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より詳しくは 24 時間程度で反応器を交互再生するプロセスを完成させるために 反応器の交互再生ができ 減圧反応が可能なベンチ装置を製作し導入する また 従来技術の反応器出口のブタジエン収率が15% 程度であるため 同等レベルの性能となる触媒を開発する 研究初期段階ではあるが プロセス面の課題を早期に抽出し 研究開発に反映させるために 触媒開発と並行し プロセス概略フローを作成する これらの設定した目標を達成させるために 以下の項目を実施することとした 1 触媒開発 : 収率の向上を目的に アルミナベースの担体に白金およびスズを担持した触媒を改良する 2ベンチ装置導入検討 : 反応器の交互切り替え再生が可能なベンチ装置を設計 製作し 導入する 3 運転条件検討 : 製作したベンチ装置で触媒反応評価を実施し 従来技術との性能比較を行う また 評価に適切な反応条件を設定する 4 副生物の分析 : 反応で得られた副生成物を分析するための適切な条件を探索する 5プロセス検討 : プロセスの各構成要素を検討し プロセス概略のフローを策定する 3. 研究開発 ( 調査 ) の結果 3.1 触媒開発パラフィンの脱水素用触媒としては 従来よりアルミナベースの担体にクロムを担持したクロム系触媒とアルミナベースの担体に白金とスズを担持した白金 -スズ系触媒が知られている 従来技術では クロム系触媒が使用されているが 活性低下が早いため 短時間で反応器を再生しなければならず その負荷をプロセス面でカバーしている そのため プロセスが複雑になっている 一方 白金 -スズ系触媒では スチームを共存可能なためクロム系触媒と比べ 活性低下はやや遅い 1サイクルの耐久性を24 時間以上とするためには 白金 -スズ系触媒が好適であると考え 本研究開発では 白金-スズ系触媒を改良することとした 触媒改良として まず アルミナ担体の影響について検討を実施した 物性の異なる3 つのアルミナ担体に対し 白金 スズを同量担持した触媒を調製し 反応評価を実施した 結果を図 2に示したが アルミナ担体の種類によってブタジエン収率が異なることが分かった これは アルミナ担体の細孔径の違いが影響していると考えている

ブタジエン収率 (Rx 出口 ),% ブタジエン収率,% 8 6 4 2 担体 A 担体 B 担体 C 図 2 各種アルミナ担体とブタジエン収率 また 白金 スズの担持方法として アルミナベースの担体に白金を担持した後 乾燥 焼成後にスズを担持する逐次含浸 ( 担持 ) 法と 白金とスズを同時に担持する共含浸 ( 担持 ) 法について検討を実施した その結果 逐次含浸 ( 担持 ) 法の方が ブタジエン収率が高くなることが分かった 次に 性能の良かったアルミナ担体を用い 白金およびスズを逐次含浸法で担持した触媒について 連続運転による評価を実施した Baseの反応温度で評価したところ 1 3 時間平均のブタジエン収率は9% となった 収率を高くするために反応温度をBase+ 5 としたところ 14 時間平均の収率は13% となり Base 温度と比べブタジエン収率は高くなったものの 劣化が加速される結果となった ( 図 3) 2 15 平成 28 年度目標 (24h 平均 ) 5 1 反応温度 :Base, 収率 :9%(13h 平均 ) 2 反応温度 :Base+5, 収率 :13%(14h 平均 ) 5 15 経過時間,h 図 3 反応温度とブタジエン収率の推移

ブテン転化率,% ブタン転化率,% ここで 触媒性能を高めるために 触媒上の白金量を固定し スズの担持量を変えた触媒を試作し 評価を実施した その結果 特定のスズ担持量の時にブタンの脱水素活性が高くなることが分かった 一方で スズ担持量が多くなりすぎると 活性が低くなることも分かった ( 図 4) ところが スズ担持量の多い触媒にブテンを反応させたところ 反応開始から6 時間が経過してもほとんど劣化がないことが分かった ( 図 5) また ブテンを原料とした場合では スズ担持量が少ないほど劣化が早かった このように スズ担持量を変えることで ブタン脱水素 ブテン脱水素への反応性が変わることを見出した 8 ブタン原料 6 4 2 Base Base+3 Base+4 Base+7 スズ担持量,wt% 図 4 スズ担持量とブタン転化率の関係 ( ブタン原料 ) 4 ブテン原料 3 2 2 分後 6 時間後 劣化 劣化 Base Base+4 Base+7 Base+12 スズ担持量,wt% 図 5 スズ担持量とブテン転化率の関係 ( ブテン原料 )

