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援 GHGインベントリ策定にかかる技術移転等 気候変動対策を推し進めるための包括的な支援を実施した 同プロジェクトの成果として 国家気候変動緩和行動計画 (RAN-GRK) に基づき州気候変動緩和行動計画 (RAD-GRK) の策定が進められるとともに 国家気候変動適応行動計画 (RAN-API)

本日の話題 JICAの気候変動対策の協力方針と取組事例 パリ協定に対応した支援 農業保険分野におけるJICAの取り組み事例 1 インドネシア損害補填型農業保険事例 2 エティオピア天候インデックス保険事例 3 インドネシア天候インデックス保険

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類似業務対象国 / 類似地域語学の種類 各種評価調査インドネシア / 全途上国英語 5. 条件等 (1) 参加資格のない社等 : なし (2) 必要予防接種 : なし 6. 業務の背景インドネシア政府は 食料安全保障や農家の所得向上を政策上の優先課題の一つとして位置付けており 2013 年 7 月に

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ログラムの審査に産業界からも参画を得ることで 大学がエンジニア予備軍である学部学生に対し社会のニーズに即した教育を実践できるよう 促進する役割を果たしている かかる状況の下 エンジニアの量的拡大が質を伴う形で実現されるよう インドネシア政府は我が国に対し LAM-PS としての インドネシアエンジニ

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事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部資源 エネルギーグループ第二チーム 1. 案件名国名 : ザンビア共和国案件名 : 和名ザンビアにおける鉛汚染のメカニズムの解明と健康 経済リスク評価手法および予防 修復技術の開発英名 The Project for Visualization of

は Blue Print for Air Transportation にて民間航空長期計画を作成 アクションプラン DGCA 5-Year Strategic Plan を作成した上 航空安全に係る総合的な対策の強化を図っており 本事業はこれに寄与するもので

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護ディプロマ課程を 3 年制看護ディプロマ課程に変更したのに加え ディプロマ課程看護師の現任研修により学士が取得できる 2 年制ポスト ベーシック課程とは別に大学教育として看護学士課程制度 (4 年制 ) を導入することを定めた 学術的に高度な 4 年制看護学士課程の卒業生は輩出されたばかりであるが

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研究は重要項目とされている 本事業は CERMEL と長崎大学の共同研究を通じて 1 対象地域におけるウイルス感染症の流行状況の解明 2 新規に同定されたウイルスの性状解析 3 公衆衛生対策上優先度の高いウイルスに対する診断法の開発を行い ガボン側研究機関のウイルス感染症研究開発の能力向上に貢献する

(Microsoft Word - \216\226\221O\225]\211\277\225\\ doc)

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事業事前評価表

令 (2006 年 5 号 ) では 2025 年までの国家エネルギー政策の数値目標を設定し エネルギー供給量に対する新 再生可能エネルギーの目標値を 17%( うち地熱エネルギーは 5 %) に定めた また 2010 年の Vision 25/25 において 新 再生可能エネルギーの目標値を 25

2008年6月XX日

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(CANACINTRA) 等と連携を図りつつ設置する案を有しており 国家中小企業コンサルタント養成 認定制度を具現化するためにいかにして事業を進めていくかが課題となっている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけカルデロン大統領は 近代的かつ競争力のある経済の強化及び雇用の創出 を 治安 貧困撲滅

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事業事前評価表 国際協力機構地球環境部環境管理第一チーム 1. 案件名 国名 : パキスタン国案件名 : 和名パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト英名 Project for Improving the Capacity of WASAs in Punjab Province 2. 事業の背

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(2) 当該国における地震防災分野の開発政策と本事業の位置づけネパール政府は 2009 年に災害リスク国家管理戦略を制定し 対象災害の一つとして地震を上げている 地震防災分野は 2009 年に設置された National Platform for Disaster Risk Reduction にお

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新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

ジャカルタ大都市圏空港整備計画調査の必要性については JICA が 2008 年 1 月に実施した 次世代航空保安システム整備に係るフィージビリティー調査 でも提言がなされており 既存空港の拡張及び効率的運用を含めたジャカルタ首都圏周辺の適切な空港整備に係る長期的な計画を策定する必要性は高い インド

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SATREPS 公募説明会資料 2018 年 9 月独立行政法人国際協力機構 (JICA) 社会基盤 平和構築部国際科学技術協力室 1

