国立特殊教育総合研究所研究紀要 第30巻 2003 (調査資料 盲学校点字情報ネットワーク の活用状況と今後の展望 金 子 健 大 内 進 千 田 耕 基 視覚障害教育研究部 要旨 盲学校点字情報ネットワークは 全国の盲学校がパソコン点訳した点字文書その他の視覚障害関連データをホスト コンピュータにアップロードして集積し どの盲学校からもダウンロードして利用できるインターネットシステムである 本研究では このシステムの現状と課題および今後の展望について 全国の盲学校に対するアンケート調査を元にして報告 した その結果としては 1 盲学校におけるインターネットへの接続利用状況は進展しているが 盲学校で当システムの ために利用しているコンピュータの数は少ない これについては IDの制限を緩和することが その改善につながること が期待される 2 インターネットシステムになってから 盲学校によるデータのダウンロードは飛躍的に増加したが 当 システムにアップロードされる数は少ない 3 盲学校が必要とするデータが必ずしも当システムに蓄積されているとは 言えない 4 上記2 と3 の改善のためには 盲学校内でのデータ作成の他 点訳ボランティアとの連携が有効ではな いかと考えられた 見出し語 点字 視覚障害 ネットワーク インターネット 盲学校 Ⅰ はじめに Ⅱ 盲学校点字情報ネットワークの概要 盲学校点字情報ネットワーク 以下 当ネット と略記 1 当ネットの仕組み する は 各盲学校でパソコン点訳により電子化された点 図1に当ネットの仕組みの概略を示す また 図2に 字図書 教材などの点字情報をホストコンピュータのデー 当ネットのメニューページ 後述のID使用者用 を示す タベースとして集積し どの盲学校からでも ネットワー 図1のように 当ネットは 文部科学省の委託により 財 クを介して利用可能にするためのシステムである 団法人障害児教育財団 以下 財団 とする が行って この点字データベースは BES BE 形式という特定電 いる事業である その運営については 財団の盲学校点字 子形式の点字文書を主たるデータとしているが それ以外 情報センターが担当し 独立行政法人国立特殊教育総合研 の電子形式の点字文書を含め 音声データ 点図データ 究所の視覚障害教育研究部が 盲学校点字情報センターを ツール類 テキストデータ 立体コピーの原図データ等 支援している データ形式を問わないデータベースももっており これも 各盲学校での共同利用が可能である ホストコンピュータの保守 管理にはソフト会社が当 たっている また 当ネットは そのネットワークを介しての 各盲 当ネットにおいて 前述のように 各盲学校は 点字図 学校間の情報交換の場でもある これについては 当ネッ 書 教材などの点字データその他のデータを作成し 当ネッ トが用意する各種の掲示板を利用しての情報交換が可能で トのホストコンピュータのデータベースにアップロードす ある ると共に データベースに蓄積された点字データその他の 当ネットは 平成4年度より パソコン通信ネットワー データを検索して必要なものをダウンロードし 利用でき クのシステムとして発足したが 平成13年度からは イン る ダウンロードした点字データは 点字プリンタに出力 ターネットによる運用を始めた そのアドレスは http : // することによって紙のかたちの点字文書として点字使用者 www. tenji. ne. jpである が利用できるようになる また 点字データ等の利用の他 本研究は このインターネットシステムの現状と 今後 の展望について 全国の盲学校に対するアンケート調査に 各種の掲示板を利用して必要な情報を得たり 各盲学校間 で情報交換を行ったりすることもできる 基づき 報告するものである 当ネットでは 点字情報その他のデータの検索について は 全てのインターネット利用者が利用可能である しか し 点字データその他のダウンロードおよびアップロード 131
国立特殊教育総合研究所研究紀要 第30巻 2003 図2 盲学校点字情報ネットワークメニューページ (ID使用者用 このデータベースは 通称 なんでもデータバンク で ト提供のBES形式データは それまで同様 上記BES形式専用 あり BES形式以外の点字文書データを含めて その他の データベースにアップロードして集積する仕組みになってい 多種類のデータを集積することができる なお ここには る その理由は 当ネットでは 2002年3月までで インター BES形式の点字文書も集積できる 注3 現在 その種類 ネットシステムと並行して運営していた旧パソコン通信システ としては 図4にも示されているように 以下のとおりで ある ムを停止したが ないーぶネットでは 旧パソコン通信システ ムを存続していることによる 上記BES形式専用データベース は 旧パソコン通信システム開設以来のデータベースであり 旧 BASE BES エーデル コータクン 立体コピーの原 パソコン通信システムが稼動していないと そこへのアップ 図 テキスト 画像 音声 動画 ツール その他 ロードができないのである なお なんでもデータバンクは これらのうち BASE