スズ担持量によって ブタン脱水素活性やブテン脱水素の耐久性を高められることが分かったため ここでコンセプトを再考した 図 6に示した通り ブタンからブタジエンを 1 段で得るためにはBase+5 以上の反応温度が必要となるが 劣化が早くなる ブタジエンを高収率で得るためには 平衡上 高温が必要となるが スズ担持量を多くすることでブテン脱水素の耐久性が高い触媒を見出すことができた 一方 ブタンを脱水素する触媒はスズ担持量が少ないため劣化は大きいが ブタンからブテンを生成させるだけであれば 平衡上 より低温とすることができる すなわち ブタンからブテンを生成させる触媒 ( ブタン脱水素用触媒 ) と ブテンからブタジエンを生成させる触媒 ( ブテン脱水素用触媒 ) に分け ブタン脱水素用触媒はより低温として劣化を緩和し ブテン脱水素触媒の耐久性は高いため より高温とすることでブタジエンを高収率で得られるのではないかと考えた <コンセプト> ブタン 1 高温だと触媒失活 より低温に ブテン 2 平衡上高温が有利 より高温に ブタジエン < 従来方式 > ブタン < 新方式 > ブタン 反応器を分割し, 条件 / 触媒を最適化 触媒 1 反応器 1 ( ブタン ブテン ) ブタン脱水素活性の高い触媒開発 反応器 触媒 触媒 2 反応器 2 ( ブテン ブタジエン ) より高温で劣化しない触媒開発 ブタジエン ブタジエン 図 6 ブタジエン収率向上のためのコンセプト このコンセプトを基に ブタン脱水素用 ブテン脱水素用とスズ担持量の異なる2 種類の触媒を使用し 2 段に分けて反応性評価を実施した 結果を図 7に示したが コンセプト通り ブタジエン収率の向上と劣化抑制を両立できることができ 24 時間平均のブタジエン収率が15% に到達し 平成 28 年度の開発目標値を達成した

ブタン転化率,% ブタジエン収率 (Rx 出口 ),% 2 3 反応温度 :Base+5, 収率 :15% (24h 平均 ) 15 平成 28 年度目標 (24h 平均 ) 2 反応温度 :Base+5, 収率 :13% (14h 平均 ) 1 反応温度 :Base, 収率 :9% (13h 平均 ) 5 6 12 18 24 経過時間,h 図 7 ブタジエン収率の推移 開発触媒は24 時間ごとに繰り返し再生して使用する 仮に開発触媒が繰り返し再生使用できない場合 触媒開発の方向を変える必要がある そこで 開発触媒のうちブタン脱水素触媒について繰り返し再生試験を実施し 繰り返し再生の可能性を検討した まず 加速的に触媒上にコークを付着させる条件を検討したところ 1-ブテンをより高温かつ 分圧が高い条件でフィードすることで 24 時間反応後に相当するコーク量を短時間で付着できる条件を探索できた この条件で触媒上にコークを付着させた後 空気焼成 水素還元を行った 繰り返し再生試験では この一連の操作を5 回繰り返した 焼成は標準温度焼成と高温焼成の2 点を検討した 図 8に新品 標準温度 5 焼成 ( 再生 ) 品 高温 5 回焼成 ( 再生 ) 品の3つのブタン転化率を示した 高温再生では5 回の再生であっても脱水素活性が大きく低下することが分かった 一方 標準温度再生では脱水素活性が低下しないことを確認した 8 6 4 2 新品 標準温度再生 5 回 ( 日相当 ) 高温再生 5 回 ( 日相当 ) 図 8 新品と繰り返し再生品のブタン転化率

ここで 繰り返し再生試験を行った触媒の劣化状態を確認するために これらの触媒についてTEM(Transmission Electron Microscope; 透過型電子顕微鏡 ) 観察を実施した 標準温度再生品では 新品と同様に白金粒子径は1-2nmであり 白金が凝集していないことが確認できたことから 長期耐久が期待できると考えられる 一方 高温再生品では白金の粒子径が5 7nmと大きく増加しており 活性低下の要因が白金の凝集によることが確認できた ( 図 9-11) ( 新品 ) 白金粒子径 :1-2nm 15nm 図 9 新品触媒の TEM 観察 ( 高温再生品 ) 白金粒子径 :5-7nm 6nm 15nm 図 高温再生品の TEM 観察 ( 標準温度再生品 ) 白金粒子径 :1-2nm 15nm 15nm 図 11 標準温度再生品の TEM 観察

