G-207 登録商標 ヨーロピアン 不使用取消審決取消請求事件 : 知財高裁平成 27( 行 ケ )10032 平成 27 年 9 月 30 日 (1 部 ) 判決 < 棄却 > キーワード 商標法 50 条 ( 登録 3 年以上の登録商標の不使用 ), 登録商標の使用 ( 自他商品の識別機能 ),

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平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

一括して買い受けた なお, 本件商品である コンタクトレンズ は, 本件商標の指定商品 眼鏡 に含まれる商品である (3) 使用商標は, ハートO2EXスーパー の文字からなるところ, 本件商品の容器に表示された使用商標は, ハート の文字部分だけが赤い字で, かつデザイン化されており, これに続く

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

(Microsoft Word \224\255\225\\\201yMSH\201z \224\273\214\210\201i\217\244\225W\201j.doc)

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本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

求める事案である 1 本件商標被告は, 平成 17 年 3 月 7 日, rhythm の文字を横書きしてなる商標 ( 以下 本件商標 という ) について, 第 25 類 履物, 乗馬靴 を指定商品として, 商標登録出願し, 同年 9 月 16 日に設定登録を受けた ( 登録第 号

基本的な考え方の解説 (1) 立体的形状が 商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる場合は 特段の事情のない限り 商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断する 解説 商品等の形状は 多くの場合 機能をより効果的に発揮させたり 美感をより優れたものとしたりするなどの目的で

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

G-235 登録商標 一部取消審決取消請求事件 : 知財高裁平成 28( 行 ケ )10230 平成 29 年 9 月 14 日 (2 部 ) 判決 < 請求棄却 > キーワード 商標権 50 条 1 項 ( 不使用取消 ), 社会通念上同一と認められる商標, 平面図 形商標, 位置商標, 部分意匠

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

G-231 登録商標 不使用取消審決取消請求事件 : 知財高裁平成 29( 行ケ )10033 平成 29 年 6 月 8 日 (2 部 ) 判決 < 請求認容 / 審決取消 > キーワード 審判請求無答弁事件 ( 不使用による登録取消 商標法 50 条 1 項 ), 通常使用 権者, 社会通念上同

平成 25 年 5 月 30 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 4 月 25 日 判 決 原告 X 訴訟代理人弁理士田中聡 被告東洋エンタープライズ株式会社 訴訟代理人弁理士野原利雄 主 文 原告の請求を棄却する 訴訟費用は原

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成 29 年 5 月 15 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 3 月 6 日 判 決 原 告 BERNARD FRANCE SERVICE 合同会社 訴訟代理人弁護士笹本摂 向多美子 訴訟代理人弁理士木村高明 被 告 ラボラ

令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

年 1 月 9 日に第 40 類 布地 被服又は毛皮の加工処理 ( 乾燥処理を含む ), 裁縫, ししゅう, 木材の加工, 竹 木皮 とう つる その他の植物性基礎材料の加工 ( 食物原材料の加工を除く ), 食料品の加工, 廃棄物の再生, 印刷 を指定役務 ( 以下 本件指定役務 という ) とし

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本件は, 商標法 50 条 1 項に基づく商標登録取消審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である 1 本件商標及び特許庁における手続の経緯等被告は, 下記の キリン の文字を横書きしてなり, 平成 12 年 8 月 1 日に出願され, 平成 13 年 8 月 10 日に設定登録された登録第 4498

本件は, 商標法 50 条 1 項に基づく商標登録取消審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である 1 本件商標及び特許庁における手続の経緯等被告は, 下記の KIRIN の欧文字を横書きしてなり, 平成 8 年 6 月 24 日に出願され, 第 30 類 コーヒー及びココア, 茶, 調味料, 香辛料

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

キューピー図形事件:東京高裁平成15(行ケ)192号平成15年10月29日判決(認容・審決取消)

