3 医療 福祉分野 1 高齢者等の見守りに関する技術 製品の開発 2 介護 福祉機器に関する技術 製品の開発 3 医療機器に関する技術 製品の開発 13
分野 : 医療 福祉分野テーマ 1: 高齢者等の見守りに関する技術 製品の開発 1. 現状と技術的課題 1.1. 現状 ( 参考 1) 急速な少子高齢化により 2025 年には 都民の 4 人に 1 人が 65 歳以上の高齢者になると見込まれる 高齢者の単独世帯は 2025 年には単独世帯数の 28% に至る見込みであり 家族と同居している高齢者でも 日中独居になることがある人が半数弱いることから 見守りの重要性が増している 1.2. テーマ共通の課題 見張られているという利用者感情が生じやすく 取得した情報の取扱いを含め配慮が必要である 操作を必要とする機器においては 高齢者等が容易に使用できる操作性が求められる 常時身に付けて携帯する機器においては 利用者に負担をかけない形状や大きさであることが求められる 外出による不在時やペットの誤検知など 誤報 誤用を極力少なくすることが求められる 機器の故障や電池の消耗などに対して 常に機器を確実に動作させるためのメンテナンス性が求められる 近親者が近くにいない場合など 異常があった場合の対応に人的サービスとの組み合わせが不可欠である 2. 代表的な技術 製品の例示 緊急通報 定期的オートコール センシング ( 住居設置型 ) センシング ( 携帯型 ) ネットワークカメラ等 3. 技術 製品開発の動向と課題 3.1. 緊急通報 1) 概要見守られる高齢者等が緊急ボタンを押すと通報されるシステムである 緊急時駆け付けサービスに加え 安否確認や健康 生活サポート等の様々なサービスを組み合せて提供される 緊急ボタンとしては 据え置き型または常時身に付けておくペンダント型がある 課題としては以下のようなものがある 駆け付けサービスを組み合わせた場合 ランニングコストが高くなる 転倒や意識不明になった場合に緊急ボタンを押せない 逆に意図せず押してしまう誤報の問題がある 機器の故障や 電池切れ等に対する保守管理に問題がある 自宅電話回線を利用する場合 外出時は利用できない 2) 代表的な構成高齢者等の自宅に設置または携帯した緊急ボタンおよび送信装置 サービス提供者 ( 見守り ) 側の受信装置で構成される 3) 中小企業の技術的参入可能性既存技術の応用で対応可能であり 例えば以下のような取組が期待される 高齢者等にとって使いやすい操作性 機器の自動故障診断 省電力化 移動体通信網を利用した屋外でも利用可能な機器の開発 緊急ボタンが押された場合の人的対応に SNS 等の Web を活用する仕組みの構築等 3.2. 定期的オートコール 1) 概要自動音声電話 自動メールにより安否 状態確認を行うシステムである 体調等の質問に対し 該当する番号を押すことにより回答し 回答内容は 予め登録された通知先に自動で電話またはメール送信される 比較的低コストで利用できるが 以下のような課題がある 外出時など電話に出られない場合や メールに返信できない場合は異常として判断されてしまう 緊急時に 見守られる側から通報ができない 14
2) 代表的な構成見守られる側の専用端末 固定電話または等と サービス提供者 ( 見守り ) 側のオートコールおよび登録者への連絡を自動で行うサーバーで構成される 3) 中小企業の技術的参入可能性既存技術の応用で対応可能であり 例えば以下のような取組が期待される 高齢者等にとって使いやすい操作性 機器の自動故障診断 省電力化 屋外でも利用可能な携帯やの活用 体調不良時の人的対応に SNS 等の Web を活用する仕組みの構築等 3.3. センシング ( 住居設置型 ) 1) 概要高齢者等の住居に設置された生活リズムセンサーを活用して 安否や行動を検知し 異常と判断される場合に予め登録した通知先にメール等で自動送信する センシング方法として 人感センサー ドアセンサー マットセンサー等の居住者の行動を検知する方法 ガス流量センサーや電流センサーなどインフラの利用状況を検知する方法などがある また 最近では 単純なセンサーのオン / オフだけでなく 超音波センサーや電波センサーにより 3 次元的に人体の動きを検知して判断するシステムも開発されている 課題としては 以下のようなものがある 機器代など 初期導入費が高い 検知はセンサーを設置した部屋や自宅内に限られる ペットなどによる誤検知が生じやすい 機器の故障や電池切れ等に対する保守管理に問題がある 図表 1 クラウドを利用してセンサー情報を分析 異常判断するシステムの例 人感センサー 送信ユニット データ送信 自動通報 マットセンサー クラウド ( 分析 異常検知 ) 3) 中小企業の技術的参入可能性センシング方法として様々な技術 製品の可能性があり 例えば以下のような取組が期待される センシングした情報について 通常時のデータ分析と併せて各個人に合った異常判断を行うなどのソフトウェアの高度化開発 異常時の自動送信だけでなく 見守られる側への積極的な声掛けなど双方向のコミュニケーション ( 会話機能付き人感センサー等 ) を含む製品開発 センシングした情報をクラウドで分析しアラームを出すなど ICT の効果的な活用 クラウド : ソフトウェアやハードウェアなどをネットワーク越しにサービスとして利用者に提供する方式をクラウドコンピューティングと呼び データセンターやその中で運用されているサーバー群をクラウドという ICT(Information and Communication Technology): 情報通信技術 4) ロボット技術を活用した見守り機器の例 ( 参考 2) 経済産業省と厚生労働省は 介護従事者の負担軽減のためロボット技術を活用した見守り支援機器等の開発による新たな市場の創出を目指している 見守りセンサーからの情報を受信する機能を追加したコミュニケーションパートナーロボットの開発 転倒検知センサーや外部通信機能を備えた機器と無線式見守りロボットの組合せによる開発等 15
