 年 ) この傾向は続くと期待 5 石油開発業界の環境意識と環境対策の現状 3 石油生産現場での Energy Intensity( エネルギー消費率 ) に影響を与えるイベント エネルギー消費率は 現場での生産開始から終了までの間に徐々に増え続け 色々なイベントによって上げ下げの効果 世界の石油天然ガス生産量 (2008 年 IEA) は6710 6,710 石油換算百万トン ( 石油 4210 4,210 百万トン 天然ガス2,500 百万トン ) 生産量の10% に相当する671 石油換算百万トンが 石油や天然ガスの供給チェインで消費されるエネルギー 671 石油換算百万トンの30% に相当する201 石油換算百万トン ( 石油 天然ガス 電気 熱の合計 ) が上流事業エネルギー消費率は 投入したエネルギー ( 燃料ガス 軽油 電気 ) を 出荷される石油 天然ガス で除した指標石油生産現場でのエネルギー消費率は3% 3のエネルギーを投入して100のエネルギー ( 原油と天然ガス ) を取り出し 6
ゼロフレアへの適用技術の動向 1 随伴ガスの現金化 ( マネタイズ ) 技術 市場への距離 と エネルギー効率 からの比較例 マネタイズ技術の住み分けマップ メタン量 と 市場への距離 7 ゼロフレアへの適用技術の動向 2 随伴ガス生産の削減技術 坑井オペレーションの自動化 ガス井休止に用いる泡 / 界面活性剤とジェル Inflow Control Device(ICD) 別添カラー資料 2 あり 上部ガス層からの生産くい止め例 ICD による水平坑井内への流体流入分布の均一化 8
省エネ技術の動向 1 炭化水素の排出削減 連続フレア源の除去年間 3.5Tcfもの天然ガスが 不可避な排出とベント / 放出 にて失われています ( 世界の天然ガスの年間消費量 106.6Tcf @2008 年 ) 不可避な排出の削減 ライン材質の破裂 不可避な排出個所の検知法 ( 左 : 超音波法 右 : 光学エミッション技術 ) 9 省エネ技術の動向 2 エネルギー消費の削減 機器の選定と最適化 石油生産現場での発電 再生可能エネルギー資源( 風力や太陽光 ) の利用 坑井内や海底における産出流体の分離や処理 北海 Beatrice 油田における風力発電 5MWの風力タービン発電タワー 2 基にて発電された電気が 海底ケーブルを通り Beatrice Alpha プラットフォームまで 送電されプラットフォームで必要なエネルギーの3 分の1をまかなう 10
省エネ技術の動向 3 エネルギー保存 ガスタービンの燃料多様化 熱交換器 配電ノルウェーのMongstad 製油所における省エネプロジェクト 電力を洋上の2プラットフォーム (Troll A, Gjoa) へ供給 電力を陸上のKollsnesガス処理プラントへ供給 主要機器は ガスタービン スチームタービン 熱交換器 発電量はガスタービンから 280MW, 排熱から350MW エネルギー効率は70~80% と高くなり CO2の排出削減 11 ゼロフレアのケーススタディ 1 ロシアの Komsomolskoye 油田 ( コムソモルスク ) Rosneft 社の随伴ガス利用プログラム Rosneft 社の随伴ガスの利用形態の変化 12
ゼロフレアのケーススタディ 2 カタールのAl Shaheen 油田の位置と油田生産施設 CDM プロジェクトの実行前後での随伴ガスの利用形態 随伴ガスからの CO 2 削減予測 13 省エネのケーススタディ 1 北海の Cutter 洋上プラットフォーム ( モノタワー ) 北海南部の小規模なタイトガス開発 : 必要最小限な設備 ( 生産 計測 近隣施設までのフローライン ) 無人 ( 居住区なし ) 陸上から遠隔操作 トップデッキにヘリデッキッキッキなし モノタワー ( ジャケット構造なし ) トップデッキに太陽光パネルと風力タービンを設置し発電 (1.2kWの連続発電 CO2の排出なし 海底電力ケーブル不要 ) 2 年毎のメンテナンス 建造費 1.43 億ドル ( 従来型プラットフォームの約 40%) 操業費の削減 15 年間の生産予定 14
