【補論】戸建注文住宅と消費税の影響度に関する考察

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目次 1. 調査の概要 調査の目的 調査対象 対象地域 調査方法 回収状況 結果の概要 住み替え 建て替え リフォームに関する事項 住み替えに関する意思決定 リフォーム

設 拡充又は延長を必要とする理由 関係条文 租税特別措置法第 70 条の 2 第 70 条の 3 同法施行令第 40 条の 4 の 2 第 40 条の 5 同法施行規則第 23 条の 5 の 2 第 23 条の 6 平年度の減収見込額 百万円 ( 制度自体の減収額 ) ( - 百万円 ) 東日本大震

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平成 29 年度税制改正 ( 租税特別措置 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 ) 制度名既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充 税目所得税 ( 国土交通省 ) 既存住宅流通 リフォーム市場の活性化に向けて 耐震性 省エネ性 耐久性に優れた良質な住宅ストックの形成を促進するため 既存住宅の耐震 省

マンション建替え時における コンテキスト効果について

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住宅建築・購入者アンケート実施報告


第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

各年の住宅ローン控除額の算出 所得税から控除しきれない額は住民税からも控除 当該年分の住宅ローン控除額から当該年分の所得税額 ( 住宅ローン控除の適用がないものとした場合の所得税額 ) を控除した際に 残額がある場合については 翌年度分の個人住民税において 当該残額に相当する額が 以下の控除限度額の

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約 6 倍になると予測されており これら高経年マンションが増えていく中 経年による建物 設備の劣化等に対応するための大規模修繕や改修等の資金不足の問題が深刻化している 今後 良質なマンションを維持していくためにも 特にマンション共用部のリフォームについての支援が急務である (4) 賃貸住宅のリフォー

b. 世帯主年齢階級別 負担率 図表 II- 6-4 墨田ブロックの世帯主年齢階級別 平均負担率 図表 II- 6-5 墨田ブロックの世帯主年齢階級別 負担率の分布 合計 5% 未満 % 以上 1% 未満

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図表 II-39 都市別 世帯主年齢階級別 固定資産税等額 所得税 社会保険料等額 消 費支出額 居住コスト 年間貯蓄額 ( 住宅ローン無し世帯 ) 単位 :% 東京都特別区 (n=68) 30 代以下 (n=100) 40 代

3. 研究の概要等 1 章では 第 1 節で相続税法の歴史的経緯について 特に贈与の位置づけの変遷を中心に概観し 明治 38 年に創設された相続税法での贈与に対する扱いはどうであったのか また 昭和 22 年のシャベル勧告により贈与税が導入され 昭和 25 年のシャウプ勧告で廃止 その後 昭和 28

表紙

税幅を 1% ずつ小刻みに引き上げるべきであるといった意見も浮上しており 予定通り引上げが実施されるかは 不透明な状況です Q 消費税増税で住宅取得時の税負担は どのくらい増加しますか A そもそも住宅購入にかかる消費税は 土地にはかからず新築物件なら建物部分のみです 仮に図表 1の モデル のよう

税・社会保障等を通じた受益と負担について

(3) 可処分所得の計算 可処分所得とは 家計で自由に使える手取収入のことである 給与所得者 の可処分所得は 次の計算式から求められる 給与所得者の可処分所得は 年収 ( 勤務先の給料 賞与 ) から 社会保険料と所得税 住民税を差し引いた額である なお 生命保険や火災保険などの民間保険の保険料およ

図 3 世界の GDP 成長率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas Piketty ホームページ 図 4 世界の資本所得比率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas P

( 高齢層では単身世帯が増加 ) 高齢化が進む中で高齢者の単身世帯が急増している 65 歳以上の単身世帯は 2000 年の 407 万世帯から 2016 年には 821 万世帯へと倍増している そして単身無職世帯では消費支出が可処分所得を月 4 万円程度上回り 貯蓄の取り崩しにより 生計を立てている

マンション棟数密度 ( 東京 23 区比較 ) 千代田区中央区港区新宿区文京区台東区墨田区江東区品川区目黒区大田区世田谷区渋谷区中野区杉並区豊島区北区荒川区板橋区練馬区足立区葛飾区江戸川区

公表資料2014セット版

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統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

1. 国土交通省土地 建設産業局関係の施策 不動産流通に関する予算要求が拡大 ここ数年 国の住宅 不動産政策において 不動産流通に関する施策が大幅に拡大している 8 月に公表された国土交通省の 2019 年度予算概算要求概要によると 土地 建設産業局における施策は大きく 4 項目あるが 全体の予算額