3.4. センシング ( 携帯型 ) 1) 概要身に付けた IC タグや 携帯する端末に内蔵したセンサーにより 行動や転倒を検知して 予め登録した通知先にメール等で自動送信する 直接身に付けるため 加速度センサーやジャイロセンサー等を組み込むことで 行動に加え転倒まで検知できる また を活用することで GPS 機能により居場所を確認することが可能となる 課題としては 以下のようなものがある 常に身に付けている必要があり 携帯のしやすさと置忘れ等への対策が必要である 機器の故障や電池切れ等に対する保守管理に問題がある IC タグの場合はこれを受信する機器設置が別途必要となる IC タグ : IC チップと小型のアンテナを組み込んだ荷札 ( タグ ) 無線を使った専用リーダーで情報を読み取る ジャイロセンサー : 物体の傾きや角度 その傾きの速度を検出する測定器 図表 2 ペンダント型携帯端末による行動 転倒検知システムの例 ZigBee 等 送受信ユニット 緊急検知 ペンダント型携帯端末 自動通報 加速度センサー ジャイロセンサー GPS 内蔵 サーバー 3) 中小企業の技術的参入可能性例えば以下のような取組が期待される を活用し コンピュータや Web を組み合せた管理 解析技術 ZigBee や Bluetooth 等の近距離無線通信等を利用した機器の省電力化等 ZigBee: センサーネットワークを主目的とする近距離無線通信規格の一つ 4) データマイニング手法の活用住居設置型も含め 収集した複数のセンシング情報から データを解析し相関関係やパターンなどを探し出すデータマイニング手法により 各利用者に適した誤検知の少ない確実な異常検知に結び付けられる可能性がある 大量のデータを扱うため ネットワークを利用したクラウドでの解析処理が有効である データマイニング (data mining): データの集合の中から その中に潜んでいて意味のある そして有益なパターンや関係を見つけ出す技術 3.5. ネットワークカメラ 1) 概要高齢者等の自宅に設置したネットワークカメラにより見守りを行う 見守り側から いつでも見守られる側の自宅等の状況を映像で確認できるが 以下のような課題がある 見張られているという利用者感情が生じやすい また プライバシーへの配慮が必要である 見守り範囲が自宅の居室等一部のみで かつカメラの視界の範囲に限られる 緊急時に見守られる側から通報ができない 見守り側の認証を厳格にする等の工夫が必要である 16
図表 3 ネットワークカメラ / センサーによる見守りシステム例 ネットワークカメラ + 人感センサー 画像 画像 画像 ( 自動 ) センサーに反応して保存メール ( 自動 ) サーバー 3) 中小企業の技術的参入可能性システム全体としての開発の他 以下のような取組が期待される カメラ画像から 異常を自動検知してなどに通知 / 表示する技術の開発 ドアホンとの連動などホームセキュリティ機能等との組合せによる付加価値を高めた製品の開発 生体認証機能を取り込んだ低価格の専用機器の開発等 4. 市場動向 2011 年度の見守りサービスの市場規模は 利用者の金額ベースで 143 億 3,400 万円と推計されている また 見守りサービス市場は 高齢化の進展や単身者世帯の増加を受けて それぞれの世帯に向けた新サービスの開発が進むことで 拡大傾向にあり 様々な業界からの事業参入が続いていることから 高齢者向けサービスとしてのニーズの取り込みを中心に 今後も堅調に推移すると予測しており 2012 年度は 168 億円 ( 前年度比 117.2%) と見込んでいる ( 出典 1) 5. 関係する主な法令センシング技術を活用した高齢者見守り製品に関する直接的な規制 法律 基準は 現時点では見当たらない ただし 収集した情報については 個人情報保護法 に基づく取り扱いが求められる 日本で ZigBee や Bluetooth 等を使用するには その機器の性能が特定無線設備として技術基準適合証明または工事設計認証により 電波法で定められた技術基準を満たしていることの証明が必要である また ZigBee Bluetooth 共にそのロゴマークを使用するためには認証を取得する必要がある 6. 参考文献 引用 参考文献参考 1) 新たな長期ビジョン ( 仮称 ) 論点整理 ( 東京都 2013 年 11 月 ) 参考 2) 見守り支援機器 ( 介護施設型 )( 介護ロボットポータルサイト 2014 年 6 月 ) http://robotcare.jp/?page_id=68 引用出典 1) 住まいと生活支援サービスに関する調査結果 2013( 矢野経済研究所 2013 年 6 月 11 日 ) http://www.yano.co.jp/press/press.php/001102 17