補論 戸建注文住宅と消費税の影響度に関する考察 25 戸建注文住宅の顧客実態調査 における顧客の住宅取得の実態や消費税の圧迫感の調査結果に基づき 消費税引き上げの場合にどのような影響があるのかについて 以下の 3 つの視点から 可処分所得などの外部データも併せて詳細な分析と考察を試みた 1 消費税引き上げの場合 どのような住宅取得層が最も影響を受けるのか? 2 消費税引き上げの場合 良質な住宅の供給にどのような影響を与えるのか? 3 金利上昇期の消費税引き上げは 住宅取得にどのような影響を与えるのか? 分析 考察の前に 新設住宅着工数の推移について消費税率の変化の視点から概観すると 以下のとおりである ( 図表 1) 平成 9 に消費税率が 3% から 5% へ引き上げられたが この時点以降は新設住宅着工数は 持家 分譲 賃貸 のいずれも大きく減少した その後 分譲 や 賃貸 については 平成 11 からの大型ローン減税の効果もあって 底を打って横ばいないし微増傾向にあり 最近ではそれぞれ年 35 万戸 45 万戸の水準となっている しかしながら 持家 については 一時的に大型ローン減税の効果もみられたものの大きく減少し 最近では 37 万戸の水準に留まっている 新設住宅着工数は景気動向や金利水準などにも影響を受けるが 平成 9 の大きな減少に現れているように 消費税の影響は大きいことがわかる それゆえ ここでは戸建注文住宅の顧客層における消費税の引き上げによる影響を分析 考察する 図表 1: 新設住宅着工数の推移 ( 用途別 ) ( 千戸 ) 7 65 消費税 3% 消費税 5% 6 ( 平成 16 ) 55 5 45 4 ( 平成 5 ) 住宅着工 151 万戸住宅投資額 25.5 兆円民間住宅 /GDP 5.3% 一人国民所得 3,14 千円 住宅着工 119 万戸住宅投資額 19.1 兆円民間住宅 /GDP 3.7% 一人国民所得 2,826 千円 持家 賃貸 35 分譲 3 25 2 平成 5 平成 6 平成 7 平成 8 平成 9 平成 1 平成 11 平成 12 大型ローン減税 平成 13 平成 14 平成 15 平成 16 持家 537 581 551 636 451 438 476 438 377 366 373 367 賃貸 652 574 564 616 516 444 426 418 442 455 459 467 分譲 29 378 345 352 351 282 312 346 344 316 334 349 ローン減税縮小 ( 資料 ) 国土交通省 住宅着工統計 1
テーマ 1 消費税引き上げの場合 どのような顧客層 ( 住宅取得層 ) が最も影響を受けるのか? (1) 住宅取得方法別 ( 建て替え 買い替え 土地 + 新築 1 ) にみた顧客属性 最近の戸建注文住宅の顧客属性の特徴として 世帯主の若年化 と 一次取得層の増加 がある これは 顧客属性を住宅取得方法別 ( 建て替え 買い替え 土地 + 新築 ) にみても明らかである 一次取得層である 土地 + 新築 は 二次取得層である 建て替え や 買い替え と比較すると 以下の特徴がある ( 図表 2) 全体の約 4 割 (38.9%) と最も多くを占める 世帯主年齢(37.8 歳 ) は最も若く 世帯人数 (3.4 人 ) も最も少ない 世帯年収(854 万円 ) は最も低い 延床面積(131 m2 ) は最も狭い 建築費(2,97 万円 ) は最も低い反面 土地代 (1,929 万円 ) は最も高く その合計である住宅取得費 (4,836 万円 ) はかなり高い よって 住宅取得費に占める建築費の比率 (64.1%) は最も低い 住宅取得費の世帯年収倍率(6.32 倍 ) は最も高い 自己資金の額(1,373 万円 ) と比率 (26.9%) は最も低いが 贈与額比率 (5.2%) は高くはなく 借入金の額 (3,161 万円 ) と比率 (68.