年 4 月期関西圏 中京圏賃貸住宅指標 大阪府京都府兵庫県愛知県静岡県 空室率 TVI( ポイント ) 募集期間 ( ヶ月 ) 更新確率 (%)

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図表 2 住宅ローン減税の拡充 消費税率が 5% の場合 消費税率が 8% または 10% の 場合 適用期間 ~2014 年 3 月 2014 年 4 月 ~2017 年末 最大控除額 (10 年間合計 ) 200 万円 (20 万円 10 年間 ) 400 万円 (40 万円 10 年間 ) 控

2 累計 収入階級別 各都市とも 概ね収入額が高いほども高い 特別区は 世帯収入階級別に見ると 他都市に比べてが特に高いとは言えない 階級では 大阪市が最もが高くなっている については 各都市とも世帯収入階級別の傾向は類似しているが 特別区と大阪市が 若干 多摩地域や横浜市よりも高い 東京都特別区

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第 7 章 間にその者の居住の用に供したときに 一定の要件の下で そのバリアフリー改修工事等にあてるために借り入れた住宅借入金等の年末残高 (1,000 万円を限度 ) の一定割合を5 年間所得税の額から控除できます なお 52ページの増改築に係る住宅ローン控除制度との選択適用になります 1 控除期

目次 1 調査概要 P2~P4 2 平成 29 年度の販売見込みについて ( 住宅事業者 ) P5~P6 3 平成 29 年度の住宅の買い時感について ( 一般消費者 ) P7 4 住宅で重視するポイントは?( 住宅事業者 一般消費者 ) P8~P9 5 建物の性能で重視する事項は?( 住宅事業者

別紙2

30歳代の住宅ローンが急増したのはなぜか

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4 住宅購入 名称住宅購入に対する各種税金と給付金に関する支援 担当部課 概要新築または中古の住宅を取得するとかかる税金があります また 所得税控除や給付金が支払われる制度もあります 1. 不動産取得税 ( 県税 ) 土地や家屋などの不動産の取得時に 県が課税する税金です お問い合わせ先 神奈川県藤

N_①公表資料2017

スライド 1

15. 返済試算額の入手方法 平成 27 年 10 月 21 日現在 融資窓口にお申し出いただくか 当行ホームページのシミュレーション画面で試算できます 最寄りの道銀までお問い合わせください 16. 事務手数料 27,000 円 ( 消費税込み ) の手数料をお支払いただきます 17. その他全額繰

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4. 平成 27 年度税制改正の概要 (1) 住宅の取得に関わる税制 登録免許税 不動産取得税 改正項目ヘ ーシ 改正内容 所有権保存登記 所有権移転登記 所有権の信託 抵当権設定の登記の軽減措置 税率の軽減措置 宅地評価土地の課税標準の軽減措置 軽減税率の適用期限を平成 27 年 3

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平成 31 年度住宅関連税制改正の概要 ( 一社 ) 住宅生産団体連合会 平成 31 年 3 月 (1) 住宅ローン減税の拡充 ( 所得税 個人住民税 ) 消費税率 10% が適用される住宅取得等をして 2019 年 10 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの間にその者の居住の用に

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2030年の住宅市場~“移動人口”の拡大が人口減少下における住宅市場活性化の鍵に~

ここからは 更に 新宿区と渋谷区を取り上げて詳細検証を進めて見ましょう 1 人口動態 ( 年齢別 ) 人口割合 (40 代以下 ) 人口 平成 10 年 10 月現在 平成 23 年 10 月現在 新宿区 増加 61% 61% 30~40 代 /60 代以上増加が顕著 ( 別表 ) 渋谷区 増加 6

間にその者の居住の用に供したときに 一定の要件の下で そのバリアフリー改修工事等にあてるために借り入れた住宅借入金等の年末残高 (1,000 万円を限度 ) の一定割合を5 年間所得税の額から控除できます なお 53ページの増改築に係る住宅ローン控除制度との選択適用になります 1 控除期間 5 年間

みずほインサイト 日本経済 2013 年 8 月 27 日 消費増税時の住宅購入補助の効果年収別にみた負担変化の試算 経済調査部エコノミスト 大和香織 住宅ローン減税拡充と すまい給付金 の効果により 消費税率 8%

半年ごとの地価動向について 地価公示(1 月 1 日時点 ) と都道府県地価調査 (7 月 1 日時点 ) との共通の調査地点で見ると 三大都市圏の住宅地は平成 25 年の前半と後半がほぼ同率の上昇となり 商業地は平成 25 年後半に上昇率が拡大している また 地方圏の住宅地 商業地はともに下落した

