石綿による健康被害の救済に関する法律の解説

Similar documents
資料2-1 大阪府泉南地域・尼崎市・鳥栖市における石綿の健康リスク調査報告の概要(案)

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

手続様式

< F2D816994D48D FA957493FC816A >

アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

機構受付印手続様式第 2 号 ( 施行規則第 1 条関係 ) 石綿による健康被害の救済に関する法律戸籍記載事項証明書 1 本籍 2 筆頭者氏名 3 氏名 4 生 上記のとおり相違ないことを証明する 平成 自治体名 市区町村長氏名 印

1. 現行制度の概要 2

時効特例給付制度の概要 制度の概要 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律 ( 平成 19 年 7 月 6 日施行 ) に基づき 年金記録の訂正がなされた上で年金が裁定された場合には 5 年で時効消滅する部分について 時効特例給付として給付を行うこととされた 法施行前

年管管発 0928 第 6 号平成 27 年 9 月 28 日 日本年金機構年金給付業務部門担当理事殿 厚生労働省年金局事業管理課長 ( 公印省略 ) 障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて 厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令 ( 平成 2

11総法不審第120号

130306異議申立て対応のHP上の分かりやすいQA (いったん掲載後「早く申請してください」を削除)

中皮腫と癌腫の鑑別に有用である ( ウ )fluorescence in situ hybridization(fish) 法による p16 遺伝子欠失の解析上皮型中皮腫と反応性中皮細胞の鑑別や 肉腫型中皮腫と線維性胸膜炎の鑑別に有用である ( エ ) Glucose transporter-1(g

(2) 電子計算機処理の制限に係る規定ア電子計算機処理に係る個人情報の提供の制限の改正 ( 条例第 10 条第 2 項関係 ) 電子計算機処理に係る個人情報を国等に提供しようとする際の千葉市情報公開 個人情報保護審議会 ( 以下 審議会 といいます ) への諮問を不要とし 審議会には事後に報告するも

Microsoft Word - 02-頭紙.doc

改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも

●子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案

untitled

第1 総 括 的 事 項

●アレルギー疾患対策基本法案

Microsoft Word - 2-① 補償ガイドライン平成27年版(本文)Ver3.1.1.do

事業者が行うべき措置については 匿名加工情報の作成に携わる者 ( 以下 作成従事者 という ) を限定するなどの社内規定の策定 作成従事者等の監督体制の整備 個人情報から削除した事項及び加工方法に関する情報へのアクセス制御 不正アクセス対策等を行うことが考えられるが 規定ぶりについて今後具体的に検討

と事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を 配偶者 には 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を 婚姻 には 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含むものとする 5 この条例において 医療保険各法 とは 国民健康保険法 ( 昭和 33 年法律第 192

11総法不審第120号

スライド タイトルなし

スライド 1

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

48

2. 検討 ~ 医療に関する事故の特殊性など (1) 医師等による医療行為における事故 医師等が患者に対してどのような医療行為を施すべきかという判断は 医師等の医学的な専門知識 技能に加え 医師等の経験 患者の体質 その時の患者の容態 使用可能な医療機器等の設備等に基づきなされるものである ( 個別

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

(頭紙)公布通知

標準業務手順 目次

( 支給対象者等 ) 第 3 条医療費の支給の対象となる者 ( 以下 支給対象者 という ) は 次の各号に該当する母子家庭の母 父子家庭の父及びこれらの者に扶養されている児童並びに養育者に扶養されている父母のない児童とする (1) 本市に住所 ( 配偶者からの暴力を受けること等により本市への住所の

⑵ 外来年間合算の支給額計算の基礎となる合算対象額は 基準日において 同一保険者の同一世帯に属しているか否かにより判断されます ( 例 ) 下記の事例の場合 基準日において 甲と乙が同一世帯であれば 3 と 4 は合算できるが 甲と乙が別世帯であれば 3 と 4 は合算できない 基準日保険者である

