国立病院機構大阪南医療センター附属大阪南看護学校 あり方検討提言書 平成 30 年 11 月 国立病院機構大阪南医療センター附属大阪南看護学校 今後のあり方検討委員会
目次 1 はじめに 2 看護教育を取り巻く現状 2.1 看護師の養成 2.2 大阪府内の看護師養成施設 2.3 看護師需給の見通し 3 国立病院機構大阪南医療センター附属大阪南看護学校の現況 3.1 応募者 合格者の推移 3.2 卒業生の進路 3.3 収支状況 4 今後のあり方についての提言 5 最後に
1 はじめに 国立病院機構大阪南医療センター附属大阪南看護学校は 昭和 38 年 9 月 1 日国立河内長野病院附属高等看護学院 (3 年課程 入学定員 30 名 ) として開設され 昭和 40 年 4 月病院の名称変更に伴い 国立大阪南病院附属看護学院と名称を変更しました さらに 昭和 50 年 4 月厚生省組織規定の改正に伴い 国立大阪南病院附属看護学校と名称を変更しました 平成 14 年 4 月 1 日国立療養所近畿中央病院附属看護学校 (3 年課程入学定員 50 名 ) と統合 名称も国立大阪南病院附属大阪南看護学校と変更し 入学定員 80 名となりました 平成 16 年 4 月 1 日 母体病院の設置主体が厚生労働省から独立行政法人国立病院機構に変わり 名称も 独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター ( 以下 大阪南医療センターという ) となりました これに伴い 本校の名称は 独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター附属大阪南看護学校 ( 以下 大阪南看護学校という ) に変更され 現在に至っております この間 大阪南看護学校は 社会の変化に柔軟に対応し 生命倫理と人間尊重ができる豊かな人間性と創造性を持ち 科学的思考を基盤とした看護実践ができる人材を育成することを目指すとともに 独立行政法人国立病院機構が担う政策医療を理解し 社会の期待に応えられるような基礎的能力が持てるような教育を実践してきました しかし 昨今の少子高齢化および社会情勢の変化に伴い 学生確保に苦慮する事態となっています さらに 母体病院である大阪南医療センターにおける経営状況の低迷により 附属施設である大阪南看護学校を含めた経営の健全化を国立病院機構本部より求められている状態となっています 本委員会としては このような厳しい状況下において 大阪南看護学校の経営状況のみならず 看護学校としての必要性や地域医療全般への社会的影響等を総合的に勘案し 慎重に検討を重ねた上で その在り方を提言するものであります 1
2 看護教育を取り巻く現状 2.1 看護師の養成 2.1.1 医療政策の動向現在 日本は急激な少子高齢化が進んでいます 高齢化に伴い 国民医療費の高騰とそれに伴う国家としての財源不足という問題が生じています また 少子化に伴い労働人口の減少が進み 企業側の労働力確保という問題も生じています また 医療に目を向けると 病院数の減少が続き 地域包括ケアの概念や地域医療構想に基づき 高度急性期病床および急性期病床の適正化が図られています 今後も各 2 次医療圏における病床区分の見直しは進み 増加する高齢者疾患に対応するため 回復期リハビリ病床 地域包括ケア病床の強化と療養病床の適正化と前述した急性期病床の適正化が進行するものと推察されます 急性期病床の適正化により 急性期医療から回復期 維持期医療へと転換する医療機関において看護師の余剰という事態が生じることと考えます 2.1.2 看護教育の動向これからの社会で求められる対象者の複雑性 多様性に対応した より総合的な看護が提供できる看護師を育成するためには 臨床推論能力を養う教育や実習の追加 在宅領域の教育の増加が不可欠であり 3 年間の看護基礎教育では短いと言われています 日本看護協会では これからの社会 医療に対応できる看護師を育成できるよう 看護基礎教育の 4 年制化の実現に取り組んでいます そのような背景の中で 3 年課程の看護師養成所における教育のあり方も大きな転換点にあるとも言えます 2.2 大阪府内の看護師養成施設 2.2.1 大阪府内の看護学校の状況 平成 30 年 9 月現在 大阪府内には 52 施設の看護学校 ( 大学 看護師養 2
