最新判決情報 2013 年 12 月分 〇レディーガガ事件 知財高裁 H H25( 行ケ )10158 審決取消請求事件 ( 清水節裁判長 ) LADY GAGA/ レディー ガガ はアメリカの世界的な人気女性歌手であるが 同人が代表者を務める米 国法人が 標準文字で表記された商標

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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

平成 25 年 12 月 17 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 10 月 17 日 判 決 原告エイトマイハートイン コーポレイテッド 訴訟代理人弁護士 五十嵐 敦 出 田 真樹子 弁理士 稲 葉 良 幸 石 田 昌 彦 右

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

基本的な考え方の解説 (1) 立体的形状が 商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる場合は 特段の事情のない限り 商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断する 解説 商品等の形状は 多くの場合 機能をより効果的に発揮させたり 美感をより優れたものとしたりするなどの目的で

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

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平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

審決取消判決の拘束力

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平成 29 年 5 月 15 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 3 月 6 日 判 決 原 告 BERNARD FRANCE SERVICE 合同会社 訴訟代理人弁護士笹本摂 向多美子 訴訟代理人弁理士木村高明 被 告 ラボラ

1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求の趣旨 1 特許庁が無効 号事件について平成 25 年 5 月 9 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ( 当事者間に争い

書籍の題号も通常 商標的使用 の観点から判決されているが 気孔術実践講座事件 ( 東地判 H4( ワ ) 3845) では商標法 号の品質表示を適用しているので まずは法適用の可能性を判断すべきかも知れない この点については 本年末刊行予定の 最新判例からみる商標法の実務 Ⅱ 2012

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淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

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平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

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( イ ) 極めて簡単で かつ ありふれた音 ( 第 3 条第 1 項第 5 号 ) 1 単音及びこれに準じるような極めて単純な音 後述の 各国の審査基準比較表 ( 識別力 ) の 類型 3 に該当 資料 2 ( ウ ) その他自他商品役務の識別力が認められない音 ( 第 3 条第 1 項第 6 号

一括して買い受けた なお, 本件商品である コンタクトレンズ は, 本件商標の指定商品 眼鏡 に含まれる商品である (3) 使用商標は, ハートO2EXスーパー の文字からなるところ, 本件商品の容器に表示された使用商標は, ハート の文字部分だけが赤い字で, かつデザイン化されており, これに続く

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

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異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

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このような事案で思い出すのは 平成 3 年 5 月 15 日の日本商標協会判決研究会第 20 回で議論したみぞれ甘納豆事件 ( 長野地裁 S ) である 原告は 東京赤坂の菓子店であり 被告は長野県小布施町の商店である 争点として みぞれ が商品の品質表示語か否かが争われたが 商標権侵害

海外質問票調査 ( 商標 の定義 ) 6 オーストラリア 1. 商標 の定義の変遷について (1) 貴国の商標に関する法律における 1 過去の 商標 の定義規定 ( 施行日 法律名 条文番号 条文 ) 及び 2 現行法の 商標 の定義規定 ( 施行日 法律名 条文番号 条文 ) を教えてください ま

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民事訴訟法

2018 年 2 月 8 日第一東京弁護士会総合法律研究所知的所有権法部会担当 : 弁護士佐竹希 バカラ電子カードシュー 事件 知財高裁平成 29 年 9 月 27 日判決 ( 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号 ) I. 事案の概要原告 ( エンゼルプレイングカード株式会社 : カー

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

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目次 韓国商標法 悪意ある商標出願 の事例 第 7 条 (1)(vii) の適用に関する 3 つのファクター KIPO の特徴的な制度及び実務

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

知的財産権の権利活用 ~警告から訴訟まで

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

最高裁○○第000100号

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

I. 韓国の 2016 年改正商標法 韓国商標法は 1949 年の法制定以来 度重なる部分改正により論理的一貫性が欠如する等 全体的な法理解度を低下させていると指摘されてきました 特に 不使用取消審判制度の改善及び不登録事由の判断時点の変更が必要であるという主張が継続的になされてきました そのため

平成 27 年度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 商標制度におけるコンセント制度についての 調査研究報告書 平成 28 年 2 月 株式会社サンビジネス