第 3 条市長は 前条に規定する申請に基づいて医療費の給付を受けることができる者であることを確認したときは 申請者に重度心身障がい者医療費受給者証 ( 第 2 号様式 以下 受給者証 という ) を交付するものとする 2 前項の受給者証の資格取得日は 市長が交付決定をした日の属する月の翌月の初日 (

厚生局受付番号 : 東北 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 東北 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 社における厚生年金保険被保険者資格の喪失年月日を昭和 53 年 12 月 31 日から昭和 54 年 1 月 1 日に訂正し 昭和 53 年 12 月の

Microsoft Word - HPN-2534


議案第49号-医療福祉費支給に関する条例の一部改正【確定】

第 3 条この条例において 医療費の助成の対象となる者 ( 以下 対象者 という ) は 中島村に住所を有する子どもの保護者とする ただし 生活保護法 ( 昭和 25 年法律第 144 号 ) の規定により保護を受けている者は この限りではない 2 医療保険各法に規定する医療保険に加入していること

監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

はじめに 近年 安全技術の向上と現場教育の成果により 労働災害による被災労働者数は減少傾向にあります しかしそれでも 毎年約 11 万人にも及ぶ労働者が いまだ労働災害によって生命や身体を侵害されている実情があります 考えたくはありませんが 万一 従業員が業務上の被災をした場合 法律上 その従業員が

< F2D D8791CC817995D28F578CE B38CEB94BD8966>

( 受給資格証の再交付 ) 第 5 条条例第 6 条の規定により交付を受けた受給資格証を破損し 又は亡失したことにより受給資格証の再交付を受けようとするときは 重度心身障害者等医療費受給資格証再交付申請書 ( 様式第 4) を市長に提出しなければならない ( 受給資格の確認 ) 第 6 条条例第 6

特別会計の改革について

治 験 実 施 標 準 業 務 手 順 書

標準例6

- 2 - り 又は知り得る状態であったと認められる場合には この限りでない 2~7 略 (保険料を控除した事実に係る判断)第一条の二前条第一項に規定する機関は 厚生年金保険制度及び国民年金制度により生活の安定が図られる国民の立場に立って同項に規定する事実がある者が不利益を被ることがないようにする観

ブロック塀撤去補要綱

1. 補償の原則 1-1 治験依頼者は 治験に起因して被験者に健康被害があった場合は 治験依頼者に賠償責任が無くとも自ら定めた補償制度にしたがって補償する いう ) における定義と同一とする ( 表 1 を参照 ) 2-2 補償規程 とは GCP 省令第 14 条に従い また本ガイドラインを参考にし

議案第 20 号小松島市消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例 改正の趣旨 非常勤消防団員等の損害補償の基準を定める政令の一部を改正する政令が平成 28 年 4 月 1 日から施行されることに伴い 非常勤消防団員等の公務上の災害に対する損害補償に関し 同一の事由により他の法律による

<4D F736F F D A6D92E894C581458E7B8D7393FA A956C8FBC8E738FE18A518ED293FC89408E9E E A B E E968BC68EC08E7B97768D6A2E646F63>

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

「肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業について」の一部改正について(厚生労働省健康局長:H )

あっせん文(国民健康保険における限度額適用・標準負担額減額認定証 の申請に係る被保険者の負担軽減)

Microsoft Word - 療養補償給付又は療養給付.doc

厚生局受付番号 : 四国 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 四国 ( 厚 ) 第 号 請求者の社会福祉法人 A 会 B 保育所における平成 20 年 6 月 21 日の標準賞与額を 127 万 1,000 円に訂正することが必要である 平成 20 年 6 月 2

(3) 父又は母が規則で定める程度の障害の状態にある児童 (4) 父又は母の生死が明らかでない児童 (5) その他前各号に準ずる状態にある児童で規則で定めるもの 3 この条例において 養育者 とは 次に掲げる児童と同居して これを監護し かつ その生計を維持する者であって その児童の父母及び児童福祉

