特集 平成 27 年 5 月 28 日東京税関 半導体製造装置の輸出 成田空港のシェアは全国 1 位で 輸出金額の 3 割以上を占める (214 年 ) 214 年は スマートフォン市場拡大等の要因から 輸出金額が 3 年ぶりに増加 ( 全国 ) はじめに携帯電話 パソコン 家電製品 自動車 私たちが日々の生活の中で利用しているこれらの機器には情報処理を司る頭脳の役割を担う半導体 ( 集積回路 ) が組み込まれています 半導体は 情報処理機能を持つありとあらゆる機器に組み込まれており 現代社会において必要不可欠なものとなっています この半導体を製造するために用いられるのが半導体製造装置です 日本製の半導体製造装置は国際競争力が高く 業界によれば 近年における日本製半導体製造装置の販売シェアは 全世界の約 1/3を占めるとのことで 日本の主要な輸出品目の一つとなっています 今回は 昨年の成田空港における金額シェアが全国の36% を占める半導体製造装置の輸出にスポットを当ててみました 12, 1, 8, 6, 4, 2, 半導体製造装置の輸出推移 全国金額 成田空港金額 本特集の 半導体製造装置 は 次のに分類されるものについてまとめたものです 8486.1: 半導体ボール又は半導体ウエハー製造用の機器 8486.2: 半導体デバイス又は集積回路製造用の機器 26 年以前は 上記品目を特定できる統計品目番号がありません 本特集の輸出実績は 特段の記載がない限り 8486.1 の実績と 8486.2 の実績の合計値です 成田空港の実績には 東京航空貨物出張所 ( 原木 ) の実績を含みます 1
1. 輸出動向 合計 合計値前年比 全国 合計値前年比 成田空港 8486.2 8486.1 8486.2 8486.1 27 年 1,233-1,23 9,3 6,198-364 5,835 28 年 6,588 64.4% 98 5,68 2,824 45.6% 165 2,659 29 年 3,743 56.8% 73 3,4 1,54 53.3% 199 1,36 21 年 8,497 227.% 1,589 6,98 3,336 221.7% 259 3,76 211 年 8,658 11.9% 1,787 6,871 2,97 89.% 196 2,774 212 年 6,715 77.6% 73 5,985 2,333 78.6% 166 2,167 213 年 6,495 96.7% 557 5,939 2,261 96.9% 74 2,187 214 年 7,43 114.% 687 6,717 2,645 117.% 117 2,528 214 年 1-4 月 2,895-229 2,666 95-36 913 215 年 1-4 月 2,746 94.9% 19 2,556 867 91.3% 22 845 合計 端数処理 ( 四捨五入 ) の関係で 合計が一致しない場合があります 単位 : 億円 214 年はスマホが牽引し 輸出が増加 214 年の全国における半導体製造装置の輸出実績は 半導体ボール又は半導体ウエハー製造用の機器 ( 8486.1) が687 億円 半導体デバイス又は集積回路製造用の機器 ( 同 8486.2) が6,717 億円で 合計 7,43 億円でした 27 年からの半導体製造装置の輸出額の推移を見ますと リーマンショック以降の世界同時不況の影響により半導体需要が落ち込み 29 年にかけて大きく減少しましたが その後回復し 21 年に大きく増加しました その後 212 年及び213 年は減少傾向でしたが 214 年は再び増加に転じました 業界によれば 214 年はスマートフォン市場の拡大によって半導体需要が高まり 半導体製造装置の輸出が好調であったとのことです なお 成田空港における輸出額の推移も 全国と同様の傾向となっています 2. 港別シェア (214 年 ) 神戸港 5.5% 博多港 6.7% 横浜港 4.4% 大阪港 3.5% 下関港 11.5% 広島空港 3.3% 東京港 12.5% その他 2.9% 成田空港 35.7% 関西空港 14.1% 214 年全国金額 7,43 億円 2 成田空港の金額シェアは35.7% で1 位 214 年における半導体製造装置の港別輸出金額シェアを見ますと 成田空港は 金額シェアの35.7% を占め 全国 1 位となっています その他の港の状況を見ますと 2 位は関西空港で 金額シェア 14.1% 3 位は東京港で 金額シェア12.5% となっており 全体では 空港と海港のシェアがおよそ半々となっています 半導体製造装置は かつては航空便で輸送される割合が高かったようですが 近年では モーダルシフト ( ) の推進等の背景もあり 海上輸送も積極的に利用されているようです モーダルシフト : より環境負荷の低い輸送手段への転換
