混住寮における多様性 : イノベーションを導き出すためのリーダーシップ 日本人と外国人の混住化ケースを踏まえて 一橋大学国際学生宿舎規則 平成 16 年 4 月 1 日規則第 137 号 ( 設置 ) 第 1 条一橋大学 ( 以下 本学 という ) に 一橋大学国際学生宿舎 ( 以下 学生宿舎 という ) を置く ( 目的 ) 第 2 条学生宿舎は 本学の厚生施設として 本学に在学する学部学生及び大学院学生 ( 外国人留学生を含む )( 以下 本学の学生 という ) 並びに東京学芸大学 東京農工大学及び電気通信大学 ( 以下 他大学 という ) に在学する外国人留学生 ( 以下 他大学の留学生 という ) に良好な居住及び勉学環境を提供するとともに 国際意識の高揚に資することを目的とする ( 以下省略 ) -1- 多様性からイノベーションを導き出すのに必要な資質とは何なのか? Diversity Innovation トピックス 1. 小平国際学生宿舎における 分離の時代 2. 対立 緊張の時代 3. 国際寮の時代 4. 次なるInclusionに向けて 2 1
一橋大学国際学生宿舎の構成 国立国際交流会館 国立中和寮 小平一橋寮 ISDAK 入居対象 院生留学生 院生 主に学部生 混住 X 〇 〇 学生スタッフ 〇 X 〇 キャパシティ 70 147 785 徒歩 5 分 徒歩 10 分 電車 30 分 自転車 25 分 小平国際キャンパス : 設立まで 1997 一橋大学が小平キャンパスで開講されていた教養科目 (1,2 年次教育 ) を国立キャンパスへ統合 1997 小平 一橋寮 (1 2 年生寮 ) の老朽化による立て替え要望を文部省 ( 当時 ) に提出 不認可 2000 放送大学 +4 大学国際学生宿舎化の構想固まる 2001 敷地の一部を大学評価 学位授与機構に所属替 2001 工事完了 ( 国際学生宿舎 福利施設等 ) 2002 国際共同研究センター 国際学生宿舎 A 棟 国際交流プラザ 小平カフェテリア供用開始 初代指導主事入居開始 2003 小平国際キャンパス全面完成 4 2
2002~ 小平国際学生宿舎 N 棟 S 棟 Staff, 70 Buffer, 21 D 棟 E 棟 A 棟 国際交流プラザ小平カフェテリア如水スポーツプラザ HU J, 214 Intl, 480 C 棟 B 棟 国際共同研究センター 小平国際ゲストハウス 785 5 一橋 312 学芸 78 農工 45 電通 45 小平国際学生宿舎 ( 創設時 ) 留学生寮 ISYDAK ( 新設 4 大学留学生 ) 小平国際学生宿舎 @ 小平キャンパス 一橋寮 ( 一橋 1,2 年 ) 院生寮 ( 一橋修士 博士 ) 国立の町中にパラパラと 中和寮 ( 一橋 3,4 年 ) 国立地域 3
1 分離の時代 (2003~09) 4 大学留学生寮と日本人学生寮の物理的混住 同じ階に日本人と留学生寮生が居住 ただし所属する寮組織は別々 交流なし 住民交流の停滞 エレベーター等であっても挨拶なし 住人同士のトラブル時に話し合う程度 限られた範囲での国際交流 国際学生宿舎において国際化とは留学生寮だけが負わされるタスクとなった (2003 年 ) 8 4
Diversity Support Vision Growth Support Vision Growth 9 Diversity 学寮再編成のきっかけ 1 一橋寮の飲酒事故 2008年4月 未成年 禁酒であるはずの一橋寮の新歓イベント に参加していた新一年男子 未成年 が死亡 一橋大学学生の飲酒に関する基本原則 の制定 一橋寮が大学監視下に入り 暫定寮組織となる 一部上級生の 下級生に対する パワハラ構造 http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=220&id=30569606 10 5
学寮再編成のきっかけ 2 国際化にむけた次世代小平プラン (2010) 小平地域 1,2 年統合した学部生国際寮 ISYDAK 一橋寮 国立へ院生寮順次移転 3,4 年中和寮 国立地域 2 統合 対立と緊張の時代 (2010~2011) 留学生へのいやがらせ ( 生肉事件, ホワイトボード事件, etc.) 寮再編への抵抗 国立に住むことの憧れ 混住化への反対 一橋寮 伝統 喪失の恐れ ISDAK と一橋寮の組織対立が表面化 激化 日本人一橋寮 = 寮国際化の阻害要因 vs. 留学生寮 ISDAK= 大学の犬 一橋寮の逸脱行為により活動許可抹消 2008 年より暫定寮組織として大学監視下 大学の国際化方針に反する逸脱行動 2011 年に活動許可停止 退寮 訓告処分 6
ホワイトボード事件 (2010.6.8) 一橋寮新寮長 : 〇〇副寮長 : これたん 留学生との関係について : 持たず 作らず 持ち込まず これが日本の国是です 13 続くパワハラ B A 一橋寮誌 第 37 号 (2011.3) より 14 7
