企業価値を向上するコーポレート ガバナンス セミナー 取締役会評価の実際 2015 年 6 月 30 日 ジェイ ユーラス アイアール株式会社 高山与志子 takayama@j-eurusir.com ジェイ ユーラス アイアール株式会社
1. コーポレートガバナンス コードと取締役会評価 1
コーポレート ガバナンス コードに関する考え方 企業と投資家が過去数十年にわたって積み上げてきたガバナンスの実効性を高める方法に関する経験則 企業にとっては自社のガバナンスの実効性を高めるための指針集 投資家にとっては企業のガバナンスの実態を把握するための指針集 2
コーポレート ガバナンスのイメージ 様々なコーポレート ガバナンス体制 社外取締役がいるガバナンス体制 良いガバナンス体制 3
ガバナンス コードと取締役会評価 ガバナンス コードでは 独立した客観的立場から経営の監督を行うことが取締役会の主要な役割 責務である と明記されており モニタリングボードへの転換を促している 取締役会評価においては 取締役会の監督機能の実効性を評価することが コードでは期待されている 4
評価を行う上での留意点 ハイスコアの結果を示すことが目的ではない 実効性を有しているか検証するプロセス自体が重要であるとの考えにもとづき実施する 評価の結果を受けて取締役会が必要なアクションを取る そして そのアクションの結果を翌年の評価で検証する という PDCA サイクルを繰り返し 取締役会の実効性を継続的に高めていく 5
2. 取締役会評価の実際 6
ガバナンス コードにおける取締役会評価 原則 4-11. 取締役会 監査役会の実効性確保のための前提条件 ( 一部略 ) 取締役会は 取締役会全体としての実効性に関する分析 評価を行うことなどにより その機能の向上を図るべきである 補充原則 4-113 取締役会は 毎年 各取締役の自己評価なども参考にしつつ 取締役会全体の実効性について分析 評価を行い その結果の概要を開示すべきである 7
主な評価項目 取締役会の構成 取締役会の運営状況 社外取締役に対する支援体制 意思決定プロセス 対外的なコミュニケーション All Rights Reserved J-Eurus IR Co., Ltd. 8
評価の手法 自己評価 外部評価 All Rights Reserved J-Eurus IR Co., Ltd. 9
3. 評価の活用 10
取締役会評価のメリット 企業側のメリット 取締役会が置かれている現状を正しく認識し 課題を把握し解決することで 取締役会の実効性を高めることができる 評価の内容を外部に伝えることで 投資家をはじめとしたステークホルダーから より高い評価を得ることができる 投資家側のメリット 外から見えにくい取締役会の実態を 取締役会評価を通して 理解することができる All Rights Reserved J-Eurus IR Co., Ltd. 11
取締役会の課題 企業は課題解決のために取締役会評価を活用 課題例 企業価値のさらなる向上 ( あるいは低迷からの脱却 ) サクセッションプランの強化 社内取締役と社外取締役の役割の再確認 目的達成に向けた取締役会の一体感の醸成 取締役各個人による貢献の促進 など All Rights Reserved J-Eurus IR Co., Ltd. 12
4. 評価の開示 13
投資家の見方 (1) (2015 年 ICGN 年次大会での質問 ) 質問 1 健全な取締役会の文化を支えるために最も重要なものは何か? 40% 37% 35% 30% 25% 31% 25% 20% 15% 10% 5% 3% 4% 0% 社外取締役による議長社外取締役のみによる会合機密保持方針取締役の在任期間の制限取締役会評価 All Rights Reserved J-Eurus IR Co., Ltd. 14
投資家の見方 (2) (2015 年 ICGN 年次大会での質問 ) 質問 2 取締役会の実効性を外部から判断する上で最も良い指標は何か? 35% 30% 31% 25% 20% 21% 21% 15% 14% 13% 10% 5% 0% TSR 開示された情報の質株主エンゲージメントの度合い経営陣報酬取締役会評価の結果の開示 All Rights Reserved J-Eurus IR Co., Ltd. 15
BAT 社のケース主要な評価項目 取締役会の文化とダイナミクス 取締役会の構成 戦略とオペレーション リスク管理 パフォーマンスの管理 取締役会のプロセスと時間の使い方 同社のアニュアルレポートより抜粋 All Rights Reserved J-Eurus IR Co., Ltd. 16
BAT 社のケース取締役会の構成 2013 年の評価の結果 取締役会の構成と各取締役の在任期間により 取締役会では多様な専門的な経験が結びつけられている 取締役会のメンバーは 直観的でかつ分析的な見方が融合された多様な見方を有している 社外取締役が持つ様々な経験のポートフォリオは 社内のプロセス ( リスク管理など ) を向上させることに役だっている 事業が消費者行動のシフトと変化するトレンドに直面している中 素早く変化する消費者の状況や迅速な意思決定の環境 ( これらは 技術に左右され 規制が少ない産業でよく見られるものだが ) における多くの経験が 当社にとって有用である 2013 年の結果を踏まえて推奨された 2014 年のアクション 消費財の経験 消費財の経験は次の取締役の任命において優先順位が高い項目になるだろう 非金融分野における専門知識 現在の取締役会の構成は金融関連の専門知識を十分に有しているので よりオペレーショナルなライン管理の専門知識を持った取締役を迎えることができるだろう 2012 年の評価を踏まえた 2013 年のアクションの結果 取締役会と委員会のバランスとスキル 技術関連のスキルとアジアでのビジネス経験を有した候補者の選択とインタビューの結果 サビオ クワンが 2014 年取締役に指名された 同氏のインターネット関連ビジネス アリババ社における経歴は 取締役会に歓迎すべき技術的な専門知識をもたらしている All Rights Reserved J-Eurus IR Co., Ltd. 17 同社のアニュアルレポートより抜粋
5. 今後の動向 18
今後予想されること 企業側 実質的な評価と形式的な評価に二極化する可能性がある 前者は 取締役会の実効性を定期的に検証する手段として評価を活用し 取締役会の監督機能をさらに高めていく 投資家側 投資家の評価の内容に関する理解が進むにつれ 評価の結果の開示内容に対する関心が高まる 評価を評価する手法を確立する必要性が高まる 19
参考資料 : 取締役会評価に関する参考文献 20
参考文献リスト ( 海外 ) 取締役会評価の内容と意義 Financial Reporting Council, Guidance on Board Effectiveness, March 2011 Tracy Long, Board Evaluation, Corporate Governance for Main Market and AIM Market, London Stock Exchange, September 2012 取締役会評価の実施状況 Financial Reporting Council, Developments in Corporate Governance and Stewardship 2014, January 2015 ICSA, ICSA Board Evaluation-Review of the UK Top 200 Companies 2012, April 2013 投資家から見た取締役会評価 Council of Institutional Investors, Best Disclosure: Board Evaluation, September 2014 21
参考文献リスト ( 国内 ) 高山与志子 取締役会評価とコーポレート ガバナンス 形式から実効性の時代へ - 商事法務 2014 年 9 月 15 日号 (No.2043) 北川哲雄編 スチュワードシップとコーポレートガバナンス 東洋経済新報社 2015 年 1 月 第 8 章取締役会評価の時代 取締役会評価の目的 プロセス 開示 ビジネス法務 2015 年 4 月号 北川哲雄 大杉謙一 高山与志子 石黒徹 座談会取締役会評価によるガバナンスの実効性確保に向けて ( 上 ) 商事法務 2014 年 11 月 25 日号 (No.2049) 座談会取締役会評価によるガバナンスの実効性確保に向けて ( 下 ) 商事法務 2014 年 12 月 5 日号 (No.2052) 22