おらず 園芸作物の生産量の増加につれ 収穫期の値崩れや農産物の廃棄 低い保存 加工技術 資金へのアクセス等の課題に直面しており 収入が期待通りに伸びていない また 農家への技術支援を担う中央や地方の行政機関の職員および普及員数は少なく 十分に機能していない状況にあり 小規模農家の根本的な課題解決には

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仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

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支援 及び 不均衡の是正と安全な社会造りへの支援 の中で重点分野として掲げており また JICA も国別分析ペーパーの協力プログラムにおいて 首都圏の都市基盤整備プログラム や 地方開発 拠点都市圏整備プログラム の中で開発課題として位置づけている 上水道セクターにおいては 日本は下記 3.(9)

政府説明資料

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女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について

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と衝突して沈没し 147 人が死亡 2014 年 8 月にはパドマ川で約 250 人を乗せたフェリーが荒天のため転覆し 110 人が死亡等の大事故が発生している また 同国は 雨季には大型サイクロンが度々ベンガル湾から来襲し 沿岸部で遭難事故が多発するなど 地理的に自然災害の影響を受けやすい地域であ

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豊橋市 PPP/PFI 手法導入優先的検討方針 効率的かつ効果的な公共施設等の整備等を進めることを目的として 多様なPPP/P FI 手法導入を優先的に検討するための指針 ( 平成 27 年 12 月 15 日民間資金等活用事業推進会議決定 ) に基づき 公共施設等の整備等に多様なPPP/PFI 手

(2) 当該国における保健医療セクターおよび科学技術セクターの開発政策と本事業の位置づけ インドネシア保健省は 国家長期保健開発計画 およびその具体的な施策となる 保健セクター戦略計画 において感染症対策を重点項目の一つに位置づけている また インドネシア研究

0528事業事前評価表(円借款+附帯技プロ)final.doc

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地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム (SATREPS) 研究課題別中間評価報告書 1. 研究課題名 テーラーメード育種と栽培技術開発のための稲作研究プロジェクト (2013 年 5 月 ~ 2018 年 5 月 ) 2. 研究代表者 2.1. 日本側研究代表者 : 山内章 ( 名古屋大学大学

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Microsoft Word - 事前評価

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム (SATREPS) JST 中間評価 1 の実施要領 平成 29 年 6 月改定 JST 国際部 SATREPS グループ 1. 地球規模課題国際科学技術協力 (SATREPS) プロジェクトの中間評価について SATREPS は JST による研究支援お

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

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プロジェクト ( 年 ) 独 (KfW): 西ナイル地区に特化した配電網の拡充 小水力の開発 ( 年 ) 3. 事業概要 (1) 事業の目的ウガンダにおける産業活性化が期待できる地方において 長距離配電線 (33kV 配電線 ) の資機材の調達 据付を行うことによ

DIAS COMMUNITY FORUM 2018 東南アジアにおける 農業マーケットでの取り組み ( 天候インデックス保険 次世代型農業保険 ) 2018 年 3 月 9 日 企業商品業務部リスクソリューショングループ郷原健 2017 Sompo Japan Nipponkoa Insurance

無償資金協力 案件概要書 2017 年 8 月 29 日 1. 基本情報 (1) 国名 : カンボジア王国 (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : シハヌークビル特別市 プノンペン (3) 案件名 : 港湾近代化のための電子情報処理システム整備計画 (The Project for Port

事業事前評価表 1. 案件名 ( 国名 ) 国際協力機構南アジア部南アジア第四課 国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 貧困削減戦略支援無償 ( 教育 ) (Poverty reduction efforts) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における初等教育セクターの現状と課題バン

架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみである 首都圏北方は 居住エリアが拡大しているものの 十分な公共交通手段が確保されていないた

政府説明資料

の理解と参加を促進し, 開発協力を支える社会的基盤をより一層広げ, 強化するために, NGO/ 市民社会 (CSO) との連携が推進されるべきことが謳われたところである 以上の経緯と背景の下に NGO と ODA の連携に関する中期計画 ~ 協働のための 5 年間の方向性 ~ が策定されることとなっ

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区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には

Microsoft Word - 事前評価表最終版0623final.doc

大規模災害等に備えたバックアップや通信回線の考慮 庁舎内への保存等の構成について示すこと 1.5. 事業継続 事業者もしくは構成企業 製品製造元等の破綻等により サービスの継続が困難となった場合において それぞれのパターン毎に 具体的な対策を示すこと 事業者の破綻時には第三者へサービスの提供を引き継