禁止されていた新入生歓迎会を隠蔽しながら実施 (2011 年 4 月 ) 本音と 建前 15 一橋寮暫定寮活動許可取り消し (2011.4.18 国際学生宿舎専門委員会 ) 平成 20 年 4 月に国際学生宿舎において飲酒死亡事故が起きた後 国際学生宿舎専門委員会は 一橋寮生に対し... 二度と事故を起こさせない努力をすること 事故の原因となったハラスメント構造を生むブロックの形成 ハラスメント行為である対面 お立ち等を自ら積極的に根絶していくこと ( を要請していた ) しかし 一橋寮においては ハラスメント根絶の努力がなされず むしろ積極的な構造形成が続いている これは 暫定委員会活動許可の趣旨を大きく損なうものであるばかりか 死亡した学生のご遺族に対する背信行為にほかならない 以上のことから 平成 23 年 4 月 24 日をもって一橋寮暫定委員会の活動許可を抹消する 16 8
混住プロジェクトの軌道修正 ISYDAK IYSDAK 一橋寮 小平地域 国立へ院生寮順次移転 中和寮 国立地域 3 国際学生寮 (IYSDAK) の時代 (2012 年 ~) 寮文化のパラダイムシフト 留学生寮スタッフの役割は 寮生支援 へ パワハラフリー オープンな寮文化へのシフト 寮組織の統一 拡大化による初期混乱 6 人部屋の生活支援強化 日本人 留学生新入生すべて ISDAK 生 RA 規模拡大 (13 30+) に伴う組織化 旧体制による影響で 6 人部屋は分断化 2011 年度から導入していたコミュニティアシスタント ( 班長 ) 制度を男子 6 人部屋に導入 成功し 次年度女子 6 人部屋にも拡充 9
RA スタッフ T シャツ (2007) 入寮ウェルカムバンダナ (2012) 19 統合 1 年目 新寮生から見た日留寮生交流度 日本人寮生 2011 統合 1 年目 2012 統合 2 年目 外国人寮生 2011 統合 1 年目 2012 統合 2 年目 分離状態 1 1 0 0 ない 2 0 1 1 多少ある 7 7 7 1 ある 4 4 7 4 活発である 8 9 1 6 合計 22 21 16 12 (2011 年 4 月, 2012 年 4 月入寮生アンケート ) 20 10
統合 2 年目 CA 制度導入による寮生交流促進 CA がいるユニットの寮生 ( 主に男子 ) CA 無しの居住区に住む寮生 ( おもに女子 ) 分離状態 0 1 ない 1 0 多少ある 4 4 ある 3 5 活発である 13 2 合計 21 12 (2012 年 4 月入寮生アンケート ) 21 寮運営における様々な意識改革運営意識 学生スタッフ教育新入生支援 日常対応 寮生配置 留学生支援 寮生支援に向けたビジョン ( 存在意義 ) の共有先輩による 指導 から大学が採用するCAによる 交流支援 留学生 vs 日本人ではなく 国際寮 寮生として応対する建物の特性に合わせコミュニティづくりを促進するため部屋割りを学生と協業 22 11
Diversity のポテンシャルとリスク No Diversity 分離の時代 Infusion ビジョンに基づくコミュニケーション ビジョンのコミュニケーション不足 建設的な対話 対立や圧力による抑制 個人を尊重 ステレオタイプを強調 変化 フィードバックにオープン 変化 フィードバックに抵抗 L E A D E R S H I P Inclusion Exclusion 国際の時代 Innovation Separation 対立の時代 Adapted from 田岡 (2018) 異文化理解力 JOC 国際人養成セミナー 次なる Inclusion に向けて 寮規則 : 学生宿舎は (...) 良好な居住および勉学環境を提供するとともに, 国際意識の高揚に資することを目的とする すべての寮生にとって心理的に安全な住環境の整備 = ハラスメントの防止 ダイバーシティへの配慮の重要性 24 12
Diversity at ISDAK At ISDAK, we promote diversity It is for everyone s safe living environment Please recognize that Even unintentional words/behaviors can be considered as harassment if they offended others We always need to consider other individuals feelings to avoid offending someone 25 ジェンダー セクシュアリティ 26 イベントやアンケートで, 男 女 の性別を選ばせる 力仕事とほかの仕事を, 男女別に任せる ( 服や小物など ) 男女別に異なる色のものを用意する 男性と女性を一人ずつペアにして作業をさせる ( 肝試しなど ) 13
エスニシティ 合理的理由おなく国籍 エスニシティの開示を強いる ( 例 : パーティーなどで出身国を名札に書かせる ) 見た目でその人が話す言語を予想する ( 例 : 英語話者っぽい見た目なので英語で話しかける ) 留学生に対してのみ ため口 ではなす 馴れ馴れしい態度 で接する 逆に, 日本人 にはかしこまった態度をとる 27 食事とダイバーシティ ベジタリアン ハラール ビーガンメニューを用意しない 食習慣の開示を強制する ( 例 : パーティーなどにおいてあなたベジタリアンですか? とたずねて答えさせる ) 28 14
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