「環境用水の導入」事例集~魅力ある身近な水環境づくりにむけて~

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流域及び河川の概要(案).doc

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の洪水調節計画は 河川整備基本方針レベルの洪水から決められており ダムによる洪水調節効果を発揮する 遊水地案 は 遊水地の洪水調節計画は大戸川の河川整備計画レベルの洪水から決めることを想定しており 遊水地による洪水調節効果が完全には発揮されないことがある 瀬田川新堰案 は 瀬田川新堰の洪水調節計画は

国営農地再編整備事業 ニセコ地区 事業の概要あぶたぐん本事業は 北海道南西部に位置する虻田郡ニセコ町の畑地帯において 区画整理を行い 生産性の高い基盤の形成を通じて農業の振興と耕作放棄地の解消 発生防止を図るものである 事業の目的 必要性本地区の農地は 基盤整備が遅れているため 小区画や急傾斜であり

農業用水質基準 農林水産技術会議昭和 46 年 10 月 4 日 項目 ph( 水素イオン濃度 ) COD( 化学的酸素要求量 ) SS( 浮遊物質 ) DO( 溶存酸素 ) T-N( 全窒素濃度 ) EC( 電気伝導度 ) As( ヒ素 ) Zn( 亜鉛 ) Cu( 銅 ) 基準値 6.0~7.5

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

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(4) 対象区域 基本方針の対象区域は市街化調整区域全体とし 都市計画マスタープランにおいて田園都市ゾーン及び公園 緑地ゾーンとして位置付けられている区域を基本とします 対象区域図 市街化調整区域 2 資料 : 八潮市都市計画マスタープラン 土地利用方針図

Microsoft Word - 栃木県土地改良区運営強化推進計画(最終版)

Taro-【済】85頁-91頁_07主要事業の概要(農地整備課)

目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

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利水補給

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1 次期計画の策定の基本的考え方 県民会議は 県民参加による水源環境保全 再生のための新たな仕組みづくり として 設置され 現在まで 3 年にわたり 県民フォーラム等により県民参加を図りながら 各年度の点検を行い 県に報告してきたところである その中において 現行計画の各施策は 水源環境の保全 再生

1 自然に対する関心 (1) 自然に対する関心 平成 24 年 6 月 平成 26 年 7 月 関心がある( 小計 ) 90.4% 89.1% 非常に関心がある 29.5% 21.9%( 減 ) ある程度関心がある 60.9% 67.2%( 増 ) 関心がない( 小計 ) 8.8% 10.5% あま

(1) 生活排水について 地域の実状に応じ 下水道 浄化槽 農業集落排水施設 コミュニティ プラント等の生活排水処理施設の整備及び高度処理化 適正な施設維持管理等の対策を計画的に推進すること 加えて 合流式下水道の改善の取組を推進すること (2) 指定地域内事業場について これまで行われてきた汚濁負


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問 2. 現在 該当区域内に居住していますか 1. 居住している % 2. 居住していない % 無回答 % % 単位 : 人 1.9% 32.7% 65.4% 1. 居住している 2. 居住していない無回答 回答者のうち 居住者が約 65

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

( 対象区域 ) 第 5 地区計画の対象区域は 工業団地 ( 国母工業団地 南部工業団地 機械金属工業団地 ファッション工業団地 ( アリア ディ フィレンツェ ) をいう 以下同じ ) の区域内及び隣接地又は近接地 ( おおむね工業団地から500メートル以内 ) とする ( 区域の設定 ) 第 6

たたら製鉄についてのまとめ

7-3 上田城南地域 (1) 将来像 ( 将来像 ) 水と緑と多様な都市機能が調和し快適な暮らしの環境が整ったまち ( 基本目標 ) 千曲川をはじめ産川や浦野川 小牧山や上田原古戦場 半過岩鼻など奇景や原風景の残る豊かな自然や農地を大切に保全するとともに 秩序ある都市空間づくりを進めます 良好な住環

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上田市都市計画マスタープラン地域別構想 上田中央地域(案)

「環境用水の導入」事例集~魅力ある身近な水環境づくりにむけて~

2014年度_三木地区概要

はじめに

事業に対する決議平成 25 年 3 月 23 日に 岩手山麓土地改良区の総代会において 平成 26 年度事業着工について議決された また 平成 25 年 4 月 12 日に関係市村及び土地改良区からなる岩手山麓地区国営土地改良事業促進協議会において 平成 26 年度事業着工について決議された その他

