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Microsoft Word - tohokuuniv-press _01.docx

Untitled

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飢餓適応 細胞内品質管理などのさまざまな役割を担うことが分かってきており その破たん は神経変性疾患 腫瘍など多様な疾患と関連することが報告されています オートファジーの分子機構 制御機構 生理機能 疾患との関連などを研究するうえで オートファジー活性の定量的な測定法の存在は必須となります これまで

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

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遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

記者発表資料

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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論文の内容の要旨

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

本件に関する問い合わせ先 ( 研究内容について ) 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所技術安全部生物研究推進課主任研究員塚本智史 TEL: FAX: 千

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Microsoft Word - PRESS_

生物時計の安定性の秘密を解明

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

Microsoft PowerPoint - 4_河邊先生_改.ppt

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

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「飢餓により誘導されるオートファジーに伴う“細胞内”アミロイドの増加を発見」【岡澤均 教授】

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Microsoft Word - リリース文書.doc

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

Microsoft Word - 【変更済】プレスリリース要旨_飯島・関谷H29_R6.docx

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

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平成 29 年 8 月 4 日 マウス関節軟骨における Hyaluronidase-2 の発現抑制は変形性関節症を進行させる 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 : 門松健治 ) 整形外科学 ( 担当教授石黒直樹 ) の樋口善俊 ( ひぐちよしとし ) 医員 西田佳弘 ( にしだよしひろ )

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共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

PowerPoint プレゼンテーション

長期/島本1

研究成果報告書(基金分)

ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

Microsoft Word CREST中山(確定版)

背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

記 者 発 表(予 定)

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

STAP現象の検証の実施について

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平成14年度研究報告

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 2 月 4 日 独立行政法人理化学研究所 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の進行に二つのグリア細胞が関与することを発見 - 神経難病の一つである ALS の治療法の開発につながる新知見 - 原因不明の神経難病 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) は 全身の筋


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1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

細胞外情報を集積 統合し 適切な転写応答へと変換する 細胞内 ロジックボード 分子の発見 1. 発表者 : 畠山昌則 ( 東京大学大学院医学系研究科病因 病理学専攻微生物学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 多細胞生物の個体発生および維持に必須の役割を担う多彩な形態形成シグナルを細胞内で集積 統

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

図 1. 微小管 ( 赤線 ) は細胞分裂 伸長の方向を規定する本瀬准教授らは NIMA 関連キナーゼ 6 (NEK6) というタンパク質の機能を手がかりとして 微小管が整列するメカニズムを調べました NEK6 を欠損したシロイヌナズナ変異体では微小管が整列しないため 細胞と器官が異常な方向に伸長し

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

HYOSHI48-12_57828.pdf

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

兵庫大学短期大学部研究集録№49

Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

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研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

Microsoft PowerPoint - 資料6-1_高橋委員(公開用修正).pptx

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

Microsoft Word - 01.doc

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

報道機関各位 平成 27 年 8 月 18 日 東京工業大学広報センター長大谷清 鰭から四肢への進化はどうして起ったか サメの胸鰭を題材に謎を解き明かす 要点 四肢への進化過程で 位置価を持つ領域のバランスが後側寄りにシフト 前側と後側のバランスをシフトさせる原因となったゲノム配列を同定 サメ鰭の前

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

4氏 すずき 名鈴木理恵 り 学位の種類博士 ( 医学 ) 学位授与年月日平成 24 年 3 月 27 日学位授与の条件学位規則第 4 条第 1 項研究科専攻東北大学大学院医学系研究科 ( 博士課程 ) 医科学専攻 学位論文題目 esterase 染色および myxovirus A 免疫組織化学染色

2 肝細胞癌 (Hepatocellular carcinoma 以後 HCC) は癌による死亡原因の第 3 位であり 有効な抗癌剤がないため治癒が困難な癌の一つである これまで HCC の発症原因はほとんど が C 型肝炎ウイルス感染による慢性肝炎 肝硬変であり それについで B 型肝炎ウイルス

本成果は 主に以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました 日本医療研究開発機構 (AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム ( 平成 27 年度より文部科学省より移管 ) 研究課題名 : 遺伝子改変マーモセットの汎用性拡大および作出技術の高度化とその脳科学への応用 研究代表者 : 佐々木えり

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

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現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

