歩道状空地は宅地か私道か 東京地裁平成 27 年 7 月 16 日判決 TAINS Z 東京高裁平成 28 年 1 月 13 日判決 TAINS Z 最高裁平成 29 年 2 月 28 日判決 TAINS Z はじめに本件は 相続人が 相続財産で

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税務訴訟資料第 265 号 -114( 順号 12697) 東京地方裁判所平成 年 ( ) 第 号相続税更正及び加算税賦課決定取消請求事件 国側当事者 国 ( 相模原税務署長 ) 平成 27 年 7 月 16 日棄却 控訴 判決原告原告原告原告原告上記 5 名訴訟代理人弁護士被告同代表者法務大臣処分

平成  年(オ)第  号

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

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算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

Ⅳ 高裁 ( 諸 ) 平 19 第 25 号 ( 平成 20 年 6 月 12 日 ) 裁決 ( 高松裁決 TAINS:F ) 1 主文は原処分取消し 2 課税時期前後の空室期間 : 最短 11 か月 ~ 最長 2 年 6か月 3 事実認定の特徴空室状況の他に 不動産業者に委託して募集活

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

(イ係)

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

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次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

2(1) 所得税法 34 条 2 項は, 一時所得の金額は, その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額 ( その収入を生じた行為をするため, 又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る ) の合計額を控除し, その残額から所定の特別控除額を控除した金額とす

処分済み

旨の申告 ( 以下 本件申告 という ) をしたところ, 処分行政庁から, 本件不動産取得税を還付しない旨の処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 処分行政庁が所属する東京都を被告として, 本件処分の取消しを求める事案である 原判決は, 控訴人の請求を棄却したので, これを不服とする控

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

取得に対しては 分割前の当該共有物に係る持分割合を超える部分の取得を除いて 不動産取得税を課することができないとするだけであって 分割の方法に制約を設けているものではないから 共有する土地が隣接している場合と隣接していない場合を区別し 隣接していない土地を一体として分割する場合に非課税が適用されない

第 5 章 N

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

し, これを評点 1 点当たりの価額に乗じて, 各筆の宅地の価額を求めるものとしている 市街地宅地評価法は,1 状況が相当に相違する地域ごとに, その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定し,2 標準宅地について, 売買実例価額から評定する適正な時価を求め, これに基づいて上記主要な街路の

株式保有会社の相続税評価の緩和

処分済み

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

相続財産の評価P64~75

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

1 A 所有の土地について A が B に B が C に売り渡し A から B へ B から C へそれぞれ所有権移転登記がなされた C が移転登記を受ける際に AB 間の売買契約が B の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で 当該登記の後に A により AB 間の売買契約が取り消された

MJS/ 第 79 回租税判例研究会 ( ) MJS 判例研究会 平成 30 年 8 月 9 日 報告者西野道之助 更正の請求/ 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除 平成 28 年 7 月 8 日 東京地裁 ( 棄却 )( 控訴 ) 平成 29 年 1 月 26 日

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

遺者であったが 事情があって遺贈の放棄をした 民法 986 条の規定によれば 受遺者は 遺言者の死亡後 いつでも 遺贈の放棄をすることができ 遺贈の放棄は 遺言者死亡のときに遡ってその効力を生じるとされているから 前所有者から請求人に対する本件各不動産の所有権移転の事実は無かったものであり 請求人は

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

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2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

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ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

198 第 3 章 減価償却資産の取得価額 キーワード ソフトウエアに係る取得価額購入したソフトウエアの取得価額は 1 当該資産の購入の代価と 2 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用との合計額とされています 引取運賃 荷役費 運送保険料 購入手数料 関税 その他の当該資産の購入のために要

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第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項に より いずれも棄却すべきである 第 5 調査審議の経過審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日審議経過 平成 30 年 3 月 6 日 諮問 平成 30 年 4 月 26 日審議 ( 第

という ) 開始に係る各相続税 ( 以下 本件各相続税 という ) の申告をしたところ, 処分行政庁から本件各相続税の各更正及びこれらに係る重加算税の各賦課決定を受け, 裁決行政庁からこれらに係る原告らの審査請求を却下する旨の各裁決を受けたのに対し, 上記各更正のうち原告らが主張する納付すべき税額を

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7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

第 6 回令和元年度固定資産評価実務者勉強会 第 3 部 税理士による最近の各種課税評価に関するお話 講師 : 税理士 不動産鑑定士 赤川明彦 ( 株式会社土地評価センター取締役 ) copyright 2019 KOTOBUKI PROPERTY ASSESSMENT all rights res