成所含む ) があります そのうち 同医療圏内には 大阪南看護学校を含み 6 施設が存在しており 1 学年定員数は合計で 435 名となっています このうち 3 年制の看護師養成所は 5 施設あり 1 学年定員数は合計で 315 名となっています 近隣の大阪南部エリア ( 堺市 岸和田市 貝塚市 泉佐野市 ) には 12 施設が存在しており 1 学年定員数は合計で 723 名となっています このうち 3 年制の看護師養成所は 11 施設あり 1 学年定員は合計で 473 名となっています これらのことから 大阪南部エリアおよび南河内医療圏では 看護師養成所による看護師教育が中心であることが伺えますが 4 年制の教育課程を持つ大学も一定数存在しており 4 年制教育課程へのニーズも高まることが想定されます ( 別表 1 参照 ) 2.3 看護師需要の見通し 2.3.1 2025 年のあるべき病床数現在 厚生労働省では 団塊世代が後期高齢者 (75 歳以上 ) に差し掛かる 2025 年までに病床機能の再編を促し それぞれの医療圏域において必要な病床が確保できる状態を目指しています 大阪南看護学校の位置する南河内医療圏においては 多くの看護人員が必要となる高度急性期や急性期病床が過剰で 看護師需要の低い回復期や維持期において 病床の増加が必要であるという推計値が示されています ( 次頁参照 ) このことは 母体病院である大阪南医療センターでの看護師需要はもとより 近隣の急性期医療を提供する医療機関における看護師需要の低減の可能性を示すものと考えます つまり 各医療機関における看護師需要は ばらつきはあるものの中期的な視点で考えると 徐々に需要は低減していくため 看護学校の卒業生の就職先を確保することも これまでの考え方ではなく より柔軟な考え方や対応方法を検討していかなければいけないことを示していると推考します 3
< 南河内医療圏における 4 機能ごとの病床必要量 > 病床区分 平成 27 年度 病床機能報告 2025 年 病床必要量 高度急性期 1,249 814 急性期 2,896 2,515 回復期 347 1,875 維持期 1,895 1,902 合計 6,387 7,106 出典 : 平成 29 年 5 月 10 日第 4 回地域医療構想に関する WG 発表資料 各都道府県の地域医療構想について 4
3 国立病院機構大阪南医療センター附属大阪南看護学校の現況 3.1 応募者 合格者の推移 3.1.1 応募者数の推移大阪南看護学校の応募者数は 平成 25 年度は一般応募 社会人応募 推薦応募を含め 317 名となっていました 平成 26 年度は 319 名と現状維持でしたが 平成 27 年度は 236 名 平成 28 年度は 216 名 平成 29 年度は 169 名 平成 30 年度は 164 名となっており 倍率も平成 25 年度は 2.2 倍であったが 平成 29 年度は 1.5 倍にまで低減しています 応募者の内訳として 推薦応募の割合は 平成 25 年度は応募者全体に対して約 8% でしたが 平成 29 年度は約 28% にまで増加しています 逆に 一般応募と社会人応募の比率は 共に低減しています 応募者は 少子高齢化に伴う減少ということのみでは説明しきれないほど減少傾向にありますが 背景には 経済状況の変化による看護師資格取得ニーズの低下にあると推察しています 3.1.2 合格者数の推移合格者数は 1 学年定員 80 名に対して 平成 25 年度は 146 名 ( うち入学者 98 名 ) でしたが年々減少しており 平成 29 年度は 115 名 ( うち入学者 82 名 ) となっています 