%) は最も高い 以上のことから 一次取得層である 土地 + 新築 は顧客層として最もシェアが大きいにもかかわらず 消費税引き上げの影響を最も受ける可能性が高いと考えられる 住宅取得方法 図表 2: 住宅取得方法別にみた顧客属性の平均像 二次取得層 一次取得層 顧客属性建て替え買い替え土地 + 新築 サンプル数の比率 35.9% 11.% 38.9% 世帯主年齢 49.8 歳 45.1 歳 37.8 歳 世帯人数 4.1 人 3.8 人 3.4 人 世帯年収 891 万円 973 万円 854 万円 延床面積 156 m2 14 m2 131 m2 建築費 ( 1) 3,648 万円 (98.6%) 3,52 万円 (72.8%) 2,97 万円 (64.1%) 土地代 ( 1) 93 万円 ( 1.4%) 1,798 万円 (27.2%) 1,929 万円 (35.9%) 住宅取得費 3,741 万円 4,85 万円 4,836 万円 住宅取得費の世帯年収倍率 5.24 倍 5.79 倍 6.32 倍 自己資金 ( 2) 1,858 万円 (48.8%) 1,925 万円 (32.5%) 1,373 万円 (26.9%) 贈与額 ( 2) 88 万円 ( 2.9%) 贈与なし 87.3% 247 万円 ( 7.5%) 贈与なし 66.8% 267 万円 ( 5.2%) 贈与なし 78.8% 借入金 ( 2) 1,776 万円 (48.3%) 2,65 万円 (6.1%) 3,161 万円 (68.%) ( 注 ) 土地取得方法の 新たに借地 (1.5%) と 相続 / 親の土地 (11.1%) は除く ( 全サンプル数 3,634) ( 1) ( ) 内の % は住宅取得費に占める比率 ( 2) ( ) 内の % は住宅取得資金に占める比率 1 土地 + 新築 は 従前住宅とは別に 既に購入していた土地や新たに購入した土地に新築 の略 2
(2) 住宅取得方法別 ( 建て替え 買い替え 土地 + 新築 ) にみた世帯年収倍率 住宅取得費の世帯年収倍率は 建て替え や 買い替え ( 二次取得層 ) に比べて 土地 + 新築 ( 一次取得層 ) で 5 倍未満が少なく 5~1 倍未満がかなり多い ( 図表 3) 都市圏別にみても この傾向は変わらないが 全体に地方都市圏で倍率が低い ( 図表 4) 図表 3: 住宅取得パターン別にみた 住宅取得費の世帯年収倍率 の分布 25 建て替え ( 平均 5.2 倍 ) 2 買い替え ( 平均 5.8 倍 ) 土地 + 新築 ( 平均 6.3 倍 ) 15 占率 (%) 1 5 2 倍未満 2~3 倍未満 3~4 倍未満 4~5 倍未満 5~6 倍未満 6~7 倍未満 7~8 倍未満 8~1 倍未満 1~15 倍未満 15 倍以上 住宅取得費の世帯年収倍率 ( 倍 ) ( 注 ) 各サンプル数は 全サンプル数 3,634 中 建て替え 1,34 買い替え 41 土地 + 新築 1,415 である 凡例の ( ) 内の数値は それぞれの平均倍率を示す 図表 4: 都市圏別 住宅取得パターン別にみた 住宅取得費の世帯年収倍率 の平均値 7 6.77 6.73 東京圏 (5.8 倍 ) 住宅取得費の世帯年収倍率 ( 倍 ) 6 5 6.21 5.94 5.89 5.36 5.29 5.12 5.9 4.96 6.38 5.64 名古屋圏 (5.7 倍 ) 大阪圏 (5.9 倍 ) 地方都市圏 (5.5 倍 ) 4 建て替え買い替え土地 + 新築 ( 注 ) 凡例の ( ) 内の数値は それぞれの平均倍率を示す 3
(3) 土地 + 新築 ( 一次取得層 ) の世帯年収別にみた世帯年収倍率 一次取得層である 土地 + 新築 については その大半を占める若年層 特に 世帯年収 5 万円 では 住宅取得費の年収倍率 は8 倍程度が現実的な限界と考えられる ( 図表 5) したがって 住宅取得費は 4, 万円 ( 建築費 65%+ 土地代 35%: 図表 2 参照 ) 程度が限界と推定される ただし 世帯年収 5 万円前後の世帯には 直接的な収入は少ないものの手元資金の豊富な高齢層が含まれるため 世帯年収倍率の高い世帯群が存在することに留意する必要がある 図表 5: 世帯年収別にみた 土地 + 新築 の世帯年収倍率の分布 16 14 高齢層 12 住宅取得費の年収倍率 ( 倍 ) 1 8 6 4 若年層 8. 