ワインセクターにおける EU の政策 Japan wine seminar November 2015
EU におけるワインの定義 政策の起点 ワインとは 潰れていてもいなくても 生のブドウ もしくはブドウ液を完全あるいは部分的にアルコール発酵させることにより得られる製品のことを言う これは EU 全体において また OIV( 国際ブドウ ワイン機構 ) により国際的にも採用されている厳格な定義である ワインの定義については ワインぶどうのみを原料とするという総体的なコンセンサスが世界全体に存在しているようであり そのことが 貿易を促進し TBT に関する問題が生じた際の解決を円滑化すると考えられる EU 法規においてワインのパラメーターが以下のように定義されている * 最低アルコール度数 ( 生産ゾーンにより 8,5-9%vol ) 15% vol の最高アルコール度数を規定 ( PDO/PGI ワインについては 4.5%vol を下限 20% vol を上限として適用除外を認めている ) * 総酸度は 3,5g/l を下回らないこと * スパークリングワイン圧力 - 2.5, 3.0, 3.5 バール *EU は 16 分類のブドウ製品を定義 例ワイン リキュールワイン スパークリングワイン セミスパークリング ワイン 乾燥ブドウから作られるワイン 過熟したブドウのワイン
3 主要経済データ EU 加盟 28 カ国によるワイン生産総量の推移状況 (2015 年 10 月 20 日迄 ) 1000 ヘクトリットル 国内消費 50% 転化 9% EU 域外 13% EU 域内 28% EU 域内で : - 生産の 65 % - 世界消費の 57 % - 世界の輸出の 70 % を占める イタリア フランスおよびスペインで全ワイン生産の 80% を占める
4 輸出 EU28 カ国 : 対 EU 域外 CN2204 ワイン貿易の構成 (2004-2014, 百万ユーロ ) 輸出 スパークリング瓶バルク瓶バルク貿易収支 EU28 Evolution カ国のCN2204 of CN2204 ワイン輸出量の推移 Wine exports ( 百リットル ) from EU28 in volume (Hl) 7 000 000 Other その他 Origines 6 000 000 United 米国 States 5 000 000 Russian ロシア連邦 4 000 000 Federation China 中国 3 000 000 Canada カナダ 2 000 000 Switzerland スイス 1 000 000 Japan 日本 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 輸入 NC2204ワイン輸出量 (2014, 輸出先別 ) 日本, 7% その他のEU スイス, 8% 域外, 18% カナダ, 8% 中国, 10% 米国, 25% アンゴラ, 4% ノルウェー 3% コートジボワール, 2% メキシコ, 1% ブラジル, 1% 3 500 3 000 2 500 2 000 1 500 1 000 500 EU28 Evolution カ国のCN2204 of CN2204 ワイン輸出額の推移 Wine exports from EU28 in value (Mio ( 百万ユーロ Eur) ) Other その他 Origines United 米国 States Switzerland スイス Japan 日本 Canada カナダ China 中国 Russian ロシア連邦 Federation 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 ロシア連邦, 13%
5 2025 年に向けた競争力の見通し調査 中国 高 市場成長 米国 日本 香港 ドイツ 日本市場における成長見通し : 家庭での消費にもとづく穏やかな成長 価格感度 高価格帯ではなく 主に低 中価格帯ワイン 小売 オンライン販売 低 ロシア 英国 デンマーク 現在の貿易制度の下では EU の市場シェアは競合相手に対して着実に減少を続ける見通し 低 相対市場占有率 高
6 EU のワイン政策 政策措置 2008 年以前の状況 ワインの生産および在庫の余剰 質の低いワインが広く流通 市場介入策 ( 蒸留 / 抜根奨励 ) 2008 年のワイン改革の目標 需給バランスの再構築 ワイン産業の競争力強化 国内支援プログラム ( 構造措置 ) 2013 年の新改革 2016 年 1 月 1 日よりブドウの新植認可制度を開始 ( 毎年 1% 増 ) 2014-2018 年支援プログラムにおける新たな支援策
7 EU のワイン産業に対する支援措置 2009-2013:15 の支援措置 予算 : 53 億ユーロ ( 実行済 : 98%) 2014-2018: 16 の支援措置 予算 : 57 億ユーロ (3 つの新措置 ) オーストリア, ブルガリア, キプロス, チェコ, ドイツ, ギリシャ, スペイン, フランス, クロアチア ( 新 ), ハンガリー, イタリア, リトアニア, ポルトガル, ルーマニア, スロベニア, スロバキア ( ルクセンブルグ, マルタ, 英国 直接支援への完全転換 )
8 手段別ワイン産業支援措置 (Wine Envelope) 内訳 (2014-2018 千ユーロ ) 投資 19% イノベーション 0% 副産物蒸留 7% 単一支払制度 12% 作物保険 2% 販売促進 19% 投資信託 0% グリーンハーベスト 1% 健康または植物衛生の理由によるブドウ畑再植え付け 0% 再整備および転換 40%
