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本研究では マウス上顎骨荷重モデルを用いて骨に機械的刺激を与えて 荷重によって生じる骨内部の歪みを算出し 組織切片の形態計測結果と併せて解析することで 骨内部の歪みと骨形成の関連を分析することを目的とした 同様に TNF- 欠損マウスを用いて炎症性反応を減弱させた場合の解析も行い 炎症が機械的刺激による骨代謝変化に与える影響を明らかにした < 方法 > 荷重実験は マウスを 1 個体ずつ 十分に麻酔を効かせた状態で自作の荷重装置に頭部を固定しておこなった 13 週齢 C57BL/6J 雄性マウス (WT) を荷重群 (n=5) と非荷重群 (n=5) の 2 群に分けた 荷重群は 上顎硬口蓋部に 1 日 1 回継続して 30 分間 191 kpa の荷重を 7 日間連続で与えた 一方 非荷重群は 同様の荷重装置を用いるが 装置を上顎口蓋部に接触のみさせて荷重 0 kpa とした 全てのマウスに 荷重 1 日目と 5 日目にカルセインとアリザリンをそれぞれ皮下注射し 骨を蛍光標識した 最後の荷重終了後に屠殺し 3.7% ホルムアルデヒドを用いて 3 日間固定処理を行った 同様の実験を TNF- 欠損マウスにおいても施行した CT を用いてマウス上顎骨を撮影し そのデータから有限要素法を用いて荷重部を含む冠状断の相当歪み分布図を構築し 同様の歪み分布を示す荷重から離れ荷重による炎症の影響がないと考えられる部位 (AWAY) と 荷重直下で炎症が存在すると考えられる部位 (NEAR) の 2 か所を関心領域として選定した 凍結切片を作成し HE 染色 TRAP 染色 ( 対比染色 :TB 染色 ) およびスクレロスチン免疫染色を行い 骨形態計測を行った HE 染色切片において炎症性スコアを算出し 機械的刺激による炎症の浸潤程度を計測し TRAP 染色切片において破骨細胞数を計測した また 免疫染色切片においてスクレロスチンが発現している骨細胞数等を観察した 一方で 機械的刺激による骨形成の活性化の程度を観察するために 蛍光標識した骨において骨芽細胞の石灰化量等を計測した < 結果 > WT マウスの炎症性スコアは NEAR において有意に増加したが AWAY においては有意差が認められなかった また 破骨細胞数では AWAY および NEAR の両部位において荷重により増加が認められたが 荷重による破骨細胞の増加数は AWAY に比較して NEAR において有意に高い値を示した NEAR に対する炎症の影響を知るために TNF- 欠損マウスでも同様に炎症性スコアを解析した結果 WT マウスでみられた NEAR における炎症スコアおよび破骨細胞数の有意な増加は認められず 破骨細胞の増加数は NEAR と AWAY 間で有意差が認められなかった 一方 骨形成に対する荷重による刺激の影響を観察するために 骨細胞に発現しているスクレロスチンの発現を観察したところ NEAR では変化が認められなかったが AWAY では荷重群においてスクレロスチンの発現が有意に少なかった 骨細胞数や骨細胞あたりのスクレロスチンを発現している骨細胞数でも同様の傾向を示した さらに 荷重群の AWAY において スクレロスチン発現骨細胞の分布と荷重により骨内部に生じる歪みの大きさを比較した結果 150 以上の歪みが生じている範囲では スクレロスチン発現骨細胞の分布が認められなかった 最後に AWAY における歪み分布の平均が 骨外表面 (Outside) においては約 80 であるのに対し 骨内表面 (Inside) においては約 170 と有意に高い値を示した 両骨表面において 骨石灰化速度 (MAR) は Inside において荷重によって有意な増加を示したが Outside では有意差を認めなかった 単位骨表面あたりの骨再石灰化面 (MS/BS) は いずれも荷重による影響を認 3