倍 平均 6.3 倍 2 平均 854 万円近似曲線 y = -2.5594Ln(x) + 23.418 5~6 1, 1,5 2, 2,5 (n=1,43) 世帯年収 ( 万円 ) (4) 可処分所得の状況 勤労世帯の可処分所得は 2 年以降 微減傾向にある ( 図表 6 1) 世帯主 3 歳 世帯年収 5 万円では 可処分所得は 3~35 万円 / 月と推察される ( 図表 6 23) 図表 6: 勤労世帯の可処分所得の状況 ( 月当たり平均値 ) 1 可処分所得の経年変化 2 年 21 年 22 年 23 年 24 年 25 年 429,338 円 419,55 円 49,619 円 41,787 円 45,591 円 398,856 円 2 世帯主年齢別にみた可処分所得 (25 年 ) 2 歳代 3 歳代 4 歳代 5 歳代 6 歳代 7 歳代 338.929 円 443,7 円 534,68 円 548,142 円 427,845 円 397,268 円 3 世帯年収別にみた可処分所得 (25 年 ) ~273 ~356 ~431 ~56 ~583 ~662 ~757 ~881 ~1,73 1,73~ 176,565 234,443 273,67 31,126 356,742 391,798 436,144 492,393 567,936 749,342 ( 注 ) 上段 : 世帯年収 ( 万円 ) 下段: 可処分所得 ( 円 ) ( 資料 ) 総務省 家計調査年報 4
(5) 消費税の圧迫感 消費税の資金計画への圧迫感を世帯主年齢別にみると 3 歳代の圧迫感が強く 高齢になるほど弱い ( 図表 7) 若年層の代表的な属性である 3 歳代 や 世帯年収 5~7 万円 について経年変化をみると 多少の変動はあるものの 2 以降なお根強い消費税の圧迫感がある ( 図表 8) 図表 7: 住宅消費税の資金計画への圧迫感 ( 世帯主年齢別 ) ( 世帯主年齢 ) かなり圧迫感あり少し圧迫感あり (%) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 全体 5 33.6 34.3 2 歳代 28.5 44.9 3 歳代 37.1 32.7 4 歳代 31.5 33.7 5 歳代 31.6 35.6 6 歳代 29.6 34.9 図表 8: 住宅消費税の資金計画への圧迫感の経年変化 (3 歳代 ) かなり圧迫感あり 少し圧迫感あり 45.1 33.3 1 2 3 4 43.7 43.5 43.1 42.4 32.9 32.8 38.2 35.2 5 37.1 32.7 (%) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ( 世帯年収 5~7 万円 ) かなり圧迫感あり 少し圧迫感あり 44.5 32.5 1 4.1 31.4 2 43.2 3.2 3 42.8 38.7 4 41.4 36.6 5 34.7 35.1 (%) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 5
(6) 住宅取得資金に占める自己資金比率 ( 世帯年齢別 世帯年収別 ) 世帯主年齢や世帯年収があがると 住宅取得資金に占める自己資金比率は上昇する ( 図表 9 1) 若年層 (35 歳未満 ) の自己資金比率は 2% 未満であり 若年層での消費税の圧迫感の強さは 年収要因もあるが 自己資金比率の低い点が考えられる ( 図表 9 12) 高齢層 (65 歳以上 ) の世帯年収は少ないが 手元資金が豊富なため 自己資金比率は 8% を超える ( 図表 1) 図表 9: 世帯年収と住宅取得資金に占める自己資金比率 ( 世帯年齢別 ) 1,2 1, 世帯年収自己資金比率 923 1,13 1,83 1,63 975 82.7 91.8 1 8 世帯年収 ( 万円 ) 8 6 4 2 476 619 14.3 13.8 693 19.6 811 24.9 31.3 39. 