減少の要因としては 併願者が増えていることが挙げられます 併願の割合は 平成 30 年度入学生を見ると 一般応募では約 52.8% 社会人応募では 47.4% と おおよそ 2 人に 1 人が併願応募という状況になっています 特に大阪医療センター附属看護学校との併願者は多い状況となっています 3.2 卒業生の進路 3.2.1 卒業生の就職先大阪南看護学校の卒業生の就職先としては 母体病院である大阪南医療センターの看護師需要を満たすという病院側としての目的があります したがって 大阪南医療センターへの就職比率が最も高い状況となっていま 5
す また それ以外でも大阪府下の国立病院機構病院 ( 大阪医療センター 近畿中央呼吸器センター 刀根山病院 ) に就職するケースが多くなっています しかし近年は 前述したように急性期病院における看護師需要の低下に伴い 国立病院機構病院に就職する人数は減少傾向にあります このように病院敷設の看護師養成所の場合 母体病院における看護師需要の変化の煽りを受けやすいことが特徴として挙げられます 需要が低下すれば 卒業生は他法人へ就職することになりますが その結果 病院敷設で看護師養成所を維持する必要性が低下するものと考えられます 3.3 収支状況 3.3.1 損益計算書 ( 平成 27 年度 ~ 平成 29 年度 ) 大阪南看護学校の単年度収支の状況は 厳しい状況が続いています 大阪南医療センターの損益計算書を見ると 大阪南看護学校の収入を示す 教育研修業務収益 から支出を示す 教育研修業務費 を差し引いた損益額は 平成 27 年度が 42,918 千円 平成 28 年度が 52,929 千円 平成 29 年度が 16,031 千円と 毎年赤字を計上している状況です これは 受験者数の減少による検定料収入の減少も要因としてはありますが 補助金収入の減少も大きな要因の一つです 一般的に 看護師養成所は 補助金収入に頼らざるを得ないビジネスモデルですが 国立病院機構本部からの助成金や大阪府からの補助金の支給条件の変更により大阪南看護学校では補助金収入を維持することが難しくなっている状況です また 人件費について 母体病院から講師派遣を受けている状況ですが その講師報酬については 病院敷設の看護学校であることと 大阪南看護学校が母体病院の看護師供給源としての機能を果たしていることから 別途支給されていません その点では 一定の人件費抑制ができていると考えられますが それでも前述のように収支状況は厳しい状況が続いています また 損益計算書から減価償却費を控除した簡易的な事業キャッシュフ 6
ローで見てみますと 平成 27 年度は 27,637 千円 平成 28 年度は 5,829 千円 平成 29 年度は 17,803 千円とプラスになります しかし 簡易財務キャッシュフローを加味すると 平成 27 年度が 132,403 千円 平成 28 年度が 155,311 千円 平成 29 年度が 153,439 千円となり キャッシュフローベースで見ても赤字である状況です ( 下表参照 ) < 大阪南看護学校の直近 3 ヵ年における収支状況推移 > 税引き後当期 減価償却費 合計 借入金返済額 合計 利益 1 2 1+2 A B A-B 平成 27 年度 42,918 70,555 27,637 160,040 132,403 平成 28 年度 52,929 58,758 5,829 161,140 155,311 平成 29 年度 16,031 33,834 17,803 171,242 153,439 単位 : 千円 7