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国土交通大臣 太田昭宏殿 平成 27 年 7 月 27 日 一般社団法人プレハブ建築協会 会長樋口武男 平成 28 年度住宅関連税制及び制度改正要望 昨年 政府は経済再生と財政健全化を両立するため 平成 27 年 10 月に予定していた消費税率 10% の引き上げを平成 29 年 4 月に 1 年半

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相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

住宅取得支援政策とその効果

の各種税制優遇を受けやすくする見直しが行われ 入居までに耐震基準に適合するという証明があれば 1 住宅ローン減税 2 住宅取得資金に関する贈与税の非課税措置 3 中古住宅に関する不動産取得税の特例措置の適用が可能となる 耐震基準に適合しない中古住宅を取得し 耐震改修工事を実施した後に入居するような場

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統計トピックスNo.92急増するネットショッピングの実態を探る

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29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

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つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

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本資料は 様々な世帯類型ごとに公的サービスによる受益と一定の負担の関係について その傾向を概括的に見るために 試行的に簡易に計算した結果である 例えば 下記の通り 負担 に含まれていない税等もある こうしたことから ここでの計算結果から得られる ネット受益 ( 受益 - 負担 ) の数値については

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目 次 1-1. 勤労者財産形成貯蓄制度の概要 財形持家融資制度の概要 勤労者の貯蓄をめぐる状況について 財形貯蓄制度をめぐる状況について 勤労者の貯蓄と財形貯蓄制度をめぐる状況について 勤労者の持家をめぐる状況について 10 3

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固定資産税等の概要及び税収動向等 3-1

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1. 住宅ローン商品の特徴比較 お奨めするそれぞれの住宅ローン商品の特徴は次のとおりです 各候補の住宅ローン詳細に関しましては次ページ以降の 住宅ローン比較表 お勧めする住宅ローン および金融機関のパンフレット等にてご確認ください 特徴 候補 A 候補 B 候補 C 候補 D A 銀行 A 銀行 B

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予算および制度に係る要望事項 1. フラット35 Sの金利引き下げ幅 0.6% の継続を要望します 2 フラット35 ( 買取型 ) の9 割超融資について 上乗せ金利引き下げの継続を要望します 3 耐震性 省エネ性等性能の高い良質な賃貸住宅の供給を促進するため 賃貸住宅融資制度にフラット35Sと同


所得控除 基礎控除 配偶者控除などの下記の表に記載されたものをいいます それぞれ一定の要件を満たしている場合は 課税所得金額を計算する際に それぞれの控除が受けられます 個人の県民税 個人の市町村民税 12

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Transcription:

補論 戸建注文住宅と消費税の影響度に関する考察 25 戸建注文住宅の顧客実態調査 における顧客の住宅取得の実態や消費税の圧迫感の調査結果に基づき 消費税引き上げの場合にどのような影響があるのかについて 以下の 3 つの視点から 可処分所得などの外部データも併せて詳細な分析と考察を試みた 1 消費税引き上げの場合 どのような住宅取得層が最も影響を受けるのか? 2 消費税引き上げの場合 良質な住宅の供給にどのような影響を与えるのか? 3 金利上昇期の消費税引き上げは 住宅取得にどのような影響を与えるのか? 分析 考察の前に 新設住宅着工数の推移について消費税率の変化の視点から概観すると 以下のとおりである ( 図表 1) 平成 9 に消費税率が 3% から 5% へ引き上げられたが この時点以降は新設住宅着工数は 持家 分譲 賃貸 のいずれも大きく減少した その後 分譲 や 賃貸 については 平成 11 からの大型ローン減税の効果もあって 底を打って横ばいないし微増傾向にあり 最近ではそれぞれ年 35 万戸 45 万戸の水準となっている しかしながら 持家 については 一時的に大型ローン減税の効果もみられたものの大きく減少し 最近では 37 万戸の水準に留まっている 新設住宅着工数は景気動向や金利水準などにも影響を受けるが 平成 9 の大きな減少に現れているように 消費税の影響は大きいことがわかる それゆえ ここでは戸建注文住宅の顧客層における消費税の引き上げによる影響を分析 考察する 図表 1: 新設住宅着工数の推移 ( 用途別 ) ( 千戸 ) 7 65 消費税 3% 消費税 5% 6 ( 平成 16 ) 55 5 45 4 ( 平成 5 ) 住宅着工 151 万戸住宅投資額 25.5 兆円民間住宅 /GDP 5.3% 一人国民所得 3,14 千円 住宅着工 119 万戸住宅投資額 19.1 兆円民間住宅 /GDP 3.7% 一人国民所得 2,826 千円 持家 賃貸 35 分譲 3 25 2 平成 5 平成 6 平成 7 平成 8 平成 9 平成 1 平成 11 平成 12 大型ローン減税 平成 13 平成 14 平成 15 平成 16 持家 537 581 551 636 451 438 476 438 377 366 373 367 賃貸 652 574 564 616 516 444 426 418 442 455 459 467 分譲 29 378 345 352 351 282 312 346 344 316 334 349 ローン減税縮小 ( 資料 ) 国土交通省 住宅着工統計 1