ブタジエン平衡収率,mass% 3.2 ベンチ装置導入検討反応器の交互再生およびかつ減圧反応が可能なベンチ装置を設計し 導入した 反応器はブタン脱水素用 ブテン脱水素用の2 段とし 交互再生できるよう2 系列とした また 片方が反応している際 他方が再生を行える仕様とした ブタンのフィードラインに加え リサイクル検討を行うためのブテンのフィードライン 共存させる水のフィードラインを設置した これらは2 段ある反応器の2 段目からもフィードできるようにした さらに 24 時間で自動的に反応と再生が切り替わるようなシステムも導入した 24 時間で収率が変化していくため 夜間休日もデータを取得できるよう ガスクロマトグラフも併設した 3.3 運転条件検討運転条件として反応圧力について検討を行った ブタンの脱水素反応は平衡上 反応圧力を減圧とすることが望ましい しかしながら 減圧ができない反応装置では希釈ガスなどで減圧を模擬する必要がある そこで 減圧条件と同等のブタジエン平衡収率となる常圧の反応条件を推算した その結果 イナートガスなどで原料のブタンに対し 約 8 倍に希釈することで 減圧条件と同等のブタジエン平衡収率になることが分かった ( 図 12) 25 2 15 5 原料 : ブタン % 温度 :Base, 圧力 : 減圧希釈ガス無し 原料 : ブタン % 温度 :Base, 圧力 : 常圧希釈ガス / ブタン 8 倍 mol 図 12 減圧条件と常圧で希釈ガスを使用条件でのブタジエン平衡収率 3.4 副生物の分析開発技術で工業的にブタジエンを製造する場合 反応により生成したブタジエンは蒸留精製を行った後 ブタジエン抽出装置により高純度のブタジエンに精製されることになるが 単にブタジエンの純度を満たすだけでは製品化できず 現行の製品ブタジエンに含まれるアセチレン類や1,2-ブタジエンなどが現行濃度以下である必要がある また 現行の製品ブタジエン中には含まれない成分の混入可能性を把握する必要がある そこで アセチレン類や1,2-ブタジエンをはじめ 製品ブタジエン中に混入する可能性のある不純物を分析でき かつ未精製の反応器出口ガスの分析も可能なガスクロマトグラフの導

入を検討した その結果 FID(Flame Ionization Detecto r; 水素炎イオン化型検出器 ) とTCD(Thermal Conductivity D etector; 熱伝導度型検出器 ) を兼ね備え かつカラムもチューニングしたガスクロマトグラフによりこれらの要求を満たすことが分かり 装置を導入した 本装置を用い 分析条件を検討した結果 現在の研究で得られた反応器出口ガス中の各ピークを分離できる条件を設定できた 3.5 プロセス検討ブタン脱水素プロセスでは 高温 減圧 反応器の24 時間交互再生などの要素を必要とするためプロセス面で課題が発生する可能性がある そこで 早期に課題を抽出し 研究開発に反映させるために プロセス構成を検討した 反応系設備は 2 系列からなる反応工程と1 系列の冷却工程および再生ガス供給設備より構成され 反応工程ではスイング方式の触媒再生システムを組み込み 24 時間ごとに触媒再生を行う 反応工程の各系列は 仕切弁を介して下流の冷却工程および再生ガス供給設備と接続され 通常反応と触媒再生が切り替えられる仕組みとした その他 反応器廻り以外の構成要素も検討し, 概略フローを策定した 4. まとめ平成 28 年度は アルミナベースの担体に白金およびスズを担持した脱水素の改良を実施した スズ担持量を変化させることで ブタン脱水素やブテン脱水素に対する活性や耐久性が変わることを見出し スズ担持量の異なるブタン脱水素用触媒 ブテン脱水素用触媒の2 種類の触媒を用いることで ブタジエン収率を平成 28 年度の目標値である15% まで向上させた また 繰り返し再生試験を実施し 適切な再生温度とすることで長期耐久性が見込まれることが分かった さらに プロセス検討も実施し プロセス概略フローも策定した