書誌情報の将来像 : 共同目録の観点から 佐藤義則 ( 東北学院大学 ) 書誌データの今後に関わる諸要素 1. 情報源の多様化と量的増大 2. 多様なメタデータに対する要求 3. 人間による ( 直接的な ) 利用だけでなく, コンピュータによる ( 間接的な ) アクセスの増大 4. Linked Open Data BIBFRAME 書誌データのオープン化 : サイロ データベースから, ウェブスケールへ 連携 協力の再定義の必要性 1
1. 情報源の多様化と量的増大 低 ライセンス契約の資料日用品としての出版物 オープンな Web 情報源 大 購入資料 ki 管理責任 小 貴重書 特別コレクション貴重書, 特殊コレクション 稀少性 高 機関内で生産された資料 ( 研究資料, 研究デー, 学習教材 ) 引用元 : Malpas, Constance. "Scarcity and Abundance: the Cooperative Imperative in Special Collections," 53rd Annual RBMS Preconference, 20 June 2012. available at http://www.oclc.org/research/presentations/default.htm (2012-07-04). 確保 ( 調達 ) ERDB ライセンス契約の資料日用品としての出版物 Knowledge base 購入資料 オープンな Web 情報源 OER, MOOC,, 遡及的デジ タル化貴重書 特別コレクション 貴重書, 特殊コレクション リンク形成 ( 関係性の整理 典拠データの整備 ) 機関リポジトリ 機関内で生産された資料 ( 研究資料 研究データ 学習教材 ) 統合インデックス 2
ebooks および書籍のオンライン流通 書誌情報に関するステーキホルダーの増大 出版社 オンライン書店 アマゾン ( 寡占的市場 ) アグリゲータ ( プラットフォーム ) アマゾン kindle,ibooks,kobo 等 出版流通業者 ( 新たな ) 書誌情報作成業者 Syndetics,Rovi,Eloquence,Jacketcaster 等 ONIX 発見と現物代替 (proxy) としての書誌情報の再認識, または ディスカバラビリティと有用性を強化するコンテキストの提供 2. 多様なメタデータに対する要求 発見のためのメタデータ 粒度の変化 コンテンツの流通が制限される場合, 特に重要 場合によっては, 論文自体が最良の メタデータ 保存のためのメタデータ OAIS 参照モデル (ISO 14721:2012, 2003) アクセスコントロールのためのメタデータ Version of Record( 記録版 ); NISO/ALPSP Journal Article Versions (JAV), 2008 アクセス期間, アクセス権限 ; NISO RP-22-201x (Draft). Open Access Metadata and Indicators. 3
3. 人間による ( 直接的な ) 利用だけでなく, コンピュータによる ( 間接的な ) アクセス API (Application Programming Interface) 国立国会図書館サーチ 検索用 API SRU, SRW, OpenSearch, OpenURL, Z39.50 ハーベスト用 API OAI-PMH CiNii-Books API OpenSearch 検索エンジンの bot によるアクセス 情報収集の効率化と品質向上 Google s Knowledge Graph with Freebase data (Google Developers Freebase API) OpenRefine (API インターフェースを備えた名寄せツール ) 4. Linked Open Data BIBFRAME 書誌データのオープン化 : サイロ ( たこ壷 ) データベースから, データのウェブへ Linked Open Data (LOD) W3C (World Wide Web Consortium)Library Linked Data Incubator Group 最終報告 (2011.10) LC, Europeana, Cambridge U., Harvard U., OCLC,,, New York Times, BBC, Nature,,, DBpedia, GeoNames,,, CiNii,,, OCLC WorldCat のデータを Schema.org 形式で公開 ( 加えて Dewey, VIAF and FAST headings へのリンク ) ODC-BY ダウンロード用ファイル (250 以上の所蔵館を持つ書誌データ 120 万件 =8,000 万トリプル ) 4
発見手段の利用頻度 (SCREAL2011) 図書館の OPAC や NACSIS-WebCat で検索 自然科学教員 (n=2,124) 4.2% 17.4% 31.3% 26.6% 12.7% 7.8% 自然科学大学院生 (n=729) 7.5% 24.1% 26.9% 18.4% 12.5% 10.6% 人文社会科学教員 (n=722) 22.3% 39.9% 23.7% 8.3% 4.3% 1.5% 人文社会科学大学院生 (n=308) 29.5% 44.5% 16.9% 6.8% 1.0% 1.3% ほぼ毎日利用している 月に 1-2 回程利用している どういうものか知っているが 利用したことはない 週に 1-2 回程利用している 以前に利用したことがあるが 最近は利用していない 知らなかった 発見手段の利用頻度 (SCREAL2011) ウェブの検索エンジンで検索 自然科学教員 (n=2,124) 41.0% 32.0% 16.9% 4.8% 4.5% 0.8% 自然科学大学院生 (n=729) 45.1% 35.4% 12.8% 2.1% 4.1% 0.5% 人文社会科学教員 (n=722) 47.1% 31.0% 14.0% 3.6% 3.6% 0.7% 人文社会科学大学院生 (n=308) 48.4% 31.8% 15.6% 1.3% 2.6% 0.3% ほぼ毎日利用している 月に 1-2 回程利用している どういうものか知っているが 利用したことはない 週に 1-2 回程利用している 以前に利用したことがあるが 最近は利用していない 知らなかった 5
LOD 対応の課題 1. データ形式の策定とこれに対応するシステム整備 2. データの同定識別のための識別子の設定および 管理 ( 典拠データ 件名データ ) 3. 重複データ, 重複作業の排除のための ( 海外を含 む他機関との ) 連携 4. データの権利関係の定義 5. 目録作成 / 検索機能提供の役割の再定義 Our job today, as librarians and information scientists, is not to translate library data to linked data; our job is to create a new system for access and use of bibliographic data that is compatible and works within the web. Karen Coyle, Library Linked Data: an evolution. http://www.kcoyle.net/presentations/fi2012_en.pdf 書誌情報の将来像 1. 目録レコードから目録データへ 従来の レコード単位 の必然性の解消 2. データの発見と利用可能性の向上 図書館の目録データ間および Dbpedia,GeoNames 等の異領域のサービスにおけるデータとの間のリンク形成によって 3. 外部作成情報の積極的活用 量的問題かつ人的資源問題からの帰結として 可能な限りの自動化 4. 書誌記述とともに 発見のためのデータ の整備 典拠コントロール, 関係性, アクセスコントロール ( 電子情報資源 ) 5. 共同分担の範囲と役割 ( 権限 ) の ( 再 ) 設定 外部作成情報活用および連携協力の方式における自由度の増加 誰が, どのような枠組みで書誌情報の作成 / 活用を担うのか? これらの内容は, 書誌記述 ( 例. RDA) の問題とは独立して議論が可能であり, そのようにして早急に議論すべき問題である 6