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4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

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Microsoft Word - 【確定】東大薬佐々木プレスリリース原稿

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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Microsoft Word - tohokuuniv-press _02.docx

界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

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報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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018_整形外科学系

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

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いて認知 社会機能障害は日々の生活に大きな支障をきたしますが その病態は未だに明らかになっていません 近年の統合失調症の脳構造に関する研究では 健常者との比較で 前頭前野 ( 注 4) などの前頭葉や側頭葉を中心とした大脳皮質の体積減少 海馬 扁桃体 視床 側坐核などの大脳皮質下領域の体積減少が報告

Microsoft Word - 日本語解説.doc

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ただし 対象となることを希望されないご連絡が 2016 年 5 月 31 日以降にな った場合には 研究に使用される可能性があることをご了承ください 研究期間 研究を行う期間は医学部長承認日より 2019 年 3 月 31 日までです 研究に用いる試料 情報の項目群馬大学医学部附属病院産科婦人科で行

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2. 研究の目的及び意義について目的 : 手根管症候群の臨床的な重症度と腱鞘滑膜に発現する炎症性のサイトカインやAGEsの関連を検討する事です 意義 : 手根管症候群の重症度と周囲組織の炎症の相関が明らかになれば 抗炎症作用を持つ薬剤が手根管症候群の治療に有用となる理由がより明らかとなると考えられま

学報_台紙20まで

がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

Microsoft Word - 01.doc

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Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

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統合失調症といった精神疾患では シナプス形成やシナプス機能の調節の異常が発症の原因の一つであると考えられています これまでの研究で シナプスの形を作り出す細胞骨格系のタンパク質 細胞同士をつないでシナプス形成に関与する細胞接着分子群 あるいはグルタミン酸やドーパミン 2 系分子といったシナプス伝達を

疫学研究の病院HPによる情報公開 様式の作成について

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見

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サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

平成16年6月  日

記者発表資料

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

Microsoft Word osumi-1Ositorrr.doc

課題名

群馬大学人を対象とする医学系研究倫理審査委員会 _ 情報公開 通知文書 人を対象とする医学系研究についての 情報公開文書 研究課題名 : がんサバイバーの出産の実際調査 はじめに近年 がん治療の進歩によりがん治療後に長期間生存できる いわゆる若年のがんサバイバーが増加しています これらのがんサバイバ

Microsoft Word - 【最終】リリース様式別紙2_河岡エボラ _2 - ak-1-1-2

CROCO について

Microsoft Word - HP用(クッシング症候群).doc

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り込みが進まなくなることを明らかにしました つまり 生後 12 日までの刈り込みには強い シナプス結合と弱いシナプス結合の相対的な差が 生後 12 日以降の刈り込みには強いシナプス 結合と弱いシナプス結合の相対的な差だけでなくシナプス結合の絶対的な強さが重要であることを明らかにしました 本研究成果は

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P01-16

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 脳内のグリア細胞が分泌する S100B タンパク質が神経活動を調節 - グリア細胞からニューロンへの分泌タンパク質を介したシグナル経路が活躍 - 記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によ

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

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小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研

Microsoft Word - final_web【広報課0808確認】東大病院_2019 PAR フ゜レスリリース_PRC_AMED_厚労省_v12 - コピー.docx

Microsoft Word - (HP用) _記者会見_文書_final.docx

Microsoft Word - 【確定】プレスリリース原稿(坂口)_最終版

ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

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RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

機械学習により熱電変換性能を最大にするナノ構造の設計を実現

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

in vivo

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

研究の背景これまで, アルペンスキー競技の競技者にかかる空気抵抗 ( 抗力 ) に関する研究では, 実際のレーサーを対象に実験風洞 (Wind tunnel) を用いて, 滑走フォームと空気抵抗の関係や, スーツを含むスキー用具のデザインが検討されてきました. しかし, 風洞を用いた実験では, レー

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

発達期小脳において 脳由来神経栄養因子 (BDNF) はシナプスを積極的に弱め除去する 刈り込み因子 としてはたらく 1. 発表者 : 狩野方伸 ( 東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻神経生理学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 生後発達期の小脳において 不要な神経結合 ( シナプス )

ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

概要 名古屋大学環境医学研究所の渡邊征爾助教 山中宏二教授 医学系研究科の玉田宏美研究員 木山博資教授らの国際共同研究グループは 神経細胞の維持に重要な役割を担う小胞体とミトコンドリアの接触部 (MAM) が崩壊することが神経難病 ALS( 筋萎縮性側索硬化症 ) の発症に重要であることを発見しまし

同意説明文書(見本)

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

4. 発表内容 : 研究の背景 イヌに お手 を新しく教える場合 お手 ができた時に餌を与えるとイヌはまた お手 をして餌をもらおうとする このように動物が行動を起こした直後に報酬 ( 餌 ) を与えると そ の行動が強化され 繰り返し行動するようになる ( 図 1 左 ) このことは 100 年以

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

CINAHL Basic Searching

統合失調症の病名変更が新聞報道に与えた影響過去約 30 年の網羅的な調査 1. 発表者 : 小池進介 ( 東京大学学生相談ネットワーク本部 / 保健 健康推進本部講師 ) 2. 発表のポイント : 過去約 30 年間の新聞記事 2,200 万件の調査から 病名を 精神分裂病 から 統合失調症 に変更

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Transcription:

新しく生まれた嗅細胞の生死は特定の時期に匂い入力を受けるかどうかで決まる - 匂い刺激で嗅覚障害の改善が期待 - 1. 発表者東京大学大学院医学系研究科教授 医学部附属病院耳鼻咽喉科 聴覚音声外科教授 科長山岨達也 ( やまそばたつや ) 東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 聴覚音声外科助教菊田周 ( きくたしゅう ) 2. 発表のポイント 匂いを感知する鼻の嗅細胞において 新しく生まれた嗅細胞は匂いの入力がないと 既存の神経回路に組み込まれずに細胞死に至ることをマウスにおいて発見しました 嗅細胞には 匂いの入力の有無によって 新しく生まれた嗅細胞の生死が決まる 臨界期 ( 注 1) が存在することが分かりました 特定の時期に匂い刺激を嗅覚障害患者に与える 匂いリハビリテーションの臨床応用につながる可能性が期待されます 3. 発表概要匂いの情報を脳に伝える嗅細胞は 毎日古くなったものが死んでいくため 大人になっても新しく生まれ変わっています この新しい嗅細胞が既存の神経回路にきちんと組み込まれるため 古いものが失われても私たちの嗅覚が失われることはありません しかし 新しく生まれた嗅細胞がどのようなメカニズムで 既存の神経回路に組み込まれているのかは明らかになっていませんでした 東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 聴覚音声外科の山岨達也教授 菊田周助教らは 新しく生まれた嗅細胞は匂い入力がないと 既存の神経回路に組み込まれずに細胞死に至ることをマウスにおいて見つけました さらに新生した嗅細胞の生死が 神経細胞が生まれてから 7~14 日目に匂い入力があったか なかったかによって決められていることを発見しました 今回の研究によって 嗅細胞には 匂い入力の有無によって新生嗅細胞の生死が決まる 臨界期 が存在することを見出しました 嗅覚障害に対する確立された治療法はこれまで存在していませんが 今回の発見によって 特定の時期に嗅覚障害患者に匂い刺激を与える 匂いリハビリテーションの開発につながると期待されます 本研究成果は 2015 年 2 月 11 日 ( 米国東部標準時間 ) に米国神経科学学会誌 Journal of Neuroscience( ジャーナルオブニューロサイエンス ) のオンライン速報版で公開されます

4. 研究の背景風邪をひいたり鼻炎になると 時として匂いを感じにくくなることを私たちは日常的に経験します これは鼻の奥にある嗅上皮と呼ばれる場所に密集して存在する嗅細胞が障害を受けることがその一因と考えられています 嗅上皮では毎日古くなった嗅細胞が死んでいき その代わりに新しい嗅細胞が次々に生まれます したがって 既存の古い細胞が失われても 新しい細胞が失われた細胞の機能を補えば 嗅覚が一時的に失われてもいずれ元に戻ることが期待されます ( 図 1) しかし 新生した嗅細胞が既存の神経回路にどのように組み込まれ 嗅覚機能の回復に寄与しているのかは明らかになっていませんでした 嗅覚障害の病態生理を理解し 治療法の開発に結び付けるには この絶えず生まれ続ける新生嗅細胞に注目し その成熟過程に匂い入力がどのように関わるのかを明らかにすることが必要です 5. 研究内容 (1) 新生した嗅細胞は 匂い入力に依存して成熟する 大人のマウスに嗅毒性物質を投与し 既存の古い嗅細胞をすべて除去しました この手法によってその後に産生される新しく生まれた嗅細胞のみに注目することができるようになりました この新生した嗅細胞が既存の神経回路へ組み込まれる過程において 匂い入力がどのように関