( 注 )(1) 1 の 2 の施策を推進するために必要な 農地の確保の方針 は 市町村全体における農業の健全な発展に向けた農地の確保の取り組みについて記載する (2) 農地の利用の方針 は 農業 農村の復興マスタープラン及び復興関連施策の事業計画 工程表等を踏まえ 被災農地の復旧 復興による農地の

資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

淀川水系流域委員会第 71 回委員会 (H20.1 審議参考資料 1-2 河川管理者提供資料

( 真岡市 ) 区分 平成 12 年 平成 22 年 増減率 耕地面積 8,600ha 7,175ha 17% 農家戸数 5,056 戸 4,355 戸 14% 農業就業人口 5,598 人 4,800 人 14% うち 6 5 歳以上 2,484 人 1,808 人 27% ( 割合 ) (44%

市街化調整区域の土地利用方針の施策体系 神奈川県 平塚市 神奈川県総合計画 神奈川県国土利用計画 平塚市総合計画 かながわ都市マスタープラン 同地域別計画 平塚市都市マスタープラン ( 都市計画に関する基本方針 ) 平塚都市計画都市計画区域の 整備 開発及び保全の方針 神奈川県土地利用方針 神奈川県

1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

もがみがわかりゅう 事 業 名 国営かんがい排水事業 地 区 名 最上川下流 県名 山形県 さかたしさかたしやわたまちまつやままちひらたまちつるおかしふじしままち関係市町村酒田市 ( 旧酒田市 八幡町 松山町 平田町 ) 鶴岡市( 旧藤島町 ) ひがしたがわぐんしょうないまちたちかわまちあまるめまち

事業に対する決議平成 25 年 2 月 19 日に関係市町及び土地改良区からなる大利根用水地区国営施設機能保全事業推進協議会において 平成 26 年度事業実施に向けた推進について了解を得たところであり 平成 25 年 3 月 14 日に千葉県大利根土地改良区総代会及び平成 25 年 3 月 29 日

赤坂里づくり計画 平成 28 年 11 月 赤坂里づくり協議会

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121022資料1さっぽろビジョン(素案)

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中井町緑の基本計画(概要版)

米原市における開発に伴う雤水排水計画基準

3. 下水道の整備状況平成 30 年 3 月 31 日現在 県内では 20 市町のうち 11 市 6 町で公共下水道事業が実施されており 17 の市町で供用されています しかしながら 愛媛県の下水道普及率は 53.7% と全国第 38 位となっており まだまだ遅れています 瀬戸内海や宇和海などの豊か

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資料6

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水情報国土の経緯 H13 H14 H15 H16 H17 H18 情報国土河川定期縦横断図水H データ管理センター立ち上げ 河川局長通達 データ管理センター搭載 連携の検討 H16.2サブシステム立ち上げ データ管理センターサブシステム川の防災情報 水文水質データベース 水情報国土デー

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アマミノクロウサギ保護増殖事業計画 平成 27 年 4 月 21 日 文部科学省 農林水産省 環境省

「環境用水の導入」事例集~魅力ある身近な水環境づくりにむけて~

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総合計画及び国土利用計画アンケート調査結果 平成 20 年度 地域別構想 土地利用の方向性について 上位3つ ①無秩序な開発を抑制し 農地等は極力保全する ②主要な沿道等への店舗の立地を進め 利便性を高める ③身近な公園 生活道路 下水道などの生活環境基盤を整備する 住みよい 25.6% 22.9%

水質

国営事業の再評価


いる この中で 自然と共生した持続可能な循環型社会の推進 に向けては 地球温暖化をはじめとした環境問題は年々深刻さを増す中 東日本大震災で改めて 自然 がかけがえのない大切なものであること 私たちも生態系の一部として 共生 していることを痛感したところであり これを教訓として 豊かな水と緑が育む自然

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目 次 1 基本事項について 汚水処理施設整備構想とは 構想見直しの必要性 汚水処理施設の概要 山陽小野田市の現状と課題 整備状況 主な汚水処理施設 汚水処理における課題...