テーマ 1 消費税引き上げの場合 どのような顧客層 ( 住宅取得層 ) が最も影響を受けるのか? (1) 住宅取得方法別 ( 建て替え 買い替え 土地 + 新築 1 ) にみた顧客属性 最近の戸建注文住宅の顧客属性の特徴として 世帯主の若年化 と 一次取得層の増加 がある これは 顧客属性を住宅取得方法別 ( 建て替え 買い替え 土地 + 新築 ) にみても明らかである 一次取得層である 土地 + 新築 は 二次取得層である 建て替え や 買い替え と比較すると 以下の特徴がある ( 図表 2) 全体の約 4 割 (38.9%) と最も多くを占める 世帯主年齢(37.8 歳 ) は最も若く 世帯人数 (3.4 人 ) も最も少ない 世帯年収(854 万円 ) は最も低い 延床面積(131 m2 ) は最も狭い 建築費(2,97 万円 ) は最も低い反面 土地代 (1,929 万円 ) は最も高く その合計である住宅取得費 (4,836 万円 ) はかなり高い よって 住宅取得費に占める建築費の比率 (64.1%) は最も低い 住宅取得費の世帯年収倍率(6.32 倍 ) は最も高い 自己資金の額(1,373 万円 ) と比率 (26.9%) は最も低いが 贈与額比率 (5.2%) は高くはなく 借入金の額 (3,161 万円 ) と比率 (68.%) は最も高い 以上のことから 一次取得層である 土地 + 新築 は顧客層として最もシェアが大きいにもかかわらず 消費税引き上げの影響を最も受ける可能性が高いと考えられる 住宅取得方法 図表 2: 住宅取得方法別にみた顧客属性の平均像 二次取得層 一次取得層 顧客属性建て替え買い替え土地 + 新築 サンプル数の比率 35.9% 11.% 38.9% 世帯主年齢 49.8 歳 45.1 歳 37.8 歳 世帯人数 4.1 人 3.8 人 3.4 人 世帯年収 891 万円 973 万円 854 万円 延床面積 156 m2 14 m2 131 m2 建築費 ( 1) 3,648 万円 (98.6%) 3,52 万円 (72.8%) 2,97 万円 (64.1%) 土地代 ( 1) 93 万円 ( 1.4%) 1,798 万円 (27.2%) 1,929 万円 (35.9%) 住宅取得費 3,741 万円 4,85 万円 4,836 万円 住宅取得費の世帯年収倍率 5.24 倍 5.79 倍 6.32 倍 自己資金 ( 2) 1,858 万円 (48.8%) 1,925 万円 (32.5%) 1,373 万円 (26.9%) 贈与額 ( 2) 88 万円 ( 2.9%) 贈与なし 87.3% 247 万円 ( 7.5%) 贈与なし 66.8% 267 万円 ( 5.2%) 贈与なし 78.8% 借入金 ( 2) 1,776 万円 (48.3%) 2,65 万円 (6.1%) 3,161 万円 (68.%) ( 注 ) 土地取得方法の 新たに借地 (1.5%) と 相続 / 親の土地 (11.1%) は除く ( 全サンプル数 3,634) ( 1) ( ) 内の % は住宅取得費に占める比率 ( 2) ( ) 内の % は住宅取得資金に占める比率 1 土地 + 新築 は 従前住宅とは別に 既に購入していた土地や新たに購入した土地に新築 の略 2

