平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

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平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成 29 年 5 月 15 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 3 月 6 日 判 決 原 告 BERNARD FRANCE SERVICE 合同会社 訴訟代理人弁護士笹本摂 向多美子 訴訟代理人弁理士木村高明 被 告 ラボラ

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

年 1 月 9 日に第 40 類 布地 被服又は毛皮の加工処理 ( 乾燥処理を含む ), 裁縫, ししゅう, 木材の加工, 竹 木皮 とう つる その他の植物性基礎材料の加工 ( 食物原材料の加工を除く ), 食料品の加工, 廃棄物の再生, 印刷 を指定役務 ( 以下 本件指定役務 という ) とし

1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求の趣旨 1 特許庁が無効 号事件について平成 25 年 5 月 9 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ( 当事者間に争い

(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

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平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

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83155C0D6A356F E6F0034B16

一括して買い受けた なお, 本件商品である コンタクトレンズ は, 本件商標の指定商品 眼鏡 に含まれる商品である (3) 使用商標は, ハートO2EXスーパー の文字からなるところ, 本件商品の容器に表示された使用商標は, ハート の文字部分だけが赤い字で, かつデザイン化されており, これに続く

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

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平成 25 年 4 月 24 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 3 月 11 日 判 決 原 告 X 訴訟代理人弁理士 松 下 昌 弘 被 告 特 許 庁 長 官 指定代理人 井 出 英一郎 同 水 莖 弥 同 堀 内 仁 子

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

キューピー図形事件:東京高裁平成15(行ケ)192号平成15年10月29日判決(認容・審決取消)

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

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本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

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事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

B63EE1C51AFE4AD B000BA3B

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

31 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 1 原告の求めた裁判 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録を無効とした審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 10 号該当性 ( 引用商標の周知性の有無 ) である 1 特許庁における手続の経

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基本的な考え方の解説 (1) 立体的形状が 商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる場合は 特段の事情のない限り 商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断する 解説 商品等の形状は 多くの場合 機能をより効果的に発揮させたり 美感をより優れたものとしたりするなどの目的で

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平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

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審決取消判決の拘束力

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成 25 年 7 月 18 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 7 月 4 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史 麻 子 呰 真 希 被 告 特 許 庁 長 官 指 定

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

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被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

平成 25 年 12 月 17 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 10 月 17 日 判 決 原告エイトマイハートイン コーポレイテッド 訴訟代理人弁護士 五十嵐 敦 出 田 真樹子 弁理士 稲 葉 良 幸 石 田 昌 彦 右

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

事実及び理由 第 1 原告の求めた裁判特許庁が無効 号事件について平成 27 年 1 月 6 日にした審決のうち, 登録第 号の指定役務中 第 42 類ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供, オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラ

原告は, 平成 26 年 12 月 9 日, 指定役務を第 35 類 市場調査又は分析, 助産師のあっせん, 助産師のための求人情報の提供, 第 41 類 セミナーの企画 運営又は開催, 電子出版物の提供, 図書及び記録の供覧, 図書の貸与, 書籍の制作, 教育 文化 娯楽 スポーツ用ビデオの制作

最高裁○○第000100号

4390CD461EB D090030AC8

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2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

求める事案である 1 本件商標被告は, 平成 17 年 3 月 7 日, rhythm の文字を横書きしてなる商標 ( 以下 本件商標 という ) について, 第 25 類 履物, 乗馬靴 を指定商品として, 商標登録出願し, 同年 9 月 16 日に設定登録を受けた ( 登録第 号

1 特許庁における手続の経緯等 ( 後掲証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実 ) (1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) の商標権者である ( 甲 1, 2) 登録番号第 号登録出願日平成 26 年 3 月 27 日設定登録日平成 28 年 4 月 22 日登録

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にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特

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平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

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第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

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平成  年(オ)第  号

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

最高裁○○第000100号

平成 30 年 9 月 10 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 7 月 11 日 判 決 原告ハワード株式会社 同訴訟代理人弁護士 窪 田 英一郎 乾 裕 介 今 井 優 仁 中 岡 起代子 本阿弥 友 子 同訴訟代理人弁理士

(イ係)

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平成 25 年 5 月 30 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 4 月 25 日 判 決 原告 X 訴訟代理人弁理士田中聡 被告東洋エンタープライズ株式会社 訴訟代理人弁理士野原利雄 主 文 原告の請求を棄却する 訴訟費用は原

