3GPP LTE/SAE 標準仕様完成における活動と貢献 LTE SAE 標準化 3GPP LTE/SAE 標準仕様完成における活動と貢献 2009 年 3 月に完成した 3GPP Release 8 標準化仕様は なかむら たけひろ べ た さだゆき 中村 武宏 こしみず たかし に し だ ネットワーク開発部 輿水 敬 西田 克利 それまでの仕様と比較して大きな進化を遂げており この 仕様の中核となる無線アクセス仕様とコアネットワーク仕 あ 無線アクセス開発部 様は それぞれ LTE と SAE という作業項目名称で 2004 年 た な か い つ 安部田 貞行 かつとし ま 田中 威津馬 より標準化作業が進められてきた ドコモは当初から 活 発な技術提案や標準化仕様への入力を行うとともに 全体 ま と ば 研究開発推進部 会合や仕様策定作業部会にて要職を務めるなど多大に貢献 な お と 的場 直人 し その結果 LTE/SAE の開発に必要な標準化仕様の完成 に至った 1. まえがき 2009年3月の3GPP TSG Technical Specification Group #43 プレナ は関連標準化仕様の完成に至り 含む 多様なアクセスを収容する 早期の商用サービス開始に備えた ことが可能なネットワーク基盤と 開発着手が可能となった なっている 本稿では この LTE/SAE の標準 において SAE(System LTE/SAEの 3GPP標準化は Rel. 化策定にかかわったドコモの活動 Architecture Evolution)仕様の凍結が 7のステージ1開始から Rel. 8のス について ドコモが描く将来の 宣言され 3GPP Release 以下Rel. テージ 3 完成まで 足かけ 5 年の長 ネットワークや それを満たすた 8 仕様の主要項目である LTE(Long きにわたる標準化活動の成果であ めの要求条件が3GPPの技術要求仕 Term Evolution)/SAE 仕様が完成し る LTE/SAE 標準化のマイルス 様にどのように反映されたのか た この LTE/SAE は その前の仕 トーンを図 1 に示す 3GPP 標準化 ドコモがどのような技術提案を 様と比較しても 大きな進化を遂 は 要求条件を策定するステージ 3GPP に対して行ってきたのかな げている 具体的には 無線アク 1 要求条件に基づいたアーキテク ど コアネットワーク技術と無線 セス仕様である LTE は アクセス チャを決定するステージ2 アーキ アクセス技術の各分野における活 方式に新しくOFDMA Orthogonal テクチャ上で使用するプロトコル 動経緯と貢献内容を解説する Frequency Division Multiple Access の仕様化を担当するステージ3に分 を採用し Rel.7 の高速パケット伝 けられる リ会合 36 1 アーキテクチャを採用し LTE を 2. ドコモの考える LTE/SAE への ネットワーク進化 送技術である HSPA High Speed ドコモは この LTE/SAE 仕様策 Packet Access と比較して 周波数 定に関し 活発なコンセプト提案 利用効率が 3 4 倍と大幅な向上 や技術提案 ラポータ エディ 現在ドコモがサービスを提供し を遂げている また コアネット タ 仕様策定作業部会や全体会合 ている FOMA ハイスピードの最大 ワーク仕様である SAE は IP パ のリーダを務めるなど積極的貢献 データ通信速度は 7.2Mbit/s である ケット伝送に最適なネットワーク を行った その結果 2009年3月に が 技術仕様上は HSDPA High 1 プレナリ会合 3GPPのTSG会合の最上位 会合 現在 TSG SA, TSG RAN, TSG CT, TSG GERANの4つがプレナリ会合と称さ れている 2 ラポータ 個々のWIや仕様ごとに 仕様 の編集 作業進捗の管理やWG会合への報 現在 プロダクト部 2 告を行う役割 NTT DOCOMO テクニカル ジャーナル Vol. 17 No. 2
Speed Downlink Packet Access Protocol などのデータ伝送を高速 制から定額制に変わっていくこと /HSUPA High Speed Uplink Packet に行い ユーザがストレスなく通 今後のサービス発展のため サー Access を用いて 最大下り 信を行うためには 接続遅延 伝 ビスの高度化と付加価値化を容易 14.4Mbit/s, 上り5.7Mbit/sの伝送が 送遅延の低減も重要な課題である とする仕組みを備えることに加え 可能である しかしながら デー また システム導入にあたり 設 て LTE のような新しい無線方式 タトラフィック需要の増大 コン 備投資や運用コストが安価で適正 を導入する際に 経済的なネット テンツの急速な大容量化により なものとするために 無線ネット ワークマイグレーションを可能と 伝送速度や容量の不足が早期に顕 ワークと移動端末にかかわるアー することが必要となる これら双 在化することは明らかであり ビッ キテクチャの単純化も求められて 方の要求を満たすために ドコモ トコストの低減が重要課題となっ いた はコアネットワークの IP 化すなわ コアネットワークにおいては ていた 加えて TCP/IP Transmission Control Protocol/Internet Calendar Year 1-12月 今後のサービスのトレンドが従量 2004年 2005年 2006年 Rel. 7 3GPP全体スケジュール ちAIPN All-IP Network を提唱[1] し 段階的な開発を進めてきた 2007年 2008年 Rel. 8 2009年 