労災年金のスライド

Taro 地震通達.jtd

地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第7次地方分権一括法)の概要

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

法律 出典 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律 ( 昭和 35 年 8 月 10 日法律第 145 号 ) 政令 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令 ( 昭和 36 年 1 月 26 日政令第 11 号 ) 省令 医薬品 医療機器等の品質

公的医療保険が対象とならない治療 投薬などの費用 ( 例 : 病院や診療所以外でのカウンセリング ) 精神疾患 精神障害と関係のない疾患の医療費 医療費の自己負担ア ) 世帯 ( 1) における家計の負担能力 障害の状態その他の事情をしん酌した額 ( しん酌した額が自立支援医療にかかった費用の 10

2. 平成 9 年遠隔診療通知の 別表 に掲げられている遠隔診療の対象及び内 容は 平成 9 年遠隔診療通知の 2 留意事項 (3) イ に示しているとお り 例示であること 3. 平成 9 年遠隔診療通知の 1 基本的考え方 において 診療は 医師又は歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本

雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項 第 1 趣旨 この留意事項は 雇用管理分野における労働安全衛生法 ( 昭和 47 年法律第 57 号 以下 安衛法 という ) 等に基づき実施した健康診断の結果等の健康情報の取扱いについて 個人情報の保護に関する法律についての

愛知県アルコール健康障害対策推進計画 の概要 Ⅰ はじめに 1 計画策定の趣旨酒類は私たちの生活に豊かさと潤いを与える一方で 多量の飲酒 未成年者や妊婦の飲酒等の不適切な飲酒は アルコール健康障害の原因となる アルコール健康障害は 本人の健康問題だけでなく 家族への深刻な影響や飲酒運転 自殺等の重大

< F2D E7B8D7392CA926D81698B6388F5944E8BE08AD6>

(3) 倫理学 法律学の専門家等 本法人に所属しない人文 社会科学の有識者若干名 (4) 一般の立場から意見を述べることができる者若干名 (5) 分子生物学 細胞生物学 遺伝学 臨床薬理学 病理学等の専門家若しくは遺伝子治療等臨床研究の対象となる疾患に係る臨床医として 日本医科大学長が推薦した者若干

Microsoft Word - T2-11-1_紙上Live_生計維持_13分_

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

強制加入被保険者(法7) ケース1

3 市長は 第 1 項の規定により指定した土地の区域を変更し 又は廃止しようとするときは あらかじめ久喜市都市計画審議会 ( 以下 審議会 という ) の意見を聴くものとする 4 第 1 項及び第 2 項の規定は 第 1 項の規定により指定した土地の区域の変更又は廃止について準用する ( 環境の保全

JCROA自主ガイドライン第4版案 GCP監査WG改訂案及び意見

社会福祉法人春栄会個人情報保護規程 ( 目的 ) 第 1 条社会福祉法人春栄会 ( 以下 本会 という ) は 基本理念のもと 個人情報の適正な取り扱いに関して 個人情報の保護に関する法律 及びその他の関連法令等を遵守し 個人情報保護に努める ( 利用目的の特定 ) 第 2 条本会が個人情報を取り扱

に該当する者については 同項の規定にかかわらず受給資格者とする 3 病院等に入院等したことにより 本市の区域内に住所を変更したと認められる第 1 項各号に該当する者については 同項の規定にかかわらず受給資格者としない 4 第 1 項及び第 2 項の規定にかかわらず 次の各号のいずれかに該当する者は

京都府がん対策推進条例をここに公布する 平成 23 年 3 月 18 日 京都府知事山田啓二 京都府条例第 7 号 京都府がん対策推進条例 目次 第 1 章 総則 ( 第 1 条 - 第 6 条 ) 第 2 章 がん対策に関する施策 ( 第 7 条 - 第 15 条 ) 第 3 章 がん対策の推進