本件は, 商標法 50 条 1 項に基づく商標登録取消審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である 1 本件商標及び特許庁における手続の経緯等被告は, 下記の KIRIN の欧文字を横書きしてなり, 平成 19 年 6 月 25 日に出願され, 第 35 類 酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧

平成 25 年 10 月 23 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 24 年 ( ワ ) 第 号役務標章差止請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 9 月 4 日 判 決 東京都渋谷区 < 以下略 > 原 告 株式会社 KPG LUXURY HOTELS 同訴訟代理人弁護士 吉 田

1 特許庁における手続の経緯原告は, 名称を 5 角柱体状の首筋周りストレッチ枕 とする発明につき, 平成 20 年 10 月 31 日に特許出願 ( 本願 特願 号, 特開 号, 請求項の数 1) をし, 平成 25 年 6 月 19 日付けで拒絶

平成 24 年 7 月 12 日判決言渡 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 平成 24 年 5 月 8 日口頭弁論終結 判 決 原 告 株式会社レベルファイブ 訴訟代理人弁護士 辻 哲 哉 被 告 特 許 庁 長 官 指 定 代 理 人 酒 井 福 造 同 田 村 正

平成 25 年 7 月 18 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 7 月 4 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史 麻 子 呰 真 希 被 告 特 許 庁 長 官 指 定

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本件は, 商標法 50 条 1 項に基づく商標登録取消審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である 1 本件商標及び特許庁における手続の経緯等被告は, 下記の KIRIN の欧文字を横書きしてなり, 平成 8 年 6 月 24 日に出願され, 第 30 類 コーヒー及びココア, 茶, 調味料, 香辛料

号 ) をしたが, 同年 11 月 17 日付けで拒絶査定を受けたので, 平成 28 年 1 月 26 日, これに対する不服の審判請求をした ( 不服 号 ) ( 甲 3, 甲 4の1, 乙 1) 特許庁は, 平成 28 年 7 月 28 日, 本件審判の請求

2 訴訟費用は被告の負担とする 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録無効審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 11 号該当性 ( 類似性 ) の有無である 1 本件商標 被告は, 下記の本件商標の商標権者である ( 甲 1,2) ゲンコツメンチ ( 標準文字

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

平成25年5月  日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

ある 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 23 年 6 月 8 日, 下記本願商標につき商標登録出願 ( 商願 号 ) をし, 平成 23 年 11 月 25 日, 指定商品の補正をしたが, 平成 24 年 1 月 30 日, 拒絶査定を受けたので, 平成 24 年 4

意匠法第十七条の三意匠登録出願人が前条第一項の規定による却下の決定の謄本の送達があつた日から三月以内にその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をしたときは その意匠登録出願は その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす 2 前項に規定する新たな意匠登録出願があつたときは もとの意匠登

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

消訴訟である 争点は, 引用商標との類否 ( 商標法 4 条 1 項 11 号 ) である 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 3 月 11 日, 下記本願商標につき, 商標登録出願 ( 商願 号 ) をしたが, 拒絶査定を受けたので, これに対する不服の審

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

同 長 沢 幸 男 同 岩 渕 正 樹 同 弁理士 正 林 真 之 同 八 木 澤 史 彦 主 文 1 原告らの請求を棄却する 2 訴訟費用は原告らの負担とする 事実及び理由 第 1 請求特許庁が無効 号事件について平成 23 年 9 月 26 日にした審決を取り消す 第 2

平成22年 月 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

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間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

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平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 10338 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光 訴訟代理人弁理士 清 水 千 春 主 文 1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求特許庁が無効 2012-890028 号事件について平成 24 年 8 月 21 日にした審決を取り消す 第 2 争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 登録商標を, 上段に片仮名の モノリスタワー, 下段に欧文字の M onolith Tower を横書きした商標( 以下 本件商標 という ) とし, 指定役務を第 43 類 宿泊施設の提供, 飲食物の提供, 会議 集会のための施設の提供 及び第 44 類 入浴施設の提供 とする, 商標登録第 5402293 号に係る商標権 ( 平成 22 年 9 月 30 日登録出願, 平成 23 年 4 月 1 日設定登録 ) の商標権者である ( 甲 1) 原告は, 平成 24 年 3 月 9 日, 本件商標の指定役務中, 第 43 類 宿泊施設の提 1