Rel. 9 LTE 11月ワークショップ開催 ドコモSuper3Gコンセプト提案 RAN ワークショップ 事前準備 SI Feasibility Study 12月26社のサポートを得て LTE検討開始を承認 Air I/F UTRAN アーキテクチャ W I コアスペック W I 詳細仕様 テスト仕様など 9月に40社のサポートを得て LTE W I承認 Rel.8 標準化完了 SAE 事前準備 オペレータ会合など Vision, Evolution Scenario, Requirements 欧州研究プロジェクトなど AIPN W I承認 AIPN TR AIPN要求条件仕様 SAE要求条件仕様 要求条件 サービス検討 SAE W I承認 アーキテクチャ技術検討 アーキテクチャと情報フロー 基本アーキテクチャ 決着 仕様書開始 アーキテクチャ仕様化 IETFにてPMIPプロトコル仕様化 プロトコル仕様 アクセスおよびコア プロトコル仕様化 図1 NTT DOCOMO テクニカル ジャーナル Vol. 17 No. 2 標準化スケジュール 37
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アクセスシステムの基地局である び認証処理は S6aインタフェース 行う在圏パケットゲートウェイで enodeb enb を収容する MME によりHSS Home Subscriber Serv- あり enb との間でユーザデータ Mobility Management Entity およ er と連携して行う 移動管理で の送受信を行うとともに S-GWと び S-GW Serving - Gateway と は LTE と 3G の無線エリア間の移 P-GW 区間の S5 インタフェースに i-mode や IMS といったコアネッ 動による位置登録処理を効率化す おいて 接続する外部パケット トワーク外のパケットネットワー るため MME は S3 インタフェー ネットワーク PDN 単位の通信 クとの接続点であり 3GPP アクセ スを介して 3G コアネットワーク 経路の設定 解放を実施する ま スおよび非3GPP無線アクセスを収 の論理ノードであるSGSN Serving た 移動端末が 3G に在圏する場 容するP-GW Packet Data Network- GPRS Support Node と連携した位 合 S4 インタフェースにて接続す Gateway QoS および課金制御な 置登録制御を行うことが可能であ るSGSNとの間で制御信号の送受信 どを実施する PCRF Policy and る また MME は enb および を行い S - GW と SGSN との間の Charging Rules Function から構成 S-GW との間で S1-MME および ユーザデータ転送経路の設定を行 される S11 インタフェースにより制御信 う すなわち S-GW は LTE と 3G MMEはS1-MMEインタフェース 号の送受信を行い S-GWからeNB 無線のユーザデータ転送における により enb を収容し 端末の移動 の区間である S1-U インタフェース 経路切替えポイントとなる デー 管理 認証 セキュリティ制御 お におけるユーザデータ転送経路の タ転送においては S-GWはGxcイ よびユーザデータ転送経路の設定 設定 解放を行う ンタフェースにより PCRFから通 S-GWは ユーザデータの伝送を 処理を行う 端末の移動管理およ 知されたポリシー制御情報に従っ て IP パケットの伝達品質制御など を行う 3G無線アクセス FOMA Iu RNC /NodeB S6d/Gr HSS S6a Gxc 介して PDN と接続し IP アドレ PCRF S3 MME Rx Gx S11 Gxa SGi S1-MME S10 enb LTE無線 アクセス P-GW は SGi インタフェースを SWx S4 SGSN S1-U S-GW スの割当てなどを実施する また P-GW は 移動端末が LTE や 3G と 外部パケット ネットワーク P-GW S5 i-mode IMSなど いった3GPPで規定する無線アクセ S6b スと 非3GPP無線の間を移動する S2b X2 S2a SWm epdg 3GPP AAA サーバ の切替えポイントとなる P-GWは SWn 信頼できる 非3GPP無線 アクセス 信頼できない 非3GPP無線 アクセス 場合において ユーザデータ転送 Gx インタフェースにより PCRF から通知されたポリシー制御情報 SWa STa に基づき IP パケットの伝達品質 制御などを行う S1 などのアルファベットは標準上のインタフェース名称 図 2 SAE アーキテクチャ PCRFは P-GW S-GWおよび信 頼できる非 3GPP 無線アクセス Trusted Non-3GPP IP Access にお NTT DOCOMO テクニカル ジャーナル Vol. 17 No. 2 39