省エネのケーススタディ 2 カナダのオイルサンドプロジェクト Long Lake の位置とプロセス概念図 SAGD 改質 ガス化 コジェネ発電 天然ガス使用量の削減: 1バレルのPremium Sweet Crude oil (PSC) 生産に500cfの天然ガス必要 ( 通常のSAGDと改質では1,900cfの天然ガス使用 ) 閉鎖型の水循環 CO2の排出削減: ライフサイクルで1バレルのPSC 生産で0.15トンのCO2 排出と少ない 残渣の処理 : 鉛 水銀 ヒ素 ニッケル バナジウム クロム セレン 15 ゼロフレア及び省エネ化への取り組み方 39 名 ( オペレーター 18 名 サービス会社 10 名 政府 NGO6 名 コンサルタント 3 名 大学 2 名 ) へのインタビュー 1) 石油生産現場におけるゼロフレア及び省エネ化 の重要度: 80% 以上が重要と回答 2) 環境規制 戦略のトレンド : 55% がより厳しくなっていると回答 27% が規制は現状不十分と回答 残り18% は世界の地域毎にマチマチ 3) 京都プロトコルとCDMの重要性 : 70% が余り影響をうけないと回答 4) 石油生産現場におけるゼロフレア及び省エネ化 へ向かうモチベーション: 規制 33% 経済性 33% 規制と経済性 15% ガス利用 7% 会社の方針 7% 社会イメージ 5% 5)CO 2 ガスの排出源となる機器 / 要因 : ガスフレア26% ポンプ22% コンプレッサー 19% ガスタービン15% その他 18% 6)CCS 以外で排出削減に寄与する技術 : 既存機器のエネルギー効率向上 52% 随伴ガスの現金化 22% 炭化水素のロス削減 14% 随伴ガスの現場利用 12% 7) 排出削減に寄与する技術の課題 : 既存インフラの整備コスト 排出削減の必要性 ガス価 ガス性状 ローカルなガス市場 8) 排出削減に貢献する会社 : Shell23% Statoil16% BP16% Chevron10% ConocoPhillips10% 以下 Total, Chesapeake, Petrobras, ExxonMobil, Eni が各々 5% 16
まとめ 温室効果ガスの排出削減という問題解決に有用なコンセプトとツールに 石油の生産現場では ゼロフレア と 生産操業の省エネ化 が挙げられます この調査報告では そのツール適用に関して中心的な課題のいくつかの本質を考察し 解決の方向性を実例と共に解説 石油生産現場におけるゼロフレア及び省エネ化 への取り組み方をインタビュー 1 石油生産現場におけるゼロフレア及び省エネ化 は80% 以上が重要と回答 2 環境規制 戦略のトレンドは55% がより厳しくなっているとの回答 3 京都プロトコルとCDMの重要性は70% が余り影響をうけないと回答 複雑な CDMスキームがその背景 4 ゼロフレア及び省エネ化 へのモチベーションは規制と経済性が 80% 以上占める結果 5CCS(CO 2 地下貯留 ) 以外で排出削減に寄与する技術の対象としては 既存機器のエネルギー効率向上 52% 随伴ガスの現金化 22% 6 排出削減に寄与する技術の課題は 既存インフラの整備コスト 排出削減の必要性 ガス価 ガス性状 ローカルなガス市場 7 排出削減に貢献する会社としては IOC が中心的役割 17 ナイジェリア : フレア現場でクッキーを焼く女 ( 出所 : GGFR) 18
詳細は JOGMECホームページ 石油 天然ガス資源情報 にアクセスいただければ幸いです http://oilgas-info.jogmec.go.jp/ 19