(2) 住宅取得方法別 ( 建て替え 買い替え 土地 + 新築 ) にみた世帯年収倍率 住宅取得費の世帯年収倍率は 建て替え や 買い替え ( 二次取得層 ) に比べて 土地 + 新築 ( 一次取得層 ) で 5 倍未満が少なく 5~1 倍未満がかなり多い ( 図表 3) 都市圏別にみても この傾向は変わらないが 全体に地方都市圏で倍率が低い ( 図表 4) 図表 3: 住宅取得パターン別にみた 住宅取得費の世帯年収倍率 の分布 25 建て替え ( 平均 5.2 倍 ) 2 買い替え ( 平均 5.8 倍 ) 土地 + 新築 ( 平均 6.3 倍 ) 15 占率 (%) 1 5 2 倍未満 2~3 倍未満 3~4 倍未満 4~5 倍未満 5~6 倍未満 6~7 倍未満 7~8 倍未満 8~1 倍未満 1~15 倍未満 15 倍以上 住宅取得費の世帯年収倍率 ( 倍 ) ( 注 ) 各サンプル数は 全サンプル数 3,634 中 建て替え 1,34 買い替え 41 土地 + 新築 1,415 である 凡例の ( ) 内の数値は それぞれの平均倍率を示す 図表 4: 都市圏別 住宅取得パターン別にみた 住宅取得費の世帯年収倍率 の平均値 7 6.77 6.73 東京圏 (5.8 倍 ) 住宅取得費の世帯年収倍率 ( 倍 ) 6 5 6.21 5.94 5.89 5.36 5.29 5.12 5.9 4.96 6.38 5.64 名古屋圏 (5.7 倍 ) 大阪圏 (5.9 倍 ) 地方都市圏 (5.5 倍 ) 4 建て替え買い替え土地 + 新築 ( 注 ) 凡例の ( ) 内の数値は それぞれの平均倍率を示す 3

(3) 土地 + 新築 ( 一次取得層 ) の世帯年収別にみた世帯年収倍率 一次取得層である 土地 + 新築 については その大半を占める若年層 特に 世帯年収 5 万円 では 住宅取得費の年収倍率 は8 倍程度が現実的な限界と考えられる ( 図表 5) したがって 住宅取得費は 4, 万円 ( 建築費 65%+ 土地代 35%: 図表 2 参照 ) 程度が限界と推定される ただし 世帯年収 5 万円前後の世帯には 直接的な収入は少ないものの手元資金の豊富な高齢層が含まれるため 世帯年収倍率の高い世帯群が存在することに留意する必要がある 図表 5: 世帯年収別にみた 土地 + 新築 の世帯年収倍率の分布 16 14 高齢層 12 住宅取得費の年収倍率 ( 倍 ) 1 8 6 4 若年層 8. 倍 平均 6.3 倍 2 平均 854 万円近似曲線 y = -2.5594Ln(x) + 23.418 5~6 1, 1,5 2, 2,5 (n=1,43) 世帯年収 ( 万円 ) (4) 可処分所得の状況 勤労世帯の可処分所得は 2 年以降 微減傾向にある ( 図表 6 1) 世帯主 3 歳 世帯年収 5 万円では 可処分所得は 3~35 万円 / 月と推察される ( 図表 6 23) 図表 6: 勤労世帯の可処分所得の状況 ( 月当たり平均値 ) 1 可処分所得の経年変化 2 年 21 年 22 年 23 年 24 年 25 年 429,338 円 419,55 円 49,619 円 41,787 円 45,591 円 398,856 円 2 世帯主年齢別にみた可処分所得 (25 年 ) 2 歳代 3 歳代 4 歳代 5 歳代 6 歳代 7 歳代 338.929 円 443,7 円 534,68 円 548,142 円 427,845 円 397,268 円 3 世帯年収別にみた可処分所得 (25 年 ) ~273 ~356 ~431 ~56 ~583 ~662 ~757 ~881 ~1,73 1,73~ 176,565 234,443 273,67 31,126 356,742 391,798 436,144 492,393 567,936 749,342 ( 注 ) 上段 : 世帯年収 ( 万円 ) 下段: 可処分所得 ( 円 ) ( 資料 ) 総務省 家計調査年報 4

(5) 消費税の圧迫感 消費税の資金計画への圧迫感を世帯主年齢別にみると 3 歳代の圧迫感が強く 高齢になるほど弱い ( 図表 7) 若年層の代表的な属性である 3 歳代 や 世帯年収 5~7 万円 について経年変化をみると 多少の変動はあるものの 2 以降なお根強い消費税の圧迫感がある ( 図表 8) 図表 7: 住宅消費税の資金計画への圧迫感 ( 世帯主年齢別 ) ( 世帯主年齢 ) かなり圧迫感あり少し圧迫感あり (%) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 全体 5 33.6 34.3 2 歳代 28.5 44.9 3 歳代 37.1 32.7 4 歳代 31.5 33.7 5 歳代 31.6 35.6 6 歳代 29.6 34.9 図表 8: 住宅消費税の資金計画への圧迫感の経年変化 (3 歳代 ) かなり圧迫感あり 少し圧迫感あり 45.1 33.3 1 2 3 4 43.7 43.5 43.1 42.4 32.9 32.8 38.2 35.2 5 37.1 32.7 (%) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ( 世帯年収 5~7 万円 ) かなり圧迫感あり 少し圧迫感あり 44.5 32.5 1 4.1 31.4 2 43.2 3.2 3 42.8 38.7 4 41.4 36.6 5 34.7 35.1 (%) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 5