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

第 2 事案の概要本件は, 原告が有する下記商標登録 ( 本件商標 ) について, 被告が行った商標法 51 条 1 項に基づく商標登録取消審判請求に対し, 特許庁がこれを認容する審決をしたことから, 原告がその審決の取消しを求めた事案である 争点は,1 原告による下記の本件使用商標 1 及び2(

登録番号第 号出願日平成 15 年 8 月 25 日登録日平成 17 年 5 月 13 日登録商標 商品及び役務の区分第 24 類指定商品織物, 布製身の回り品, かや, 敷布, 布団, 布団カバー, 布団側, まくらカバー, 毛布, 織物製いすカバー, 織物製壁掛け, カーテン,

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

(1) 商標登録第 号 (1981 年 2 月 23 日出願 1984 年 2 月 23 日登録 ) 32 類ビール 33 類日本酒, 洋酒, 果実酒, 中国酒, 薬味酒 (2) 商標登録第 号 (1990 年 4 月 11 日出願 1993 年 12 月 24 日登

意匠法第十七条の三意匠登録出願人が前条第一項の規定による却下の決定の謄本の送達があつた日から三月以内にその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をしたときは その意匠登録出願は その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす 2 前項に規定する新たな意匠登録出願があつたときは もとの意匠登

550E62CA E49256A CC

本件は, 商標法 50 条 1 項に基づく商標登録取消審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である 1 本件商標及び特許庁における手続の経緯等被告は, 下記の KIRIN の欧文字を横書きしてなり, 平成 19 年 6 月 25 日に出願され, 第 35 類 酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧

2 訴訟費用は被告の負担とする 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録無効審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 11 号該当性 ( 類似性 ) の有無である 1 本件商標 被告は, 下記の本件商標の商標権者である ( 甲 1,2) ゲンコツメンチ ( 標準文字

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

31 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 1 原告の求めた裁判 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録を無効とした審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 10 号該当性 ( 引用商標の周知性の有無 ) である 1 特許庁における手続の経

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

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事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

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最高裁○○第000100号

<4D F736F F D2094DB944690BF8B818C8892E BC96BC8F88979D8DCF82DD816A2E646F63>

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1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求の趣旨 1 特許庁が無効 号事件について平成 25 年 5 月 9 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ( 当事者間に争い

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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

1 特許庁における手続の経緯等 本件商標 ( 甲 11,12) 商標登録番号 : 第 号 商標の構成 : 指定商品 : 第 29 類 卵, 食用魚介類 ( 生きているものを除く ), 冷凍野菜, かつお節, 寒天, 削り節, 食用魚粉, とろろ昆布, 干しのり, 干しひじき, 干しわ

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平成  年(オ)第  号

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

最高裁○○第000100号

EONERO のブランド名( 以下, 本件ブランド という ) 下に, 本件商標 2と同一の標章を用いて販売している (4) 控訴人は, 平成 27 年 12 月 11 日から同月 13 日にかけて ベルジュアダチ にて開催された展示販売会 ( 以下, 本件催事 という ) のチラシ ( 以下, 本

審決取消判決の拘束力

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

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最高裁○○第000100号

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REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

出願日平成 27 年 8 月 6 日登録日平成 28 年 6 月 17 日登録商標 医心 ( 標準文字 ) 指定役務第 41 類医学 歯学 薬学又は看護学に関する知識の教授, 医学部 歯学部 薬学部 看護学部又はその他の医療系学部に関する受験勉強の教授, 医学部生 歯学部生 薬学部生 看護学部生又は

主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

2 被控訴人は, 別紙標章目録記載の標章を付した薬剤を販売してはならない 3 被控訴人は, 前項記載の薬剤を廃棄せよ 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, PITAVA の標準文字からなる商標( 以下 本件商標 という ) の商標権者である控訴人が, 別紙標章目録記載の標章 ( 以下 被告標章

登録番号第 号指定商品 役務第 25 類被服, 空手衣第 41 類空手の教授, 空手の興行の企画 運営又は開催登録商標別紙原告商標目録 1 記載のとおりイ本件商標権 2( 以下これに係る登録商標を 本件商標 2 という ) 出願年月日平成 16 年 10 月 15 日登録年月日平成