コータクンはBES形式とは異なる 電子点字データ形式である エーデル 注4 は点図デー 2002年5月 インターネットシステム開設に伴って新設された データベースである タ形式の一種である なお このデータベースに関しては 注4 エーデル EDEL の詳細については その作者のホー 必要に応じて そのデータの種類の追加 変更も可能となっ ムページ アドレスはhttp : //homepage2. nifty. com/edel-plus/ ている が開設されているので それを参照していただきたい 注3 2002年3月までは BES形式の点字データは 盲学校作 成のデータも ないーぶネット提供のデータも 上記のBES形式 3 掲示板 専用データベースにアップロードし 集積する仕組みになって 掲示板については 現在 以下のような掲示板が開設さ いた 2002年4月以降は 盲学校作成のBES形式点字データはな れている んでもデータバンクにアップロードして集積し ないーぶネッ 133 全盲学校に関する公的な情報
金子 大内 千田 盲学校点字情報ネットワーク の活用状況と今後の展望 表4 所属別利用者 1位として回答 校数 ( 幼稚部 小学部 中学部 高等部普通科 高等部理療科 計 0 8 8 19 19 54 ( ( ( ( ( ( 0.0 14.8 14.8 35.2 35.2 100.0 2位として回答 校数 ( 2 11 10 15 12 50 ( 4.0 ( 22.0 ( 20.0 ( 30.0 ( 24.0 ( 100.0 3位として回答 校数 ( 1 11 15 6 9 42 ( 2.4 ( 26.2 ( 35.7 ( 14.3 ( 21.4 ( 100.0 4位として回答 校数 ( 3 16 10 2 6 37 ( 8.1 ( 43.2 ( 27.0 ( 5.4 ( 16.2 ( 100.0 5位として回答 校数 ( 26 0 0 1 1 28 ( 92.9 ( 0.0 ( 0.0 ( 3.6 ( 3.6 ( 100.0 2 当ネットの使い勝手にか かわる質問について 当ネットの使い勝手にかか わる質問として以下のことに ついての回答を求めた 即ち 当ホームページの閲覧のしや すさ データの検索のしやすさ BES形式の点字文書の文書検 索 およびなんでもデータバン クでのデータの検索につい て データのダウンロードの しやすさ データのアップロー ドのしやすさ 当ネット利用に グラフ2 上位3位までの所属別利用者 (3位までをパーセンテージで表示 かかわる経費の軽重 旧パソコ ン通信版と比較した場合の当 ネットの使い勝手全般について 旧パソコン通信版を知っ 3 当ネットのBES形式の点字文書データのダウンロー ている者のみ回答 である その結果は表3のとおりであっ ドにかかわる質問について た 当ネットのBES形式の点字文書データのダウンロードに このように 当ネットの使い勝手については どの項目 かかわる質問に関して ダウンロードした点字文書の利用 についても 5段階の評価の内 下位2者の評価 やりに 者について 児童および生徒用が多いか 教師用が多いか くい 大変やりにくいなど は少なく それに比べると上 という質問に対しては 回答数54のうち 児童および生徒 位2者の評価 大変やりやすい やりやすいなど の方が 用が多いと回答した学校が 33校 61.1 教師用が多い 多かった ただし 以前のパソコン通信によるシステムと と回答した学校が21校 38.9 で 児童および生徒用の 比較した場合の使い勝手全般の評価においてのみ 中間の 方が多かった 評価である 変わらない も少なかったが それ以外の項 目では 中間の評価である ふつう が一番多かった 次に 同データの利用について 幼稚部 小学部 中学 部 高等部普通科 高等部理療科では どこに所属する者 また 下位2者の評価 やりにくい 大変やりにくいな が利用することが多いか 順位をつけてもらう質問に対し ど をした場合に関して その内容の記述を求めた結果を ては 表4のとおりであった また そのうち 上位3位 みてみると データの検索について 検索項目が不適切で までの結果について パーセンテージによるグラフにする ある キーワードでの検索がしにくい できない 音 と グラフ2のとおりである 声での利用がしにくい などの意見があった データのダ このように この質問で 1位 1番多く利用 と回答 ウンロードについては ダウンロードの際にID パス された所属については 回答のあった54校のうち 多い順 ワードをあらためて要求される 複数の点字文書のダウ に 高等部普通科が19校 35.2 高等部理療科が同数の ンロードに手間がかかる などの意見があった データの 19校 35.2 小学部が8校 14.8 中学部が同数の8校 アップロードについては アップロードファイルの作成の 14.8 幼稚部が0 0.0 であった この結果からは 際に その一つ一つについて細かい目録項目をつける必要 高等部普通科と同理療科での利用が1番多く 小学部と中 がある という意見があった 学部がそれに続いて多く 幼稚部での利用は1番少ない傾 向があると言える しかし 最下位の5位に高等部普通科 140