めなかった また 骨形成速度 (BFR) は MAR と同様の傾向を示した < 考察 > 荷重群と非荷重群の比較から 荷重による刺激によって骨細胞内のスクレロスチン発現が抑制されることが確認された さらに スクレロスチン発現骨細胞の分布と同部位の荷重による歪みの値の分布を重ね合わせる解析を行ったことで スクレロスチン発現は 150 という一定の値以下の歪みが生じる範囲において認められることが示された 機械的刺激によるスクレロスチン発現骨細胞の減少は 同刺激による炎症が強く生じる NEAR では鈍くなった 以上のことから 炎症が機械的刺激によるスクレロスチン発現の減少を阻害するということが示され 炎症が骨形成に抑制的な働きをすることが示唆された 骨形成を亢進させる歪みの閾値に関しては 7 日間の荷重によって MAR は AWAY の歪みの平均値が約 80 である Outside よりも同平均値が 170 である Inside で活発になった これは 機械的刺激が骨芽細胞を直接刺激して骨形成を活性化し かつ 骨芽細胞の骨形成能力を活性化する歪みの閾値が 80 ないし 170 の間に存在する可能性を示唆している さらに MS/BS が Inside および Outside のいずれにおいても機械的刺激によって増加していないことから 機械的刺激によって骨芽細胞への分化が亢進され骨芽細胞数そのものが増加するには 7 日間という期間は短いことが示唆された 本研究から得られた 骨芽細胞を活性化させる閾値が 80 ないし 170 に存在するという結果は 骨形成を活性化するスクレロスチンの発現抑制が 150 で生じることからも きわめて確からしいと考えられる 骨内部に生じる歪み値の範囲が変化するよう荷重の大きさを変えて実験を継続していくことで 骨形成および骨吸収をもたらす閾値をより詳細に明らかにできる可能性があると考えられた < 結論 > 機械的刺激による歪みによって骨芽細胞の骨形成能が活性化され 骨芽細胞を直接的に活性化する力学的歪みの閾値の存在が示唆された 4

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4974 号鈴木奈月 論文審査担当者 主査小野卓史副査春日井昇平 岸田晶夫 論文題目 A threshold of mechanical strain intensity for the direct activation of osteoblast function exists in a murine maxilla loading model ( 論文審査の要旨 ) 歯科の臨床において 義歯に限らず 矯正 インプラント 歯周病 クラウンブリッジ等 口腔の様々な領域において骨量を維持することは 治療の予後に大きく影響を与えることから重要視されている 矯正学的歯の移動における牽引側および圧迫側にみられるように 力によって骨形成および骨吸収が生じることは知られているが 加えた力が実際に骨内部に生じる歪みの大きさと 骨形成および骨吸収が誘発されるメカニズムは明らかにされていない 骨のリモデリングは 破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成 およびそれらを制御する骨細胞それぞれが相互に複雑なシグナルを出しあうことで成立する 機械的刺激は それらのシグナルに影響を与える一つの因子にすぎない しかし 顎骨においては 咬合力という大きな力が 持続的に刺激を与えており 他の部位の骨と比較しても 機械的刺激の影響が重要な因子であるといえる 鈴木らが用いた 骨形態計測と構造力学解析を用いた骨内部の歪み値を組み合わせて比較する手法は 細胞レベルでの骨形成の動態とその微小部位に生じている歪み値を比較解析することにきわめて有効である 機械的刺激によって炎症が生じることが知られており 本研究においても炎症の影響が考慮されている 関心部位として 荷重によって炎症が生じると考えられる部位 NEAR と 荷重によって炎症が生じないと考えられる部位 AWAY に関心領域を設定することで 同レベルの歪みが生じていながら炎症の有無による影響の違いを検証している 機械的刺激によって炎症が生じることと その炎症によって破骨細胞が増加することを確認している 次に 骨細胞が機械的刺激を感知した際に分泌が抑制されるスクレロスチンを用いて 機械的刺激によって骨内部に生じる力学的歪みとの関連を調べている スクレロスチンが機械的刺激によって分泌が抑制されることは既知の事実であるが 骨内部の歪み値とスクレロスチン発現部位を重ね合わせする手法を用いて比較し スクレロスチン発現が 150 以上の歪み部位では認められないという結果を得ている これは スクレロスチン発現に力学的歪みが関与しているだけでなく 発現には力学的歪みの閾値が存在する可能性を示している 最後に ラベリング法を用い 5

て骨形成と力学的歪みの関連を検証している 骨辺縁におけるラベリングの幅や長さを計測し 同じ部位の歪み値と比較した結果 170 の内骨表面 Inside において骨芽細胞による骨形成が活性化されており 80 の外骨表面 Outside では骨形成の活性が認められないという結果を得ている これは 機械的刺激によって骨形成が活性化される閾値が 80 ないし 170 の間に存在する可能性を示唆している 以上の結果から 現段階ではマウス上顎骨に特異的な数値である可能性も考えられるが 骨形成を活性化する可能性がある力学的歪みの具体的数値を示したことは評価できる 今後 マウスの他の骨部位やより高等な動物での検証を行う際の一つの指標となることができると考えられる また 本研究は これまでに臨床において経験則として知られていた機械的刺激による顎堤の骨形成および骨吸収のメカニズムを証拠づける基盤となりうる 今後 荷重の方法や大きさを検討していくことで 歯科臨床を支える可能性を有するとともに 骨形成を活性化する普遍的な力学的歪みの大きさを解明できることが期待される 以上 本研究の着眼点と研究手法およびその成果は高く評価され 基礎および臨床歯学の発展 に大いに寄与することが期待される したがって 本論文は博士 ( 歯学 ) の学位を申請するに十 分値するものと認められた 6