11総法不審第120号

(2) 区域内の主要な道路が 環境の保全上 災害の防止上 通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造で適当に配置されており かつ 区域外の相当規模の道路と接続していること (3) 区域内の排水路その他の排水施設が その区域内の下水を有効に排出するとともに その排出によって区域及びそ

 

項目ご意見等の概要部会の考え方 ( 案 ) 1 操業中及び猶予中の工場等における土壌汚染状況調査 有害物質使用届出施設等の廃止後の土壌汚染状況調査が実施されておらず かつ 調査の猶予を受けていない土地についても 土地の利用履歴等の報告や土壌汚染状況調査の対象とする規定を設けるべきである 有害物質使用


資料 1 協会員に対する処分及び勧告について 平成 30 年 4 月 18 日 日本証券業協会 本協会は 本日 下記のとおり 法令等違反の事実が認められた協会員に対し 定款第 28 条第 1 項の規定に基づく処分及び同第 29 条の規定に基づく勧告を行いました 記 岩井コスモ証券株式会社 公表前のア

厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論 請求者の A 社における厚生年金保険被保険者資格の取得年月日を昭和 63 年 2 月 26 日から同 年 2 月 16 日に訂正することが必要である 生年月日 :

資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

障害程度等級表 級別じん臓機能障害 1 級 じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 3 級 じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

長期家族介護者援護金 2 補償の内容 (1) 療養補償負傷又は疾病が治ゆするまでの間 必要な治療を行い 又は療養の費用を支給します 療養の範囲は次に掲げるもので 認定された傷病又は疾病の療養上相当と認められるものに限ります ア診察イ薬剤又は治療材料の支給ウ処置 手術その他治療エ居宅における療養上の管

一について第一に 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号 以下 感染症法 という )第十二条の規定に基づき 後天性免疫不全症候群(以下 エイズという )の患者及びその病原体を保有している者であって無症状のもの(以下 HIV感染者 という )(以下 エイズの患者等

平成17年 月 日

Microsoft Word - RM最前線 doc

1 経 緯

日の属する月の初日から65 歳の誕生日の前日までの期間 (2) 条例第 2 条第 2 項第 2 号に掲げる重度心身障害者等である受給者受給資格の登録をした日の属する月の初日から70 歳の誕生日の属する月の末日 ( その誕生日が月の初日であるときはその日の属する月の前月の末日 ) までの期間 (3)

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

IPデータ通信網掲示

原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案(新旧対照表)

第 50 号 2016 年 10 月 4 日 企業年金業務室 短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大及び厚生年金の標準報酬月額の下限拡大に伴う厚生年金基金への影響について 平成 28 年 9 月 30 日付で厚生労働省年金局から発出された通知 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能

66 条の 6 改正のねらい 果通知 第 第 1 章改正労働安全衛生法 逐条解説 第 5 節 すべての健康診断結果の労働者への通知 特殊健康診断結果の追加 ( 第 66 条の 6 関係 ) 労働安全衛生法において 一般健康診断については 健康診断の実施後にその結果を本人へ通知する義務が規定されている

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

平成23年7月21日判決言渡し 同日原本領収 裁判所書記官

2017年度 施行簿 労働基準局 補償課分

Transcription:

目的 ( 第 1 条関係 ) 1 趣旨 本条は 本制度の目的について定めたものである すなわち 本法は 石綿により健康被害を受けた者及びその遺族に対し 医療費等の給付を支給するための措置を講ずることにより 石綿による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とするものである 2 概要 石綿による健康被害に関しては 本来原因者が被害者にその損害を賠償すべき責任を負うものである しかしながら 1 石綿へのばく露から発症までの潜伏期間が 30~40 年と非常に長期にわたること 2 石綿は 建築物や自動車など極めて広範な分野で利用されてきていることから 被害者の石綿へのばく露に係る事実の確認 すなわち 特定の場所における石綿の飛散と個別の健康被害に係る因果関係を立証することが極めて困難である また 石綿へのばく露による疾病である中皮腫や肺がんは重篤であり予後が悪いため 発症から大体 1 2 年で死亡するケースがほとんどである さらに 現在発症されている方が石綿にばく露したと想定される 30 年前から 40 年前には このような重篤な疾病を発症するかもしれないことは一般に知られておらず その危険性を知らないままに石綿にばく露したものである このため 従来の民事上の損害賠償の考え方では 原因者を特定することが困難であって因果関係を立証することができず したがって石綿による健康被害を受けた者については 自ら非がないにも関わらず損害賠償を受けられないでいた しかしながら一方で 1 石綿による健康被害が既に発生しており 今後 この健康被害は増加すると予想されること 2 健康被害の原因が石綿であることはおおむね明確であること 3 石綿による健康被害のうち中皮腫は治癒が困難な疾病であり このままでは 現に存在し また今後発生する健康被害者は何ら救済を受けられず

に死に至ることは厳然たる事実であり こうした状況にかんがみれば 石綿による健康被害者をその被害から救済するためには 現行の民事法に基づく解決に委ねることでは十分でなく このような被害者を隙間なく迅速に救済するための制度を整備することが社会的要請となっていた このような状況を踏まえ 国民の健康で文化的な生活を確保すべき責任を負う政府の立場から 国が民事の損害賠償とは別の行政的な救済措置を速やかに講ずることにより 石綿による健康被害の迅速な救済を図るため 本制度が設けられたところである 本制度において 救済給付の支給の対象にしているのは 健康被害を受けた者及びその遺族 である 救済給付の内容 具体的な対象疾病 遺族の範囲等については別の条において定めている 本制度においては 健康被害の 補償を図ること とは規定されていない これは 救済給付の支給が 健康被害の原因者に代わって被害者の損害をてん補するものではなく 国が行政的な救済措置を速やかに講ずることにより 健康被害による経済的負担の軽減を図るべく行われるものであることによる また 本制度は 石綿による健康被害を受けた者又はその遺族が 民法上の不法行為の制度があるにもかかわらず 石綿ばく露から発症までに長期間を要するために原因者の特定が困難であり 事実上損害賠償を受けられないという現状にかんがみ 社会的に気の毒な立場にある石綿による健康被害を受けた者等の負担軽減を 石綿の使用により経済的利得を受けてきた事業者をはじめとする社会全体で引き受けようとするものであり その意味で 本救済給付は見舞金的な性格を有している

定義 ( 指定疾病 )( 第 2 条第 1 項 第 3 項関係 ) 1 趣旨 本条は 健康被害の救済の対象となる疾病の指定及びその手続について定めたものである 指定疾病として 中皮腫及び肺がんについては法律上明記し その他の疾病については政令事項とした上で その他の疾病を定める政令の立案をするときは 中央環境審議会の意見を聴くこととしたものである 2 概要 確定診断された中皮腫については 8~9 割が石綿由来であるとされている また ばく露開始から発症までが 40 年程度の潜伏期間の非常に長い疾患であり 発症後の2 年生存率が 30パーセント 発症後の余命は中央値 15か月と 非常に予後の悪い疾患である また 肺がんについては 様々な原因があるものの 石綿の中 高濃度ばく露によって発症することが知られている また ばく露開始から発症までが 20 年 ~40 年の潜伏期間の長い疾患とされている 肺がん全体としては 5 年生存率が約 20パーセント 発症後の余命は中央値が 12か月と 非常に予後の悪い疾患であり 石綿ばく露による肺がんと石綿ばく露以外による肺がんとの予後を比較した報告は見あたらないが 同程度であると考えられている そのため 中皮腫及び肺がんを指定疾病とし 法律上明記することとした なお 中皮腫 肺がん以外の石綿関連疾患としては 石綿肺 良性石綿胸水 びまん性胸膜肥厚が知られているが これらについては 石綿による健康被害の救済における指定疾病に係る医学的判定に関する考え方について ( 答申 ) ( 平成 18 年 3 月 2 日中央環境審議会答申 ) において 以下のとおりとされている 1 石綿肺 1) 古くからよく知られた代表的な職業病であるじん肺症のひとつであり 特別加入制度も含めた労災保険制度が整備されてきたこと また 石綿肺はじん肺法に基づき管理区分の決定がなされており 管理 4あるいは管理 2 以上の合併症が労災補償の対象とされており 石綿肺と診断されたすべての者が労災補償の対象となっているのではないこと 2) 石綿ばく露歴の客観的な情報がなければ 石綿以外の原因で発症する

