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事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

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控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

限され 当事者が商標を使用する能力に直接の影響はありません 異議申し立て手続きと取消手続きで最もよく見られる問題とは 混同のおそれ と 単なる記述 です TTAB は登録の内容のみを評価するため その分析の局面には 想定に基づくものもあります 通常 TTAB では どのように標章が実際の製品において

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米国情報 国際活動センターからのお知らせ 米国情報 2016 年 7 月 28 日 担当 : 外国情報部那須威夫 特許権者による特許製品の米国内外での制限付き販売は 米国特許権を消尽させるか否かについて判断した CAFC 判決の紹介 Lexmark International, Inc., v. I

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REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

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目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

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平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

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年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

参加人は 異議申立人が挙げていない新たな異議申立理由を申し立てても良い (G1/94) 仮 にアピール段階で参加した参加人が 新たな異議申立理由を挙げた場合 その異議申立手続は第 一審に戻る可能性がある (G1/94) 異議申立手続中の補正 EPCにおける補正の制限は EPC 第 123 条 ⑵⑶に

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

1. H.R.6264 Restoring America s Leadership in Innocation Act of 2018::RALI 法 (2018 年 6 月 28 日 ) 提出したのは Rohrabacher ( ローラベッカー ) 1 下院議員 他 2 名である セクション 1

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イ特許専門業務特許戦略 法務 情報 調査 特許戦略に関し 次に掲げる事項について専門的な知識を有すること (1) 特許出願戦略 ( ポートフォリオ戦略等 ) (2) 研究開発戦略と特許戦略の関係 (3) 事業戦略と特許戦略の関係 (4) 標準化戦略 法務に関し 次に掲げる事項について専門的な知識を有

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

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米国特許ニュース AIA102( 条 (a)(1) の出願日前の販売 (on sale) は たとえ販売内容が秘密であっても旧法 102 条 (b) の オンセール と同じで 特許を無効にすると最高裁判決 服部健一米国特許弁護士 2019 年 2 月 HELSINN HEALTHCARE S. A.

4CAE B10001CD83

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

ことができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している さらに 台湾専利法第 76 条は 特許主務官庁は 無効審判を審理する際 請求によりまたは職権で 期限を指定して次の各号の事項を行うよう特許権者に通知することができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している なお

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第26回 知的財産権審判部☆インド特許法の基礎☆

米国特許訴訟における弁護士・依頼者間の秘匿特権のCrime-Fraud Exceptionについて

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

訂正情報書籍 170 頁 173 頁中の 特許電子図書館 が, 刊行後の 2015 年 3 月 20 日にサービスを終了し, 特許情報プラットフォーム ( BTmTopPage) へと模様替えされた よって,

KSR事件連邦最高裁判決を踏まえた、米国特許法103条に規定する非自明性の判断基準に関する米国特許商標庁の審査指針の概要及び本審査指針を踏まえた実務

では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

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実体審査における審査官面接に関して GPE には面接における協議の方法 時期および内容など 詳細な要件が定められている 例えば GPE には 最初のオフィスアクションの応答書が出願人により提出された後 審査官は当該出願の審査を継続しなければならない と規定されている (GPE 第 II 部第 2 章

35 U.S.C. 101 Inventions patentable Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any ne

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?? TAX LAW NEWSLETTER 2017 年 2 月号 (Vol.24) 国税庁 米国リミテッド パートナーシップをパススルー ( 構成員課税 ) と取り扱うとの見解を公表 Ⅰ. はじめに Ⅱ. これまでの議論 Ⅲ. 今回の国税庁の見解の内容 Ⅳ. 最高裁判決との関係 ( 納税者のパスス

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平成 23 年 11 月 29 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 22 年 ( ワ ) 第 号特許権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 10 月 4 日 判 決 広島県呉市 < 以下略 > 原 告 株 式 会 社 H D T 同訴訟代理人弁護士 稲 元 富 保 同

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特許出願の審査過程で 審査官が出願人と連絡を取る必要があると考えた場合 審査官は出願人との非公式な通信を行うことができる 審査官が非公式な通信を行う時期は 見解書が発行される前または見解書に対する応答書が提出された後のいずれかである 審査官からの通信に対して出願人が応答する場合の応答期間は通常 1

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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

2016 年 5 月 25 日 JETRO アセアン知財動向報告会 ( 於 :JETRO 本部 ) ASEAN 主要国における 司法動向調査 TMI 総合法律事務所シンガポールオフィス弁護士関川裕 TMI 総合法律事務所弁理士山口現