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平成18年度標準調査票

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社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

企画書タイトル - 企画書サブタイトル -

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国立大学法人富山大学 PPP/PFI 手法導入優先的検討要項

また 関係省庁等においては 今般の措置も踏まえ 本スキームを前提とした以下のような制度を構築する予定である - 政府系金融機関による 災害対応型劣後ローン の供給 ( 三次補正 ) 政府系金融機関が 旧債務の負担等により新規融資を受けることが困難な被災中小企業に対して 資本性借入金 の条件に合致した

RO ( 改修 Rehabilitate- 運営等 Operate) 方式ハ民間事業者が公共施設等の設計及び建 BT( 建設 Build- 移転 Transfer) 方式設又は製造を担う手法民間建設借上方式 2 優先的検討の対象とする事業及び検討開始時期一優先的検討の対象とする事業建築物の整備等に関

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Microsoft Word - H290324優先的検討規程(裁定).docx

08 年 月 日 バングラデシュ 地理情報標準策定計画 / GIS 計画 サモア ジェンダー分析 平和構築 国家地理空間情報整備支援プロジェクト詳細計画策定調査 ( 地理情報標準策定計画 / GIS 計画 ) 09 年 月中旬 ~ 現地派遣渡航留意 09/0/9 ~ 09/0/08 09 年 月下旬

手法 という ) を検討するものとする この場合において 唯一の手法を選択することが困難であるときは 複数の手法を選択できるものとする なお 本規程の対象とする PPP/PFI 手法は次に掲げるものとする イ民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法ロ民間事業者が公共施設等の設計 建設又は製造及び運営

評価調査結果要約表 1. 案件概要 国名 : メキシコ合衆国案件名 : メキシコ国電子分野における研究 教育手法の開発分野 : 中小企業振興援助形態 : 技術プロジェクト所轄部署 : 中南米部中米 カリブチーム協力金額 ( 評価時点 ):20,375 千円協力期間 (R/D):2003 年 11 月

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

スライド 1

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システムの開発は 国内において 今後の普及拡大を視野に入れた安全性の検証等に係る研究開発が進められている 一方 海外展開については 海外の事業環境等は我が国と異なる場合が多く 相手国のユーザーニーズ 介護 医療事情 法令 規制等に合致したきめ細かい開発や保守 運用までも含めた一体的なサービスの提供が

規制 制度改革に関する閣議決定事項に係るフォローアップ調査の結果 ( 抜粋 ) 規制 制度改革に係る追加方針 ( 抜粋 ) 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 番号 規制 制度改革に係る追加方針 ( 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 ) における決定内容 規制 制度改革事項 規制 制度

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事業事前評価表 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名農業保険実施能力向上プロジェクト英名 The Project of Capacity Development for the Implementation of Agricultural Insurance 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における農業保険セクターの開発実績 ( 現状 ) と課題 地球規模の気候変動や自然災害は世界各国の食料生産に大きな影響をもたら すと予想され 気候変動対策への取り組みは 先進国 途上国を問わず高い関 心事項となっている インドネシア共和国 ( 以下 インドネシア という ) 政府によれば 同国 の食料生産量は気候変動の影響により 2050 年には 38% の低下 (2015 年比 ) が 生じると予測されている このため インドネシア政府は 食料安全保障や農 家の所得向上を政策上の優先課題の一つとして位置付け 2013 年 7 月に農民保 護エンパワメント法を制定し 農業保険の導入及びそのための政府支援を同法 に明記している インドネシア政府は 2012 年雨期作より農業保険のパイロット事業を開始 1 2 JICAの支援等を経て 2015 年雨期作にはコメおよび家畜を対象として16 州で拡 大パイロット事業を実施 2016 年乾期作 (4 月 ~9 月 ) からはコメ生産地全 22 州 において 損害補てん型農業保険が本格実施されている しかしながら 拡大パイロット事業は 1 作期のみの実施であること また対象 州が 16 州へと拡大したことから 政府および地方における実施体制の構築 保 険制度としての定着 農業者に対する普及 啓発 加入情報収集 整備等 自 国の政策として実施していくうえでの能力向上が必須となっている こうした背景を踏まえ インドネシア政府は 現行農業保険制度における課 題に対応し さらに農業保険制度の充実 多様化のためにインデックス型の保 1 スマトラ州および東ジャワ州の 2 州の水田でのコメ栽培を対象としたパイロット事業 2012 年雨期作は 623ha の加入 2013 年雨期作は 2,202ha の加入があった なお 雨季作は 10 月 ~ 翌年 3 月 2 技術協力プロジェクト 気候変動対策能力強化プロジェクト (2010 年 ~2015 年 ) を通じて農業保険の制度設計 農業保険に係るロードマップ (2015 年 ~2019 年 ) の検討を支援した さらに 2014 年雨期作に東ジャワ州においてコメを対象にした損害補てん型の農業保険パイロット事業の実施を支援した