ウ商業地等である 町の土地の平成 28 年度分の固定資産税の課税標準額は 法附則第 18 条第 5 項及び第 25 条第 5 項の規定により 課税標準となるべき価格に0.7を乗じた額となる なお 岐阜市税条例 ( 昭和 25 年岐阜市条例第 14 号 以下 条例 という ) においては これと異なる

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1 天神 5 丁目本件土地及び状況類似地域 天神 5 丁目 本件土地 1 状況類似地域 標準宅地

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

3-3 新旧対照表(条例の審査基準).rtf

保険業務に係る情報提供料は 請求人の事業に基づいた収入であるとは いえない 第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項によ り 棄却すべきである 第 5 調査審議の経過 審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日 審議経過 平成 30

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4 処分行政庁が平成 25 年 3 月 5 日付けでした控訴人に対する平成 20 年 10 月 1 日から平成 21 年 9 月 30 日までの事業年度の法人税の再更正処分のうち翌期へ繰り越す欠損金 4 億 万 6054 円を下回る部分を取り消す 5 処分行政庁が平成 25 年 3 月

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

建築基準法施行規則第10条の2第1号

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

 

〔問 1〕 Aは自己所有の建物をBに賃貸した

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は, 亡 AとBとの間の子である 原告は, 所得税法 16 条 2 項の規定により, その営む事業に係る事業場の所在地である渋谷区を納税地としている イ亡 Aは, 平成 年 月 日に死亡し, 原告は, 渋谷区 α 番地 1ほか所在の区分所有建物及

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2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

12. 地価公示は 土地鑑定委員会が 毎年 1 回 2 人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め その結果を審 査し 必要な調整を行って 標準地の正常な価格を判定し これを公示するものである 13. 不動産鑑定士は 土地鑑定委員会の求めに応じて標準地の鑑定評価を行うに当たっては 近傍類地の取 引価格から

録された保有個人情報 ( 本件対象保有個人情報 ) の開示を求めるものである 処分庁は, 平成 28 年 12 月 6 日付け特定記号 431により, 本件対象保有個人情報のうち,1 死亡した者の納める税金又は還付される税金 欄,2 相続人等の代表者の指定 欄並びに3 開示請求者以外の 相続人等に関

税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

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2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

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賦課決定 ( 以下 本件賦課決定 といい, 本件更正と併せて 本件更正等 という ) を受けたため, 本件更正は措置法 64 条 1 項が定める圧縮限度額の計算を誤った違法なものであると主張して, 処分行政庁の所属する国に対し, 本件更正等の一部取消し等を求める事案である 原審は, 控訴人の請求をい

計算式 1 1 建物の価額 ( 固定資産税評価額 ) =2 長期居住権付所有権の価額 +3 長期居住権の価額 2 長期居住権付所有権の価額 ( 注 1) =1 固定資産税評価額 法定耐用年数 ( 経過年数 + 存続年数 ( 注 3)) 法定耐用年数 ( 注 2) 経過年数 ライプニッツ係数 ( 注

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

本件合併時にA 信用組合に在職する職員に係る労働契約上の地位は, 被上告人が承継すること,3 上記の職員に係る退職金は, 本件合併の際には支給せず, 合併後に退職する際に, 合併の前後の勤続年数を通算して被上告人の退職給与規程により支給することなどが合意された また, 本件合併の準備を進めるため,

除く 以下同じ ) に因り財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するものは この法律により 贈与税を納める義務がある旨定めている ( 3 ) 相続税法 9 条本文は 4 条から 8 条までに規定する場合を除く外 対価を支払わないで又は著しく低い価額の対価で利益を受

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

総務省が所管する地方税法ではなく 財務省が所管する国有財産法の適用を受けるとのことであり 実施機関の本件決定は失当である (2) 本件は 国税庁からの教示による公文書公開請求であり これを実施機関が非公開決定するとは言語道断である (3) 尖閣諸島の国有化は 日本と中国の外交問題に発展していることも

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4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨主文と同旨第 2 事案の概要 1 本件は, 競馬の勝馬投票券 ( 以下 馬券 という ) の的中による払戻金に係る所得を得ていた控訴人が, 平成 17 年から平成 21 年までの各年分の所得税に係る申告期限後の確