プラグコネクタ タイプ 品名使用ケーブル (L) 外部導体 N-P-3-CF Ag Ag 1 N-P-3-Ni-CF N-P-3-NiCAu-CF Ni Ag Ni Au 1 (L) N-P-3W-CF 3C-W 3D-W Ag A

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

例 2: 組成 Aを有するピアノ線用 Fe 系合金 ピアノ線用 という記載がピアノ線に用いるのに特に適した 高張力を付与するための微細層状組織を有するという意味に解釈される場合がある このような場合は 審査官は 請求項に係る発明を このような組織を有する Fe 系合金 と認定する したがって 組成

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

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平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

MJS/ 第 79 回租税判例研究会 ( ) MJS 判例研究会 平成 30 年 8 月 9 日 報告者西野道之助 更正の請求/ 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除 平成 28 年 7 月 8 日 東京地裁 ( 棄却 )( 控訴 ) 平成 29 年 1 月 26 日

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

何故 IDS をする必要があるのか? 米国特許出願をするときは 発明者が以下の要件に対して宣誓をする宣誓書 (37 CFR 1.63) に署名しなければならない (1) 明細書 ( クレームを含む ) の内容を検討し 理解している (2) 真実であり 最初の発明者であると信じる ; (3) 規則 1

(イ係)

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

- 1 - 商品トレーサビリティと酒類に関する行政的対応について 平成 30 年 6 月 8 日 東京大学教授 玉井克哉 はじめに 商品トレーサビリティの重要性とロット番号商品のトレーサビリティを向上することは どのような商品についても 極めて有益である 従前 情報技術 ( IT) の発達に伴い 商

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

同時期に 8 社に対し提起された大阪地方裁判所における判決 ( 大阪地裁平成 24 年 9 月 27 日判決 裁判所 HP) では, 間接侵害の成立に関し, 特許法 101 条 2 号の別の要件である その物の生産に用いる物 にあたるかが問題とされ, 1 特許法 2 条 3 項 1 号及び101 条

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

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IPR における最も広い合理的解釈 ~ 非自明性判断時の文言解釈 ~ 米国特許判例紹介 (125) 2016 年 4 月 13 日執筆者弁理士河野英仁 PPC BROADBAND, INC., Appellant, v. CORNING OPTICAL COMMUNICATIONS RF, LLC, Appellee 1. 概要 IPR( 当事者系レビュー ) においてクレームの解釈を行う場合は 特許権侵害訴訟時に用いられる Phillips 基準 1 ではなく 最も広い合理的解釈 (BRI: Broadest Reasonable Interpretation) 基準が適用される 2 BRI 基準の場合 クレームの文言は広く解釈されることが多く 意図していない先行 技術を含んでしまい 結果として新規性 非自明性が否定されることが多い 本事件では reside around の文言について審判部は広く解釈し 自明であると判 断したが CAFC は審判部が BRI を誤って適用したと判断した 2. 背景 (1) 特許の内容 PPC BROADBAND( 原告 ) は電気的継続部材を有する同軸ケーブルと称する米国特許第 8,323,060 号 ( 以下 060 特許という ) を所有している 同軸ケーブルは 内部導電体 及び 外部導電体を有している いずれかの導体上で の不十分な接続は ノイズ発生の原因となる 060 特許は コネクタボディ 50 ポスト 40 ナット 30 及び 電気接地継続がポスト 40 及びナット 30 に及ぶようポスト 40 と 1 Phillips v. AWH Corp., 415 F.3d 1303, 75 USPQ2d 1321 (Fed. Cir. 2005) 2 In re Cuozzo Speed Techs., LLC,793 F.3d 1268, 1279 (Fed. Cir. 2015), cert. granted, 84U.S.L.W. 3218 (U.S. Jan. 15, 2016) (No. 15-446) 1

ナット 30 に接触する継続部材 70 を有する同軸コネクタを開示している 060 特許は 20 以上の継続部材 70 の実施例を開示している これらの実施例におい て継続部材 70 は ボディ 50 に隣接 または ボディ 50 下部に伸びている 060 特許の図 13 本実施例では 継続部材 370 がボディ 50 の下部に伸びている 2

