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2011 年度 研究旅行奨励制度 研究旅行計画書イタリア ワイン業界の変遷研究テーマ -シエナ外国人大学 言語 文化コースでの学びと現地調査- 目的地 イタリア 国名 地域 都市名 トスカーナ州 ( 滞在地 : シエナ ) ローマ 研究旅行の目的近年 イタリアにおけるワイン産業に大きな変化が起きている 元来 世界のワイン市場には 主にヨーロッパの国々で主流の産地主義 ( テロワール主義 ) と 新大陸国 ( アメリカ オーストラリア チリ等 ) で主流の品種主義 ( セパージュ主義 ) の2つの主義が存在する 産地主義国は伝統的に自国のワインに誇りを持ち 品種主義国のワインを輸入することを好まない しかし 古くからこの産地主義の代表格であったイタリアにおいて 近年 この2つの主義の融合が起こっているという すなわち 近年イタリアは積極的に品種主義国であるアメリカのワインを輸入しており 特にバルクワインにおいてその傾向は顕著であるという このようなイタリア ワイン業界におけるかつてない変化は何を物語っているのだろう そこには 伝統的な地域文化や慣習そしてその継承を重んじてきたイタリア社会が 近年 確実に変化している様子が象徴的に見て取れるようにも思える 伝統から変化の時代へ イタリアのワイン業界の変遷とその背景について明らかにすること それがこの研究旅行の主な目的である この研究目的を達成するために イタリア トスカーナ地方において 二つの研究プログラムを実施する まず 第一に イタリア ワインの代表的産地として知られるキャンティー地方の中心都市シエナに存在する シエナ外国人大学 (Universita per Stranieri di Siena) の語学 文化コース (1 カ月コース ) に席をおき イタリア語とイタリア文化 特にワイン文化に関する講座を受講し イタリア ワインの歴史について学びながら 文献資料の収集を行う また このシエナには イタリアでも有数の国立エノテカ ( ワインとワイン文化博物館 ) が また 都市シエナの周辺には キャンティーワイン本場の歴史的ワイナリーが無数に存在する そこで 第二に 先のシエナ外国人大学の修学プログラムの合間を利用して これらの博物館やワイナリーを訪れ イタリア ワイン業界の 伝統と変化 について現地調査を実施する これら二つの集中的な修学と調査を通して 先述の研究旅行の目的を達成し 質の高い卒業論文執筆に結び付けていきたい 期待される成果ワインの歴史や文化に関する概説本などは日本にも多く見られるが それらはあくまでもガイドブックの域を出ない イタリア ワインの歴史や文化についての歴史的資料や文献を手に入れるためには 現地での資料収集が欠かせない シエナ外国人大学の文化講座は シエナ大学の現役の教授陣が講義を担当するという それらの講座を受講することで 基礎知識や資料だけでなく最新の研究成果も学ぶことが期待できる また 講座を担当するシエナ大学の教授に直接卒業論文のためのアドバイスを得る可能性も期待できる また 同大学でのイタリア語コースでの学びで 現在の自分のイタリア語力をレベルアップし 収集したイタリア語文献の読解に役立てられる さらに ワイン博物館であるシエナ国立エノテカ および キャンティー地方に点在する歴史的ワイナリーでの資料 情報収集は 日本では決して手にすることのできない貴重な資料や生の体験を得ることが期待できる そして これらすべてが 直接 内容のある卒業論文に結び付く重要な資料となる

研究旅行 予定表 ( 旅行日数 行動内容に応じて下の枠を増減させながら記入する ) 出発予定日 2012 年 1 月 29 日 旅行予定日数 ( 発着日含む ) 帰着予定日 2012 年 3 月 4 日 35 日間 ( 未定の場合でも大体の予定日を記入 ) 滞在地 行動 調査内容 第 1 週目 シエナ キアンティ 現地の語学学校 ( シエナ外国人大学 ) にて 語学 文化コースを受講 現地人のワインへの意識調査 週末はカステッロ ヴィッキオマッジョ ( ワイナリー ) での資料収集 現地調査 第 2 週目 シエナ キアンティ 現地の語学学校 ( シエナ外国人大学 ) にて 語学 文化コースを受講 また同大学にて ワインの用語とテイスティング の講義を受講 現地人のワインへの意識調査 週末はカステッロ イル パラージオ ( ワイナリー ) での資料収集 現地調査 第 3 週目 シエナ モンタルチーノ 現地の語学学校 ( シエナ外国人大学 ) にて 語学 文化コースを受講 また同大学にて イタリアにおける食とワインの文化 の講義を受講 現地人のワインへの意識調査 週末はリジーニ ( ワイナリー ) での資料収集 現地調査 第 4 週目 シエナ モンタルチーノ 現地の語学学校 ( シエナ外国人大学 ) にて 語学 文化コースを受講 現地人のワインへの意識調査 エノテカ ( ワイン蔵 ワイン博物館 ) に訪れ イタリアワインに関しての資料収集 週末はテヌータ カパルツォ ( ワイナリー ) での資料収集 現地調査 28 日目 シエナ ローマ 移動 30 日目ローマ現地人のワインへの意識調査 カステッリ ロマーニエリア ( ワイナリー ) での資料収集 現地調査 31 日目ローマ バンコク バンコク 福岡 日本帰国 バンコクで乗り換えのため一泊