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1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

事実及び理由 第 1 原告の求めた裁判特許庁が無効 号事件について平成 27 年 1 月 6 日にした審決のうち, 登録第 号の指定役務中 第 42 類ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供, オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラ

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平成 30 年 9 月 10 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 7 月 11 日 判 決 原告ハワード株式会社 同訴訟代理人弁護士 窪 田 英一郎 乾 裕 介 今 井 優 仁 中 岡 起代子 本阿弥 友 子 同訴訟代理人弁理士

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平成 25 年 12 月 17 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 10 月 17 日 判 決 原告エイトマイハートイン コーポレイテッド 訴訟代理人弁護士 五十嵐 敦 出 田 真樹子 弁理士 稲 葉 良 幸 石 田 昌 彦 右

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

1 特許庁における手続の経緯等 ( 後掲証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実 ) (1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) の商標権者である ( 甲 1, 2) 登録番号第 号登録出願日平成 26 年 3 月 27 日設定登録日平成 28 年 4 月 22 日登録

平成 25 年 4 月 24 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 3 月 11 日 判 決 原 告 X 訴訟代理人弁理士 松 下 昌 弘 被 告 特 許 庁 長 官 指定代理人 井 出 英一郎 同 水 莖 弥 同 堀 内 仁 子

号 ) をしたが, 同年 11 月 17 日付けで拒絶査定を受けたので, 平成 28 年 1 月 26 日, これに対する不服の審判請求をした ( 不服 号 ) ( 甲 3, 甲 4の1, 乙 1) 特許庁は, 平成 28 年 7 月 28 日, 本件審判の請求

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

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にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

原告は, 平成 26 年 12 月 9 日, 指定役務を第 35 類 市場調査又は分析, 助産師のあっせん, 助産師のための求人情報の提供, 第 41 類 セミナーの企画 運営又は開催, 電子出版物の提供, 図書及び記録の供覧, 図書の貸与, 書籍の制作, 教育 文化 娯楽 スポーツ用ビデオの制作

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G-207 登録商標 ヨーロピアン 不使用取消審決取消請求事件 : 知財高裁平成 27( 行 ケ )10032 平成 27 年 9 月 30 日 (1 部 ) 判決 < 棄却 > キーワード 商標法 50 条 ( 登録 3 年以上の登録商標の不使用 ), 登録商標の使用 ( 自他商品の識別機能 ), 書体のみ変更の同一文字の商標等の社会通念上同一と認められる商標 事案の概要 1 本件は, 被告 ( 真富士屋食品株式会社 ) が有する商標権について, 原告 ( ザコカ コーラカンパニー ) が商標法 50 条に基づき不使用取消審判請求をしたところ, 特許庁が審判請求は成り立たないとの審決をしたため, 原告が審決の取消を求めた事案である 2 特許庁における手続の経緯等 ( 争いがない事実又は文中に掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権を有している ( 甲 1) 登録第 4225824 号商標の構成 ヨーロピアン の文字を横書きしてなる 登録出願日平成 8 年 12 月 12 日設定登録日平成 10 年 12 月 25 日指定商品第 30 類 コーヒー及びココア, コーヒー豆, 茶, みそ, ウースターソース, ケチャップソース, しょうゆ, 食酢, 酢の素, そばつゆ, ドレッシング, ホワイトソース, マヨネーズソース, パスタソース, 焼肉のたれ, 角砂糖, 果糖, 氷砂糖, 砂糖, 麦芽糖, はちみつ, ぶどう糖, 粉末あめ, 水あめ, ごま塩, 食塩, すりごま, セロリーソルト, 化学調味料, 香辛料, 米, 脱穀済みのえん麦, 脱穀済みの大麦, 食用粉類, 食用グルテン, スパゲッティのめん, マカロニ, パスタソース付きのスパッゲティのめん, パスタソース付きのマカロニ, その他の穀物の加工品, ぎょうざ, サンドイッチ, しゅうまい, すし, たこ焼き, 肉まんじゅう, ハンバーガー, ピザ, べんとう, ホットドッグ, ミートパイ, ラビオリ, 即席菓子のもと, アイスクリームのもと, シャーベットのもと, アーモンドペースト, イーストパウダー, こうじ, 酵母, ベーキングパウダー, 氷, アイスクリーム用凝固剤, 家庭用食肉軟化剤, ホイップクリーム用安定剤, 酒かす (2) 原告は, 商標法 50 条 1 項に基づき, 本件商標の指定商品のうち, コーヒー及びココア, コーヒー豆 に係る部分について商標登録の取消審判 ( 以下 本件審判 という ) を請求し, その登録が平成 26 年 1 月 15 日にされた (3) 特許庁は, 平成 26 年 10 月 14 日に, 本件審判の請求は, 成り立た 1