EU のワイン製造慣行 ワインは天然で農産品と考えられており ワインぶどうのみを原料とする しかしながら 一定のワイン製造 ( もしくはブドウ酒醸造 ) の慣行が必要である * ワイン添加物 * 加工助剤 * 物理的処理プロセス ワインの保存のための物質 ( アスコルビン酸 二酸化硫黄 ) ろ過 純化 発酵 安定のための物質 承認された醸造慣行は ワイン添加物を含め EU 法規と OIV のワイン醸造慣行に関する国際規約 (http://www.oiv.int/oiv/info/enplubicationoiv#code) に明記されている
EU 加盟 28 カ国における新醸造行為 法律 ( ラベル表記と制限 ) 欧州委員会権限委譲法 OIV 勧告 加盟国は EU 域内販売用に限り 年間最大 50,000hl の実験的醸造行為を許可することができる ヒトの健康 誤解のない ワインの自然の本質的な特徴の保全 当該製品構成の本質的な違いをもたらさない 最低限の環境保護 10
EU におけるワイン製造慣行 EU ワインの醸造慣行を認可する際 欧州委員会は -OIV が勧告および公表する醸造慣行と分析法を勘案する - 人の健康保護 事実誤認によって生じうる消費者のリスク ワインの天然且つ本質的な特徴の保存ができること 対象製品の構造を大きく変えないようにすることを勘案する しかしながら 基本的な法律 ( 理事会と欧州議会によって決定 ) で規定するルールもある *EU の一部のワイン産地における濃縮 酸性化 脱酸 * ワイン製造慣行における制限 - 加水の排除 ( 特定の技術的必要性による場合は例外 ) アルコール添加の排除 ( りキュールワイン スパークリングワイン 蒸留用に強化されたワイン セミスパークリングワインは例外 )
EU のワイン製造慣行 EU へのワイン輸入 ( TFEU に従って締結された国際協定において 他の規定がされている場合を除く ) 輸入品は OIV が勧告および公表する醸造慣行に沿って製造されたものとする
新醸造行為, 輸入ワインの認可 国際葡萄 ワイン国際機構綱領に基づいた 28 加盟国間の調和 (46 カ国および 12 のオブザーバー ) 2 カ国間協定による相互承認 (2002 2009) その他の国々
ワイン製造慣行 国際貿易の観点 ワインは国際的に取引されている製品であるため 国際協定が必要である EU は主要パートナー国 ( 米 中 南ア 豪 チリ ) と二者間協定と締結している 米国全体 8 カ国との多角的協定 相互承認に基づく WWTG ( 世界ワイン通商グループ ) - アルゼンチン オーストラリア カナダ チリ ジョージア ニュージーランド 南アフリカ アメリカ合衆国というワイン生産国 1998 年設立この手法にはリスクあり * ルールが余り厳格ではなく ワインに関する手法が分散化する ( ワインの定義と慣行が広くなる ) * ワインが他の食品の様になる 起源との関係が希薄な単なる加工品となる 調和が解決の鍵となり得る - 国際貿易の拡大とパートナーの増加 OIV が良い慣行モデルである - 約 100 年の間 OIV は慣行規範の制定を行ってきた ワインに関する国際基準を担ってきた EU の法律を含む全ての国内法が OIV 勧告とほぼ同じ内容であり 全ての主要ワイン生産国が OIV 勧告の策定に積極的に関与している
ワインセクター GI( 地理的表示 ) ワインの品質政策
EU の品質認証制度 PDO: 原産地呼称保護 PGI: 地理的表示保護 = 地理的表示 (GI) 16
地理的表示保護 (PGI) 原産地呼称保護 (PDO) 1. 定義された地理的領域 2. 特定の製品 + 3. 1. と 2. の繋がり + = PDO PGI 17
要約 種類 PDO 地域 特定の場所 国のいずれかの名前 PGI 地域 特定の場所 国のいずれかを指す名前 地理的領域とのつながり ( 自然 & 人的要因 ) 製品の質および特徴と本質的にありは排他的に関連している 質 評判 他の特徴のいずれかに本質的に関連している 生産段階全てが地理的領域内全てが地理的領域内 ぶどう 100% 地理的領域で原産 85% 地理的領域で原産 保護 直接的 & 間接的商業利用 ; 誤用もしくは模倣もしくは再現 ; 原産地の不正もしくは紛らわしい表示 直接的 & 間接的商業利用 ; 誤用もしくは模倣もしくは再現 ; 原産地の不正もしくは紛らわしい表示 18
2015 年 10 月登録された全ての PDO/PGI の分類 協定附属書 Iのその他の製品 1% 生魚 軟体動物 甲殻類 1% その他の動物性生産品 1% 油脂 4% ビール 1% 果物 野菜 穀物 11% パン 菓子 ケーキ 2% 蒸留酒 10% その他の製品 1% チーズ 7% 食肉製品 5% 生肉 ( 及び内臓肉 ) 4% ワイン 52% 19
販売価値 EU における GI 製品の販売価値の概算 : 2010 年において 543 億 ( 生産地域における卸売り段階の概算 ) = EU の食 飲料部門全体の 5.7% EU の GI 製品の輸出価値の概算 - 115 億 = EU の食飲料部門輸出の 15% 20
プレミアム価値 市場において GI 製品に付与されるプレミアム価値 非 GI 製品と比べ 平均で 2.23 倍高い価格で販売される EU27 におけるスキームごとのプレミアム価値の割合! GI 仕様を満たすために必要な追加経費を勘案していないため 付加価値および収益性は反映しない Wine Spirits Agr prod. and food. 1.55 2.57 2.75 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 21