訂正情報書籍 170 頁 173 頁中の 特許電子図書館 が, 刊行後の 2015 年 3 月 20 日にサービスを終了し, 特許情報プラットフォーム ( BTmTopPage) へと模様替えされた よって,

限され 当事者が商標を使用する能力に直接の影響はありません 異議申し立て手続きと取消手続きで最もよく見られる問題とは 混同のおそれ と 単なる記述 です TTAB は登録の内容のみを評価するため その分析の局面には 想定に基づくものもあります 通常 TTAB では どのように標章が実際の製品において

ベトナムにおける商標のディスクレーマー制度について

 

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第 1 民法第 536 条第 1 項の削除の是非民法第 536 条第 1 項については 同項を削除するという案が示されているが ( 中間試案第 12 1) 同項を維持すべきであるという考え方もある ( 中間試案第 12 1 の ( 注 ) 参照 ) 同項の削除の是非について どのように考えるか 中間

年 1 月 9 日に第 40 類 布地 被服又は毛皮の加工処理 ( 乾燥処理を含む ), 裁縫, ししゅう, 木材の加工, 竹 木皮 とう つる その他の植物性基礎材料の加工 ( 食物原材料の加工を除く ), 食料品の加工, 廃棄物の再生, 印刷 を指定役務 ( 以下 本件指定役務 という ) とし

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本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

27 韓国レポート I. 知財権侵害の最新事件商標権侵害事件 : [ 基本情報 ] 事件番号 : 大法院 宣告 2013 ダ 判決 原審判決 : ソウル高法 宣告 2013 ナ 判決 [ 事件の概要 ] 勃起機能障害治療剤で

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知財制度について最近の話題 示し 頒布する行為に該当するとし 商標としての使用を認めて侵害を肯定した ( バイアグラ輸入代行事件 平成 14 年 3 月 26 日東京地裁平成 12 年 ( ワ ) 第 号速報 ) 1-2 インターネット上の商標の使用に係る裁判例改正後に

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

を参酌して 景品表示法上の適否を判断することとする 2. 基本的考え方 (1) 景品表示法による規制の趣旨景品表示法第 5 条は 自己の供給する商品等の内容や取引条件について 実際のもの又は競争事業者のものよりも 著しく優良であると示す又は著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を不当表示として

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参加人は 異議申立人が挙げていない新たな異議申立理由を申し立てても良い (G1/94) 仮 にアピール段階で参加した参加人が 新たな異議申立理由を挙げた場合 その異議申立手続は第 一審に戻る可能性がある (G1/94) 異議申立手続中の補正 EPCにおける補正の制限は EPC 第 123 条 ⑵⑶に

目次 1. 現行法令について 2. 商標出願時の必要書類 3. 料金表 4. 料金減免制度について 5. 実体審査の有無 6. 出願公開制度の有無 7. 審査請求制度の有無 8. 出願から登録までの手続の流れ 9. 存続期間及びその起算日 10. 出願時点での使用義務の有無 11. 保護対象 12.

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

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丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

2016 年 5 月 25 日 JETRO アセアン知財動向報告会 ( 於 :JETRO 本部 ) ASEAN 主要国における 司法動向調査 TMI 総合法律事務所シンガポールオフィス弁護士関川裕 TMI 総合法律事務所弁理士山口現

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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

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最高裁○○第000100号

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1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

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2.5 中国中国では, 書籍の題号についても, 極端に記述的でない限り, 識別力がないとの理由により拒絶とはならず, 又は 社会主義道徳風習を害し, 又はその他の有害な影響を及ぼすもの ではなく, 先行商標との関係で同一又は類似のものがなければ登録となる (1) 識別力に関連する商標法上の規定につい

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事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

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1 特許庁が無効 号事件について平成 25 年 2 月 1 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 事実及び理由第 1 請求の趣旨主文と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ( 当事者間に争いがない ) (1) 被告は, 別紙商標目録 1 記

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

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キューピー図形事件:東京高裁平成15(行ケ)192号平成15年10月29日判決(認容・審決取消)

G-235 登録商標 一部取消審決取消請求事件 : 知財高裁平成 28( 行 ケ )10230 平成 29 年 9 月 14 日 (2 部 ) 判決 < 請求棄却 > キーワード 商標権 50 条 1 項 ( 不使用取消 ), 社会通念上同一と認められる商標, 平面図 形商標, 位置商標, 部分意匠

