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ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

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29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

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マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

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第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

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28 GCC UAE GCC (2) 大きく上昇した食料価格と住居費 GCC GCC GCC 図表 2 湾岸協力会議 (GCC) 諸国の消費者物価上昇率 (28 年 ) 図表 3 湾岸協力会議 (GCC) 諸国の消費者物価指数に占める食料品と住居費の割合

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2. トピックス 中国 インドを除くアジア主要国の特徴について 中国やインドが高い成長を続けている中にあって インドネシアなどの東南アジアの国々の成長率は過去 7 年間を平均すると 4.3% と安定している しかし 成長率には国によって差があり フィリピン ベトナム インドネシアなどは平均年齢が若く 人口が増加していることなどもあり 高い成長を続けている 一方 の場合には経済の成熟化が進み人口増加率が低下していることなどから 経済を押し上げる力が小さくなっている IT 化の進展によって電気機械の輸出価格が低下したことも成長の足枷になってきた ( 1 ) はじめに日本を除くアジアの多くの国々は総じて高い経済成長を続けてきたが 国による差は小さくない 図 1 にあるように 中国は 2007 年まで 5 年続けて前年比 10% 台の高い成長を続けたが その後は徐々に伸び率を縮め 2017 年は 6.9% となった インドも ここ数年は 5% から 7% 台の高い成長を続け 2017 年は 7% 前後の成長が見込まれている これに対し インドネシア マレーシア ベトナム フィリピンの 7 か国 ( 以下では アジア 7 か国 という ) の実質 GDP の伸び 率は 4% から 5% の範囲内で安定している もっとも アジア 7 か国を国単 15 位でみると 引続き高い成長率を続けている国々と 一頃に比べると伸び率が小さくなってきている 10 国々の 2 つに分かれてきている 成長率が高目の国々とは ベトナム インドネシア フィリピン 5 マレーシアの 4 か国で ( 以下では 高成長 4 か国 という ) 成長率が低下してきている国々とは 0 の 3 か国 ( 以下では 低成長 3 か国 という ) で 8 図 1 アジアの実質 GDP( 前年比 ) 中国インドアジア7か国 00 05 10 15

ある このことは 図 2 が示し ており 2000 年 = 100 とする 指数で比較すると 高成長 4 か 国の 2017 年の平均が 250.0 で あるのに対し 低成長 3 か国 の平均は 186.5 と 25.4% も 差がある 2010 年の乖離率が 9.4% 2012 年が 13.3% 2014 年が 18.2% であるから 乖離 は時間の経過とともに拡大し てきていることになる また 2 つのグループの成長 率の違いを いくつかの期間に分けて確認してみた 図 3 は それぞれの GDP 成長率を 2010 年 2011 年から 13 年までの平 均 2015 年から 17 年までの平均 の 3 つに分けたものである 2010 年の 時点では 7 か国の多くは 6% から 8% の範囲内にあった ところが 2011 年から 13 年までの平均では 高 成長 4 か国が 5~ 6% 低成長 3 か国が 3~ 4% と 2% ポイント近 い差が生じている さらに 2015 年から 17 年までの平均では高成 長 4 か国が 5~ 6% と前の時期と あまり変わらないが 低成長 3 か 国では 1~ 4% 弱と伸び率が小さ くなっている このことは 2 つ のグループの格差が開いてきた 大きな原因は 高成長 4 か国側 ではなく 低成長 3 か国側にあ ったことを示唆している (2000 年 =100) 300 本ペーパーでは このような高成長 4 か国と低成長 3 か国における成長 率の差がなぜ生じたのかという点にスポットを当てて考えてみた 250 200 150 100 12 10 8 6 4 2 0 図 3 実質 GDP 成長率 ( 各 3 年間の平均 ) 図 2 実質 GDP(2000 年 =100) ベトナムインドネシアフィリピンマレーシア 00 05 10 15 ベトナム フィリピンベトナム 2010 2011-13 2015-17 インドネシアフィリピンマレーシア 低成長 3 か国 インドネシアマレーシア 高成長 4 か国 ( 2 ) 乖離の原因 : 1 経済の成熟度合いの違い これら 2 つのグループ内で最初に思い付く違いは 経済の成熟度合いの 違い である 9

1 人当たり名目 GDP を 7 か国 間で比較してみると 図 4 にあ るように とは他国を 大きく上回っている 2010 年の は 2.2 万ドル ( 日本円換算 233 万円 ) は 1.9 万ドル ( 同 201 万円 ) と マレーシア 0.9 万ドル インドネシア 0.3 万 ドル フィリピン 0.2 万ドル ベトナム 0.1 万ドルの 4 か国平 均を 5 倍から 6 倍も上回ってい る 2015 年から 17 年の平均で も こうした状態に大きな変化 はない なお の場合には 2010 年が 0.5 万ドル 2015 年から 17 年の平均が 0.6 万ドルと やと大きく異なり 低成長 3 か国の平均 ( 0.5 万ド ル ) に近い水準にある したがって の成長率が低い原因は 経済の成 熟度 にはなく 別のところにあることになる ( この点については後述す る ) 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 図 4 1 人当たり名目 GDP( ドルベース ) (1 人当たり名目 GDP 米ドル ) マレーシア インドネシアフィリピンベトナム 2010 2011-13 2015-17 ( 3 ) 乖離の原因 : 2 人口増加率等の違い第 2 の原因として考えられるのは 人口増加率の違いである 図 5 にあるように 過去 3 年間の人口増加率を 2010 年 2011 年から 13 年までの平均 2015 年から 17 年までの平均 の 3 つに分けてみると 低成長 3 か国は 0.2% から 0.6% の範囲内にあるのに対し 高成長 4 か国は 1.0% から 2.0% の範囲内と 1% ポイント近い差がある 人口の伸び率が 1% 違えば成長率が 1% 違っても不思議はない 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 また 図 6( 次項 ) は平均年齢 0.0 を比較したものである との 2015 年の平均年齢が そ 10 図 5 アジアの人口増加率 (3 年間の平均 ) 2010 2011-13 2015-17 フィリピンマレーシアインドネシアベトナム ( 〇 ) ( )