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して 3GPP SA2会合にてドコモが は行われていなかった しかし ていた 一方 LTEでは 緊急配信 問題提起を行い CS フォールバッ 地震などの緊急情報をより多くの サーバは enbを収容するmme単 ク仕様[10]がRel.8で完成した ユーザに より早くより効率良く 位に緊急情報メッセージを送信し 配信する技術と それを提供する MMEは指定されたエリア内のeNB を図 3 で示す LTE と 3G 無線両方 基盤が必要であるため LTE でも へ配信する 階層型アーキテクチ の機能をもつデュアル端末でも 3G と共通の緊急配信サーバを用 ャが採用された 図 4 このアー LTE と 3G の無線を同時に見ること い 3G と同じ要求条件を満たすド キテクチャにより 緊急配信サー はできない 音声着信を LTE に在 コモからの LTE 向け ETWS 提案が バの情報配信時の負荷低減と そ 圏している移動端末に通知するた 合意に至った 3G では 緊急配信 れに伴う配信時間の遅延防止を実 めに LTE の位置登録エリアの位 サーバから直接 RNC Radio Net- 現している 置から重なって存在する 3G 位置登 work Controller に対して情報を送 録を特定し 当該 3G 位置登録を収 信するアーキテクチャが採用され CS フォールバックの基本的機能 容している交換機に対して位置登 録制御を行う この機能により 着信要求は CS ドメインの交換機 ①音声着信呼出し ネットワーク LTE MSC から MME を経由して LTE に在圏している移動端末に届 ②3Gへのモード切替 けられる これを受信した移動端 ③音声着信応答 末は 利用する無線を LTE から 3G に切り替えることにより 音声サ 3G FOMA ④音声通話 ービスの提供を可能とする 図3 CS フォールバック 3.4 LTE における緊急情報 配信基盤標準化 ドコモは 緊急情報配信基盤で ある 3G 向け エリアメールサー 3G ビス [11]の さらなる高速化およ RNC び高度化を目指し 3GPP において 日本の要求条件に特化した ETWS Earthquake and Tsunami Warning System [12][13]を提案し ラポー 緊急配信 サーバ MME LTE タを務めるなど 積極的な標準化 enb を推進してきた ETWS は当初 3G のみが対象であり LTE/SAE では 図4 ETWS アーキテクチャ 緊急情報配信のための基盤の検討 NTT DOCOMO テクニカル ジャーナル Vol. 17 No. 2 41
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れたが FDD Frequency Division LTE の性能改善に貢献するととも プロトコル構成を実現している Duplex /TDD Time Division に 副議長およびラポータとして その結果 遅延の削減のみならず Duplex の共通性の重視などを考 議論の推進のための課題のリスト 試験パターンの削減による試験コ 慮 し 最 終 的 に はドコモを含む アップやRAN-WG1の技術検討結果 ストの低減を実現している[21] ド 多数の企業が推す下りリンク をまとめたTR25.814[22]のエディタ コモは 数多くの技術的な寄書を OFDMA 上りリンク SC-FDMA としても LTE の推進に貢献している 入力するとともに 議論を推進さ s RAN-WG2 せるための数多くのモデレータ Single Carrier - Frequency Division 9 Multiple Access が採用されてい 無線プロトコルの検討を行う る OFDM は 広帯域伝送で影響 RAN-WG2では VoIPサポートの能 ど 仕様の完成に貢献した が大きくなるマルチパス干渉に対 力を有しながら PS ドメインに d RAN-WG3 する耐性が高く サブキャリア数 フォーカスすることにより 移動 RAN アーキテクチャの検討を行 を変更することで広範囲な周波数 端末の状態数を 3G から大幅に削減 うRAN-WG3において 無線制御局 帯域幅に柔軟に対応ができる 一 し RRC Radio Resource Control のないフラットなアーキテクチャ 方 上りリンクとしては 移動端 Connected modeとrrc idleの2状態 を構成することにより 伝送路イ 末 UE User Equipment のピー のみとし さらにトランスポート ンタフェース数の削減を実現し や標準仕様のエディタを務めるな 8 ク電力対平均電力比 PAPR Peak- チャネル の数の大幅な削減を実 シンプルかつシームレスなハンド to-average Power Ratio の低減によ 現し シンプルかつ効率的に無線 オーバを実現している 図 5 ド る低消費電力化が重要な要素であ る SC-FDMAはシングルキャリア のためPAPRを低減し さらにユー ザ間を周波数上で直交化すること により セル内のユーザ間干渉が 大幅に低減できる さらに最大ス ループットや周波数利用効率の大 幅な改善を実現するために 適応 S-GW MME S1-MME MME S1-U S1-U S1-U S1-MME S1-MME 変 調 や Hybrid ARQ Automatic Repeat and request など既存の技 E-UTRAN X2 術に加えて MIMO Multiple Input enb X2 ジューリングなどのさまざまな技 X2 Multiple Output や周波数領域スケ 術を取り入れることにより 周波 数利用効率の大幅な改善を実現し ている[20][21] ドコモでは これ らの技術を含む多くの分野に対し enb 図5 RAN アーキテクチャ て数多くの技術的寄書を入力し 8 トランスポートチャネル 複数の論理チャ ネルを束ねて効率よく物理チャネルにマッ ピングするために中間層に定義されるチャ ネル NTT DOCOMO テクニカル ジャーナル Vol. 17 No. 2 9 モデレータ 電子メールで議論を行う際に とりまとめを行い WG で報告を行う役 割 43
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