2.1 提供方法 提供形態 登録されたサービス利用者に発行される ID パスワードによりアクセス できるダウンロードサイトから オンラインで提供される 提供周期 新規発生分 / 更新処理分のデータは 日次及び週次で提供される ただし 週次データにおいて期間内に更新又は削除が複

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

登録番号第 号出願日平成 15 年 8 月 25 日登録日平成 17 年 5 月 13 日登録商標 商品及び役務の区分第 24 類指定商品織物, 布製身の回り品, かや, 敷布, 布団, 布団カバー, 布団側, まくらカバー, 毛布, 織物製いすカバー, 織物製壁掛け, カーテン,

1 アルゼンチン産業財産権庁 (INPI) への特許審査ハイウェイ試行プログラム (PPH) 申請に 係る要件及び手続 Ⅰ. 背景 上記組織の代表者は

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最新判決情報 2013 年 12 月分 〇レディーガガ事件 知財高裁 H25.12.17 H25( 行ケ )10158 審決取消請求事件 ( 清水節裁判長 ) LADY GAGA/ レディー ガガ はアメリカの世界的な人気女性歌手であるが 同人が代表者を務める米 国法人が 標準文字で表記された商標 LADY GAGA を第 9 類 レコード インターネットを利用して受信し 及び保存することが出来る音楽ファイル 映写フィルム 録画済みビデオディスク及びビデオテープ について 出願したところ 商品の品質 ( 内容 ) を表示するものとして法 3-1-3 号により拒絶されたため 当該審決の取 消が求められた事案である なお 本願は分割出願であり 第 3,9,14,16,18,25,35,41 類を指定商品 指定 役務とする原出願は第 5405058 号としてすでに商標登録されている 言うまでもなく CD や DVD などにおいて LADY GAGA の表示は 録音録画された楽曲の歌手名を表示し あるいは録画収録されている登場人物名を表示しているので それら媒体の内容を表示していることになり 商品の品質表示ということなる 当然 需要者らも LADY GAGA を同人が歌っている商品であると認識して 商品を購入している 本件判決もそのような認定で 商品の品質 ( 内容 ) 表示であるから 本願商標は自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないと判断している 判決理由は正にこの通りであるが 商品の内容表示だと何故自他商品の識別標識として機能しないのかを理解することは容易ではない 現実的にみてみると 例えば レディー ガガの CD 等が 特にまったく同じ楽曲が複数のレーベル ( レコード会社 ) から発売されている場合 LADY GAGA の表示によってレーベルつまりレコード会社である出所の違いを識別することはできない 同じ楽曲が収録された CD でも収録曲が違ったり 曲数も違うであろうから当然価格も違ってくるので 需要者からみれば どこのレーベルから発売されたガガの CD であるかを見分ける必要がある しかし レーベルが違っていても 同じガガの CD であるので LADY GAGA の表示によってレーベルの違いを見分けることができず 自他商品識別力がないことになる しかし 楽曲には著作権があるし レーベルとの独占契約などにより ガガの CD が一つのレーベルだけからしか発売されていない場合 LADY GAGA の表示が他の歌手の CD との識別に機能することが考えられる つまり 商標登録による独占適応性があるかのようである 仮に LADY GAGA が商標登録されたとしても 他人が LADY GAGA の CD を出版できたとした場合 LADY GAGA の部分は CD 等の内容表示として法 26-1 項により LADY GAGA の商標権はその他人の CD には及ばないので 現実として 他人の使用が制限されることはない 原告も審決取消事由でこの点を主張している 著作権は有限の権利であるので 著作権が切れた場合 誰でもガガの CD を出せることになるが 他方 LADY GAGA の商標権が依然として有効である場合 法 26 条は意味があることになる この点に関する裁判所の判断は 26 条の効力の制限があるからと言って 登録要件を定めた法 3-1-3 号該当性の判断が緩和されることはないとしている また識別性を欠く商標であっても 周知著名となると 3 条 2 項の使用による識別性の適用が可能なはずである 原告もこの点を主張し 著名な本願商標の登録が認められず 他人による商標的使用を自由に認めると 彼女の名声や信用を害し 出所混同を生ずると主張したが 判決は 歌手名を表示したと認識される本願商標が自他商品の識別標識として機能しない以上 内容の誤認は生じたとしても 出所の混同は生じないと判断している つまり LADY GAGA が出所を表示する商標として使用され周知された場合には 3 条 2 項の適用もあり得るが 歌手名として表示されているに留まる限り 使用による識別力が生ずることもないということであろう このように歌手名や作者名 著者名 題号など著作物に関する表示は もちろん 名前である以上 商品の識別に機能することはあるが 商品の出所表示標識として機能しているかどうかが重要なのであって 原告が主張するように LADY GAGA が歌手名であると同時に レーベル名としても使用された場合には 商標としての保護が必要になるであろう 1