< 研究報告書 > 今回 私は 2012 年 2 月 1 日 ~2012 年 3 月 1 日まで イタリア ワイン業界の変遷 を明らかにすべくシエナ外国人大学の語学 文化コースに籍を置きながら 国立エノテカ ( ワイン博物館 ) やワイナリーへ現地調査を行った アメリカやオーストラリア アルゼンチンなどといった新大陸国で主流となっている品種主義ワインが イタリアなどの伝統的な産地主義国に輸出され出している事実から ワイン業界で起こっていると考えられる変化とその背景を明らかにすることが今回の研究旅行の主たる目的である シエナにはイタリア唯一の国立のワイン総合文化施設 Enoteca Italiana Siena が存在する Enoteca Italiana Siena 外 ( 左 ) 内 ( 右 ) ここで研究者兼ソムリエとして勤めている鈴木暢彦氏にインタビューを行った 在伊歴も長い鈴木氏によると イタリア人が他国のワインを飲むことはほとんど無く それどころか国内においてさえ他の州のワインを飲むことは一般的でなく 造られた地で消費をする地産地消の考え方が浸透しているという 確かに 私が滞在したトスカーナ州のワインはスーパーマーケットやワインショップにかなりの数が並んでいたが トスカーナ州のワインと同様世界的に評価の高いピエモンテ州やシチリア島のワインは数本置いてある程度でフランスのワインを含め他国のワインは置いていないお店も存在した では なぜイタリアにおいてこれほどまでワインの地産地消が深く浸透しているのだろうか 鈴木氏は他の産物には無いワインだけが持つ特徴が大きく影響しているのではないか と指摘する ワインは飲んでみないと良さが実感できない産物で その都度購入する必要がある製品である しかし一般的なアルコール飲料に比べても世界中にあるワインの数は莫大である ( 前田琢磨氏著の 葡萄酒の戦略 によると 世界全体でおよそ 10 万前後の造り手が存在しており 彼の計算によると毎年世界では数百万ほどのワインが誕生しているという ) その複雑性ゆえ 自らの好みの味を探すといっても分母となる数が限られており ワインはその人の両親や親戚などといった生まれ育った際にそばに居た人の影響を受けやすい産物である イタリアは伝統的にワインを造ってきた国であり 私が住んでいた大学寮の傍にもブドウ畑があるほど ワインは市民の生活に溶け込んでいる

寮傍にある葡萄畑 ( 左 ) 寮の冷蔵庫の上にあるワインの空き瓶 ( 右 ) ワインがいかに市民の生活に溶け込んでいるかが伺える イタリア人がフランスワインやアメリカワインを飲まないのは 彼らがこれらのワインを嫌っているから飲まないわけではなく イタリア人にとってワインを飲むとはイタリアワインを飲むという図式が自然と出来上がっているからであろう シエナのレストランに行ってもチアンティやモンテプルチアーノ モンタルチーノといったトスカーナ州のワインばかりで 他の州のワインを置いているレストランはシエナでは見かけなかった 新大陸国のワインがイタリア一般市民の生活に入り込んでいる事実は無さそうである モンテプルチアーノにある Conducci というワイナリー この地域で生産される Vino Nobile di Montepulciano( ヴィーノ ノービレ ディ モンテプルチアー ノ ) は世界的に有名 では輸入された新大陸国のワインは一体どこに行ってしまったのだろうか これは私の推論であるが おそらくイタリアにおけるソムリエやワイナリーが輸入しているのではないであろうか イタリアでソムリエとワインの話をしている最中やワイナリーのスタッフと話をしている最中も何度か 他国のワインと比べて という言葉を耳にした 近年の新大陸のワイン技術向上は目を見張るものがある 1976 年 5 月 24 日 フランスのパリにあるインターコンチネンタルホテルにおいて アメリカ合衆国独立 200 年を記念してアカデミー デュ ヴァン (1972 年にパリで開校したワインスクール ) 主催で開催されたワイン試飲会で フランスワインを破って赤ワイン白ワインともに一位に輝いたのはアメリカワインだった事実などからもワイン関係者における新大陸ワインは無視できない存在となっている 世界的なトレンドを知る 世界的な技術を知る上でもワイナリーやソムリエにとって新大陸ワインを知ることは必要不可欠だと考えられる しかし混合してはいけないのは 世界的なトレンドはあくまでワイン伝統国の外での話である ワイン伝統国イタリアにおいては地産地消が根強く浸透しており この傾向は当面は変わりそうにない ワイン伝統国内でワイン業界の大きな変化は今のところ起こっていない しかし近年では 東アジアでもワインが造られるようになり 台湾 タイ ベトナム インド スリランカ カンボジア ミャンマーなどでもぞくぞくとワイナリーが誕生している 世界的にみるとワイン業界は大きく動いているのである この動きがワイン伝統国に影響を与える日もそう遠くはないのかもしれない