図 17 本実施形態では 継続部材 570 は ボディ 50 の面に隣接する 図 24 本実施形態では 継続部材 770 は ボディ 50 の周りにスリーブ形状で取り 付けられる これらの実施例において 継続部材は ポスト及びナットをボディ 50 に触れること なく接続する (2) 争点となったクレーム 争点となったクレーム 10 3 は以下のとおりである なお符号は筆者において付した 3 10. a continuity member having a nut contact portion positioned to electrically contact the nut and positioned to reside around an external portion of the connector body when the connector is assembled, wherein the continuity member helps facilitate electrical grounding continuity through the body and the nut and helps extend electromagnetic shielding from the coaxial cable through the connector to help prevent 3

10. 誘電体 16 に囲まれた中央導体 18 を有する同軸ケーブル 10 終端を接続する同軸ケーブルコネクタ 100 において 前記誘電体 16 は保護外部ジャケット 12 により覆われる導電性接地シールド 14により囲まれており 前記コネクタ 100が取り付けられた場合に 電気的に前記ナット 30に接触し かつ 前記コネクタボディ 50の外部に存在 (reside around) するよう配置されるナット接触部材 74を有する継続部材 70とを備え 該継続部材 70は 前記ボディ 50 及びナット 30 を通じて電気的接地継続を容易にし 前記コネクタ 100 への RF 侵入を防止すべく 前記コネクタ 100を通じた前記同軸ケーブル 10からの電磁シールドを拡張するよう補助する (3) 審判部の判断 CORNING( 被告 ) は 060 特許のクレーム 10-25 に対し IPR を請求した その理由は 2006/0110977 ( Matthews ) 及び JP 2002-015823 ( Tatsuzuki ) の組み合わせにより自明であるというものである 2013 年 11 月 26 日審判部 (PTAB) は手続きを開始した IPR 手続きにおいて 審判部は一般的辞書に依拠し 文言 reside around を in the immediate vicinity of; near( そのすぐ近くに 近くに ) を意味するものと解釈した PTAB は Matthews 及び Tatsuzuki の組み合わせは コネクタボディ外部のすぐ近くに または 近くに (in the immediate vicinity of, or near,) 位置する継続部材を教示していると結論付けた PTAB は全ての構成要件が開示されているため自明と判断した すなわち Matthewsは継続部材を開示していないが Tatsuzuki にはディスク型バネ 13 が開示されており 当該ディスク型バネ 13 が コネクタボディの外部に存在する (reside around) と判断した RF ingress into the connector. 4

原告は審判部の判断を不服として CAFC に控訴した 3.CAFC での争点 争点 :around の文言をどのように解釈するか 4.CAFC の判断結論 : 明細書の記載に鑑みれば around は 取り囲むまたは囲まれる encircle or surround の意味である原告は クレーム及び明細書に基づき reside around の BRI 解釈は 取り囲むまたは囲まれる encircle or surround であると主張した 原告は 継続部材は コネクタボディの外部に存在 resides around するものであり 完全に連続するものではないと主張した CAFC は 原告の解釈に同意した IPR においては クレームに明細書に沿う最も広 い合理的解釈を与える ここで 審判部は 辞書を参照し 単にそこでの最も広い定義 を選択して解釈した 審判部は 辞書に含まれる多くの定義の中から すぐ近くに 5

近く が最も広いと判断した しかしながら CAFC は そのようなアプローチは最も広い定義をもたらすかもしれ ないが 必ずしも明細書に基づき最も広い合理的定義をもたらすものではないと述べた CAFC は 以下の通り判断した クレーム 10 及び 060 特許の全てのクレームは 同軸ケーブルコネクタをクレームしている これらのコネクタ部品 例えばナット ポスト ボディ及び継続部材は 部分的にまたは全体として内部導電体を取り囲んでいる 多くの部分で これらの各部品は 内部導電体に対称な配置を有する この技術の脈 略を考慮すれば 文言 reside around を 争点である同軸ケーブルに関してその使用 の脈略を認識することなしに解釈するのは不自然である クレーム 10 は コネクタが取り付けられた場合に 前記コネクタボディの外部周辺に存在 reside するよう位置する継続部材を記述している 審判部は クレーム 10 前段の surrounded の使用は 060 特許の発明者が文言 reside around を surrounded と同じ意味を有することを意図していないことを示唆していると結論付けた 異なる文言は異なる意味を有する 解釈基準があり 4 当該基準は法律解釈及びクレーム解釈に適用されている このように 文言 surrounded 取り囲む がある第 1クレーム要素に使用されており 第 2クレーム要素に resides around が使用されている場合 異なる文言を 異なる範囲を有する意図があるとしてみるのが合理的である 4 Symantec Corp. v. Comput. Assoc. Int l, Inc., 522 F.3d 1279, 1289 (Fed. Cir. 2008) 6