思うに 歌手名であろうと 楽曲名であろうと あるいは著者名であろうと 我々は 商標登録出願 をしているのであって それを特許庁が 商標ではない として出願を拒絶するというのは如何なものであろうか たとえば著作物の題号を商標登録出願したと言うことは 出願人はそれを題号としてとは別に 出所表示標識として使用するので 商標として保護して欲しいという意思表示である それを特許庁が一方的に題号だからと決め付けて頭から商標として機能しないとして出願を拒絶するということは 出願人の意思に反するのではなかろうか もし特許庁が懸念するように 出願人が当該商標を 商標 として使用せず 題号としてしか使用していない場合 不使用取消審判により取消される可能性があるので それは登録後の問題として処理すれば足りるのであろう 懸念としては 著作者名や題号等をそのまま商標登録した場合 一般の人は 26 条の効力の及ばない範囲の規定や商標的使用については知らないので 本来自由に使用できるはずのものに対して 商標権者から侵害とのクレームが来た場合 使用を中止せざるを得ないケースが出てくることである 商標権者側にしても 権利が濫用されるおそれがないとはいえないので裁判事件に発展する可能性もある 著作物の題号等の位置付けについては 様々な見解があるようであるので あるいは違った解決法がある のかも知れない 〇ラフィネスタイル不正使用取消事件 知財高裁 H25.12.18 H25( 行ケ )10042,43,44 審決取消請求 ( 設楽隆一裁判長 ) 第 3 類 化粧品 他を指定商品 指定役務とする被告ボディワーク社の登録商標 Raffine Style/ ラフィ ネスタイル ( 下左図 ) 及び Raffine Style( 図形 ) ( 下中図 ) を使用したバナー広告 ( 下右図 ) が 原告新日 本製薬の登録商標 RAFFINE 他に類似し 原告の業務と混同を生ずるものであるとして商標法 53-1 項の 不正使用を理由に請求した取消審判請求が不成立とされたため 当該審決の取消が求められた事案であ る なお関連する事件として 原告新日本製薬が被告ボディワーク社に対して商標権侵害を理由に使用差止 を求めた東京地裁判決 (H25.11.28) や 下掲載の無効審判事件があるので併せて検討すると良いであろ う 本件は 横一連に表記された被告商標を バナー広告において被告が Raffine と Style に分離し二段に表記したことが RAFFINE だけから成る原告登録商標に類似し 出所混同を生じさせるというのが原告側の主張である 先後願の関係では 被告商標が先願で 原告商標が後願であるので 先願商標を後願商標に類似させ 混同を生じさせたという構造である 他方 原告商標 RAFFINE は RAffINE Perfect One のテレビコマーシャル等で相当程度周知性を有しているので 後願商標が周知性を獲得したため 先願商標を不正使用であるとして 取消しにかかったことになる この場合の矛盾点として 判決理由の後半でも指摘されているように 被告商標が原告商標に類似すると原告が主張するのであれば 後願である原告商標は法 4-1-11 号の無効理由を内包していることになり そのような原告商標を法がどこまで保護すべきかが判断の分岐点となる 結論として 判決は審決を支持し 原告の請求を棄却しているが その最大の理由は 被告が本件商標のほか 被告バナー広告に類似する商標の登録を有していて バナー広告はそれらの使用と評価できること バナー広告において Style の語を小さく表記するなど殊更に Raffine の部分を強調しているものではないことが挙げられている そして 法 53 条の 不正使用 とは 登録商標の正当使用義務に違反したと見られる場合を想定しているのであって 不正使用の意図が見られない状況で出所混同が生じた場合は該当しないとされ 本件はそもそも類似する商標がたまたま並存登録されたために生じた混同であって 被告の使用態様に起因するものではないので 不正使用 には当たらないとされている 2