45.1 6.4 74.9 783 715 6 4 2 自己資金比率 (%) 25 歳未満 3 歳未満 35 歳未満 4 歳未満 45 歳未満 5 歳未満 55 歳未満 6 歳未満 65 歳未満 7 歳未満 7 歳以上 (n=3,634) 世帯主年齢 図表 1: 自己資金と住宅取得資金に占める自己資金比率 ( 世帯年収別 ) 自己資金 ( 万円 ) 4, 3, 2, 1, 自己資金自己資金比率 43.5 27.1 1,568 1,1 33.2 1,369 41.4 1,947 48.4 2,511 3,955 5.2 6 4 2 自己資金比率 (%) (n=3,634) 5 万円未満 7 万円未満 1, 万円未満 1,5 万円未満 2, 万円未満 2, 万円以上 世帯年収 ( 万円 ) 6
(7) まとめ 最近の戸建注文住宅の顧客には 世帯主の若年化 と 一次取得層の増加 が顕著である 一次取得層である 土地 + 新築 の住宅取得費の世帯年収倍率は最も高く 顧客層として最もシェアが大きいにもかかわらず 消費税引き上げの影響を最も受ける可能性が高いと考えられる その大半を占める若年層 ( 特に世帯年収 5 万円 ) では 住宅取得費の年収倍率 は8 倍が現実的な限度であり 住宅取得費は 4, 万円 ( 建築費 65%+ 土地代 35%) が限界と推定される 2 年以降 勤労世帯の可処分所得は微減傾向にある 世帯主 3 歳 世帯年収 5 万円では 可処分所得は 3~35 万円 / 月と推測される 消費税の圧迫感が強いのは 世帯主年齢 3 歳代 世帯年収 5~1, 万円未満 建築費 2,5 ~3, 万円である 若年層 (35 歳未満 ) の自己資金比率は 2 割であり 8 割は贈与金がなく 多くは借入金である (8) 若年層の住宅取得モデルによる住宅取得の可能限度額 ( 試算 ) 上記のまとめから平均的な若年層の住宅取得モデルが想定されるが 可処分所得と住宅ローン借入額 を加味して 現行消費税率での取得可能な世帯像と世帯年収倍率の限界値を試算してみる ( 図表 11) ( 住宅取得モデル ) 世帯年収 :5 万円 住宅取得費 :4, 万円 ( 土地代 1,4 万円 + 建築費 2,6 万円 ) 現行消費税率 :13 万円 ( 建築費 2,6 万円 @5%) ( ローン借り入れ可能額 ) 可処分所得 : 世帯年収 5 万円で 35 万円 / 月が勤労世帯の平均値 年間 42 万円 ローン : 金利 3% 3 年元利均等返済 ( 世帯年収による限度額あり ) ローン返済負担率 : 世帯年収の最大 35% 月返済額の最大値 :14.5 万円 ( 年収 5 万円 35%) 図表 11: 若年層の住宅取得可能限度額 金額 備考 世帯年収 5 万円 自己資金 69 万円 3~35 才の平均自己資金 2 割 住宅ローン借入額 3,44 万円 金利 3% 元利均等 3 年返済 ローン返済負担率 35%( 最大 ) 合計資金調達額 4,13 万円 住宅取得費 4, 万円 住宅 2,6 万円 + 土地 1,4 万円 住宅の消費税 13 万円 消費税 5% の場合 世帯年収の26% 住宅取得費の年収倍率 8 倍 世帯年収倍率の限界値 ( 推察 ) 1 住宅ローンを借り入れ可能額の最大とした場合 世帯年収倍率の限界は 8 倍である 2 月返済額 14 万 5 千円は可処分所得 35 万円の 41% を占める限界値である 7
消費税が現行 5% から8% に引き上げられた場合の試算 仮に消費税率が現行の 5% から例えば 8% に引き上げられると その消費税額は現行の 13 万円から 28 万円となり 若年層ではこの差額約 8 万円はローン借り入れができず 自己資金増加か世帯年収増加に依存せざるをえない 若年層がこの差額 8 万円を自己資金の積み上げで賄おうとすれば 1.5~2 年かかり その間は住宅取得時期が遅れることとなる ( 図表 12 から読み取れる3 歳代前半の自己資金積み上げ額は 年間平均 6 万円である ) このことから 金利上昇期においては消費税率の引き上げによる住宅取得時期の遅れは 若年層のマイホーム取得そのものを困難にすることが懸念される 図表 12: 自己資金と住宅取得資金に占める自己資金比率 ( 世帯主年齢別 ) 自己資金 ( 万円 ) 4, 381 3791 自己資金 3,5 自己資金比率 91.8 3, 2984 82.7 2,5 74.9 2445 2166 2, 195 6.4 1,5 1466 45.1 198 39. 