供, 飲食物の提供, 会議 集会のための施設の提供 につき無効審判 ( 無効 201 2-890028 号事件 ) を請求し, 同年 8 月 21 日, 請求不成立の審決がされ, その謄本は同月 30 日, 原告に送達された 2 審決の理由審決の理由は, 別紙審決書写しに記載のとおりであり, 要するに, 本件商標は, 商標登録第 5059090 号 ( 平成 18 年 10 月 19 日登録出願, 平成 19 年 6 月 29 日設定登録 ) に係る欧文字の MONOLITH を横書きした登録商標( 以下 引用商標 という ) と, 外観, 称呼及び観念のいずれの点においても非類似であるから, 商標法 4 条 1 項 11 号に該当しないとするものである 第 3 取消事由に関する当事者の主張 1 原告の主張 (1) 審決は, 本件商標は, 上段, 下段の各文字部分がそれぞれ一体不可分のものであると判断するが, この判断には誤りがある ア一般に, 親しまれた語 と 親しまれていない語 との組合せからなる商標において, 親しまれた語 は自他役務の識別力がないか極めて弱いのに対し, 親しまれていない語 は需要者の注意を引き, 役務の出所表示機能が強いといえる 本件商標は, 親しまれていない語である モノリス 及び Monolit h の部分が需要者の注意を引く部分であり, モノリス 及び Monolit h の部分から モノリス という名称の建物であると認識, 理解される したがって, 本件商標は モノリス の称呼を生じ, 引用商標と類似する 東京タワー や 横浜マリンタワー が 東京 や 横浜マリン と略称されないのは, いずれも親しまれた語と親しまれた語との結合に係る名称であり, 東京 や 横浜マリン では識別力が発揮できないのと同様である イ Monolith の部分と Tower の部分との間にはスペースがあり, 各部分は最初の文字のみが大文字で, 他は小文字で表記されている したがって, 本件商標は, 外観的にも前半部と後半部とを分離して観察することができる 2

のであって, 各部分を分離して観察することが取引上不自然であるといえるほど, 不可分に結合しているものではない ウ商標を構成する語において, 指定商品等と密接に関連するものを意味する語は, 指定商品等との関係で識別力がない 本件商標において, タワー 及び T ower の部分は, 指定役務との関係で, 役務の質 ( 内容 ) を直接的に表示するものではない しかし, 指定役務の提供を受ける者の利用する施設 ( 建物 ) の形状を示す語であるから, 指定役務と密接に関連するものを意味する一般的 普遍的な文字であり, 識別力はない (2) 以上のとおり, 本件商標は, モノリス 及び Monolith の部分が需要者の注意を引く部分であり, この部分と引用商標とを対比すると, 本件商標は引用商標に類似する したがって, 本件商標は商標法 4 条 1 項 11 号に該当する 2 被告の反論親しまれた語あるいは親しまれていない語の組合せからなる商標において, タワー (Tower) が, 建造物の名称に使用された場合には, タワー/ Tower の語は, 常に結合された の語に従属するため, 建造物の名称として理解 認識されるのであって, よほど冗長な名称でない限り, 一連一体に称呼される 本件商標の モノリスタワー の称呼は, 冗長な名称ではないから, 一連一体に称呼される また, タワー 及び Tower の語は, 指定役務との関係で, その役務の質 ( 内容 ) を直接的に表示するものではない 本件商標は, 全体として モノリスタワー という建造物の名称としての観念を生じさせるものであるから, タワー 及び Tower の部分のみが分離され, この部分に識別力がないということはできない したがって, 本件商標は, 上段, 下段の各部分がそれぞれ一体不可分なものである 3