そして たまたま類似する商標が並存登録された場合にまで 53 条を適用して 先願である他方の商標登録 を取消すことは 先願主義の原則から妥当ではないとされている やはり 後願商標が先願商標を攻撃することの矛盾点が最大の問題点とされたのであろう そうすると 被告が RAFFINE の語を含む商標を第 3 類 化粧品 以外にも多数登録しているという危険な状況において 原告がこれらに類似する商標 RAFFINE を主要な商標として採用してしまい これを多額の宣伝費用をかけて周知商標にまで引き上げてしまったことが われわれ傍観者としては最大の疑問点となる 〇ラフィネスタイル無効審判事件 知財高裁 H25.12.18 H25( 行ケ )10065 審決取消請求 ( 設楽隆一裁判長 ) 上記の事件では 被告ボディワーク商標が原告新日本製薬商標より先願であ った点がキーポイントであったが 被告商標のうち 原告商標 ( 右下 ) より後に出 願され登録された被告商標 Raffine Style( 図形 ) ( 右上 ) に対して 原告が法 4-1-11 号を理由に無効審判を請求した事案である 審決では 両商標が非類似であるので法 4-1-11 号 15 号 19 号 7 号に該当 しないとされたが 判決では 本件商標中の Style の語が 流 様式 を意 味し 識別力を欠くのに対して Raffine の部分はフランス語の意味は知られてい なくとも その外観や称呼が需要者らに独特の印象を与えるので本件被告商標は 原告引用商標に類似するとして 審決が取り消されている これも逆にみると 判決は原告勝訴とはなったものの 原告新日本製薬の登録商標 RAFFINE が前記事 件における被告先願登録商標 Raffine Style に類似するということを原告自ら確認してしまった結果となり 裁判をしたことが原告に不利になっているようである また前記事件との関係でいうと 被告先願登録商標 Raffine Style がありながら これに類似する原告後 願商標 RAFFINE の並存登録を許してしまったことが問題の発端であるにも拘らず 依然として非類似の商 標であるという点に固執した審決の姿勢は批判されるところであろう 〇ラフィネ無効審判事件 知財高裁 H25.12.18 H25( 行ケ )10165,166,167 審決取消請求 ( 設楽隆一裁判長 ) 上記原告被告が攻守ところを変え 原告ボディワーク社が被告新日本製薬の登 録商標 RAFFINE ( 標準文字 ) RAffINE ( 標準文字 ) 及び RAffINE ( 右図 ) に 対して 無効審判を請求した事案である 原告ボディワーク社が引用する商標は以下の 3 商標である なお以下の引用商標 の登録名義人は原告ボディワークではなく 別会社のコスメテックスローランド ( 株 ) であるが 両者の関係は 不明である 推測では 他社による下記引用商標があったため Raffine Style として登録を図ったように思 われる 結論として 知財高裁でも審決が支持され 両商標は非類似と判断されているので むしろボディワーク自身の登録商標 Raffine Style を引用商標とした方が 上記判決で類似商標と判断されているので 好結果が得られた模様である もちろん ボディワークが自身の登録商標を理由に 新日本製薬の登録商標に対してこれから無効審判を請求することも可能である 上記のように 知財高裁も両商標を非類似と判断したが 両商標が称呼上類似することは認められている これを近年流行の 外観の相違や観念において比較できないこと そして 化粧品の取引の実情として 店頭販売 通信販売 ネット販売でも需要者らは商品の外観を見て購入することが通常であること その際に製造販売元を見るなど相応の注意を払って購入することなどが非類似と判断した理由として挙げられている 3