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1 審査会の結論 平成 29 年度市民税 県民税税額変更処分 に係る審査請求は棄却するべ きであるとの審査庁の判断は妥当である 2 事案概要緑区長 ( 以下 処分庁 という ) は 平成 29 年 6 月 1 日 審査請求人に対して 平成 29 年度市民税 県民税賦課決定処分 ( 以下 先行処分 と

Transcription:

歩道状空地は宅地か私道か 東京地裁平成 27 年 7 月 16 日判決 TAINS Z888-1972 東京高裁平成 28 年 1 月 13 日判決 TAINS Z888-2003 最高裁平成 29 年 2 月 28 日判決 TAINS Z888-2047 1. はじめに本件は 相続人が 相続財産である土地の一部につき 財産評価基本通達 ( 以下 評価通達 という ) の24に定める私道の用に供されている宅地として相続税の申告をしたところ 税務署長から これを私道として評価することはできないとして更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたため 各処分の取消しを求める事案である 第一審 第二審ともに国側勝訴の判決が下されていたが 最高裁で差戻しの判決がでたため その動向が注目されている事案である 2. 事実の概要イ本件における被相続人は 平成 20 年 3 月 19 日に死亡した ロ本件相続における相続財産の中には 相続人である長男が取得した相模原土地 ( 以下 本件相模原土地 という ) 及び大和土地 ( 以下 本件大和土地 といい 併せて 本件各土地 という ) が含まれており 相続開始時の状況は次のとおりである 1 本件相模原土地について ( 図 1 参照 ) (ⅰ) 本件相模原土地は 共同住宅 3 棟 ( 以下 本件相模原共同住宅 という ) の敷地となっており その西側において市道 α219 号線及び同 528 号線と接面し その北側において市道 β 線と接面している (ⅱ) 本件相模原土地のうち 西側の市道 α219 号線沿いの部分 同 528 号線沿いの一部及び北側の市道 β 線沿いの一部には インターロッキング舗装が施された幅員 2メートルの歩道状空地 ( 図 1の着色部分 以下 本件相模原歩道状空地 という ) が整備されている (ⅲ) 本件相模原歩道状空地の南端は 本件相模原共同住宅のうち最も南側に位置する建物 ( 図 1にC 棟と記載されている建物 ) の敷地内にある居住者用の駐車場の出入口に接面している (ⅳ) 本件相模原土地のうち 本件相模原歩道状空地を除く通路部分は 本件相模原歩道状空地と同様にインターロッキング舗装が施され 本件相模原土地と一体として整備されている ( 図 1) 本件相模原土地の見取図

2 本件大和土地について ( 図 2 参照 ) (ⅰ) 本件大和土地は 共同住宅 8 棟 ( 以下 本件大和共同住宅 といい 本件相模原共同住宅と併せて 本件各共同住宅 という ) の敷地となっており その西側において市道 γ67 号線 その東側において δ 線及びその南側において市道 γ72 号線とそれぞれ接面している (ⅱ) 本件大和土地のうち 南側の市道 γ72 号線沿いの部分 西側の同 67 号線沿いの一部及び東側の δ 線沿いの一部は インターロッキング舗装が施された幅員 2メートルの歩道状空地 ( 図 2の着色部分 以下 本件大和歩道状空地 といい 本件相模原歩道状空地と併せて 本件各歩道状空地 という ) が整備されている (ⅲ) 本件大和土地内にある居住者用の駐車場から市道 γ72 号線へ出入りすることは 本件大和歩道状空地を通過することのみにより可能となっている (ⅳ) 本件大和土地のうち 本件大和歩道状空地を除く通路部分は 本件大和歩道状空地と同様にインターロッキング舗装が施され 本件大和土地と一体として整備されている ( 図 2) 本件大和土地の見取図