ない との審決をし ( 出訴期間として90 日を付加 ), その謄本を, 同月 2 3 日, 原告に送達した (4) なお, ハウス食品株式会社は, 平成 11 年 4 月 26 日, 本件商標の登録につき, 商標法 3 条 1 項 3 号及び同法 4 条 1 項 16 号に該当するとして, 登録異議を申し立てたものの, 特許庁は, 本件商標の登録を維持する旨の決定をし, 同決定は, 同年 9 月 22 日に確定した ( 乙 1,2) 3 審決の理由審決の理由は, 別紙審決書の写しに記載のとおりである その要旨は, 被告は, 本件審判の請求の登録前 3 年以内である平成 25 年 11 月 16 日及び同年 12 月 5 日に, 日本国内において, 取消請求に係る指定商品 コーヒー及びココア の範ちゅうに属する インスタントコーヒー ( 以下 本件商品 という ) の包装袋 ( 以下 本件包装袋 という ) の表面に, 別紙目録のとおり, ヨーロピアン と コーヒー を二段に表示し, ヨーロピアン の ン の文字の右斜め上に小さくR 記号が付されている標章を使用しているところ, このうち ヨーロピアン の標章が,R 記号が付されており, 本件商標と社会通念上同一の商標と認められるから, 被告は, ヨーロピアン の商標を付した本件商品を譲渡しており ( 商標法 2 条 3 項 2 号 以下, 商標法を単に 法 という ), これにより本件商標と社会通念上同一と認められる商標を商標権者が使用していたことを証明したものと認められるというものである 4 本件の争点は,1 被告の本件包装袋における ヨーロピアン 標章の使用が自他商品識別機能を有する商標としての使用と認められるか,2 被告が, 本件包装袋において, 本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したかである 判断 当裁判所も, 本件商標の商標権者である被告による本件商品における ヨーロピアンコーヒー 商標の使用は, 本件審判請求の予告登録がされた平成 26 年 1 月 15 日から遡って3 年以内における, 自他商品識別機能を有する商標の使用であり, かつ, 本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用と認められると判断する その理由は, 次のとおりである 1 認定事実証拠 ( 文中又は段落末尾に掲記 ) 及び弁論の全趣旨によれば, 以下の事実が認められる (1) 本件商品は, インスタントコーヒーであって, 本件包装袋の表面には, 別紙目録のとおり, 上段に ヨーロピアン の文字, 下段に コーヒー の文字が同じ書体, 同じ大きさの文字で, 近接して二段に表記され, ヨーロピアン の ン の文字の右上に小さくR 記号が付され ( 以下, この標章を ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章 ともいう ), また, コーヒー 2