原告側の ネット検索はカタカナで行なうとの主張については 検索はカタカナで行なっても 検索結果から 商品を選択する際には 商品の外観上の特徴や製造販売元を確認するので 前記認定に変わりはないと斥 けられている 確かに原告はネット検索をカタカナで行なうと主張しているが もう少し緻密な主張もできたように思われる たとえば 女性たちの間で化粧品の話題は日常的なことであろうが その会話の中で ラフィネの化粧水がよい とだけ聞いた場合 ネット検索の結果だけでは どちらかの ラフィネ かは区別できない もちろん 新日本製薬のラフィネ と聞けば 確認できるかも知れないが ボディワークの ラフィネ も日本全国で展開されるリラクゼーションサロンで有名なので それかも知れないと誤解するであろう まして 日常会話で化粧品のスペリングまで確認しあうとは思えない また判決も言うように Raffine も LA FINE ともフランス語 イタリア語ともとれ 一般人には意味が分からないなど 難しい語であることに変わりはない そして 日本人には R と L の区別は付きにくいし ff の重複の有無というスペリングの違いも苦手なところである むしろ ラフィネ の音の方が需要者には洗練された印象を与えるので その同一性により需要者らが混乱するおそれの方が高いように思われる そうすると 判決が化粧品の取引の実情としてあげた商標の外観の相違や製造発売元の確認という点も 出所混同が生じないという決定的な理由付けにはならないのではないであろうか 以上の事件を俯瞰すると 東京地裁の侵害事件では 両者商標の類似性は認められたものの ボディワーク商標の先使用権が認められて侵害が否定されているし それとも関連するであろうが ボディワーク商標の不正使用も否定され 無効審判事件で新日本製薬は両者商標の類似性を認めさせるのに成功したものの 自身の登録商標に先行するボディワークの先登録商標があることから 逆に悪い方向に作用したことになる そして 平成 23 年 4 月登録の新日本製薬の商標は 平成 28 年 4 月まで無効審判を請求されるおそれがある一方 ラフィネパーフェクトワン の周知性が高まって行き 使用中止が難しい状況が続いていることなど考えると やはり 化粧品 の商標に RAFFINE を採用した出発点に更なる熟慮が必要であったようである 〇有限会社三菱合同丸漁業事件 東京地裁 H25.12.19 H25( ワ )18129 商号使用差止等請求事件 ( 高野輝久裁判長 ) 千葉県鴨川沖で巻き網漁を営む被告有限会社三菱合同丸漁業に対して 原告三菱商事株式会社及 び三菱重工業株式会社が同社らの著名表示に類似することを理由に 不競法 2-1-1 号により 三菱 の使 用差止と商号登記の抹消を求めて認められた事案である 注目点としては 三菱グループ企業はたくさんあるが 被告が漁業関係者であるため 船舶や水産物を取り扱う三菱商事と船舶の製造を行なっている三菱重工業が原告になっている点がある 判決では 三菱 は当然著名であるので 被告による 三菱 の使用は原告らの信用が化体した営業表示の希釈化を生じるおそれがあると判断されている これに対して被告は 三菱合同丸 の表示は沿岸の巻網漁を家業とする A 家が代々用いてきたものであり 原告らの営業表示が著名になる前の昭和 16 年頃から被告営業表示を使用していたことを理由に適用除外 ( 法 19-1-2 号 4 号 ) を主張したが 古くからの使用を証する適確な証拠がなく 証拠として提出された集合写真が昭和 31 年頃撮影されたものであって それより以前から三菱グループの営業表示は著名であったとして 被告の抗弁が斥けられている ちなみに 三菱合同丸 をネット検索すると 昭和 60 年に起きた第 9 三菱合同丸乗組員死亡事件に関する海難審判庁の裁決や平成 11 年に起きた第 5 三菱合同丸 第 1 三菱合同丸衝突事件の海難審判庁裁決 2013 年 1 月の第 2 三菱合同丸の転覆事件の報道などが見られる そうすると 三菱グループでは長年の間 三菱合同丸 の使用を放置してきたことが伺えるし 有限会社三菱合同丸漁業 の存在により 現実に三菱商事や三菱重工の信用が希釈化されるのだろうかという素朴な疑問がわいてくる 4