ハ原告らは 平成 21 年 1 月 14 日 本件相続に係る相続税申告書を提出した ( 以下 本件相続税申告 という ) ニ原告らは 平成 23 年 7 月 4 日 本件相模原歩道状空地について 当初申告において不特定多数の者の通行の用に供されている私道であるとしてその価額を評価していなかったが 自用地の価額の100 分の30に相当する価額によって評価すべきであったとして これを是正する旨の修正申告書を提出し 税務署長は 同年 8 日付けで これに対応する過少申告加算税の賦課決定処分をした ホ税務署長は 平成 23 年 7 月 8 日付けで 本件各歩道状空地については 私道供用宅地には該当せず 本件各土地の一部を構成し 本件各共同住宅の敷地ごとに評価すべきであることを前提とする各更正処分 ( 以下 本件各更正処分 という ) 及び各過少申告加算税賦課決定処分 ( 以下 本件各賦課決定処分 といい 本件各更正処分と併せて 本件各処分 という ) をした へ原告らは 平成 23 年 9 月 6 日 本件各処分を不服として 税務署長に対し 異議申立てをしたが 同税務署長は 同年 12 月 5 日 原告らの異議申立てを棄却する旨の異議決定をした ト原告らは 平成 23 年 12 月 28 日 本件各処分に不服があるとして 国税不服審判所長に対する審査請求をしたが 国税不服審判所長は 平成 24 年 12 月 20 日 原告らの審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした 3. 争点本件各歩道状空地は 私道か貸家建付地か 4. 納税者の主張本件各歩道状空地は 1 通り抜け道路であり現に不特定多数の者の通行の用に供されて

いること 2 都市計画法の開発許可を受けるための道路内建築の制限により 通行を妨害する行為が禁止されること 3 都市計画法の開発許可に基づき私道の廃止又は変更が制限されていること 4 私道の減価を100パーセントとみるべきであることから 私道供用宅地に該当するというべきである 5. 税務署長の主張私道供用宅地に当たるか否かは その私道が私有物として使用 収益する権能が制約されることにより 私道の宅地としての価額が著しく低下しているか否かによって判断するのが相当であるところ 1 本件各歩道状空地は本件各土地と併せて建築基準法上の接道義務を満たしており 本件各歩道状空地の歩道としての状況は 同法上の接道義務の判断に何ら影響しないこと 2 本件各歩道状空地は 建築基準法上の道路内の建築制限及び建築基準法上の私道の変更又は廃止の制限のほか 道路法の道路上の私権の行使の制限も受けない土地であること さらに 3 都市計画法による開発行為に該当しない戸建住宅を建築する際には 本件各歩道状空地を戸建住宅の敷地の一部として使用することも可能であり 加えて 4 本件各共同住宅を建築した際には 建築基準法上の建ぺい率及び容積率 ( 以下 併せて 建ぺい率等 という ) の算定の基となり 宅地の一部として扱われていることが認められるから 本件各歩道状空地を使用 収益する権能の制約は たとえ本件各歩道状空地が第三者の通行の用に供されていたとしても その限度にとどまるものであり 本件各歩道状空地の価額が著しく低下しているものとは認められない したがって 本件各歩道状空地は 私道供用宅地には該当せず 本件各共同住宅の敷地の一部を構成するものとして評価するのが相当である 6. 第一審判決請求棄却 1 検討評価通達 24は 私道供用宅地の価額は 自用地の価額の100 分の30に相当する価額によって評価する旨及びこの場合において その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは その私道の価額は評価しない旨を定めているが ここにいう 私道 がいかなるものかについて 同通達上は明記されていない そこで検討すると 私人が所有する道という広い意味で私道を捉えた場合 その中には 例えば 複数の建物敷地のいわゆる接道義務を満たすために当該各敷地所有者が共有する道であって建築基準法上の道路とされているものもあるであろうし 他方において 宅地の所有者が事実上その宅地の一部を通路として一般の通行の用に供しているものもあり得るところである このうち 前者は これに隣接する各敷地の所有者が それぞれその接道義務を果たすために不可欠のものであるから 個別の敷地所有者 ( すなわち私道の一共有者 ) の意思により