原告は, タワー/Tower の語は, 親しまれている語であって, 識別力がないか極めて弱く, 結合する タワー /Tower 以外の単語にのみ識別力が発揮されると主張する しかし, 同じ役務で タワー の結合商標と の語のみとが重複して登録されている事例は少なからず存在し, 原告の主張によると, これらが登録された理由が説明できない 第 4 当裁判所の判断 1 本件商標と引用商標との類否の判断の方法について商標法 4 条 1 項 11 号に係る商標の類否は, 同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が, その外観, 観念, 称呼等によって取引者, 需要者に与える印象, 記憶, 連想等を総合して, その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり ( 最三小判昭和 43 年 2 月 27 日 民集 22 巻 2 号 399 頁参照 ), 複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて, 商標の構成部分の一部を抽出し, この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否することは, その部分が取引者, 需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や, それ以外の部分から出所識別標識としての称呼, 観念が生じないと認められる場合などを除き, 許されないというべきである ( 最一小判昭和 38 年 12 月 5 日 民集 17 巻 12 号 1621 頁, 最二小判平成 5 年 9 月 10 日 民集 47 巻 7 号 5009 頁参照 ) 上記の観点から, 本件商標と引用商標の類否について検討する 2 本件商標の外観, 称呼, 観念本件商標は, 上段に片仮名の モノリスタワー, 下段に欧文字の Monol ith Tower を, 横書きに2 段に表記した商標である 本件商標中の片仮名 モノリスタワー は, 同じ大きさ及び同じ間隔で, 標準文字により表記されている 本件商標中の欧文字 Monolith Tower は, Monoli th 部分と Tower 部分の, それぞれ先頭の文字が大文字, その他の文字が小文字で表記され, 各部分の間には, 空隙がある 本件商標は, 上記のとおりの 4

外観を呈している 本件商標は モノリス 及び Monolith の部分と タワー 及び T ower の部分を結合させた商標である 本件商標からは, モノリスタワー の称呼を生じる 本件商標のうち モノリス 及び Monolith は, 特に建築 彫刻用の一枚岩, 一本石 などを意味する英語であるが, 一般に親しまれた語ではないことから, 特定の観念を生じない また, 本件商標のうち タワー 及び Towe r は, 塔 ないし 搭状の造形物 の意味を有する語である そうすると, 本件商標から, モノリス との名称の 塔 ないし 搭状の造形物 との観念を生じる 3 引用商標の外観, 称呼, 観念引用商標は, 欧文字の大文字の MONOLITH を横書きしたものであり, 上記の外観を呈している 引用商標からは モノリス の称呼を生じる また, MONOLITH は 特に建築 彫刻用の一枚岩, 一本石 などを意味する英語であるが, 一般に親しまれた語ではないことから, 特定の観念を生じない 4 類否の判断 (1) 判断本件商標のうち タワー の部分は, 本件における商標登録の無効審判請求の対象とされている指定役務 宿泊施設の提供, 飲食物の提供, 会議 集会のための施設の提供 との関係では, 直接的な意味を有するものでない また, モノリス 及び Monolith の部分が, 取引者, 需要者にとって, 出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる証拠もない さらに, 片仮名の モノリスタワー は, 同じ大きさ及び同じ間隔で, 標準文字により表記されていること, モノリスタワー や Monolith Tower の称呼は モノリスタワー と6 音で短いことからすると, 取引者や需要者は, 本件商標における 5

モノリスタワー や Monolith Tower を一連一体のものと認識するといえる そうすると, 本件商標が上記指定役務に使用された場合, その出所識別機能を有する部分は, モノリス 及び Monolith のみに限られるものではなく, タワー 及び Tower の部分を含めた全体であるというべきである 以上によると, 本件商標と引用商標との類否の判断をするに当たっては, モノリスタワー 及び Monolith Tower のそれぞれと引用商標とを対比すべきである モノリスタワー 及び Monolith Tower のそれぞれと引用商標とを対比すると, 上記のとおり, 外観, 称呼, 観念のいずれにおいても相違し, 本件商標は, 引用商標とは類似しない したがって, 本件商標は商標法 4 条 1 項 1 1 号に該当しない (2) 原告の主張に対して原告は, 一般に, 親しまれた語 と 親しまれていない語 との組合せからなる商標においては, 親しまれた語 は自他役務の識別力がないか極めて弱いが, 親しまれていない語 は需要者の注意を引き, 役務の出所表示として, 強く機能するとして, 本件商標のうち需要者の注意を引く部分は, モノリス 及び Mo nolith の部分のみであると主張する しかし, 結合商標等を構成する部分が 親しまれた語 であったとしても, 指定商品又は指定役務の品質 ( 質 ) や用途等との関連性を欠く場合には, 親しまれた語 は, 格別, 自他役務等の識別力がないか又は極めて弱いとはいえない したがって, 原告の主張は, 主張自体失当である 5 結論以上のとおりであるから, 原告主張の取消事由は理由がなく, 審決には, これを取り消すべき違法はない その他, 原告は, 縷々主張するが, いずれも理由がない よって, 主文のとおり判決する 6

知的財産高等裁判所第 1 部 裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 八木貴美子 裁判官 小田真治 7