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オートファジーはマウスの聴覚に重要である 1. 発表者 : 藤本千里 ( 東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 頭頸部外科助教 ) 山岨達也 ( 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚 運動機能講座耳鼻咽喉科学分野教授 ) 2. 発表のポイント : オートファジー ( 注 1) に必須の遺伝子である autophagy-related 5(Atg5) を有毛細胞にて欠損させたマウスは 先天性の高度難聴の聴力像を呈し 蝸牛有毛細胞 ( 注 2) の障害を認めました 蝸牛有毛細胞における恒常的オートファジーが マウスの聴覚と細胞形態の維持に重要な役割を果たすことを示しました オートファジーと聴覚障害の病態形成との関連性について さらなる研究の進展が期待されます 3. 発表概要 : 聴覚系の感覚細胞である 蝸牛有毛細胞は一度障害されると機能的回復は困難であり その生存 恒常性維持は聴覚機能に非常に重要です 東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 頭頸部外科の藤本千里助教 山岨達也教授らは 細胞の恒常性維持に重要であるオートファジーが マウスの聴覚機能に重要な役割を果たすことを明らかにしました 藤本助教らは オートファジーに必須の分子である autophagy-related 5(Atg5) を有毛細胞にて欠損させた遺伝子改変マウスを作製し 有毛細胞におけるオートファジー活性が聴覚機能および細胞形態に及ぼす影響を検討しました 有毛細胞における Atg5 の欠損により マウスは先天性の高度難聴を呈しました また Atg5 欠損マウス有毛細胞の組織学的検討では 14 日齢において聴毛の変性 および一部の細胞の脱落を認めました 8 週齢においては 有毛細胞の変性がさらに進行していました 本研究により 有毛細胞における恒常的オートファジーは聴覚機能および細胞形態の維持に重要であることが示されました オートファジーと聴覚障害の病態形成との関連性について さらなる研究の進展が期待されます なお 本研究は 日本時間 5 月 11 日に英国科学雑誌 Cell Death & Disease にて発表されました 4. 発表内容 : 1 研究の背景内耳の感覚細胞である有毛細胞は さまざまな特化された微細構造を持ち 音や加速度といった機械的刺激を生体内の電気信号に変換するという非常に巧妙な機能を担いますが 細胞分裂せず一度障害を受けると機能的再生が困難なため 障害の多くは不可逆的です このため 有毛細胞においては 細胞の恒常性維持 機能維持が特に重要と考えられます オートファジーは細胞内のバルク分解系 ( 注 3) であり 恒常的に細胞質成分を入れ替えることで細胞内品

質管理に貢献しています 近年オートファジーは さまざまな生命現象や病態との関連が指摘されていますが 内耳有毛細胞における役割については全く知られていません オートファジー関連疾患である Vici 症候群は 後生動物に特異的なオートファジーの関連遺伝子である ectopic P granules protein 5 (EPG5) を責任遺伝子とする先天性多臓器疾患であり その一部の患者に感音難聴を認めるという報告があります しかしながら その詳細なメカニズムは明らかになっていません 2 研究内容本研究では 細胞内品質管理を担う恒常的オートファジーの機能が 有毛細胞の機能維持に非常に重要な役割を保持している可能性を考え 蝸牛有毛細胞における恒常的オートファジーの生理機能について検討を行いました まず POU domain, class 4, transcription factor 3(Pou4f3)-Cre トランスジェニックマウスと floxed Atg5 マウスを用いて Cre-loxp システム ( 注 4) によって蝸牛有毛細胞にてオートファジーが欠損するコンディショナルノックアウトマウス ( 注 5)(Atg5 flox/flox ;Pou4f3-Cre マウス ) を作製しました このマウスの蝸牛有毛細胞にて実際にオートファジーが欠損しているかを確認するため オートファジー不全によって生じるユビキチン-p62 陽性封入体形成 ( 注 6) を観察しました ノックアウトマウス群 (Atg5 flox/flox ;Pou4f3-Cre マウス群 ) とヘテロ対照群 (Atg5 flox/+ ;Pou4f3-Cre マウス群 ) において 有毛細胞内の封入体数を比較したところ ノックアウトマウス群では 5 日齢と 14 日齢のいずれにおいても ヘテロ対照群に比べ封入体数が多く ノックアウトマウス群における 5 日齢と 14 日齢の比較では 14 日齢が 5 日齢に比べて多いという結果でした ( 図 1) 一方 ヘテロ対照群においては 5 日齢と 14 日齢のいずれも 封入体数は少なく 両日齢間で差は認めませんでした ( 図 1) 次に ノックアウトマウスの聴覚機能を調べるため 14 日齢 4 週齢 8 週齢において ノックアウトマウス群とヘテロ対照群で 聴性脳幹反応における聴力閾値を比較しました 14 日齢 4 週齢 8 週齢いずれにおいても ヘテロ対照群が正常聴力である一方で ノックアウトマウス群は高度難聴を呈しました ( 図 2) また ノックアウトマウス群とヘテロ対照群で 有毛細胞の組織学的検討を行ったところ ノックアウトマウス群は 5 日齢では正常形態でしたが 14 日齢では多くの聴毛の障害 および一部の細胞の脱落を認めました ( 図 3) 8 週齢では 多くの有毛細胞の脱落を認め 有毛細胞の変性がさらに進行していました ( 図 3) 以上より 蝸牛有毛細胞において恒常的オートファジー不全を来す Atg5 flox/flox ;Pou4f3-Cre マウスが 有毛細胞障害および先天性の高度難聴を呈することが示されました 恒常的オートファジーがマウスの聴覚機能と有毛細胞の形態維持に重要な役割を果たすことが明らかとなりました 3 社会的意義本研究は 蝸牛有毛細胞における恒常的オートファジーがマウスの聴覚機能に重要であることを示した世界初の報告です 近年 オートファジーと 神経変性疾患 2 型糖尿病等の生活習慣病 発がん 先天性多臓器疾患等などの病態の発症との密接な関連が オートファジー関連遺伝子の改変マウスを用いた研究や ヒト遺伝子解析研究などにより報告されています 今回の研究報告を足がかりとして オートファジーと聴覚障害の病態形成との関連性について さらなる研究の進展が期待されます