1, 817 31.3 543 53 24.9 5 19.6 14.3 13.8 25 歳未満 3 歳未満 35 歳未満 4 歳未満 45 歳未満 5 歳未満 55 歳未満 (n=3,634) 世帯主年齢 6 歳未満 65 歳未満 7 歳未満 7 歳以上 1 8 6 4 2 自己資金比率 (%) 8
テーマ 2 消費税引き上げの場合 良質な住宅の供給にどのような影響を与えるのか? 次世代省エネ住宅の住宅性能表示の取得等級 世帯年収が上がると 次世代省エネ住宅の等級が上がる傾向にある ( 図表 13) 建築費が上がると 次世代省エネ住宅の等級が上がる傾向にある ( 図表 13) したがって 若年層が多い 土地 + 新築 ( 一次取得者 ) では 住宅取得費に占める建築費の割合が低い ( 建築費が低い ) ため 次世代省エネ住宅の住宅性能等級が低くなる 図表 13: 次世代省エネ住宅の住宅性能表示の取得等級 ( 世帯年収別 建築費別 ) 世帯年収 省エネ住宅の性能表示 等級 1 等級 2 等級 3 等級 4 平均等級 全体 5 9.3 4.2 23.7 43.7 2.64 5 万円未満 9. 4. 24. 41.1 2.53 5~7 万円未満 1.9 5. 22.6 41.6 2.55 7~1, 万円未満 9.8 3.8 24. 45.1 2.7 1,~1,5 万円未満 9.2 4.4 22.9 44.8 2.66 1,5~2, 万円未満 3.3 4.4 25.1 48.6 2.82 2, 万円以上 4.7 2.7 3.2 45. 2.81 建築費 省エネ住宅の性能表示 等級 1 等級 2 等級 3 等級 4 平均等級 全体 5 9.3 4.2 23.7 43.7 2.64 1,5 万円未満 63.6. 18.2 9.1 1.55 2, 万円未満 3.9 3.1 24.1 26.5 2.15 2,5 万円未満 12.8 6.8 24. 38.7 2.53 3, 万円未満 1.1 4.5 22.4 43.8 2.62 3,5 万円未満 4.7 4. 22.6 51. 2.85 4, 万円未満 6.9 1.5 28.6 43.5 2.7 5, 万円未満 3.9 3.7 22.4 49.1 2.75 5, 万円以上 4.9 2.9 26.1 42. 2.57 ( 推察 ) 1 消費税引き上げによる住宅予算の制約によって建築費の削減が進むことは 住宅の省エネ等級を引き下げることになり 省エネ配慮の少ない住宅数を増やすことにつながる これは 地球環境保全 ( とりわけ地球温暖化防止 ) に向けた政府施策に逆行する 2 省エネ配慮だけでなく 耐震性に優れ長期耐久性の高い住宅にすれば 建築コストは上がるため 消費税引き上げによる建築費の削減は良質な住宅ストックの蓄積にマイナスとなる 9
テーマ 3 金利上昇期の消費税引き上げは 住宅取得にどのような影響を与えるのか? 金利上昇による若年層の住宅取得能力の低下は 住宅ローン借入限度額の縮小を通じて 世帯年収倍 率の限界値を低下させる さらに 消費税の住宅ローン組み込みを阻害し 住宅取得費の削減ともなる そこで 金利 3% での住宅取得費の世帯年収倍率 8 倍が 金利が 4% や 5% と上昇した場合にはどのよ うな世帯年収倍率となるのか試算してみる ( 図表 14) 図表 14: 世帯年収 5 万円の場合 金利と住宅取得能力の関係 金利 3% 金利 4% 金利 5% 金利 3% と 金利 5% の差額 自己資金 69 万円 69 万円 69 万円 --- ローン借入額 ( 最大 ) 3,44 万円 3,4 万円 2,7 万円 74 万円 合計資金調達額 4,13 万円 3,73 万円 3,39 万円 74 万円 住宅取得費 4, 万円 3,545 万円 3,222 万円 778 万円 消費税率 5% 8% 8% --- 住宅消費税 13 万円 185 万円 168 万円 +38 万円 世帯年収倍率 8. 