第 1クレーム要素は前段 ( おいて書部分 ) に用いられている この前段の目的は クレームされた発明の一般的性質定義することにあり 一般的にクレームされた発明境界の輪郭を描くにあたり要因を限定するものとして または意図するものとして使用されていない 前段がこの一般的目的を有し クレームを限定するものとして使用されていない場合 異なる文言に異なる意味が与えられると推測する当該解釈基準は 適用可能性が低い CAFC は次に 060 特許の明細書の記載を分析した CAFC は 明細書は原告の解釈 をサポートしているとし 以下のように判断した 当事者の双方とも 文言 reside が位置を示すということについて争っていない 逆に 当事者の争点は 文言 around の意味にある around は 明細書に 7 度記載されている これらは共に 包囲または囲むこと encircling or surrounding に関する シールド 14 は 電極 16 に巻かれている (wrapped around) 金属箔 または 電極 16 の周りに (around the dielectric) 連続した編組を形成する複数の導線を含む コネクタボディ 50 の部分にぴったり合うよう (fit around a portion) 構成されるボデ ィ O リング ポスト 40 は電極 16 の周りに挿入されても良い 継続部材 70 は ポスト 40 の外表面に位置していても良い 柔軟部 1079a-b は 電気的継続部材 1070 の周りで陽 / 陰風の形状で伸びる疑似同軸 上にカーブしたアーム部であっても良い ボディ封止部材 1280 は コネクタボディ 1250 の周りにぴったりと位置しても良い これに対し 文言 near nearest は 明細書で 12 回使用されている それぞれ in the vicinity of の意味で使用されている 明細書は文言 around を near ま たは in the vicinity of の意味で使用していない 被告は 文言 around は 明細書において around の一つの出現において encircle 7

または surround を意味するものではないと主張した その理由は 明細書の一実施例には 柔軟部 1079a-b は 電気的継続部材 1070 の周り (around) で陽 / 陰風の形状で伸びる疑似同軸上にカーブしたアーム部であっても良い と記載されており 本実施例によれば カーブしたアーム部材は 継続部材の周りに部分的にだけ かつ 非平面形状で伸びているから というものである 本実施形態のアーム部材が 継続部材の周りに部分的にだけ伸びているということは正しい しかし これらのアーム部材が完全に伸びているのであれば 当該アーム部材は 角度はあるが 継続部材を完全に囲っている 当裁判所は 特に最も広い合理的解釈において encircle or surround が 完全に囲むこと または 軸に対して垂直な平面で囲むことを必要としているとは考えない たとえ 原告の解釈が 完全包囲またはほぼ完全な包囲を必要としたとしても 明細 書は本実施例においてアームが継続部材の周りで 陽 / 陰風形状 で伸びているというこ とを示唆している 文言 陽 / 陰風形状 は 発明者が アームが継続部材の周りで部分的に伸びる と記載したかのように 文言 の周りに伸びる extending around を修飾している 明細書は 修飾語句 陽 / 陰風形状 を さらに一実施例の文脈において around のその意味を詳しく説明するために使用している 8

CAFC はクレーム 明細書の文言及び 060 特許の技術を総合的に考慮し 審判部の reside around の解釈は合理的ではなく 文言 reside around の最も広い合理的 解釈は encircle または surround であると結論付けた 5. 結論 CAFC は 審判部のクレーム文言解釈に誤りがあるとし IPR の決定を取り消す判決 をなした 6. コメント約 7 割の事件で IPRと共に特許民事訴訟が同時継続している 特許民事訴訟ではクレーム解釈において Phillips 基準が用いられ IPR では BRI 基準が用いられる このように 同一当事者にて同一の文言が異なるフォーラムで異なる解釈基準を用いて争われることとなる BRI 基準では 本事件で審判部がなしたようにとりわけ広く文言が解釈される傾向にある しかしながら BRI 基準においても明細書の記載に鑑みて最も広く解釈する必要があり 本事件の如く明細書の記載とは異なる解釈をとることはできない 現在 IPR においてどのような基準で文言解釈を行うべきかについて最高裁で議論されている 判決 2016 年 2 月 22 日以上 関連事項 判決の全文は裁判所のホームページから閲覧することができる [PDF ファイル ] http://www.cafc.uscourts.gov/sites/default/files/opinions-orders/15-1364.opinion.2-18-2016.1.pdf 9