わるのかを観察しました 嗅上皮から古い既存の細胞が除去されると 28 日後には嗅上皮は新しく生まれた嗅細胞で完全に置換されることが観察されました ( 図 2) しかし 片鼻を閉じ 匂い入力が入らない状況では成熟した嗅細胞数が もう片方の鼻を閉じていない側の成熟した嗅細胞数と比較して減少しているのが観察されました ( 図 2) 上述の観察結果に加えて 鼻を閉じていた場合はそうでない場合に比べて 神経活動の減少も確認されました この結果は新生した未熟な嗅細胞が成熟した嗅細胞に分化し 機能的に神経回路に組み込まれていくには匂い入力が必要であることを示唆しています (2) 適切な時期に匂い入力がないと 新生嗅細胞は成熟せずに細胞死に至る 新生した嗅細胞は匂い入力を受けた場合に成熟しますが 特に生まれてから 7~14 日の間に匂い入力を受けることが重要であることが分かりました 7~14 日の間に匂い入力を受けないと 未熟な嗅細胞が成熟せずに細胞死していました ( 図 2) さらに 未熟な細胞が多く死ぬ 7~14 日の時期に 細胞死を抑制する薬剤を投与すると嗅細胞の数が回復することを見出しました このことから 嗅細胞には 匂い入力の有無によって新生した嗅細胞の生死が決まる 臨界期 が存在することが判明しました さらに この 臨界期 は 新生した嗅細胞が ちょうど既存の神経回路とシナプス ( 嗅細胞と神経細胞の接合部位 ) を形成する時期に一致していました 以上から 嗅上皮の新生した嗅細胞は既存の神経回路とシナプスを形成する時期に匂い入力があるかないかによって その生死が決定されていると説明できます 今回 嗅上皮障害後の再生過程に匂い入力が極めて重要な役割を果たしていることが明らかになりました 今後 適切な時期に嗅覚障害患者に匂い刺激を与えることで嗅上皮再生を促進させる 匂いリハビリテーションの臨床応用につながる可能性が期待されます

6. 発表雑誌雑誌名 :The Journal of Neuroscience( 米国東部標準時間 2 月 11 日オンライン版 ) 論文タイトル :Sensory Deprivation Disrupts Homeostatic Regeneration of Newly Generated Olfactory Sensory Neurons after Injury in Adult Mice 著者 :Shu Kikuta *, Takashi Sakamoto, Shin Nagayama, Kaori Kanaya, Makoto Kinoshita, Kenji Kondo, Koichi Tsunoda, Kensaku Mori, and Tatsuya Yamasoba 7. 注意事項 日本時間 2 月 12 日 ( 木 ) 午前 7 時 ( 米国東部標準時間 2 月 11 日 ( 水 ) 午後 5 時 ) 以前の公表 は禁じられています

8. 問い合わせ先 < 本件に関するお問い合わせ先 > 東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 聴覚音声外科助教菊田周電話 :03-5800-8665 FAX:03-5800-8665 E-mail:sh-kiku@m.u-tokyo.ac.jp 東京大学大学院医学系研究科東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 聴覚音声外科教授山岨達也電話 :03-5800-8665 FAX:03-5800-8665 E-mail:tyamasoba-tky@umin.ac.jp < 取材に関するお問い合わせ先 > 東京大学医学部附属病院パブリック リレーションセンター担当 : 小岩井 渡部電話 :03-5800-9188( 直通 ) E-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp 9. 用語の説明注 1: 臨界期成体にある刺激が与えられたときに その効果が最も現れる時期をいう 神経科学の分野では 視覚野の眼優位性の形成における臨界期が有名である 言語 スポーツなどの習得には 幼児期のトレーニングが重要と考えられているが これも広義の臨界期の例と言える