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Microsoft PowerPoint - 参考資料2

道路災害復旧事業 区分 H24 H25 H26 H27 H 災害復旧事業 道路事業 ( 通常事業 ) 橋りょう 26 箇所延長 1,219m 道 路 602 箇所延長 299,089m 流留垂水地区 実施設

中期目標期間の業務実績報告書

図 -3.1 試験湛水実績図 平成 28 年度に既設堤体と新設堤体が接合された抱土ゾーンにおいて調査ボーリングを実施し 接合面の調査を行った 図 -2.2に示すように 調査ボーリングのコア観察結果からは 新旧堤体接合面における 材料の分離 は認められなかった また 境界面を含む透水試験結果により得ら

2. 大和川について が 難波津 現在の大阪 から船で大和川をさか 奈良県には奈良盆地のほぼ全域を流域とし 大阪 のぼり 初瀬川から三輪山麓の海石榴市 つばい 平野を西に横切って大阪湾に注ぐ全長68kmの一級 ち に上陸 飛鳥の宮に至ってから1400年となる 河川である大和川が流れている 記念すべき

水 ) 融雪用水 植樹帯散水用水 道路等の清掃 散水用水 農業用水 工業用水への供給 事業場等への直接供給などがある 下水汚泥については バイオマス ニッポン総合戦略や京都議定書目標達成計画など 地球温暖化対策を推進することが求められている その有効利用量は平成 22 年度に約 78% に達したが

附帯調査

農山漁村地域整備交付金実施要領 平成 22 年 4 月 1 日 21 生畜第 2045 号 21 農振第 2454 号 21 林整計第 336 号 21 水港第 2724 号 ( 最終改正 ) 平成 30 年 3 月 30 日 29 生畜第 1501 号 29 農振第 2962 号 29 林整計第

3.3 導入ポテンシャルの簡易シミュレーション シミュレーションの流れ導入ポテンシャルの簡易シミュレーションは 河川上の任意の水路 100m セグメント地点で取水し 導水管を任意の箇所に設定して 任意の放水地点に発電施設を設置して発電する場合の導入ポテンシャル値 ( 設備容量 ) 及び概

PowerPoint プレゼンテーション

市民自治をめざす1000人の会NEWS

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Microsoft Word - 資料2-2

Microsoft Word - 別添資料

市町村における住民自治や住民参加、協働に関する取組状況調査

建築基準法第 43 条第 2 項第 2 号の規定による許可の同意の取扱い基準 平成 18 年 6 月 1 日東広島市建築審査会 建築基準法 ( 以下 法 という ) 第 43 条第 2 項第 2 号の規定により許可を行う場合, 次 に定める基準のいずれかに該当する建築物の敷地については, 建築審査会

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質問1

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(1) 久慈川水系の水質概況 久慈川は 茨城県 福島県 栃木県の県境に位置する八溝山地 ( 標高 1,022m) に源を発する全長 124km 流域面積 1,490km 2 を有する一級河川である 里川 山田川 浅川など多くの支川が合流し 日立市と東海村の境を経て太平洋に注いでいる 久慈川流域は 上


平成 25 年度農林水産省委託業務報告書 平成 25 年度 水資源循環の見える化 調査 検討事業 報告書 平成 26 年 3 月 みずほ情報総研株式会社

平成 27 年度水質検査計画 はじめに三条市は 3 箇所の浄水場や管路延長 780 kmの配水管などの水道施設と三条地域水道用水供給企業団 ( 以下 企業団 という ) からの受水で 市内へ水道水を供給しています 浄水場は 信濃川 五十嵐川及び守門の湧水をそれぞれ水源としていますが その水質状況の把


ワンポイント講習 農業水利施設の機能診断及び補修について 東海農政局土地改良技術事務所 槻瀬誠

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県管理の河川区域内における支障木伐採利用に係る取扱要領 1 目的本事業は 県が管理する河川区域内の支障木に関し 住民との協働による河川管理の一環として 河川支障木の効率かつ計画的な伐採による適切な維持管理に向け 公募型による支障木の伐採利用を推進する取扱いを行い もって河川区域内の支障木撤去の促進と

独立行政法人水資源機構事業 ぐんまようすいきんきゆうかいちく群馬用水緊急改築地区 事業の概要本事業は 群馬県の中央に位置し 関東平野の西北端 赤城 榛名及び子持山麓一帯に広がった 5 市 1 町 1 村 ( 渋川市 前橋市 桐生市 伊勢崎市 高崎市 吉岡町 榛東村 ) にまたがる農地面積 6,214