4 今後のあり方についての提言 ここまでの報告を踏まえ 本委員会としては 以下を大阪南看護学校のあり方として提言します 現状および各委員の見解を踏まえると現状の経営形態を維持することは困難であり 財務状況の改善を図ることも難しいと考えます 従って 本委員会としては 国立病院機構での直接運営形態を廃止し 建物等を利活用すべく他団体の事業誘致を行い 大阪南看護学校の経営主体を変更することで 看護学校としての機能および役割を存続させることを提言します ただし この提言内容とした大きな原因は 大阪南医療センターの経営状況の低迷であるため 仮に 今後 大阪南医療センターが大阪南看護学校の事業誘致を進めていく中で 現状のまま看護学校を維持するよりも 経営状況を更に悪化させるような誘致条件等の交渉となる場合などには 大阪南医療センターが運営する現状の経営形態を維持するという選択肢も残しておくべきと考えます 5 最後に 本委員会の活動に対し 特に外部有識者の委員には ご多忙のところご参集いただき 全委員会に全委員出席により 提言を取りまとめることができました また 本委員会活動準備のため 大阪南医療センター及び大阪南看護学校の職員によるワーキング部会の委員にもご尽力いただきました 本委員会 ワーキング部会共に 様々な方面から議論 検討し提言をまとめることができたことは それぞれの委員の大阪南看護学校に対する 熱意と誠実な姿勢によるものであり 深く感謝し 御礼申し上げます 平成 30 年 11 月 2 日 国立病院機構大阪南医療センター附属大阪南看護学校 今後のあり方検討委員会 座長 齊藤正伸 8
南河内医療圏看護学科 80 3 河内長野市木戸東町 2-1 大阪南部別表 1 南河内医療圏および大阪南部の看護学校 看護師養成所一覧 ( 平成 30 年 9 月時 点 ) エリア番号大学学部学年修業所在地備考 定員 年限 1 大阪府立大学 地域保健学域看護 学類 120 4 羽曳野市はびきの 3-7-30 近畿大学附属看護専 2 看護学科 80 3 大阪狭山市大野東 102-1 門学校 3 藍野大学短期大学部 第一看護学科 80 3 富田林市青葉丘 11-1 4 PL 学園衛生看護専門 看護学科 35 3 富田林市喜志 2055 学校 5 6 阪和学園錦秀会看護専門学校大阪南医療センター附属大阪南看護学校 看護学科 40 3 河内長野市南花台 4-24-1 30 年度開校予定 ベルランド看護助産 80 3 31 年度募集停止 13 看護学科堺市中区東山 500-3 大学校 40 4 30 年度開校予定 14 美原看護専門学校看護学科 40 3 堺市美原区今井 388 7 太成学院大学看護学部 80 4 堺市美原区平尾 1060 の 1 8 関西医療大学保健看護学部 90 4 泉南郡熊取町若葉 2 丁目 11 の 1 9 大阪労災看護専門学 校 看護科 40 3 堺市北区長曽根町 1179-3 10 清恵会医療専門学院第 1 看護学科 40 3 堺市北区百舌鳥梅北町 2-83 11 堺看護専門学校看護学科 40 3 堺市北区新金岡町 5-10-1 12 泉州看護専門学校看護学科 40 3 堺市西区浜寺船尾町東 1-131 15 浅香山病院看護専門 学校 看護学科 33 3 堺市堺区田出井町 8-20 16 久米田看護専門学校看護学科 40 3 岸和田市尾生町 2955 17 河﨑会看護専門学校看護第 1 学科 40 3 貝塚市水間 511 18 19 泉佐野泉南医師会看護専門学校岸和田市医師会看護専門学校 看護学科 40 3 泉佐野市湊 1-1-30 看護学科 40 3 岸和田市荒木町 1-1-51 30 年度開校予定 9
国立病院機構大阪南医療センター附属大阪南看護学校の今後のあり方検討委員会委員 行政機関等 河内長野市長 島田智明 大学機関等 大阪大谷大学学長浅尾広良京都大学大学院医学研究科教授 ( 臨床看護学講座 ) 任和子 法曹関係等 弁護士 四宮章夫 国立病院機構本部 国立病院機構近畿グループ総括長 国立病院機構近畿グループ看護専門職 樋山一郎 空山直子 国立病院機構附属看護学校関係等 大阪医療センター附属看護学校学校長是恒之宏近畿中央呼吸器センター院長林清二 大阪南看護学校 大阪南医療センター附属大阪南看護学校副学校長 大阪南医療センター附属大阪南看護学校事務長 松元由美 碓村雅史 座長 大阪南医療センター附属大阪南看護学校学校長 齊藤正伸 ( 敬称省略 ) 10