れぞれが 41 歳 39 歳であるのに対 し 高成長国であるフィリピン 24 歳 マレーシア 28 歳 インドネシ ア 28 歳 ベトナム 30 歳と ここ でも違いがみられる 平均年齢の若い国は人口増加率 も高いと考えられるので 若年人 口が多い国ほど人口増加率は大き く 経済の成長率も高いのは当然 かもしれない また そうであるな ら すでに 1 人当たり名目 GDP が 高い水準に達しているや の成長率が 1 人当たり名目 GDP の 水準がまだそこまで達しておら ず 若い人が多く人口が増加している国々より見劣りするのは ある意味で やむを得ないことになる 45 40 35 30 25 20 ( 歳 ) 図 6 平均年齢 2005 2010 2015 ( 出所 ) 国連 ベトナム インドネシアマレーシア フィリピン ( 4 ) 乖離の原因 : 3 自然災害や政変 ( のケース ) の場合には前述のように 1 人当たり名目 GDP はそれほど多くなく 低成長 4 か国と同じ水準にある したがってこの点から考えれば もっと 高い成長率になっても不思議はないが 実際の成長率はいま一つ冴えなか った 理由は 2011 年秋には首都バンコクに迫る大洪水が 5 か月間も続き 2011 年の実質 GDP は前年比 + 0.8% ま で低下したこと 2013 年後半には 反政府デモが激化し 首都バンコ クの幹線道路を中心に市街地域 が封鎖される事態になり 2014 年 の実質成長率が前年比 + 0.9% ま で落ち込んだことが大きい 図 7 は の実質 GDP の動き を四半期ベースで描いたもので 2011 年の大洪水と 2014 年のク ーデターが成長率を大きく押し 下げた関係が見て取れる クーデ ター後 軍部が治安維持の観点か 20 5 11 15 10 5 0 図 7 の実質 GDP 成長率 11 年 7~11 月大洪水 13 年 11~12 月反政府デモ激化 10 11 12 13 14 15 16 17 ( 出所 ) 政府 HP 新聞報道ほか 14 年 1~5 月首都封鎖 軍事クーデター

ら政権を担当し 成長率は少しずつ持ち直してきているが 同国の政治が不安定である背景には いまだ 1 人当たり名目 GDP が十分な水準に達していないにも拘わらず 近隣のベトナムやマレーシアなどに比べると経済成長率がいま一つ冴えないという不満などもあるかも知れない ( 5 ) 乖離の原因 : 4 輸出構成品目の違い ( のケース ) との成長率が大幅に低下した大きな原因の一つに輸出構成品目 の違いがある やでは輸出に占める電気機械の割合がそれぞれ 34.3% 44.3% ( 2016 年 ) と高かったため 輸出価格の大幅低下の影響を 大きく受けてきた 輸出価格が大幅に低下することは 1 つの企業で言えば 販売価格が低下することと同じで企業収益の悪化を意味し 国で言えば所 得が海外に流出することを意味する 周知のように電気機械の価格低下は IT 化の進展とともに近年大幅に低下し 15 年間で 6 割近く低下した 図 8 は輸出物価を輸入物価で割った交易条件の動きを図示したものであ る 高成長 4 か国が 2000 年 = 100 の指数で 2016 年は 105 と ほとんど横這いであるのに対 し はボトム年の 2012 年 には 61 と 4 割 は 51 と 5 割も低下 ( 悪化 ) した これら の国々の名目 GDP に占める輸 出の割合はそれぞれ 51.9 % ( 2000 年 ) 35.0%( 同 ) であ るから 年率ではいずれも GDP の伸び率が 1% 前後押し下げら れた計算になる なお マレーシアとフィリピ ンも輸出に占める電気機械の ウェイトは それぞれ 36.6% ( 2016 年 ) 43.2% ( 同 ) と高いが マレー シアの場合には 石油 天然などの資源輸出のウェイトが 18.6% と高く資 源価格上昇の恩恵を受けてきた フィリピンの場合には 海外に居住するフ ィリピン人就労者による本国送金が民間消費を下支えしたこと ( 2017 年の 送金額は前年比 + 4.3% と過去最高を更新 ) などが輸出のマイナスを補って きた (2000 年 =100) 110 100 90 80 70 60 50 図 8 の交易条件 (= 輸出物価 輸入物価 ) 高成長 4 か国 00 05 10 15 12

( 6 ) おわりにこのように アジア 7 か国を個別にみると それぞれに大きな違いがある 先進国に分類されるやは アジアの中でこれまで先行して高い成長を続けてきた結果 1 人当たり名目 GDP を高めており それが人口や年齢構成にもあらわれている 電気機械の輸出ウェイトが高かったのも 他国に先んじて経済を発展させてきたためと言えるだろう 他方 フィリピンやベトナム インドネシア マレーシアでは 経済発展の遅れが平均年齢を引下げ 人口増加率が上昇 それが経済の活力となっている また は 政治情勢や自然災害等が成長を阻害してきた の場合には そうした過去の経験を将来に活かすことが出来るかどうかが今後の課題と言えよう ( 2018 年 2 月 19 日京都総合経済研究所小堀潔 ) 13