〇ももいちご / 百壱五不使用取消審判事件 知財高裁 H25.12.19 H25( 行ケ )10203 審決取消請求 ( 富田善範裁判長 ) 平成 24 年 2 月 21 日付け知財高裁ももいちご事件判決の続きである 原告は 第 1 事件の対象となった登録商標 ももいちご / 百壱五 に対して 再度 不使用取消審判を請求した 第 1 事件判決に対しては 非常に批判が多かったが 被告商標権者側でも商標 の同一性を否定した最初の特許庁の審決を考慮し 再度不使用取消審判を請求 されることに備えて 下記訂正シールを作成し 元の包装箱に貼付して販売したと主張した 上記訂正シールに表示された商標は 登録商標とほぼ同一の商標であるので 原告は商標の態様を争うことができず 審決取消事由として訂正シールが貼り付けられたという事実や 訂正シール印刷の事実等について争ったが 決定的な証拠はなかったため いずれも斥けられている また訴訟段階で新たに提出された徳島バスへの広告についても 提出は許されないと原告は主張したが 最高裁判例もあるように 不使用取消審判の対象が使用の事実の有無であるので 口頭弁論終結時まで許されるとして斥けられている なお本件と同日付の無効審判事件に関する知財高裁判決 (H25( 行ケ )10231) では 5 年間の除斥期間経過後の無効審判請求であるとして 審決により請求が却下されている 無効審判では 無効理由が法 3-1-2 号や 3 号 5 号 そして 74 条の虚偽表示の禁止などであったにも拘らず 審決取消事由として審理の対象とはなっていなかった法 4-1-10 号 15 号やパリ条約 6 条の 2 を持ち出しているため そもそもこれらは審理対象とはなって居らず また無効理由は限定列挙であるとして 原告の請求が棄却されている いずれも原告の本人訴訟であるため 無理が多かったようである 〇パールフィルター事件 知財高裁 H25.12.25 H25( 行ケ )10164 審決取消請求 ( 設楽隆一裁判長 ) 第 34 類 たばこ を指定商品とする登録商標 PEARL/ パール ( 右図 ) に対する不使 用取消審判が不成立とされたため 当該審決の取消が求められた事案である 本件商標は 被告日本たばこが販売するたばこ ピアニッシモ について パールフィル ター として使用されていた 審決は パールフィルター のうち フィルター はフィルター 付きのたばこを表示する識別力を有しない語であるので パール が要部となり本件登 録商標と社会通念上同一であるとして登録商標の使用を認めた これに対する審決取消事由として原告フィリップモリス社は たばこ業界において パール の語はフィルターに真珠のような光沢やつやがあることを表わす修飾語として使用され あるいは パールフィルター は 口紅が付きにくいパールシャイン加工フィルター の意味で使用されているので パールフィルター 全体として識別力を欠き 商標としての使用ではないと主張した これに対する反論として被告日本たばこは パールフィルター は フィルター付きたばこ のブランド名であ ると主張した 判決は たばこ業界において ウィンストン フィルター キャメル フィルター のように フィルター付きたばこのブランド名として フィルター と称する例があるので 被告商標 パールフィルター はメインブランド ピアニッシモ の特徴を表わす二次的ブランドとして使用されていると認定した そして パールフィルター 全体が二次的ブランドとして一連一体のものとして認識されるので 本件登録商標とは フィルター の語の有無に相違があり 社会通念上同一の商標ということができないとして 審決を取消した 5