険 3 の導入や他作物への農業保険拡大を視野に入れた支援にかかる技術協力プロジェクトの実施を我が国政府に要請した (2) 当該国における農業保険セクターの開発政策と本事業の位置づけ国家中期開発計画 (RPJMN2015~2019) においても 農業保険の導入が明記されており 農業保険の導入は政策上の優先課題の一つとして位置付けられている 2015 年には1,500 億ルピア 4 の予算を充当し 政府事業として農業保険の拡大を図っている 本事業は 急速に進むインドネシア国の農業保険事業に対し 日本の知見 経験を活かして関連機関の実施能力を向上させ 農業保険事業の安定性を高める事業として位置づけられる (3) 農業保険セクターに対する我が国及び JICA の援助方針と実績本事業は 対インドネシア共和国国別援助方針 (2012 年 4 月 ) において アジア地域及び国際社会の課題への対応能力向上のための支援 に合致し さらに 気候変動プログラム にも位置づけられる これまで 損害補てん型農業保険プロジェクトの実績はなく また インデックス型については 民間連携等による調査が主であり 本事業と同等規模で実施を支援した実績はない しかしながら 農業保険は 世界銀行 FAO UNDP 等の他ドナーにおいても食料安全保障および気候変動対策の有効な手段と認識されており 援助実績の蓄積が望まれるセクターである (4) 他の援助機関の対応インドネシア国の農業保険 ( 損害補てん型 ) に対して これまで他の援助機関の実績はない インデックス型について関心を持っている援助機関もあるが インドネシア政府は損害補てん型のみを採用しており 現状は調査にとどまっている 3. 事業概要 (1) 事業目的本事業は インドネシアにおいて 現行損害補てん型農業保険の実施促進 改善および農業保険の対象拡大を視野に入れた他スキームの検討を行うことにより 実施機関関係者の実施能力が改善することを図り もって 農業保険事業の継続的な運営に寄与するものである (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : ジャカルタ特別州 / 東ジャワ州 南スラウェシ州 (3) 本事業の受益者 ( ターゲットグループ ) 直接受益者 : 農業保険事業に関わる実施機関の職員 対象州の農業保険加 3 天候インデックスおよび収量インデックス農業保険 4 日本円で約 12 億円 (1 ルピア =0.008 円で試算 )

入対象となる農民間接受益者 : 農業保険加入対象となる農民 (4) 事業スケジュール ( 協力期間 ):2017 年 3 月 ~2022 年 3 月を予定 ( 計 60 ヶ月 ) (5) 総事業費 ( 日本側 ): 約 6 億円 (6) 相手国側実施機関 :BAPPENAS 農業省 財務省 BMKG Jasindo 5 (7) 投入 ( インプット ) 1) 日本側 1 専門家派遣 (250MM 程度を想定 ): 長期専門家 : 総括 業務調整短期専門家 : 副総括 / 農村金融 インデックス型保険 顧客情報管理 啓蒙 普及 損害査定他 2 研修員受入 ( 本邦または第三国 ): 農業保険制度 政策 インデックス型保険他 3 資機材供与 : 事務機器等 2) インドネシア側 C/P の配置 ローカルコスト日本側が負担しない資機材の調達及び設置 人件費 事務 運搬経費 ( インドネシア国内の国内旅費を含む ) 日本人専門家への便宜供与 (8) 環境社会配慮 貧困削減 社会開発 気候変動対策 1) 環境に対する影響 / 用地取得 住民移転 1 カテゴリ分類 :C 2 カテゴリ分類の根拠 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月公布 ) に掲げる農業セクターのうち大規模なものに該当せず 環境への望ましくない影響は重大ではないと判断され かつ 同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため 2) ジェンダー平等推進 平和構築 貧困削減インドネシアの農業保険制度においては 農地保有面積が少ない農家を特に支援する内容となっており ジェンダー活動統合案件として要請がなされている 2011 年の貧困プロファイルによると 貧困層に占める女性世帯主世帯の割合は増加しており 特に農村部では男性世帯主世帯と女性世帯主世帯の支出水準にも 35% 程度の差があると報告されている 保険加入促進 5 国営の保険会社 農民保護エンパワメント法では国営企業が農業保険を取り扱うことが定められており 現状では損 害補てん型農業保険の販売ができる唯一の国営企業