の文字の下に, 無糖, お湯を注ぐだけ の文字とコーヒーの入ったカップ等の図形が表示されている なお, 本件包装袋の裏面には, 品名 原材料名 等の記載しかない ( 甲 48の1) (2) ア本件商品は, 被告の運営するインターネット上の販売サイトにおいて販売されている ( 甲 3) イ被告は, エスエステクナ株式会社に対し, 平成 25 年 9 月 30 日, 上記 (1) のとおりの表示のある本件包装袋の印刷を注文し, 同包装袋は, 同年 1 0 月 15 日及び同月 21 日に納品された ( 甲 48の3,48の4) ウ被告は, ネットショッピングによって,A( 納品日 平成 25 年 11 月 1 6 日 ) 及びB( 納品日 平成 25 年 12 月 5 日 ) に対し, 本件包装袋を使用した本件商品を販売した ( 甲 49 及び50の各 1ないし3) (3) 上記認定事実によれば, 本件審判請求の予告登録がされた平成 26 年 1 月 15 日から遡って3 年以内である平成 25 年 11 月 16 日及び同年 12 月 5 日に, 被告は, 日本国内において本件商標の指定商品である コーヒー及びココア, コーヒー豆 に含まれる本件商品の包装袋に, ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章を表示して, これを販売したことが認められる ( なお,B が原告の子会社の100% 子会社の法務部所属の従業員であり, 本件審判の調査のために本件商品を購入したとしても, 被告がこの頃本件商品を販売していたとの前記事実認定に何ら影響するわけではない ) 2 本件包装袋における ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章の使用は, 自他商品の識別機能を有する商標としての使用と認められるか (1) カタカナの ヨーロピアン は, ヨーロッパに関するさま, ヨーロッパ人に関するさま を意味する語であり ( 甲 4), 英語の European は, ヨーロッパの, ヨーロッパ人の を意味する語である( 甲 5) そして, コーヒーやコーヒー豆については, その取引者等により ヨーロピアンスタイル, ヨーロピアンタイプ, ヨーロピアンテイスト, ヨーロピアンブレンド, ヨーロピアンロースト あるいは ヨーロピアン などの表示や表現が用いられることが多く, これらは, いずれも深煎りの豆を使用したコーヒー, 苦味が強いコーヒー又はコクが強いコーヒーというコーヒーの味等の品質等を示すものとして使用されている また, コーヒーの一般の需要者も, これを受けて, ヨーロピアン の語が 深煎りの とか 苦みが強い コクが強い コーヒーとの意味であると理解する者もいれば, 中にはより漠然と ヨーロッパ風のコーヒー などと理解する者もいるものと推認されるところである ( 甲 6ないし40,64,65,82ないし141, 乙 4) そして, ヨーロピアン の文字をコーヒーあるいはコーヒー豆に使用している例としては, 例えば, ベルギーのロンバウツが ROMBOUTS 商標を付して販売している3 種類のコーヒー豆には, それぞれ ロイヤル マイルド ヨーロピアン の3 種類の品質を表す表示が付されており, また, オ 3

フィスリングが A4カフェ12 商標を付して販売している3 種類のコーヒー豆には, それぞれ マイルド シアトル ヨーロピアン の3 種類の品質を表す表示が付されており, さらに,UCC FOODSが UCC の商標を付して販売しているコーヒー豆には, ROYAL EUROPEAN がその品質を表す表示として付されており, さらにまた, キーコーヒー株式会社が KEY COFFEE の商標を付して販売しているコーヒー豆には, ヨーロピアンリッチ あるいは ヨーロピアンテイスト がその品質を表す表示として付されており, そして, 原告が GEORGIA のブランドを付して販売している缶コーヒーには, EUROPEAN との表示がそのコーヒーの風味 ( 品質 ) を表すものとして表示されている例がある ( 甲 28,3 0,65,83,90, 乙 4) このような例について考察すると, ヨーロピアン の語は, 他の自他商品識別機能が強い商標と併用されてコーヒーやコーヒー豆に使用されている場合には, 単にコーヒーの品質を表示するだけであり, 自他商品識別機能を有する商標として使用されているものとは認めることはできない場合が多い, ということができる (2) これに対し, 本件包装袋には ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章が付されていることは前記認定のとおりである 本件包装袋には, このほかに, 無糖, お湯を注ぐだけ との表示と ホットコーヒーが入ったコーヒーカップの図柄 とが表示されているだけであり, これらが本件商品の品質や内容の単なる説明であって, 商標として表示されているものではないことは明らかであり, 本件商品には, ほかに自他商品識別機能を有する商標は使用されていない そして, 本件包装袋における ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章は, いずれも同じ書体で同じ大きさの文字で, 他の文字に比べると大きく, 包装袋の表面上部の目立つ位置に表示され, さらにR 記号が付されて表示されているものである これらの本件包装袋における上記標章の表示態様や,R 記号が登録商標であることを示す記号として広く使用されていることを考慮すると, 取引者及び需要者は, 本件包装袋における ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章が, 本件商品の商標として本件包装袋に表示されていると認識し, 理解するほかなく, その観念も ヨーロッパ風のコーヒー とかあるいは 深煎りの豆を使用したコーヒー, 苦味が強いコーヒー 又は コクが強いコーヒー として認識されるものと認められる (3) 以上によれば, ヨーロピアン との標章は, コーヒーあるいはコーヒー豆に使用されている場合は, ほかに強い自他商品識別機能を有する商標と併用されているときには, 単なる品質を表示するものとして使用されていると解される場合が多いものの, 本件包装袋における ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章のように, 他の自他商品識別機能の強い商標と併用されることなく, 単独で使用され, かつ, 他の文字に比べると大きく, 商品の目立つ位置に表示され, さらにR 記号が付されて表示されているときには, それ程強いもの 4