5. 発表雑誌 : 雑誌名 :Cell Death & Disease( オンライン版 ) 論文タイトル :Autophagy is essential for hearing in mice. 著者 : Chisato Fujimoto*, Shinichi Iwasaki, Shinji Urata, Hideaki Morishita, Yuriko Sakamaki, Masato Fujioka, Kenji Kondo, Noboru Mizushima and Tatsuya Yamasoba* DOI 番号 :10.1038/cddis.2017.194 6. 問い合わせ先 : < 研究内容に関するお問い合わせ先 > 東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 頭頸部外科助教藤本千里 ( ふじもとちさと ) 教授山岨達也 ( やまそばたつや ) Tel:03-5800-8665( 医局直通 ) E-mail:cfujimoto-tky@umin.ac.jp( 藤本 )/ tyamasoba-tky@umin.ac.jp( 山岨 ) < 取材に関するお問い合わせ先 > 東京大学医学部附属病院パブリック リレーションセンター担当 : 小岩井 渡部 Tel:03-5800-9188( 直通 ) E-mail:pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp 7. 用語解説 : ( 注 1) オートファジー細胞質成分をリソソームに輸送し分解するシステムであり 細胞内の主要分解機構の一つである オートファジーの膜動態は以下の 2 つの過程からなる まず 細胞質に出現する隔離膜と呼ばれる膜区画が細胞質成分を包み込み 約 1μm の 2 重膜構造であるオートファゴソームとなる 次に オートファゴソームの外膜にリソソームが融合し 流入した加水分解酵素が内膜と包み込んだ内容物を分解する ( 注 2) 蝸牛有毛細胞 ( かぎゅうゆうもうさいぼう ) 内耳にあり 聴覚をつかさどる感覚器官である蝸牛に存在する 感覚受容器細胞である ( 注 3) バルク分解系オートファジーでは オートファゴソーム内の空間にあるタンパク質やオルガネラをまとめて分解するため オートファジーによる分解は バルク分解系と呼ばれている ( 注 4)Cre-loxp システム loxp 配列と呼ばれる DNA 配列に対し バクテリオファージ P1 由来の DNA 組換え酵素 Cre が働くことにより生じる部位特異的組換え反応を利用した遺伝子組換え実験系である 人工的に 2 個の loxp を染色体 DNA の中に挿入しておいた細胞に対し Cre を発現させると,loxP に挟まれた DNA 領域が不可逆的に除去される ( 注 5) コンディショナルノックアウトマウス

特定の遺伝子について 臓器 時期特異的な欠失 改変操作がなされるように作製されたマウスである ( 注 6) ユビキチン-p62 陽性封入体形成 p62 は オートファジーの選択的分解基質であり LC3 結合ドメインとユビキチン結合ドメインを有するタンパク質である オートファジー不全の細胞においては p62 が蓄積し ユビキチン-p62 陽性の封入体を形成する 8. 添付資料 :