3. 仕向国別輸出状況 ( 全国 ) 国別シェア (214 年 ) 国別推移 5, 4, 3, 2, 1, 6 5 4 3 2 1 シンガポール 3.1% アイルランド 6.9% 中華人民共和国 13.7% マレーシア 1.1% 大韓民国 18.7% 台湾 ドイツ.8% 中華人民共和国 その他 2.7% 台湾 32.3% アメリカ合衆国 2.6% 214 年全国金額 7,43 億円 大韓民国 アメリカ合衆国 27 年 28 年 29 年 21 年 211 年 212 年 213 年 214 年 シンガポールマレーシアフィリピン ドイツアイルランドイスラエル 27 年 28 年 29 年 21 年 211 年 212 年 213 年 214 年 3 台湾 米国 韓国 中国向けが大きなシェア 全国における214 年の国別内訳を見ますと 台湾向けの輸出が 金額シェア32.3% で1 位 アメリカ合衆国向けが金額シェア2.6% で2 位 大韓民国向けが18.7% で3 位 中華人民共和国向けが13.7% で4 位となっています これら4 カ国を合計すると 全体の約 85% を占め 大手半導体メーカーを擁するこれらの国々向けの輸出が盛んな状況となっています 次に 仕向国別の輸出額の推移を見ますと 台湾向けは 27 年以降大きく落ち込みましたが 214 年まで連続で1 位を維持しています アメリカ合衆国向け 大韓民国向け 中華人民共和国向けについては 概ね横ばいで推移しています 大手半導体メーカーは技術開発にしのぎを削っており 毎年 生産設備を始めとする多額の投資を行うため これらの国々に対しては 毎年継続して一定規模の輸出があるようです 一方で その他の主な国々の状況を見ますと 年によって輸出額に大きな差があることが分かります イスラエル向けは 28 年及び211 年に輸出が活発でしたが 214 年は僅かとなっています また アイルランド向けは 214 年に大きく輸出を伸ばしています ドイツ向けやシンガポール向けについても 年によって輸出に波があります これらの国々については 所在する半導体メーカーの製造ライン構築状況によって 年ごとの輸出額が増減するようです
4 半導体 ( 集積回路 ) のできるまで 半導体ができるまでに用いられる装置及び製造工程を簡単にご紹介します 資料提供 : 一般社団法人日本半導体製造装置協会 前 工 程 半導体設計用装置 - 回路設計 パターン設計 小さなチップの中に どのような回路を いかに効率よく配置するかなど 回路図を作り検討を重ねる マスクレチクル用製造装置 - フォトマスク マスクは IC のパターンをウェーハに焼付けするための写真のネガに相当するもので 1 チップ分ずつガラス上に焼き付けていく ウェーハプロセス用処理装置 - 素子形成 ( ウェーハプロセス )/ 電極形成 / ウェーハ検査 8486.2 に属する装置が主にこの工程を担います ウェーハ製造用装置 - ウェーハ製造 8486.1 に属する装置が主にこの工程を担います 多結晶を石英ルツボの中で溶融し 種結晶棒を回転させながら引上げ単結晶棒 ( インゴット ) をつくる インゴットを所定の厚さに切断し ウェーハをつくる ウェーハの表面を鏡面状に研磨する ウェーハに酸化膜をつける レジスト ( 感光剤 ) を塗布する マスクを介し露光してパターンを焼きつける 現像して感光したレジストを定着する 感光しなかった部分のレジストは洗浄される エッチングしてレジストのない部分の酸化膜を除去する その後 レジストも取り除く ウェーハにイオン注入や高温拡散を行うと酸化膜のないシリコン部分だけが半導体になる すべてのパターンが形成されたら繰り返しから抜け電極形成へ ウェーハ表面を研磨し パターンの凹凸を平坦化する - 上記 レジスト塗布 からを繰り返す - スパッタで 電極配線用のアルミ金属膜を形成する ウェーハをチップごとに試験し 良品 不良品の確定をし 不良品にはマークをつける 後工程 組立用装置 - 組み立て ウェーハをチップに切断する 不良マークのないチップをリードフレームに固定する リードフレームとチップを金線で接合する セラミックや樹脂パッケージに全体を封入する フレームを切断し リードを成型する 検査用装置 - 試験 / 検査 マーキング 機能試験を行いながら温度電圧ストレスを加える 電気的特性検査 外観構造検査などを行い不良品を取り除く 半導体製品表面にレーザーで品名などを印字する 半導体完成!