(6) 住宅取得資金に占める自己資金比率 ( 世帯年齢別 世帯年収別 ) 世帯主年齢や世帯年収があがると 住宅取得資金に占める自己資金比率は上昇する ( 図表 9 1) 若年層 (35 歳未満 ) の自己資金比率は 2% 未満であり 若年層での消費税の圧迫感の強さは 年収要因もあるが 自己資金比率の低い点が考えられる ( 図表 9 12) 高齢層 (65 歳以上 ) の世帯年収は少ないが 手元資金が豊富なため 自己資金比率は 8% を超える ( 図表 1) 図表 9: 世帯年収と住宅取得資金に占める自己資金比率 ( 世帯年齢別 ) 1,2 1, 世帯年収自己資金比率 923 1,13 1,83 1,63 975 82.7 91.8 1 8 世帯年収 ( 万円 ) 8 6 4 2 476 619 14.3 13.8 693 19.6 811 24.9 31.3 39. 45.1 6.4 74.9 783 715 6 4 2 自己資金比率 (%) 25 歳未満 3 歳未満 35 歳未満 4 歳未満 45 歳未満 5 歳未満 55 歳未満 6 歳未満 65 歳未満 7 歳未満 7 歳以上 (n=3,634) 世帯主年齢 図表 1: 自己資金と住宅取得資金に占める自己資金比率 ( 世帯年収別 ) 自己資金 ( 万円 ) 4, 3, 2, 1, 自己資金自己資金比率 43.5 27.1 1,568 1,1 33.2 1,369 41.4 1,947 48.4 2,511 3,955 5.2 6 4 2 自己資金比率 (%) (n=3,634) 5 万円未満 7 万円未満 1, 万円未満 1,5 万円未満 2, 万円未満 2, 万円以上 世帯年収 ( 万円 ) 6

(7) まとめ 最近の戸建注文住宅の顧客には 世帯主の若年化 と 一次取得層の増加 が顕著である 一次取得層である 土地 + 新築 の住宅取得費の世帯年収倍率は最も高く 顧客層として最もシェアが大きいにもかかわらず 消費税引き上げの影響を最も受ける可能性が高いと考えられる その大半を占める若年層 ( 特に世帯年収 5 万円 ) では 住宅取得費の年収倍率 は8 倍が現実的な限度であり 住宅取得費は 4, 万円 ( 建築費 65%+ 土地代 35%) が限界と推定される 2 年以降 勤労世帯の可処分所得は微減傾向にある 世帯主 3 歳 世帯年収 5 万円では 可処分所得は 3~35 万円 / 月と推測される 消費税の圧迫感が強いのは 世帯主年齢 3 歳代 世帯年収 5~1, 万円未満 建築費 2,5 ~3, 万円である 若年層 (35 歳未満 ) の自己資金比率は 2 割であり 8 割は贈与金がなく 多くは借入金である (8) 若年層の住宅取得モデルによる住宅取得の可能限度額 ( 試算 ) 上記のまとめから平均的な若年層の住宅取得モデルが想定されるが 可処分所得と住宅ローン借入額 を加味して 現行消費税率での取得可能な世帯像と世帯年収倍率の限界値を試算してみる ( 図表 11) ( 住宅取得モデル ) 世帯年収 :5 万円 住宅取得費 :4, 万円 ( 土地代 1,4 万円 + 建築費 2,6 万円 ) 現行消費税率 :13 万円 ( 建築費 2,6 万円 @5%) ( ローン借り入れ可能額 ) 可処分所得 : 世帯年収 5 万円で 35 万円 / 月が勤労世帯の平均値 年間 42 万円 ローン : 金利 3% 3 年元利均等返済 ( 世帯年収による限度額あり ) ローン返済負担率 : 世帯年収の最大 35% 月返済額の最大値 :14.5 万円 ( 年収 5 万円 35%) 図表 11: 若年層の住宅取得可能限度額 金額 備考 世帯年収 5 万円 自己資金 69 万円 3~35 才の平均自己資金 2 割 住宅ローン借入額 3,44 万円 金利 3% 元利均等 3 年返済 ローン返済負担率 35%( 最大 ) 合計資金調達額 4,13 万円 住宅取得費 4, 万円 住宅 2,6 万円 + 土地 1,4 万円 住宅の消費税 13 万円 消費税 5% の場合 世帯年収の26% 住宅取得費の年収倍率 8 倍 世帯年収倍率の限界値 ( 推察 ) 1 住宅ローンを借り入れ可能額の最大とした場合 世帯年収倍率の限界は 8 倍である 2 月返済額 14 万 5 千円は可処分所得 35 万円の 41% を占める限界値である 7