に際しては農民グループ等の情報をもとに 女性や貧困層へのアプローチに配慮して活動を進めるとともに 農業保険の情報に女性がアクセスしやすい環境づくりに配慮することとする 3) 気候変動対策本事業で農業保険の実施促進 改善および農業保険の対象拡大を視野に入れた他スキームの検討等を図ることは 将来的な気候変動の影響への緩和に貢献するため 気候変動対策 ( 適応策 ) に資する (9) 関連する援助活動 1) 我が国の援助活動 気候変動対策能力強化プロジェクト ( 技プロ ):2010 年 10 月 ~2015 年 10 月 食料安全保障を目指した気候変動適応策としての農業保険における損害評価手法の構築と社会実装 (SATREPS): 計画中 2) 他ドナー等の援助活動他ドナー事業と直接的な連携は想定していない ただし インデックス型の保険の検討については 他ドナーも関心を示して調査を検討しており 本邦企業含め 民間保険会社の動向にも留意する 4. 協力の枠組み (1) 上位目標と指標インドネシア国において 農業保険事業が継続して実施される < 指標 > 1 農業保険が保険加入者数 対象地域 収支等の観点から適切かつ健全な運用を維持する 2 農業保険の継続性に関する正の影響が認識される 3 農業保険事業が次期国家中期開発計画 (2020-2024) において引き続き重要政策として記載される (2) プロジェクト目標と指標農業保険事業に関わる省庁 機関 州政府およびその他の関係機関の農業保険実施に関する能力が強化される < 指標 > 1 農業保険に対する加入者の満足度が改善する ( 再加入率 支払い及び損害査定にかかる期間の短縮等 ) 2 全国における農業保険加入面積および加入者数が増加する 3 各種提言を踏まえ 関係省庁が必要なアクションを行う

(3) 成果 1 コメを対象にした現行農業保険スキームの実施能力が強化される 2 農業保険スキームの分析 改善に関する能力が強化される 5. 前提条件 外部条件 (1) 前提条件 インドネシア政府により農業保険実施に係る人員 予算が確保される (2) 外部条件 ( リスクコントロール ) 農業保険に関するインドネシア政府の政策が大幅に変更しない 実施機関が引き続き協力を行う パイロット州において 未曽有の大災害が発生しない 6. 評価結果 本事業は インドネシア国の開発政策 開発ニーズ 日本の援助政策と十分 に合致しており また計画の適切性が認められることから 実施の意義は高い 7. 過去の類似案件の教訓と本事業への活用 (1) 類似案件の評価結果これまで農業保険の支援実績はないため 政府独自の保険制度の導入 定着 改善の一端を担うプロジェクトを類似案件とする タイ国公的医療保険情報制度構築支援プロジェクト同プロジェクトは タイ政府独自の医療保険制度改革の大きな流れの一端を担うプロジェクトであることから その実施においては タイ政府 ( 特に保健省国民医療保障局 ) 独自の事業の動向の情報収集やカウンターパートとの意見交換を行うことが期待されていた しかしながら このような認識はJICA 担当者や専門家が交代するなかで 関係者間で十分に意識されなくなった 相手国政府独自の政策や改革と同時並行的に進められるプロジェクトについては 関係者が交代してもプロジェクト開始当初の留意事項が引き継がれるよう 専門家の業務内容に明記するか PDM やPO 等 日常的に専門家およびカウンターパートが参照する文書に記載しておくことが重要である (2) 本事業への教訓 プロジェクト実施機関として 制度に関わる関係機関のすべてを配置し 各種合意文書の署名を取り付けるとともに それぞれの役割を整理しつつ 関係機関によるモニタリング 評価 制度へのフィードバックの仕組み作りを支援する枠組みを検討した 特に現場レベルと中央レベルの意思疎通を活性化することの重要性をプロジェクト開始前から実施機関の間で共有しており 相互の情報交換についても プロジェクト活動に組み込んでいる

8. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる主な指標 4.(1) のとおり (2) 今後の評価計画事業終了 3 年度事後評価