肺線維症と区別して石綿肺と診断することは難しいこと 3) ばく露後すぐ発症するものではなく ばく露から概ね 10 年以上経過して所見が現れること 4) じん肺法に定める第 1 型の石綿肺は それだけではほとんど症状もなく 肺機能や生活の質が大きく低下することはない 一部の症例で徐々に症状が進行し 肺機能の著しい低下等日常生活上の支障が生じる者もあるが 肺がん 中皮腫と異なり 短期間で死に至るような予後の非常に悪い疾病ではないこと 5) 職業ばく露での疾病しか知られておらず 一般環境経由による発症例の報告はこれまでにないこと 2 良性石綿胸水 びまん性胸膜肥厚 1) 胸水及びびまん性胸膜肥厚は 石綿以外の様々な原因で発症するもので 石綿ばく露の客観的な情報がなければ 他の原因によるものを区別して石綿によるものと判断することは難しいこと 2) 職業ばく露での発症しか知られておらず 一般環境経由による発症例の報告はこれまでにないこと 3) びまん性胸膜肥厚は疫学的 臨床的知見が少なく 潜伏期間について十分な知見がないが 良性石綿胸水は潜伏期間が他の石綿関連疾患より短いこと 4) 肺がん 中皮腫に比べ 予後不良とはいえないこと 5) 労災補償制度においても 平成 15 年の認定基準の改正によって疾病として対象とされたものであり これまでの認定者数も少ないこと 以上のような背景 状況を踏まえて検討した結果 今回の救済制度は 前述のように 石綿を原因とする中皮腫及び肺がんの特殊性にかんがみて ばく露歴を厳密に確認することなく 迅速な救済を図ることとしたものであり 当面 指定疾病はこれら 2 疾病とすることが適当である また その他の疾病については 様々な原因で発症するものであり 客観的な職業ばく露歴がなければ他の原因によるものと区別して診断することが難しいこと 職業性疾病として知られてきたものであり 一般環境経由による発症例の報告はこれまでにないことなどから 今後 さらに知見を収集し その取扱いについて検討していくことが適当である なお 指定疾病に付随する疾病等 ( 以下 続発症 という ) であって 日常生活に相当の制限が加わり 常に医師の管理による治療が必要であるようなものについては 石綿による健康被害の救済に関する法律の施行 ( 救済給付の支給関係の施行 ) について ( 通知 ) ( 平成 18 年 3 月 13 日環保企第 060313003 号 ) 第 3の2において 当該指定疾病と一体のものとして取り扱

うこととされている 個々の事例において ある疾病等が続発症であるか否かについては 医学の経験則により 相当程度の関連性があるか否かによって判断されるべきであるが 具体的には 中皮腫又は肺がんの続発症としては 次のような疾病等が考えられる 1 指定疾病の経過中又はその進展により当該指定疾病との関連で発症するもの ( 中皮腫又は肺がんの遠隔移転 肺がんの癌性胸膜炎 癌性リンパ管症など ) 2 指定疾病を母地として細菌感染等の外因が加わって発症するもの ( 肺炎 胸膜炎など ) 3 指定疾病の治療に伴う副作用や後遺症 ( 薬剤性肺障害 放射線肺炎 術後の肺機能障害など )