これを私道以外の用途に用いることには困難を伴うといえるし また 道路内の建築制限 ( 建築基準法 44 条 ) や私道の変更等の制限 ( 同法 45 条 ) も適用されるのであって その利用には制約があるものである これに対し 後者は 宅地の所有者が宅地の使用方法の選択肢の一つとして任意にその宅地の一部を通路としているにすぎず 特段の事情のない限り 通路としての使用を継続するか否かは当該所有者の意思に委ねられているのであって その利用に制約があるわけではない このような違いを宅地の価額の評価という観点からみた場合 前者については 上記のような制約がある以上 評価通達 24が定めるように 所定の方法により計算された価額の3 0% で評価することとし それが不特定多数の者の通行の用に供されているためにより大きい制約を受ける状況にあるといえるときにはその価額を評価しないとすることには 合理性があるものということができる しかしながら 後者については そもそもかかる制約がなく 特段の事情がない限り 私道を廃止して通常の宅地として利用することも所有者の意思によって可能である以上 これを通常の宅地と同様に評価するのがむしろ合理的というべきである そうすると 評価通達 24にいう 私道 とは その利用に上記のような制約があるものを指すと解するのが相当である この点 評価通達 24を解説した文献においては 同通達の定めにつき 次のような解説がされているが これは上記検討と基本的に同様の考えに出たものであり 既に述べた前者の場合に類するものとしてア及びイが 後者の場合に類するものとしてウが例に挙げられているものと解される ア私道のうち不特定多数の者の通行の用に供されているものについては 1 当該私道について第三者が通行することを容認しなければならず 2 私道内建築の制限により 通行を妨害する行為が禁止され 3 私道の廃止又は変更が制限されること等の制限があり 取引実態からみても かかる場合には私道の減価を100% としている事例が多いことなどから 私道の価額を評価しないこととしたものである イ専ら特定の者の通行の用に供されているものは その使用収益にある程度の制約はあるものの 所有者の意思に基づく処分の可能性が残されていることなどから 所定の方法により計算した価額の30% の相当額によって評価することとしたものである ウ敷地の所有者が当該敷地の一部を公道に通じる通路としてのみ使用している場合には 当該通路部分は自用地としての評価を行い 私道としての評価は行わない 3 本件各歩道状空地は私道に該当するかまず 本件各土地は いずれも公道に接しているのであり 本件各歩道状空地は 接道義務を果たすために設けられたものではない したがって 本件各歩道状空地の利用について 私道としての建築基準法上の利用制限が課されることになるわけではない

本件各歩道状空地が設けられたのは 相模原市や大和市から 要綱等に基づき歩道部分を設けるように指導されたことによるものであるが かかる指導がされることとなったのは 本件被相続人が 本件各土地上に それぞれ共同住宅を建築するべく 都市計画法に基づく開発行為を行うこととしたためである すなわち 本件各土地の利用方法として様々な選択肢があり得る中で 本件被相続人は 上記開発行為をすることを選択したのであって その結果 上記指導を受けて 本件各歩道状空地を設けることとなったものであるところ かかる指導によって本件各歩道状空地を設けることを事実上やむなくされたことをもって仮に制約と評価する余地があるとしても かかる制約は それを受け入れつつ開発行為を行うのが本件各土地の利用形態として適切であると考えた上での選択の結果生じたものということができる しかも 本件各土地は 本件被相続人が所有し 原告らが相続したものであり その利用形態は同人らが決定し得るものであって 同人らが その意思により 本件各土地の利用形態を変更すれば 上記のような制約を受けることもなくなるのであるから 通常の宅地と同様に利用することができる潜在的可能性とそれに相応する価値を有しているといえる また 制約の態様についてみると 本件各土地においては 歩道としての供用が求められているにすぎないし しかも 本件各歩道状空地も含めて建物敷地の一部として建ぺい率等が算定されているのであって つまるところ 同部分は 所定の容積率の建物を建築し得るための建物敷地としての役割をも果たしており それに相応する価値を現に有していると考えられるところである この点 複数の建物敷地の接道義務を満たすために当該各敷地所有者が共有する私道の例などでは 個別の建物敷地所有者が当該敷地の利用形態をどのように選択しようと 当該私道を私道以外の用途に用いることは困難というべきであるし また 私道部分と建物敷地部分は区別されており 前者を建ぺい率等算定のための建物敷地として用いることもできない ( 建築基準法施行令 2 条 1 項 1 号参照 ) 以上のような事情に照らすと 評価通達 24が想定している私道に課せられた制約の程度と 本件各歩道状空地に課されている上記の制約の程度は 大きく異なるものといわざるを得ないのであり 後者の程度の制約しかない本件各歩道状空地をもって 評価通達 24の適用される私道供用宅地に該当するということはできないものというべきである 7. 第二審判決控訴棄却当裁判所も 控訴人らの請求は いずれも理由がないものと判断する 8. 最高裁判決破棄差戻し 1 法令解釈