商標の認定について業界の使用例から実質的に判断した判決として意味があると思われるが 原告の審決取消事由に沿った判断ではないようである 原告は パールフィルター が商標として使用されていないと主張したのであり これに対して被告は パールフィルター がブランドとして使用されていると反論した そこで判決は 被告側の主張を採用し パールフィルター は二次的ブランドであるので 一体として評価すべきとし その結果 登録商標との同一性を欠くと認定したのである つまり 判決は原告が主張していない理由により審決を取消したことになるが 弁論主義や主張立証責任の分担の観点からは問題がないのであろうか もし裁判所が原告の主張に拘束されるとすると 原告の主張は理由がないことになり 請求は棄却されることになるのではないであろうか なお原告フィリップモリス社は 商願 2013 46755 号 PERAL を出願中であるが 本件訴訟での パール が識別性を欠くとの主張は 当該出願の登録にマイナスの影響があるように思われる 〇ループホイール事件 知財高裁 H25.12.26 H25( 行ケ )10161,162 審決取消請求 ( 富田善範裁判長 ) 第 24 類 織物ほか 及び第 25 類 被服ほか を指定商品とする登録商標 LOOPWHEEL ( 標準文字 ) に 対する無効審判が不成立とされたため 当該審決の取消しが求められた事案である 原告の主張は 本件 商標が 吊り編み ( 機 ) を用いて編んだ織物又はメリヤス生地 を意味するので商品の品質表示語として法 3-1-3 号に該当するというものである しかし 知財高裁でも原告の主張は退けられ 識別性があるとした審決が支持されている 判決理由を見てゆくと 以下の通りである (1) 繊維関係の専門書 辞書類には ループ ホイール は巻き上げ機であるループ ホイール編み機の部品の名称であり 巻き上げ機 の英語表記は loop wheel machine であるので loop wheel の語自体は編み機全体ではなく その部品の名称を意味し ひいては巻き上げそのものを想起させるかも知れないが これらの文献は一般消費者が普段接することのないものであるので これらの記載から一般消費者が loop wheel から巻き上げ機を想起するとまでは認められない また上位概念としての編み機を示す一般的な用語とも認められない (2) ファッションブランドのウエブページには 吊り編みとは 英語で loopwheel( ループウィール )= 日本語で吊り編み機という古き良き時代の編み機で編まれた生地 LOOP WHEEL( 吊り編み機 ) などの記載があるが これらの使用例は LOOPWHEEL の語が日本語の 吊り編み 又は 吊り編み機 と並記され その説明のために使用されているのであって 英語の LOOPWHEEL の語のみが単独で商品に使用された場合 需要者である一般消費者の多数によって 吊り編み 又は 吊り編み機 を意味すると認識されるとまでは認められない (3) 繊研新聞や大手繊維メーカーのウエブページには 吊り編み 吊り編み機 についての多数の使用例があるが 英語の LOOPWHEEL が併記されていないので LOOPWHEEL の語を使用しなくとも支障がないことを伺わせる ( つまり 当業界の取引に際し必要適切な表示ではなく 商標としての独占適応性があるということ ) しかし この知財高裁の判断も事実の一面しか見ていないようであり 違和感を感ずる 筆者も判決理由で認定された他社使用例の一部を確認したが これらを見た印象からは LOOPWHEEL は吊り編み機によって編まれた生地を普通に表示するものとして 識別性を欠くというものである 上記理由 (1) で判決は loopwheel の語が各種文献に掲載されているが これらは専門書であって一般需要者が接するものではないとしているが 繊維業界の者も指定商品の当業者であって当然に商標の識別性有無の判断基準とされるべきである 需要者の視点だけから専門書をみた判決理由は妥当性を欠くであろう 6

また LOOPWHEEL だけでは巻き上げ機を意味せず 部品の表示に留まるといっているが たとえ機械を表す 機 や machine の語がなくとも 巻き上げ機において LOOPWHEEL の語は機械の主要部と成る重要部分の記載であるので 他の部品を表す語とは異なり それ自体で当該編み機や編み物を認識させるというべきである 判決は 部品 完成品という形式的な関係だけを見ているが 部品の中でも必要不可欠の主たる部品と代替可能な部品とがあるのであり 本件の場合 LOOPWHEEL が主たる部品であるからこそ 吊り編み機 を loop wheel machine というのである 上記理由 (2) の使用例についても 英語の LOOPWHEEL が日本語の説明であるからというが 説明であ るにしてもこれをみた需要者が LOOPWHEEL を 吊り編み機が編まれた生地 と認識する以上 識別性の 観点からはやはり否定的な要素というべきである そして上記理由 (3) についても同じであり 当業界で吊り編み ( 機 ) の説明としてでも LOOPWHEEL の語が使用されている以上 当業界において必要な表示である しかし 本件商標登録が維持されている以上 当業者は LOOPWHEEL の語を説明的にせよ使用することには商標権侵害という大きなリスクを背負うことになる そうであれば 商標としての独占適応性はなく 当業界の自由な使用に委ねるべきであろう 仮に 譲って LOOPWHEEL が指定商品の品質表示として一般的ではないとしても 前記の使用例からは 6 号の該当性が十分にあるので 登録を無効にすることは難しいものではない ただし 原告が 3 号該当性のみを主張している点が 6 号適用のネックになるのかも知れない 7