ではないけれども, 一応自他商品識別機能を有する商標として使用されているものと認められる (4) 原告は, 本件包装袋における ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章ないしその中の ヨーロピアン との表示は, 当該商品が, 深煎りの豆を使用したコーヒーであるなどというコーヒーの味等の品質を有するインスタントコーヒーであると認識されるものであり, 自他商品を識別する機能を有する商標としての使用とは認められない, と主張する しかし, ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章からは, ヨーロッパ風のコーヒー とか深煎りの豆を使用したコーヒー等の観念が生じるとしても, 本件包装袋には, 同標章のほかには, 自他商品識別機能を有する商標として表示されたものはないだけでなく, ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章は, 他の文字に比べると大きく, 本件包装袋の表面上部の目立つ位置に表示され, さらにR 記号が付されて表示されているのであるから, 同商標に一応の自他商品識別機能があることは前記認定のとおりである したがって, 本件包装袋における ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章の使用を自他商品識別機能のない商標としての使用であるとまでいうことはできず, 原告の主張を採用することはできない 3 本件包装袋に使用された ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章は, 本件商標と社会通念上同一の商標であるか 法 50 条 1 項は, 登録商標の使用について, 書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標, 平仮名, 片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標, 外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標 の 使用 と規定している 法は, 不使用登録商標を徒に許容することにより, 他者の商標選択の範囲を不当に狭めるとの弊害が生じることを防止するために, 登録商標と社会通念上同一の商標の使用をしていないときに, 不使用登録商標取消審判の制度を設けている このような同規定の趣旨に照らし, 本件包装袋に使用されている ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章が本件商標と社会通念上同一の商標といえるかについて, 次に判断する 一般に, 自他商品識別機能を有する登録商標を指定商品に使用する場合, その登録商標に加えて, 自他商品識別機能を奏さない商品名等の文字を加えて表示しても, その付加された標章は自他商品識別機能を奏さないのが通常であるから, この場合も, 登録商標を単独で使用した場合と同様に, 登録商標と社会通念上同一の商標の使用と解すべき場合は多い 被告が本件包装袋に使用している ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章についても, コーヒー は, 本件商品の名称に過ぎないものであるから, 自他商品識別機能が全くないことは明らかである そうすると, 本件包装袋に使用された ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章に一応の自他商品識別 5