相続税法 22 条は 相続により取得した財産の価額は 当該財産の取得の時における時価による旨を定めているところ ここにいう時価とは 課税時期である被相続人の死亡時における当該財産の客観的交換価値をいうものと解される そして 私道の用に供されている宅地については それが第三者の通行の用に供され 所有者が自己の意思によって自由に使用 収益又は処分をすることに制約が存在することにより その客観的交換価値が低下する場合に そのような制約のない宅地と比較して 相続税に係る財産の評価において減額されるべきものということができる そうすると 相続税に係る財産の評価において 私道の用に供されている宅地につき客観的交換価値が低下するものとして減額されるべき場合を 建築基準法等の法令によって建築制限や私道の変更等の制限などの制約が課されている場合に限定する理由はなく そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は 私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず 当該宅地の位置関係 形状等や道路としての利用状況 これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし 当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か また その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである 2 本件各歩道状空地は私道に該当するかこれを本件についてみると 本件各歩道状空地は 車道に沿って幅員 2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので いずれも相応の面積がある上に 本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる また 本件各歩道状空地は いずれも本件各共同住宅を建築する際 都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために 市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり 本件各共同住宅が存在する限りにおいて 上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い そして これらの事情に照らせば 本件各共同住宅の建築のための開発行為が被相続人による選択の結果であるとしても このことから直ちに本件各歩道状空地について減額して評価をする必要がないということはできない 3 結論以上によれば 本件各歩道状空地の相続税に係る財産の評価につき 建築基準法等の法令による制約がある土地でないことや 所有者が市の指導を受け入れつつ開発行為を行うことが適切であると考えて選択した結果として設置された私道であることのみを理由として 前記に説示した点について具体的に検討することなく 減額をする必要がないとした原審の判断には 相続税法 22 条の解釈適用を誤った違法があるというべきである したがって 原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり 論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある 原判決は破棄を免れない そして 本件各歩道状

空地につき 更に審理を尽くさせるため 本件を原審に差し戻すこととする 9. 判例評釈 1 本件歩道状空地の評価本件の歩道状空地は 幅員 2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので 第三者による自由な通行の用に供されているものである 第一審及び第二審においては 本件歩道状空地は 隣接する他の宅地の接道義務を充たすために設けられたものではなく また その利用形態は土地所有者が決定し得るものであることから 評価通達が想定している私道としての制約はないものと判示している これに対し最高裁においては 都市計画法の開発行為の許可を受けるために 市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり 道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難いことなどから 直ちに本件各歩道状空地について減額する必要がないということはできないと判示している 2マンション用地の取扱いとの類似性これは 例えば 公団等のマンション敷地の評価において マンション敷地のうちに公衆化している道路 公園等の施設の用に供されている宅地が多数含まれていて 建物の専有面積に対する共有部分に応ずる敷地面積が広大となるため 通常の評価方法にしたがって評価することが著しく不適当であると認められる場合には その公衆化している道路等の施設の用に供されている宅地部分の面積を除いて評価して差し支えないとされているところでもある 3 公開空地との相違点一方 実務上 建築基準法のいわゆる総合設計制度の公開空地については 特にしんしゃくしないこととされている ( 国税庁質疑応答事例 公開空地のある宅地の評価 ) 公開空地は 建物を建てるために必要な敷地を構成するものであり 建築基準法上建ぺい率や容積率の計算に当たっては その宅地を含めて算定するものであること等からみて 一般の建物の敷地と何ら異ならないからである 本件で争点となっている歩道状空地は 建築基準法上建ぺい率や容積率の計算に当たってその宅地を含めて算定されるものであるが 共同住宅を建築する際 市の行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり 土地所有者が道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難いとされている 建築基準法上の公開空地は宅地として評価し 都市計画法上の歩道状空地は私道として評価する相違点は何かという点は今後の研究課題である 4 相続税法 22 条に定める客観的交換価値との関係

さらに 私道については 所有者が自己の意思によって自由に使用 収益又は処分をすることに制約が存在することにより その客観的交換価値が低下することから減額すべきものと解されている 仮に 本件土地及び歩道状空地を売買するとして 売主が歩道として利用していた部分について 買主は その敷地部分の価値はゼロだといえるだろうか 5まとめこれまでは実務上 歩道状空地は私道として評価がされてこなかった 建築基準法上の公開空地についても特にしんしゃくしないということでもある ( もし 歩道状空地を私道として評価するのであれば 当該公開空地との違いを明らかとしなければならない ) 差戻し審において 歩道状空地を私道として評価することとなれば これまでの取扱いに変更を与える論点となり 今後 土地の評価にあたって 開発許可面積基準以上の地積を有するマンションやビルの敷地については 開発指導要綱に基づいて設置した歩道状空地があるか否かは必ず確認しなければならない点となる