Ⅵ 記録映像製作業務 1. 企画業務 2. 撮影業務 3. 編集業務

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Transcription:

象地域の概要195 41 宮城県加美町 宮崎東部地区集落農業排水路 水源導水方法導水箇所水環境上の問題 宮城県 地図中の破線枠は次ページの地図範囲 河川水新規水路既設水路自然流下河川 水路生態系悪影響対 地域の概要加美町は 宮城県北西部の町で平成 15 年 4 月 1 日 中新田町 小野田町 宮崎町が合併し 加美町 となりました 人口 :28,330 人 世帯数 7,783 世帯 面積 :460.82km 2 対象水域の概要集落水路構想の検討場所 ( 対象地域の地図の赤丸印 ) は 宮城県北西部 加美町にあり 北の田川と南の鳴瀬川の合流地に接する宮崎東部地区にある 高田地区と沼ヶ袋地区の2つの集落を流れる水路です

対象地域の概要196 沼ヶ袋地区集落水路 高田地区集落水路 1/25,000 水環境上の問題: 水質悪化 悪臭 生態系悪影響 親水性 景観当地区では 生き物環境に配慮した水環境での水路整備 と整備後の環境水路の活用と維持管理を住民の参画で行いました 当初は地域住民と改良区は生き物の保全より維持管理の効率化を望んでいました そこへ 法律の改正により生き物への配慮が求められることになったため 県からの提案により生き物への配慮を考慮に入れた整備を進めることになりました 水環境上の問題としては ほ場整備時に水供給が遮断されることで生き物が流末から川へ出てしまい その生き物の多様性復元まではできていないこと ほ場整備後は水路断面が縮小し流路水系も一部変更し かつての水量は確保できないことがあります また沼ヶ袋地区では生活排水も流入し水質の本質的な改善が必要なことなどが上げられます < 水位変動 > 当地区では 河川水の取水で自然流下のため水位変動はあまりありません 春先の代掻き時期は水田での水利用時に水位低下及び最近は断水が見られます < 水質悪化 悪臭 > 水質は 生活排水の流入による悪化が見られますが 野菜や農機具等の洗い場としての利用に供する程度の水質は確保できています 今後 生活排水改善による水質の改善が期待されますが 下水道事業や合併浄化槽事業が導入される計画はないため 水質が大きく向上する見込みは立っていません < 生態系への悪影響 > ほ場整備で排水路が田面より低くなったため 水田で産卵するナマズなどの生き物にとって影響が生じていると思われています しかし絶滅危惧種のギバチ ( 地元名ギンギョ ) や飛来するカワセミ ホタルなどが生き物調査で発見されるなど多様な生息環境が残っていると推定され まだまだ生態的に潜在的な可能性を秘めた水系です その水系で残された集落の農業排水路は 土水路であり生き物が生息しやすい環境にあることからそれらに配慮した水路整備が課題となりました < 親水性 景観 > 集落の水路は かつて農具や野菜の洗い場があり 水路は子どもの遊び場だったことから親水性に優れています 上流の沼ヶ袋地区集落水路は ホタルが飛びかい ギバチが生息し 石垣や橋がかかって景観的にも絵になる水路です 下流の高田地区集落水路は 住宅裏の屋敷林の中を水路が走り カワセミが飛来していた また自作の板の橋や洗い場がなんとも自然な趣が有って景観的に素晴らしいものでした 正月には束帯を洗い場脇に刺し祈りを上げるという風習も景観的な価値を有しています <その他 > 構造的な問題は 子どもが少なくなってかつてのように水路で遊ぶことがなく 兼業農家で水路の維持管理も簡略化できる機能性のみのコンクリート水路が尊重されるようになっていることから 手間のかかる環境配慮型の水路の存在価値をどこに求めるかが課題となっています