倍 7.1 倍 6.4 倍 --- ローン月返済額 14 万 5 千円 14 万 5 千円 14 万 5 千円 --- 注 1) 住宅消費税は住宅取得費の 65% を住宅建築費として計算した 注 2) 生活費全体における消費税アップによるローン返済額の減少や社会保険料の増加等の要因は反映していない ( 推察 ) 1 金利上昇による資金調達能力の減少は 世帯年収 5 万円にあっては 金利 1% 上昇すれば 約 4 万円の住宅取得能力の低下となり 世帯年収倍率の限界値も金利 3% では 8 倍だが 金利 5% では 6.4 倍となる 2 現在の 土地 + 新築 における住宅取得費の世帯年収倍率は平均 6.32 倍であるが 金利 5% の場合は 若年層の世帯年収 5 万円台ではその 5 割が限界を超えるものと推論できる ( 世帯年収 5 万円台では 住宅取得費の世帯年収倍率が 6.4~8. 倍の占める割合は 5 割 (27 件中 15 件 ) である 図表 5 参照 ) 1
考察 これまでの分析から 次のように考察することができる 1 若年層の住宅取得機会を減ずる消費税率の引き上げ 日本の住宅取得費の世帯年収倍率 ( 平均 5.7 倍 ) は海外先進国 (3 倍程度 ) に比べて高く さらに住宅 取得時の消費税は重い負担となっている 消費税率の引き上げの影響は とりわけ住宅一次取得者である 土地 + 新築 かつ 年収 5 万円 の顧客層 ( すわわち若年層 ) に大きい 住宅取得機会が減少し またその選択肢が狭くなることが懸 念されるためである この背景には 狭くて家賃の高い賃貸住宅市場や未成熟な既存住宅流通市場 がある ( ) 消費税率の引き上げは 住宅ローン減税ができるだけ多くの需要層に住宅取得機会を提供しようと する考え方と逆方向である 若年層にとって 住宅取得費の世帯年収倍率は 8 倍が限界である これ以上の ( 住宅 ) 消費税の引き 上げは 富裕層や一部の高齢層だけが質の高い住宅を取得できることになり 最近社会問題化して いる 格差社会 をますます助長するものである ( ) 誘導居住水準達成度 ( 平成 15 住宅 土地統計調査より ) 持家 借家 1 戸当たり延床面積 123.3 m2 46.91 m2 誘導居住水準達成度 64.8% 34.4% (3~5 人居住では 19.5%) ( 注 ) 誘導居住水準とは 3 人家族の場合 : 都市型 75 m2 一般型 98 m2 4 人家族の場合 : 都市型 91 m2 一般型 123 m2平成 27 に全国で 2/3 以上達成が目標である 2 良質な住宅ストックの蓄積を阻害する消費税率の引き上げ 消費税引き上げ分を建築費の削減で賄おうとする場合 住宅取得の資金計画の制約により 構造体 の予算削減 床面積の縮小 あるいは省エネ性能や耐久性の低い住宅に向かわざるをえない このことは 長寿命で良質な住宅を作り そのストックを国民全体の資産として活用していくとい う住生活基本法の目指す方向とも逆となる 悪貨が良貨を駆逐する ことにもなりかねない 3 若年層にとって現行消費税率が限度 勤労世帯にとって 住宅のように将来所得を含む生涯所得によって初めて取得できる財に対し その取得時と保有時の両方に課税するものにあっては 一時払い型の消費税の引き上げは弊害の方が大きい むしろ 初期負担を軽減し 5~6 年にわたる長寿命性の獲得とともに 保有時の負担とのバランスを図ることがより重要である 金利上昇期の消費税引き上げは住宅取得能力の低下をもたらす 特に若年層の住宅取得費の世帯年収倍率の限界値は 現状では 8 倍 ( 金利 3%) であるが 金利 5% では 6.4 倍へ低下する 本実態調査データから見る限り 若い世代のマイホーム取得希望層 ( 特に子育て世代 ) にとって 現行消費税率の 5% が限度であることを示している ( 以上 ) 11