消費税が現行 5% から8% に引き上げられた場合の試算 仮に消費税率が現行の 5% から例えば 8% に引き上げられると その消費税額は現行の 13 万円から 28 万円となり 若年層ではこの差額約 8 万円はローン借り入れができず 自己資金増加か世帯年収増加に依存せざるをえない 若年層がこの差額 8 万円を自己資金の積み上げで賄おうとすれば 1.5~2 年かかり その間は住宅取得時期が遅れることとなる ( 図表 12 から読み取れる3 歳代前半の自己資金積み上げ額は 年間平均 6 万円である ) このことから 金利上昇期においては消費税率の引き上げによる住宅取得時期の遅れは 若年層のマイホーム取得そのものを困難にすることが懸念される 図表 12: 自己資金と住宅取得資金に占める自己資金比率 ( 世帯主年齢別 ) 自己資金 ( 万円 ) 4, 381 3791 自己資金 3,5 自己資金比率 91.8 3, 2984 82.7 2,5 74.9 2445 2166 2, 195 6.4 1,5 1466 45.1 198 39. 1, 817 31.3 543 53 24.9 5 19.6 14.3 13.8 25 歳未満 3 歳未満 35 歳未満 4 歳未満 45 歳未満 5 歳未満 55 歳未満 (n=3,634) 世帯主年齢 6 歳未満 65 歳未満 7 歳未満 7 歳以上 1 8 6 4 2 自己資金比率 (%) 8

テーマ 2 消費税引き上げの場合 良質な住宅の供給にどのような影響を与えるのか? 次世代省エネ住宅の住宅性能表示の取得等級 世帯年収が上がると 次世代省エネ住宅の等級が上がる傾向にある ( 図表 13) 建築費が上がると 次世代省エネ住宅の等級が上がる傾向にある ( 図表 13) したがって 若年層が多い 土地 + 新築 ( 一次取得者 ) では 住宅取得費に占める建築費の割合が低い ( 建築費が低い ) ため 次世代省エネ住宅の住宅性能等級が低くなる 図表 13: 次世代省エネ住宅の住宅性能表示の取得等級 ( 世帯年収別 建築費別 ) 世帯年収 省エネ住宅の性能表示 等級 1 等級 2 等級 3 等級 4 平均等級 全体 5 9.3 4.2 23.7 43.7 2.64 5 万円未満 9. 4. 24. 41.1 2.53 5~7 万円未満 1.9 5. 22.6 41.6 2.55 7~1, 万円未満 9.8 3.8 24. 45.1 2.7 1,~1,5 万円未満 9.2 4.4 22.9 44.8 2.66 1,5~2, 万円未満 3.3 4.4 25.1 48.6 2.82 2, 万円以上 4.7 2.7 3.2 45. 2.81 建築費 省エネ住宅の性能表示 等級 1 等級 2 等級 3 等級 4 平均等級 全体 5 9.3 4.2 23.7 43.7 2.64 1,5 万円未満 63.6. 18.2 9.1 1.55 2, 万円未満 3.9 3.1 24.1 26.5 2.15 2,5 万円未満 12.8 6.8 24. 38.7 2.53 3, 万円未満 1.1 4.5 22.4 43.8 2.62 3,5 万円未満 4.7 4. 22.6 51. 2.85 4, 万円未満 6.9 1.5 28.6 43.5 2.7 5, 万円未満 3.9 3.7 22.4 49.1 2.75 5, 万円以上 4.9 2.9 26.1 42. 2.57 ( 推察 ) 1 消費税引き上げによる住宅予算の制約によって建築費の削減が進むことは 住宅の省エネ等級を引き下げることになり 省エネ配慮の少ない住宅数を増やすことにつながる これは 地球環境保全 ( とりわけ地球温暖化防止 ) に向けた政府施策に逆行する 2 省エネ配慮だけでなく 耐震性に優れ長期耐久性の高い住宅にすれば 建築コストは上がるため 消費税引き上げによる建築費の削減は良質な住宅ストックの蓄積にマイナスとなる 9