( 参考 ) 半導体製造装置の輸入状況 ( 全国 ) 輸入動向 3, 2,5 2, 1,5 1, 5 27 年 28 年 29 年 21 年 211 年 212 年 213 年 214 年 中華人民共和国 2.4% ドイツ 2.6% シンガポール 14.6% オランダ 28.7% 大韓民国 2.3% その他 4.8% アメリカ合衆国 44.7% 214 年全国金額 1,782 億円 半導体製造装置は 海外からも輸入されており 主にアメリカ合衆国 オランダ シンガポール等から輸入されています 214 年における全国の輸入実績は 1,782 億円であり 2 年連続で増加しているものの 半導体製造装置は依然として 輸出が優勢の品目となっています 上記輸入実績は 輸入統計品目番号 8486.1( 半導体ボール又は半導体ウエハー製造用の機器 ) 及び 8486.2( 半導体デバイス又は集積回路製造用の機器 ) の合計値です 半導体製造装置の輸出今後の見通し業界によれば 世界的なスマートフォン市場の拡大による半導体需要の高まり等の要因から 近年 日本製半導体製造装置の売上は増加傾向にあった 平成 27 年度前半も この傾向が続くと思われるが その後は不透明な状況である 日本製半導体製造装置の売上高の約 8 割は海外への輸出によるものであり 売上は世界経済の情勢に大きく左右される 世界的な不況に陥ると 各国の半導体メーカーの設備投資が控えられ 半導体製造装置の売上も落ち込むこととなる 今後も 世界経済が堅調に推移し 安定した需要が生まれることが期待される とのことです 取材協力 : 一般社団法人日本半導体製造装置協会 5 本資料に関する問い合わせ 東京税関調査部調査統計課 TEL:3-3599-6385( 直通 ) 135-8615 東京都江東区青海 2-7-11 東京港湾合同庁舎 2 階 本資料を引用する際は 東京税関の資料による旨を注記して下さい
6 本文中に掲載されているグラフの具体的な数量及び金額 2. 港別シェア (214 年 ) 港 金額 成田空港 2,645 関西空港 1,42 東京港 925 下関港 849 博多港 494 神戸港 44 横浜港 325 大阪港 261 広島空港 244 その他 216 総計 7,43 3. 仕向国別 輸出状況 ( 全国 ) 国別シェア (214 年 ) 国 金額 台湾 2,391 アメリカ合衆国 1,529 大韓民国 1,382 中華人民共和国 1,13 アイルランド 511 シンガポール 231 マレーシア 85 ドイツ 62 その他 2 総計 7,43 国別推移 台湾 アメリカ合衆国 大韓民国 中華人民共和国 アイルランド シンガポール マレーシア ドイツ フィリピン イスラエル 27 年 4,491 1,753 1,765 923-546 93 211 35 195 28 年 2,48 1,159 1,241 965 2 456 114 78 3 252 29 年 1,417 714 634 488 185 49 54 37 29 21 年 2,749 1,33 1,738 1,296-483 135 357 158 7 211 年 2,51 1,718 1,797 1,575 2 385 9 4 77 265 212 年 1,899 1,512 1,652 696-19 84 22 4 137 213 年 2,431 1,25 1,118 969 119 235 67 132 26 7 214 年 2,391 1,529 1,382 1,13 511 231 85 62 27 2 ( 参考 ) 半導体製造装置の輸入状況 ( 全国 ) 輸入動向 国別シェア (214 年 ) 金額 国 金額 27 年 2,582 アメリカ合衆国 797 28 年 1,784 オランダ 511 29 年 483 シンガポール 261 21 年 1,57 ドイツ 45 211 年 1,399 中華人民共和国 43 大韓民国 41 212 年 525 その他 85 213 年 1,17 総計 1,782 214 年 1,782