との協働PO 導水事業の概要197 整備事業と併せ 親水性や景観は格段に向上したと考えられます N協働の背景成功要因役割分担 目標 [ 目標像 ] できるだけ生き物に配慮し 地域住民が使いやすい水路 [ 目標値 ] 定量目標 : 計画流量高田 0.102m 3 /s(8,812.8m 3 /day) 沼ヶ袋 0.084m 3 /s(7,257.6m 3 /day) 水源 [ 水源 ] 一級河川鳴瀬川水系田川 [ 理由 ] 元々使用していた水源 導水量記録なし定量目標 : 計画流量高田 0.102m 3 /s(8,812.8m 3 /day) 沼ヶ袋 0.084m 3 /s(7,257.6m 3 /day) 導水方法君ヶ袋堰から自然取水し ほ場整備で整備した用水路を使い対象水路へ流下する 流下後は排水路へ落水し田川へ排水される 施設諸元松丸太による板柵工 一部コンクリート水路 既設利用を行いました 対象水路 :700m 効果 [ 導水事業 ] 水量の変動が緩和され それにともない水質の悪化 悪臭の発生も抑制されました また 住民からの強い要望のあった親水性の向上についても 親水化整備と合わせて実現しました [ 事業全体 ] 目に見えて問題が改善されたとは言えませんが 総合的に見ると改善されてきているようです 水路の 水環境上の問題としては 地域住民 土地改良区では生活雑排水処理以外は特に問題としていませんでした 生活雑排水はそのうちなんとかしようという程度の思いしかありませんでした ほ場整備事業ではコンクリート水路での整備を望んでいましたし そのようになると思っていました 地域住民と改良区は生き物の保全より維持管理の効率化を望んでいました そこへ 法律の改正により生き物への配慮が求められることになったため 県からの提案により生き物への配慮を考慮に入れた整備を進めることにりました 住民参加型の話し合いは 相当な技術力が必要だと考えており ワークショップ型の地域づくりの実績がある NPO に業務委託することとし 期間を3 年間としました 最初は環境保全に否定的な考えの人が多かったのですが 少しづつ考えが変化していき ある程度環境に配慮した整備を行うことになりました 3 年目の工事実施前に小学校の総合学習と連携した生き物引っ越し大作戦を実施しました 全員に発言する機会を与えることができた 工事までのプロセスを共有できた 様々な専門家が地域に入り 新しい考え方の 風 を起こすことができた 土地改良区が率先して活動するようになった 地元区長代理さんが理解を示してくれた 宮城県大崎地方振興事務所農業農村整備部 : 事業主体 加美郡西部土地改良区: 完成後の管理者 地元との細かい調整 加美町 : アドバイザー NPO : ワークショップの運営

P198Nとの協働O今後の課題リング先資料提供及びヒア参考HP今後の課題ワークショップ型事業は時間とコスト面で課題が残ります 農業水路のもつ多機能として 生産に絡む用排水機能 防火や流雪機能 洗い物などの利用機能 生き物の環境機能 子どもの環境学習機能 水路端の交流機能 風習を含む景観的な機能などの評価がなされています かつてあった機能が効率化 簡便化 生産に直接効果のある経済価値優先により単機能水路になっていました その既存の水路を再度 生活の豊かさを見直す場 子ども達の総合的学習の場 コミュ ニテイ交流による相互扶助の再構築の場 生き物を愛でる 楽しむ心の場などで再評価することによって可能になることを この宮崎東部地区水路づくりは示しています 本地域は 周辺の地域と比べて環境へ水路の特徴もあまりない地域である と地域住民 役場 県 改良区が思っていた場所です この特徴のあまりないと思っている場所に住民参加型の事業を3 年かけて導入したことにより 現在は宮城県内では先進事例の一つと言われるようになりました また 今回の事業の導入がきっかけとなり 平成 18 年度新規採択農地 水 農村環境保全向上活動支援実験事業へ改良区が中心となり採択へ向けた名乗りを上げる予定になっています 何の特徴もない地域と思っていて 一歩踏み出せないでいる地域への参考事例になると考えます 加美西部土地改良区 ( ヒアリング先 ) 大崎地方振興事務所 ( 資料提供 ) NPO 法人東北まちづくり協議会 ( ヒアリング先 現在は解散 ) 宮城県 : 宮崎東部地区集落排水路整備におけるワークショップの開催 http://www.pref.miyagi.jp/ossgsin/nn/nnd_h16_006.html 宮城県 : 生き活き水路再生物語 http://www.pref.miyagi.jp/ossgsin/nn/pdf/panfuomote.pdf 圃場整備前 圃場整備後 整備前の水路の様子

199 整備実施中の水路 整備イメージイラスト : 平成 17 年度に工事完了予定 現在実施中 参考写真

200 生き物調査の様子 ワークショップの様子 小学校の総合学習と連携した生き物引っ越し大作戦

201 環境に配慮した水路事業着手手前状況