テーマ 3 金利上昇期の消費税引き上げは 住宅取得にどのような影響を与えるのか? 金利上昇による若年層の住宅取得能力の低下は 住宅ローン借入限度額の縮小を通じて 世帯年収倍 率の限界値を低下させる さらに 消費税の住宅ローン組み込みを阻害し 住宅取得費の削減ともなる そこで 金利 3% での住宅取得費の世帯年収倍率 8 倍が 金利が 4% や 5% と上昇した場合にはどのよ うな世帯年収倍率となるのか試算してみる ( 図表 14) 図表 14: 世帯年収 5 万円の場合 金利と住宅取得能力の関係 金利 3% 金利 4% 金利 5% 金利 3% と 金利 5% の差額 自己資金 69 万円 69 万円 69 万円 --- ローン借入額 ( 最大 ) 3,44 万円 3,4 万円 2,7 万円 74 万円 合計資金調達額 4,13 万円 3,73 万円 3,39 万円 74 万円 住宅取得費 4, 万円 3,545 万円 3,222 万円 778 万円 消費税率 5% 8% 8% --- 住宅消費税 13 万円 185 万円 168 万円 +38 万円 世帯年収倍率 8. 倍 7.1 倍 6.4 倍 --- ローン月返済額 14 万 5 千円 14 万 5 千円 14 万 5 千円 --- 注 1) 住宅消費税は住宅取得費の 65% を住宅建築費として計算した 注 2) 生活費全体における消費税アップによるローン返済額の減少や社会保険料の増加等の要因は反映していない ( 推察 ) 1 金利上昇による資金調達能力の減少は 世帯年収 5 万円にあっては 金利 1% 上昇すれば 約 4 万円の住宅取得能力の低下となり 世帯年収倍率の限界値も金利 3% では 8 倍だが 金利 5% では 6.4 倍となる 2 現在の 土地 + 新築 における住宅取得費の世帯年収倍率は平均 6.32 倍であるが 金利 5% の場合は 若年層の世帯年収 5 万円台ではその 5 割が限界を超えるものと推論できる ( 世帯年収 5 万円台では 住宅取得費の世帯年収倍率が 6.4~8. 倍の占める割合は 5 割 (27 件中 15 件 ) である 図表 5 参照 ) 1

考察 これまでの分析から 次のように考察することができる 1 若年層の住宅取得機会を減ずる消費税率の引き上げ 日本の住宅取得費の世帯年収倍率 ( 平均 5.7 倍 ) は海外先進国 (3 倍程度 ) に比べて高く さらに住宅 取得時の消費税は重い負担となっている 消費税率の引き上げの影響は とりわけ住宅一次取得者である 土地 + 新築 かつ 年収 5 万円 の顧客層 ( すわわち若年層 ) に大きい 住宅取得機会が減少し またその選択肢が狭くなることが懸 念されるためである この背景には 狭くて家賃の高い賃貸住宅市場や未成熟な既存住宅流通市場 がある ( ) 消費税率の引き上げは 住宅ローン減税ができるだけ多くの需要層に住宅取得機会を提供しようと する考え方と逆方向である 若年層にとって 住宅取得費の世帯年収倍率は 8 倍が限界である これ以上の ( 住宅 ) 消費税の引き 上げは 富裕層や一部の高齢層だけが質の高い住宅を取得できることになり 最近社会問題化して いる 格差社会 をますます助長するものである ( ) 誘導居住水準達成度 ( 平成 15 住宅 土地統計調査より ) 持家 借家 1 戸当たり延床面積 123.3 m2 46.91 m2 誘導居住水準達成度 64.8% 34.4% (3~5 人居住では 19.5%) ( 注 ) 誘導居住水準とは 3 人家族の場合 : 都市型 75 m2 一般型 98 m2 4 人家族の場合 : 都市型 91 m2 一般型 123 m2平成 27 に全国で 2/3 以上達成が目標である 2 良質な住宅ストックの蓄積を阻害する消費税率の引き上げ 消費税引き上げ分を建築費の削減で賄おうとする場合 住宅取得の資金計画の制約により 構造体 の予算削減 床面積の縮小 あるいは省エネ性能や耐久性の低い住宅に向かわざるをえない このことは 長寿命で良質な住宅を作り そのストックを国民全体の資産として活用していくとい う住生活基本法の目指す方向とも逆となる 悪貨が良貨を駆逐する ことにもなりかねない 3 若年層にとって現行消費税率が限度 勤労世帯にとって 住宅のように将来所得を含む生涯所得によって初めて取得できる財に対し その取得時と保有時の両方に課税するものにあっては 一時払い型の消費税の引き上げは弊害の方が大きい むしろ 初期負担を軽減し 5~6 年にわたる長寿命性の獲得とともに 保有時の負担とのバランスを図ることがより重要である 金利上昇期の消費税引き上げは住宅取得能力の低下をもたらす 特に若年層の住宅取得費の世帯年収倍率の限界値は 現状では 8 倍 ( 金利 3%) であるが 金利 5% では 6.4 倍へ低下する 本実態調査データから見る限り 若い世代のマイホーム取得希望層 ( 特に子育て世代 ) にとって 現行消費税率の 5% が限度であることを示している ( 以上 ) 11