機能があるのは, ヨーロピアン の標章によるものである よって, 本件包装袋における ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章の使用は, コーヒー が商品の名称に過ぎない以上, 本件商標である ヨーロピアン を単独で使用した場合と同様に解することができ, 本件商標と社会通念上同一の商標の使用であると解すべきである 原告は, 取引者及び需要者は本件包装袋における ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章を一連一体のものとして認識し, 把握するものであって, ヨーロピアン のみを分離して認識し, 把握するものではないと主張する しかし, 取引者及び需要者は本件包装袋における ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章を一連一体のものとして認識し, 把握するとしても, コーヒーという商品にコーヒーという標章を付しても自他商品識別機能はないのであるから, 本件包装袋における ヨーロピアンコーヒー の二段書き標章の使用は, 社会通念上, ヨーロピアン 商標の使用と同視することができるものであることは前記のとおりである 原告の主張は採用することができない 4 結論以上によれば, 被告は, 本件審判請求の登録前 3 年以内に日本国内においてその指定商品であるコーヒー等について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したことを証明したとする審決の判断に誤りはなく, 原告が主張する取消事由はいずれも理由がない よって, 原告の本件請求は理由がないから, これを棄却することとし, 主文のとおり判決する 論説 1. ヨーロピアン という地域名称的な文字標章が 第 30 類に属するコーヒーその他の商品について商標登録されていたことは商標公報で確認するまでは 筆者は全く知らなかった この文字標章は 英語の European のカタカナ文字であるところ ヨーロッパ風とかヨーロッパ味とかの意味がある言葉であることは 通常の日本人でも承知している単語であるから その指定商品中の例えばコーヒーについて言えば アメリカ人向けや日本人向けとは違う味わいのあるコーヒーのことをいうのだろうと思う この標準語に近い単語が商標登録されたことは 商品の産地や品質を想起する文字標章であることから 商標法 3 条 1 項 2 号に該当するものなのではないかと思うが 原告は 本件商標に対する登録無効審判請求ではなく 不使用取消審判請求をしたのである その結果 審判部は 被告 ( 商標権者 ) から提出された証拠によって 本件審判請求の登録前 3 年以内に日本国内で インスタントコーヒー の包装袋の表面に 別紙目録のとおり ヨーロピアン と コーヒー を2 段に表示し ヨーロピアン の ン 文字の右斜め上に R 記号を付している標章を使用していることから この文字書体は 本件商標と社会通念上同一の商標と認められる商標を商標権者 ( 被請求人 ) が使用していたことを証明して 6

いると認定し 不使用には該当しないと判断したのである 2. 裁判所における争点は2つあり 1 本件包装袋における ヨーロピアン 標章の使用が 自他商品の識別機能を有する商標としての使用と認められるか 2 被告は 本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたかである このうち 争点 1について裁判所は 本件商標は 他の自他商品識別機能の強い商標と併用されることなく 単独で使用され かつ 他の文字に比べると大きく 商品の目立つ位置に表示され さらにはR 記号が付されて表示されているときには それ程強いものではないけれども 一応自他商品識別機能を有する商品として使用されているものと認められる と認定した次第である これは 裁判所としては より強い自他商品の識別機能を有する標章の表示の併用を希望していたが その事実は包装袋上には認められないので 自他商品の識別力は比較的弱い標章ではあるが 渋々認めざるを得ないという思いが表れている認定である 3. 争点 2について裁判所は 法 50 条 1 項の ( ) 内に規定されている 書体 と 社会通念 の用語を引用しているが 書体とは英語のTypefaceやT ypefontのことをいうから 今日多くの新書体が創作されている事実を反映している概念である ところが 商標登録出願の願書上に文字標準を記載する場合 標準文字 とはどういう文字書体のことをいうのか不明である 基本を明朝体としても 今日 いろいろな新書体が創作されていることは 例えば各新聞社が使用している書体にはそれぞれ若干の違いが見られるのである アルファベットについても同様のことがいえるから 特許庁には 標準文字 の用語を定義してもらいたいが 前記法 50 条 1 項の ( ) 書きのような記載でもよいだろう 4. 余談であるが 筆者はかつて 指定商品 ワイン について オリンピアン という名称の登録商標を取得代理したことがあり これは現在でも勝沼のワイ ン会社が使用している商標である 牛木理一 7

別紙目録 本件登録商標 8